国会質問

質問日:2018年 6月 14日  第196通常国会  環境委員会

新潟水俣病全被害者の早期救済に国が責任果たせ

武田良介参院議員は、新潟水俣病の被害が広範に広がっている実態示し、全被害者の早期救済に国が責任果たすよう求め質問。全住民の悉皆調査を直ちに行うよう求めました。「水俣病は終わっていないという認識か」との武田議員が何度も問いただすと、中川環境大臣は「問題への取り組みは道半ば」と認めざるを得ませんでした。また、質問の冒頭、事実確認として、水俣病特捜法で救済された被害者数の、公健法指定地域とそれ以外での人数を、環境省に尋ねましたが「集計していない」と答弁。武田議員は被害者に真摯に向き合おうとしない姿勢を批判しました。

質問にあたって、お話を伺った新潟水俣病阿賀野患者会の皆さんが、傍聴に来てくださり、質問後、武田議員と懇談しました。

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新潟水俣病救済急げ

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 水俣病の問題について質問いたします。
 水俣病の公式認定から今年で、熊本では六十二年、新潟で五十三年たちました。いわゆる、この間、政治解決だとか水俣病の特措法による救済が行われてきましたが、それでもなお全被害者の救済を求める被害者の皆さんがたくさんおられます。不知火海沿岸に被害も広がっているわけですが、今日は新潟の水俣病に焦点を当てて質問をさせていただきたいというふうに思います。
 まず、新潟における水俣病の認定状況について確認をしたいと思います。今日、配付資料を一枚付けさせていただきました。新潟県が公表している行政資料から、こちらの事務所で作成したものです。
 現在、水俣病患者であることを認定し、救済する制度は、公健法しかありません。公健法は指定地域を定めて救済するという枠組みになっておりますけれども、新潟県ではどこが指定地域に当たるのか、いかがでしょうか。
○政府参考人(梅田珠実君) お答えいたします。
 水俣病に関する公害健康被害の補償等に関する法律の指定地域につきましては、有機水銀による相当範囲にわたる著しい水質の汚濁が生じていること、その影響により、水質の汚濁の原因物質との関係が……(発言する者あり)はい、分かりました。
 それでは、政令で指定されている地域でございますが、具体的には、新潟県につきましては、新潟市松浜町、根室新町、津島屋一丁目から八丁目、新川町、一日市、海老ケ瀬、大形本町、中興野、本所、江口、新崎、名目所及び濁川及び旧豊栄市の高森新田、森下及び高森の区域でございます。
○武田良介君 簡潔にお願いします。
 指定地域内で行政認定された水俣病患者の数、何人になっていますか。
○政府参考人(梅田珠実君) 新潟県市におきます水俣病認定患者は、平成三十年四月末現在、七百十四人となっております。
○武田良介君 指定地域内というふうに聞いたんですけど、その数字でいいんですか。
○政府参考人(梅田珠実君) 御指摘の指定地域内外でございますが、指定地域内外別の集計は行っておりません。
○武田良介君 私、資料に配付させていただきましたけど、新潟県当局が公表しているインターネットでも取れるようなものから作っております。これ見ると、赤い人型のところがこれ認定患者数というふうになっています。新潟市と豊栄市というふうに書いていますが、この赤で囲っているところは公健法の指定地域ということになりますので、この数でいいますと、大体、この資料の表でいいますと五百二だというふうに思います。
 ちなみにですが、これ、認定の患者数、それから総合対策医療事業、最後に水俣病の特措法、それぞれの集計の年月日がちょっと違いますので、その点だけは注意して読まなければなりませんけれども、そういったものになっております。
 もう一点確認しておきたいと思うんです。二〇〇九年に作られた水俣病特措法で救済された被害者の方、これは公健法による指定地域の中では何人か、その外では何人になるか、いかがですか。
○政府参考人(梅田珠実君) 新潟県におきます水俣病特措法の一時金等対象該当者数は千八百十六人、加えて療養費対象該当者数が百四十三人となっております。
 御質問の指定地域内外別による集計は行っておりません。
○武田良介君 資料を見ていただければ分かる話を、集計していないとか、分からないとか、そういうことを繰り返されるということ自身が、私は、非常に救済求めている被害者の皆さんをばかにした姿勢じゃないかなというふうに私は思います。
