国会質問

質問日:2019年 4月 17日  第198通常国会  国際経済・外交調査会

健全な環境あってのビジネス 石炭火力の輸出やめよ

国際経済・外交調査会で、SDGS、パリ協定などについての参考人質疑が行われました。

武田良介参院議員は「環境省などは『環境の保全と経済の活性化を一体させていく』と言うが、現実の経済と環境がぶつかり合う部分を覆い隠し、パリ協定の目標達成の取組が遅れることはないか」と質問しました。

国谷裕子・国際連合食糧農業機関(FAO)親善大使は「健全な地球環境があってこそビジネスが成り立つというふうにマインドを転換していかなければいけない」と指摘。

浅岡美恵・気候ネットワーク理事長は、温暖化による被害に関わって「これからの十年間が極めて重要な地位を占める」とし「今後ずっと起こってくる被害の大きさを考えると、その前に取組をし、転換をしていくことは極めて経済合理的なこと」と指摘しました。

石炭火力発電の輸出を日本が行っている問題について、安倍総理の指名でパリ協定長期成長戦略懇談会の座長となった北岡伸一・国際協力機構(JICA)理事長は陳述で「高度の政治・外交判断を政府、内閣がされるしかない」と述べました。

武田氏は、インドネシアやベトナムで石炭火力が計画される現地の方が国会に来て、農地や漁場が使えなくなると、日本政府の支援をやめてほしいと訴えていることを指摘。「この現実をどのように捉えられるか」と質問しました。

浅岡氏は、パリ協定前は『低炭素』だったが、協定の後は、世界全体、途上国も『脱炭素』という目標が明確になったと指摘。そうした中「『効率がいい石炭火力』という議論は理由がなくなった。代替の電源方法は十分に選択肢があると大きな変化がここ数年にあった」と述べました。

この後、武田氏は、日本はパリ協定の責任をはたせ、地元住民の合意のない石炭火力輸出を推し進めるなと意見表明しました。

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 今日は、三人の参考人の先生、本当にありがとうございます。
 気候変動の問題についてお伺いをしたいと思っています。
 私がこれまでも疑問に思っていたことなんですけれども、気候変動のパリ協定に代表されるような世界的な流れというのはもう大きな流れになって、誰も否定することのない大きな流れだと思うんですが、いつも、例えば環境省などからもお話を聞いていると、環境と経済の好循環、環境と成長の好循環ということもありますかね、先ほどの北岡参考人の長期戦略の提言のポイントの中にも出てきておりましたし、お話にもありましたけれども、その表現についてなんですが、SDGsにも関わるような話だと思うんですけど、持続可能な社会を構築していくために、環境問題をその新たな成長要因と捉えて、環境の保全と経済の活性化を一体させていくと。チャンスという言葉もありましたけれども、そういったことがある。
 これは、私、そのとおりだなと、否定は全くしませんけれども、私、ここから感じることは、経済と環境保全ということが相反する部分、ぶつかり合う部分もやはりある、それを何とか一体にということなんですが、こういう表現といいますかスローガンが使われることによって、その現実の経済と環境がぶつかり合う部分を覆い隠してしまうような、そういう効果が出ないだろうか、とりわけ国内なんですけど出ないだろうかというふうに思いますし、現実的には、その環境を守っていくなりパリ協定の目標を達成していくという取組が遅れることはないだろうかということを懸念するんですけれども、その点についてお話を、御見解をお伺いできればと思うんですが、三人の参考人の方、それぞれのお立場でお伺いできればと思います。

○会長(水落敏栄君) それでは、まず北岡参考人からお願いします。

○参考人(北岡伸一君) では、簡単に。
 さっき申し上げた七〇年代の環境問題と自動車というのは一つの例でございまして、必ずうまくという保証はありませんが、厳しい目標はあったと、それを何か乗り越えようと努力があったと。その結果、日本の自動車は非常に環境にフレンドリーな車になって、その結果、世界を席巻したということがあるわけで、そういうことがこの分野で起こらないかなというのが我々の目指しているところでありまして、ぶつかり合う可能性はないことはありませんが、是非今言ったような方向でいきたいということでございます。

