国会質問

質問日:2017年 2月 22日  第193通常国会  国際経済・外交調査会

自衛隊が行う駆け付け警護 NGOを危険にさらす

 NGOの方々からお話を聞きました。

 昨日の衆院予算委員会中央公聴会でのNGOの方の「南スーダンの情勢は悪化。自衛隊が『駆けつけ警護』をすれば戦闘の当事者になる。日本への敵対感情が大きくなり、NGOの活動がやりづらくなる」との話を紹介し見識を聞きました。

 大西健丞ジャパン・プラットフォーム共同代表理事は「石油収入で南スーダン政府の武器のグレードが上がっている。自衛隊の装備では死傷者多数という状況に。歯が立たない。現場は厳しい状況。」と。

 長有紀枝難民を助ける会理事長は、「駆け付け警護の議論で違和感を覚えるのは、他国の紛争や人権侵害に自衛隊がかかわることでリスクを背負うが、どこまで日本がコミットするか議論がされていない」

 大橋正明国際協力NGOセンター理事は「75年には『日本人だ、撃つな。』と言えば撃たれなかったが、7月バングラデシュでは殺された。99年湾岸戦争では『なぜアメリカよりお金を出すのか』と不満があった。いまや一体となって十字軍で動くぞと認識されている。世界は変わりつつあるので、軽々にそう見られないように。またそれを警護しないとという議論になってしまうより、そうではなく日本の役割を打ち出すことでの守り方を議論してほしい」と述べました。

 武田議員は、日本の外交の普遍的価値について質問。大橋氏は「日本国憲法の平和、正義、人権は普遍的価値で、国際的に了承されてきている。それを全面的に打ち出し、日本政府やNGOが重視できることが誇り。市民社会のグローバル化が必要で、人権、平等を掲げて前に進むもので日本にしかできない外交」と述べました。