 この資料を見ていただいたら分かりますけれども、公健法の指定地域になっていたところでもたくさん特措法で救済される方がいました。指定地域になっていないところでも更に多くの方がたくさんいらっしゃいます。阿賀野川の中流域それから上流で多くの方が救済されている。ざっと計算したって、約千三百人以上の方は特措法で指定地域外で救済されているということが分かります。
 現在はもうこの公健法でしか救済することできないわけですから、この公健法で指定地域で不当に線引きされているということが、認定されない、救済されないということの国の今取っている姿勢の端的な表れだというふうに思いますし、こうした不当な線引きはやめるべきだというふうに思います。後で質問していきます、この点は。
 不当な線引きによって今でも救済されることがない潜在的な被害者の方がたくさんいらっしゃるというふうに思いますけれども、まず大臣に、その潜在的被害者の方がたくさんおられる、水俣病はまだ終わっていないと、大臣、そういう認識でよろしいでしょうか。
○国務大臣(中川雅治君) 行政といたしましては、長い時間を経過した現在もなお、公害健康被害補償法の認定申請や訴訟を行う方が多くいらっしゃるという事実を重く受け止めております。
 環境省といたしましては、地域の方々が安心して暮らせる社会を実現するために、関係県市と密に連携しながら公健法の丁寧な運用を積み重ねるとともに、地域の医療、福祉の充実や、地域の再生、融和、振興にしっかりと取り組んでまいります。
○武田良介君 終わっているか終わっていないかという話はどうですか。明確に御答弁いただきたい。
○国務大臣(中川雅治君) 水俣病は、環境が破壊され、大変多くの方が健康被害に苦しまれてきた、我が国の公害環境問題の原点となる問題であるというように認識いたしております。
○武田良介君 終わっていないという認識ではっきりしていただかないと、これ先に進まないと思いますけど、いかがですか。
○国務大臣(中川雅治君) そういう意味では、水俣病問題につきましては、今現在もなお認定申請や訴訟を行う方が多くいらっしゃるという状況でございますので、問題への取組は道半ばであるというふうに認識いたしております。
○武田良介君 道半ばという表現でしたけれども、この間、チッソの社長の話もありました。私も大臣に要請もさせていただきました。終わっていないんですよね、水俣病は。潜在的な被害者の方もまだまだたくさんいらっしゃると、その認識にまず立っていただかないと、これ救済していくという話になりませんから。まだ道半ばという表現だったけれども、そのことを私からも言いたいというふうに思います。
 新潟では、この特措法による救済、熊本や鹿児島よりも広く見て救済をしてきたということも聞いております。先ほど示したこの資料ですけれども、これは、そうやって広く取ってこれだけ救済される方がいた、逆に言えば、それだけ本来救済されるべき方がまだまだ全国にたくさんいらっしゃるということも示しているというふうに思います。
 ただ、これも手を挙げて、申請主義ですから、手を挙げて救済された方たち、手を挙げることもできない方たちもまだまだ潜在的な被害者がいらっしゃる、だからこそ今も裁判を闘われているということだと思うんです。
 私は、新潟で今闘われているノーモア・ミナマタ第二次訴訟の原告団の皆さんからもお話を聞いてきました。水俣病の主な症状、感覚障害だとか運動失調、視野狭窄などがあるわけですね。暑さ寒さを感じにくいということだとか、頭痛だとか疲労感だとか、セミが鳴くような耳鳴り、こむら返り、そういったものが主な症状としてよく話されます。私もそういう話を皆さんから聞いてきました。
 例えば、阿賀野市の嶋瀬地区、ここは阿賀野川から少し離れた農業中心の集落であるわけですが、漁協の組合員さんは少ないそうです。ただ、漁協の組合員じゃなくてもサケやマス以外は川から捕ってきて食べることもできるということがあったので、かなり多くの方がこれ食べていた、魚を食べていた。子供が学校帰りに魚を捕まえて帰ってくることも珍しくない。自宅で食べるだけではなくて、たくさん捕れれば近所の方にも分けていく。くれるのが当たり前、もらうのは当たり前と、こういう状況だったということなんです。
 この地域にお住まいのAさん、この方は、一九三五年生まれで、小学校の頃から魚を捕って食べていたということだそうです。昭和の六十年頃、だから、公式に認定される前までほとんど毎日、朝に晩にと、二尾三尾と食べていたと。Aさんは、一九六五年頃から手足のしびれ、こむら返り、セミが鳴くような耳鳴りといった症状が出てきたということです。さらに、口の周りのしびれ、風呂の湯加減が分からない、手足の脱力感、服のボタンがうまくできない、立ちくらみ、ふらつきなどなど、症状が次々広がってきたと。