○参考人(国谷裕子君) 確かに、ずっと今までは、経済か環境か、で、環境に取り組むことはどちらかというとコストであるという捉え方がずっとされてきたと思うんですけれども、今我々が直面している地球環境の問題を見ると、環境をコストというふうに捉えるということをしていくと、健全な地球環境があってこそビジネスが成り立つというふうにマインドを転換していかなければいけない時代というふうに、国際会議などに参りましても、そういった発言が多々聞こえてきます。
 ですので、コストということが捉えられないようにする上でも、どんなインセンティブを設けるのか、どんな政策誘導をしていくのか。今のままではコストになるといったものも、誘導の仕方等でまたそれがビジネスチャンスとして受け止められていく方向に変えていく可能性があって、先進的な、例えばアメリカなどでは州法を作ったりとかいろんなことなど、あるいはフランスなどでもそうですけれども、ルールを作って、そちらの方向に強く誘導していくという施策が取られているように思えます。

○参考人(浅岡美恵君) SDGsの元も、元々は、プラネタリーバウンダリーといいますか、もう地球的な限界が予測される、見えていると。気候変動は、それの一つの非常に顕著な場面として、全ての生活にも事業活動にも基盤が破壊されるものになると、そういう大きなスケールの中でどう取り組むかという議論をしているわけですが、ここで非常にこれまでと違うところの大きな重要な視点は、短期的な計画ではない、取組ではないということで、ここ三年で投資を回収するのかと、こういう視点ではこの問題は全体は解決しませんし、ビジネスの取組方としてもそうではない形に転換をすると。気候変動も、数十年を掛けて脱炭素にどうトランジットするのかと、ソフトランディングできるのかと、これにこの十年間、これからの十年間が極めて重要な地位を占める。ここの段階で少しサボりますと、それこそもう、何というか、安全な着地ができないということになるという、そういう問題だと思います。
 長期的に上手にトランジットしていくということの視点で、国際的、先進的な国やビジネスの人たちはやはりそういう目で投資としても見ているし、自分たちは十年後、二十年後、どういう国際競争の中で地位を占めているのかと見ながら、今何をするのか。そうしたときに、将来に、今後ずっと起こってくる被害の大きさを、ダメージの大きさを考えますと、その前に取組をして、それを今の内部コスト化していって転換をしていくということは極めて経済合理的なことだというふうになっていくと、そういう思考回路に変わっています。
 それでも、最初はやっぱり大変チャレンジングなことですが、再生可能エネルギーで見れば、FITというものが始まったドイツの二〇〇〇年代、九〇年代から二〇〇〇年代、特に二〇〇〇年代の初期の取組というのは非常に挑戦的でした、少し大きなコストを負担しても。では、なぜそうするかというと、長期的に安いコストに転換するためだと。それは、もう急速にコストが下がり、太陽光ですら大変コストが下がりまして、安いものになった、経済合理性を整えるものになったと。
 そういう観点で、今申しました経済と環境との好循環というものは、そういう大きな枠組みの中で、ある意味で、だから政治の非常に長期的な視野に基づくリーダーシップも求められるわけでありますし、ビジネスもそういう観点だと。私は、それができる最後の今十年ぐらいに来ていると。これが遅れ遅れするともうそんな余裕が本当になくなるといいますか、誠に、災害に直面した、何というか、なすすべもないそうした国々、地球になっていく、国際社会になってしまうと、こういう分かれ道にあると。今だからこそ言えるこの好循環だと思います。

○武田良介君 二分、どうしますかね。
 端的に、じゃ、ちょっと一つだけお伺いしたいんですが、先ほど北岡参考人のお話の中に、石炭火力発電所の海外の事案についてはということで、最後に難しい問題としてお話がありましたし、北岡参考人が最後に、政治判断でやっていただくしかない、政府の判断が必要だということでここには書かなかったんだというお話をされまして、そのとおりだなと私も、そのとおりというか、政治判断というところでやるしかないというのはそのとおりだというふうに思っておりまして、その点共感をしたわけですけれども。
 確かに国会でも、インドネシアだとかベトナムだとか、各地でそういった計画がされているところの現地の方が国会にいらして、農地が使えなくなってしまう、漁場が使えなくなってしまう等々のお話を私も聞かせていただいたことがありまして、北岡参考人は先ほどそういうお話だったので、国谷参考人、浅岡参考人はそういった現実をどのように捉えられるかということをお伺いしたかったんですが、時間が。そうですね、二巡目も含めて。でも、しっかり聞いてしまったのであれですね。