質問の映像へのリンク

NGO危険にさらす 調査会動画

議事録

○武田良介君 今日は三人の参考人の先生、本当にありがとうございます。
 日本共産党の武田良介です。
 今日のNGOとの連携ということで、日本政府の外交とまた人道の問題で、現地でNGOの皆さんが活動されているその現場との関わりというのは非常に重要ではないかなというふうに思っています。
 昨日の衆議院の方の予算委員会の中央公聴会の際にも、NGO日本国際ボランティアセンターの今井さんという方がお話しされておりますが、今、南スーダンで情勢は悪化しているという認識も示され、そういうときに自衛隊が駆け付け警護をすれば戦闘の当事者になってしまうと、その後、日本への敵対感情が起きNGOの活動がやりにくくなるというお話をされているということを聞きましたが、イラクだとか南スーダンに限らなくてもあれですが、現地で活動されてきたそういった経験をお持ちの三人の参考人の皆さんに、そういった点での御見解をお聞きできればというふうに思っております。
○会長(鴻池祥肇君) じゃ、まず、大西参考人からお願いします。
○参考人(大西健丞君) 駆け付け警護に限ってお話をさせていただきますと、もちろん危機の際に何らかの救命手段があるというのは有り難い話ではあるんですが、この五年間に石油収入を南スーダン政府はたくさん得ておりますので、私が見る限りでも非常に武器のグレードが上がっております。今の残念ながら自衛隊の装備を拝見していると、真っ向から駆け付け警護を行うと被弾多数で死傷者多数という中国軍と同じ羽目になるというふうに思いますので、ここは政治的判断の分かれるところですけれども、そういう装備のまま送っていいのかとか送るべきじゃないのかというのは私が今日ちょっと言及するところではございませんが、いずれにしろ、現実としては今の装備では南スーダン軍に歯が立ちません。対戦車ヘリまで飛ばしていますので上から装甲を撃ち抜かれたら終わりになりますし、いずれにしろ、我々が紛争地帯で得た経験で、武器は素人でしたけれども、今では音聞いただけで何撃っているか分かりますので、そういう意味では非常に厳しい状況だと思います、現場は。
○参考人(長有紀枝君) 直接のお答えになるかどうか分からないのですが、今、自衛隊がPKOで出ているのは南スーダンだけなのですけれども、例えば難民を助ける会、今十七か国で活動をしておりますが、自衛隊と接点があるのは一か国だけです。というのは、自衛隊がそこしか出ていませんので。私たちにとっても、その自衛隊が出ているところというのは非常に、何というんですかね、特例でありまして、そのたった一つの特例から全てを議論するのが難しい状況にまずあるかと思います。
 もう一つ、これはあくまで個人的な見解ですけれども、駆け付け警護に関する議論で少し違和感を覚えますのが、他国で起きているああした紛争や人権侵害などに日本人、特に自衛隊が関わることで何がしかの、何というんですかね、リスクは背負っているわけですが、どこまで私たちは自国の国益とは関係ない場所で起きているそういった人権侵害、人道侵害に日本人がコミットするのかというような議論がきちんとなされていないような気がします。
 これは正解はないと思うんですね。例えば、ちょっともう時間がないのですけれども、ルワンダの紛争やそれからボスニアの紛争でも、ベルギー隊であったりとかオランダ隊が自国の兵士の安全確保を優先したことによって撤退するというような判断もしていて、そこで虐殺などが起きたとか止めることができなかったというような事例もあります。どこまで私たちあるいは日本がそういったことにコミットできるのかというようなそもそもの議論を、もっと国民の間でも広くすることが必要ではないかなということを思っております。
○参考人(大橋正明君) 前のお二人と違って、私それほど、赤十字で幾つか難民とか紛争はやっておりますけれども、いわゆるNGOとしてその辺にコミットしているわけでは、直接それをやっていた、それほど何かやっていたわけではないんですが、バングラデシュでこの前、七月一日に日本人の方が七名の方が亡くなられました。あのときのニュースを詳しく読み、私自身もバングラデシュにはしょっちゅう行きますので、覚えていらっしゃるかどうか分かりませんが、七七年のときに赤軍のハイジャック事件があってダッカに飛行機が飛びまして、あのときにちょうど日本の運輸省の政務次官の方が行かれているときにクーデターに巻き込まれまして、実は、日本人だ、撃つなと言われたときに、日本人なら撃たないと言って、有名な話がありまして、そのまま人質の身代わりになっていかれたわけですが、今度のときも一人の方がそういう発言をされたそうですが、もうそのときには日本人はもうそのような言い訳は聞かないというふうになって殺されてしまったというふうに報道されておりますし、恐らくそうであろうというふうに思っております。
 私自身も、九〇年のときの湾岸戦争、九一年のときですか、赤十字でバングラデシュに参っていたときに、日本政府はどうしてヨーロッパ、アメリカ軍にお金を出すのだというのが私のドライバーの強い不満でありまして、これをどういうふうにだから外交と組み合わせていくのか。
 日本は昔はそれほど力がなかったからもちろん目立たなかったということがありますけれども、多くの人にとって日本は今や一体となって、十字軍といいますか何といいますか、そういうものと動くぞというふうに認識をされてしまっている。これをどういうふうにするのかという答えがあるわけじゃないんですが、ただ、そういうふうに世界はもう変わりつつあるので、私どもNGOの中に幾つかの声として、そういうふうに軽々に見られるようなことが、また、それをまた警護しなくちゃいけないという議論になっていってしまうよりも、そうじゃない、さっきから言っている日本の役割みたいなものをもっと打ち出すことによっての守り方というものもあるんじゃないかと、これは全てについて当てはまるかどうかは分かりませんけれども、そこはよく是非考えていただきたいというふうに思っております。
○武田良介君 ありがとうございました。
 大橋参考人にもう一問お聞きしたいんですが、今日配っていただいた資料の中で、先ほどの横山先生とちょっと似通った話になるかもしれないですが、その五番目の、重厚な外交が後押しする市民社会というところの、五の一番最後、五の四のところ、ナショナリズムの台頭の中で、日本は普遍的価値に基づいた市民外交の展開促進、そして市民社会のグローバル化の促進で存在感をというふうにあるんですが、もうちょっとそのお話をということなんですけど、その日本は普遍的な価値に基づいたと、その普遍的な価値というのは何を指しているのか、私はざっと読んで、こういった文脈の中から憲法の精神なのかなと思ったりいろいろして読んだんですが、ちょっとそこら辺のお話をもう一言お聞かせいただければと思います。
○参考人(大橋正明君) ありがとうございます。
 一枚戻していただいて、三のSDGsが追求する理想というところとかにもちらっと書いておいたんですけれども、あるいはその前のところにも書きましたが、国連憲章とか日本の憲法の中にあった平和と正義というような、あるいは人権といったようなものがやっぱり普遍的な価値なんだろう、国際的にそれは了解されてきているんだろうと。ただ、これについて解釈がいろいろ変わることがあるということはもちろん了解できるけれども、それを全面的に打ち出すのが、多分、日本政府もそうだし、NGOやNPOというのはそれを更にもっと重視していくという立場に立っていくんだろうというふうに思っています。
 やっぱり、それができていることというのは日本のある意味で誇りであるだろうというふうに思っていて、そういうことを、現実には幾つかのアジアの国では自由にNGOができないところもあるし、できていてもすごい制限が加えられている、私たちが、下手をすれば外国から受け取ったお金で自国政府を批判してはいけませんという規則ができたりするということもあって、そうなると、何か、私は社会のグローバル化が必要だし市民社会のグローバル化というものが必要なんだ、その一部として必要なんだと。今までは経済のグローバル化だけが叫ばれてきたんですけれども、市民社会というのはそういう人権とか自由とか平等という概念を掲げて前へ行くものであって、そういう価値観を推すということが日本しかできない外交だというふうに申し上げたいというか、世界、少なくともアジアの中に、日本でいえばそういうことを、市民社会を後押ししてくれているんだ、それぞれの国でそういう声を上げていって、それぞれの国の政策が変わっていくというようなことが一番望まれているんじゃないかというふうに申し上げたかったことです。
○武田良介君 ありがとうございました。大変参考になりました。
 ありがとうございました。

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