 これ、大臣にお伺いしたいと思いますけれども、公健法の指定地域外にもこういう患者さんがおられる。簡潔な言葉で、どのように受け止めておられるか、いかがですか。
○国務大臣(中川雅治君) 公健法の認定審査は、個々の申請者の暴露、症状、因果関係などにつきまして総合的に検討を行い、水俣病の罹患について判断することといたしておりまして、今後も、関係の県、市と連携しながら丁寧な認定審査を行ってまいりたいと考えております。
○武田良介君 今日は新潟から傍聴にも来ていただいている方もいらっしゃいますので、是非真摯な答弁をいただきたい。
 もっと大臣、是非想像力も働かせていただきたいと思うんです。政府の対応が今どうなっているかという話を今聞いたわけではありません。公健法で救済されなくて、やむにやまれず今原告になって闘っている方たちの実態、声なんです。これをどういうふうに受け止めたかということを聞いたのに、政府の今こういう対応をしているという話だけですから、これでは、とてもではないけれども、潜在的被害者の皆さん、今裁判を闘っておられる皆さん、とても納得いかないというふうに思います。
 水俣病は終わっていないし、責任は当然国にあるわけですよね。歴代大臣もずっと答弁されてこられました。であれば、こういう方たちの救済に踏み出すべきだということをこれは強調しておきたいというふうに思うんです。
 阿賀野の患者会の皆さんがまとめております阿賀野川の全流域に関する調査報告書というものがあります。それを見ましたら、先ほど紹介しました嶋瀬地区、Aさんの暮らしているところですね、次のような事実が報告されています。
 非常に、自分の魚は近所にも配るという連帯感の強い地域ですので、同居家族の中に複数人、罹患した患者さんだとか特措法によって救済された方だとか複数いるはずですけれども、そういうのが顕在化したのは特措法で救済されて以降だというんですね。それまでは、一家族一人しか認定されない、救済されないということがあった。
 その背景について、この報告書では、昭和五十一年、五十二年に集団検診運動が進められて患者の顕在化があったにもかかわらず、認定になるとすぐにその情報が伝わる、家族から一人以上の認定患者を出すと水俣病のまきだと言われる、まきとは同族だとか一族という意味だそうですけれども、水俣病のまきだと言われるので認定申請を避けるという状況があったということも報告されているんですね。
 ここにあったのは、やっぱり差別だとか偏見ということだと思うんです。こういう見方が地域に残っている中で、公健法にしても特措法にしても申請主義ですから、やっぱり手を挙げなければ救済されない、しかし手を挙げることはできない、こういう方がたくさんいらっしゃるということだと思うんです。それを、いわゆる九五年の政治的な解決の際には、半年で窓口閉めるということもありました。特措法のときも、成立から三年で締め切るということもありました。この責任は非常に重いと思うんです、こういう実態の下で。
 大臣にまたお伺いしますけど、差別、偏見を恐れて、今も症状に苦しみながら名のり出ることができない潜在的な被害者の方がたくさんいらっしゃるわけです。これ、指定地域外です。不当な線引きしないで、こういう方たちの救済に直ちに踏み出すべきだというふうに思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(中川雅治君) この水俣病対策につきましては、平成七年の政治解決や水俣病特措法等、多くの方が様々な形で多大な努力をされてまいりました。
 水俣病特措法の救済措置につきましては、これにより多くの方が救済され、水俣病対策において大きな前進であったと考えております。しかしながら、現在も認定申請や訴訟を行う方が多くいらっしゃるという事実は重く受け止めておりますし、まだ潜在的な患者さんがおられるという事実も私は重く受け止めなければならないと考えております。
 環境省といたしましては、やはり公健法の丁寧な運用を積み重ねていくということが重要であると考えておりまして、総合判断というものをしっかりとやっていきたいというふうに考えております。
 そして、水俣病に、御指摘の、関する差別や偏見はあってはならないと認識しておりまして、正しい知識、理解を促進するために水俣病に関する普及啓発は重要であると認識しておりまして、その努力をしてまいりたいと思います。