○会長(水落敏栄君) もう時間が来ましたので、まとめてください。
 じゃ、お二人代表して、浅岡参考人。

○参考人(浅岡美恵君) 済みません。じゃ、簡単に。
 先ほどのような逡巡の気持ちというのは、パリ協定の前、発効する前は我々にも若干はありました。けれども、それは低炭素という時代でした。
 これからは、パリ協定の後、世界全体、途上国も脱炭素という目標が明確になり、そのターゲットの年限も非常にクリアになっていきました。そういう中では、脱炭素に向かうということは、効率がいい石炭火力はという議論は極めて理由はなくなった。
 またさらに、代替の電源方法はないのかといいますと、それは十分に選択肢があるということも非常に強まってきました。そこは大きな変化がここ数年にあったと思います。

○武田良介君 ありがとうございました。

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(中略)
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○武田良介君 大きく二点に絞って意見表明をさせていただきたいと思います。
 まず、気候変動、とりわけ石炭火力発電所に関する問題です。
 気候変動問題は、国際的最重要課題の一つになっております。災害が頻発をし、海面上昇によって島嶼国始め存立の危機にさらされている国もあり、水や食料不足が発生し、紛争のきっかけにすらなっているからであります。
 気温上昇を二度未満に、今世紀の後半には脱炭素社会を実現するということを目標にしたパリ協定が採択をされました。全ての加盟国が責任を果たさなければなりません。
 日本はこれまで大量のCO2を排出してきた国であり、自国の排出削減に世界の中でも最も先進的に取り組むべきグループに位置をしています。日本のCO2排出削減のために最大かつ迅速な削減は、電力部門で石炭火力発電を減らしていくことであります。イギリスやカナダを始め、年次的期限を区切っての脱炭素政策を明確にしている国がある中、国際的共通の目標であるパリ協定の実現へ日本の態度が問われております。
 本調査会のアジア太平洋における平和の実現、地域協力というテーマから見て、インドやベトナム、インドネシアへの石炭火力発電のプラント輸出支援をめぐり現地住民の方が来日され、農地が奪われた、漁場が奪われた、政府による支援を止めてほしいと訴えられていることを見過ごすことはできません。
 先日来日されたインドネシア・インドラマユの方は、国会での要請の後、都内の大学で学生と懇談をされております。被害に対する補償、環境汚染の現状などについて意見交換をした後、学生から、日本人である私たちに腹が立たないのかと質問をされ、インドネシアの方は、私は皆さんに敬意を持っている、私たちはそこに住み働く権利を守りたいのだと話をされたそうであります。
 人的交流が重要な役割を果たしているというふうに思います。同時に、地元住民の方との合意のない事業は推し進めないことなど、国家アクターの行動に対して私たちはきちんと注視し続けていかなければならないということを肝に銘じる必要があると考えております。
 民間や経済界レベルでSDGsの取組が進み、石炭火力からのダイベストメントも高まりを見せております。持続可能で環境や人権に配慮した投資行動、経済行動が求められ、企業もそれに応えていく流れが生まれております。SDGsを言葉だけにせずに現実のものとする手だてを取るよう、政策転換、また具体的手だてが求められる時期を迎えているというふうに思います。
 第二に、各国との間で進む文化、人的交流と平和の実現についてであります。
 先日の調査会で、近藤誠一元文化庁長官は、御自身が日韓文化・人的交流推進に向けた有識者会合の座長として取りまとめられた提言について、政治的な対立が国民感情や市民交流に影響を与えてはならないということをきちんと認識をし、政府としては、市民は引き続き民間交流をやりなさい、お互いをもっと知りなさい、それが中長期的な日韓の友好関係、秩序の基礎になるんだということをはっきり言うべきで、これが提言の一番の肝だと、このように述べられました。日韓の友好関係を強化していく上で重要な指摘だと受け止めております。
 加えて、国が前面に出て、これが日本の文化だと誇示をすることは余り得策ではないということも述べられ、理屈ではなく感性で日本の文化の良さが伝わっていく環境を徹底的につくるというのが政府の役割であり、それに必要な資金を提供するのが企業の役割だと、そのようにはっきりと役割分担をすることが日本の文化外交の一番重要な点だと指摘をされておりました。
 アジアでの国際交流、信頼醸成を進めていく上で、これらの観点を踏まえて行動していく必要があるということを感じたところでございます。
 以上、大きく二点を申し上げ、意見表明といたします。

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関連資料

しんぶん赤旗記事「健全な環境あってこそ/パリ協定など参考人質疑/武田氏質問」