○武田良介君 もう事実上重く受け止めるとか普及啓発とか、それしかおっしゃりませんでした。
 差別、偏見乗り越えるということも含めて頑張ってこられたのは、これまで患者会の皆さんを始め原告の皆さんだとかそれを支える弁護団の皆さんだとか、こういった方たちの運動があって、掘り起こしの活動もあって、それを何とか乗り越えようと頑張ってきた、そういう皆さんの頑張りがあって何とか乗り越えようとしているというのが今の現状だと思います。
 今の答弁を聞いても、私は、そういう被害者の皆さんの思いだとか運動に対して心を寄せているという環境省の姿勢は一切感じられませんでした。そんな姿勢では全くならないということを言わせていただきたいというふうに思います。
 若い方にも被害者の方はいらっしゃいます。提訴時で三十代の方が一人、四十代の方が十二名いらしたそうです。提訴時ですので、今はちょっとあれですけれども。
 例えば、一九六九年生まれ、現在四十九歳の方、この方も、手足のしびれなどの感覚障害が出てきたので、勤めていた製造業を、千分の一ミリの作業ができなくて退職せざるを得ないということもあったそうです。この方のお母さん、手に奇形が出るんだそうです。水俣病の患者さん、指が横に曲がるだとかそういった症状が出るということも聞きますけれども、食事中に箸を使っていると手が痛くなって、二回ぐらいはもう一回の食事中に休まなければいけないと。食事中に手が少し形が変わるから、Bさんに、こういうふうに手が変わっちゃうんだと見せることもあるんだそうです。Bさんは、お母さんに対しての思いもあるし、自分も同じように将来なるかもしれないという恐怖ももちろんあるでしょうし、何とも言えない思いになるということを言っておられました。このお母さんは特措法で救済された方だそうです。この方のおばあちゃんは認定患者さんだそうです。Bさんは今原告として闘っておられる。
 こういう方は、私は本来救済されるべきだというふうに思うんです。不当な線引きやめて、救済されるべきだというふうに思いますけれども、大臣、いかがですか。
○国務大臣(中川雅治君) 係争中の個別の訴訟に関することにつきましてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。
 公健法の認定審査は、個々の申請者の暴露、症状、因果関係について総合的に検討を行い、水俣病の罹患について判断することといたしておりまして、今後とも、そのような丁寧な認定審査を行ってまいりたいと考えております。
○武田良介君 総合的判断というのも、もう時間ありませんので長々言いませんけれども、総合的と言いながら、暴露しているということを証明しなさいと言って、魚を買ってきた領収書が必要だとか、いろんなことを言うわけじゃないですか。それによって別に救済されている方は広がっているわけじゃないです。
 そんなことをずっと言っていたって救済されないということを私言いたいというふうに思いますし、最後にお聞きしたいと思いますけれども、潜在的な被害者の方たくさんいるんです。繰り返し求めてきていますけれども、住民悉皆調査やるべきだと。これまでは、もうずっとその検討をしている、手法を検討しているということを言うけれども、そんな答弁の繰り返しではなくて、今直ちにやらなかったら全ての被害者の皆さん救済するというふうにならないんだから、責任は国にあるということなんだから、直ちにもう調査するということが必要だと思いますけど、いかがですか。
○国務大臣(中川雅治君) 政府といたしましては、水俣病特措法の規定等に沿って、メチル水銀が人の健康に与える影響を把握するための調査等の手法の開発を図ることとしておりまして、現在、着実に取組を進めているところでございます。
 住民の方々に適切な医療を受けていただく機会を確保するという観点も含め、メチル水銀が人の健康に与える影響を的確に診断する手法については慎重かつ確実に開発していかなければならないと考えておりまして、引き続き着実に進めてまいりたいと考えております。
○武田良介君 手法の検討ということをもう何回も答弁されて、いつまでもやっているということですので、もうそれではいけないということだと思いますし、国が全ての被害者の方の救済ということで責任を果たすべきであるということを求めて、質問を終わります。

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関連資料

赤旗記事→「新潟水俣病救済急げ/武田氏 全被害者に国が責任を」

参考資料

新潟水俣病被害者分布図