経済産業委員会と環境委員会の連合審査で質疑が行われました。
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律案(化審法)では、新たな化学物質の毒性について、少量であれば審査を省略し、用途に応じて規制を更に緩和するものとなっています。
カネボウ白斑被害の事例を紹介し、産業界からの要望を反映したのではないかと批判しました。
議事録
○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
化審法の改正について質問をさせていただきたいと思います。
この化審法は、人の健康を損なうおそれのある化学物質、動植物の生息や生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質、それらによる環境汚染を防止するという目的の法律だというふうに思います。
現在どれだけの化学物質があるのかと、環境省の資料も見ましたが、世界で一億二千五百万件の化学物質が登録されていて、その中で工業的に製造されて世の中に流通している化学物質、これは十万種類あるというふうにも言われております。身近にもたくさんあって、今日、資料の一に付けておりますが、食品類だとか自動車、家電製品、いろいろありますが、洗剤だとか化粧品などなど多種に及んで私たちの身の回りにあります。
化学物質の影響というのは、非常に国民的な関心にもなっているというふうに思います。科学的な根拠が必ずしも全て明らかになっていないにしても、花粉症だとかアレルギーを持つ方が大変増えている、こういう状況もあるというふうに思います。
今回の化審法の改正のポイントの一つですが、先ほど来お話がありますように、事前審査の特例制度の見直し、これは大きなポイントだというふうに思います。これは、新規化学物質の製造又は輸入する量が一トン以下であれば、本来、分解性、蓄積性、毒性、三つを調べるところ、事前審査の全ての項目、これを免除する、十トン以下であれば毒性のデータの提出を免除するという、こういう特例制度になっています。
今回の法改定は、一トン、十トンという国内総量上限について、現行の総量規制から環境排出係数を掛けた環境排出量換算基準の合計に見直すものになっています。つまり、毒性のあるそういう化学物質も使用される用途によって環境に出る量が違うので、たくさん作ることができるようになる、製造・輸入量を増やそうというものだというふうに思います。
まず、山本環境大臣にお伺いをしたいと思っております。現行の化審法による事前審査特例制度についてお聞きしたいと思うんです。
全ての審査が免除される少量新規、それから十トン以下で毒性調査が免除される低生産量新規についても新たな化学物質の数は今増えているというふうに思います。今回の法改定の資料の中でも、二〇一五年度の実績で、五年前と比較して、少量新規三七%増の三万五千三百六十件、低生産量新規も六一%の増の一千六百四十八件と、環境負荷は増大していると思いますが、山本環境大臣に御認識をお伺いしたいと思うんですが、現行の化審法による事前審査特例制度、これで少量新規、低生産量新規、共に化学物質は増えているという事実、これは大臣も増えているという認識でよろしいでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) 御指摘のとおり、化審法の審査特例制度に基づいて新規化学物質を製造、輸入しようとする件数は増加傾向にあると認識をいたしております。
○武田良介君 増加しているということだと思うんです。何の検査もしないでどんどんと新たな化学物質が出ていく、その量が増えているということ、これは、やっぱり国の基本姿勢が少量だったら影響なしという姿勢であるがために、新規化学物質が何ら事前検査されることなく排出されているという現実だと思うんです。先ほど来も、法改定でもその趣旨は変えないということをおっしゃっておりましたが、現行法でもこういう問題があるということをしっかりと認識すべきだというふうに思っております。
経済産業省の化学物質安全室とそれから環境省の化学物質審査室というところが、新規化学物質の審査特例制度の合理化についてという資料を昨年の十一月二十八日に出しております。これ読みましたら、少量新規、低生産量新規、共に申出・確認件数は毎年増加をしていると。資料の四番にも付けました。
資料の二番と三番では、少量、低生産量、それぞれの主な使用用途、これは平成二十七年度の数字で出ておりますが、この用途の中で多いのは、先ほど答弁もありましたが、電気・電子材料、中間物などなど多種にわたっております。この平成二十七年度の実績がこうなので、これから特例制度が見直されたらこれらの用途に化学物質を使うことが予想されると、こういう資料だというふうに思います。
この用途の中に着色剤というものがありまして、その中にも幾つかありますが、化粧品の原材料になる顔料というものも含まれております。
そこで、化粧品に含まれる化学物質がどのような影響を与えるのか。カネボウ化粧品の美白化粧品による白斑が出てしまったという被害が二〇一三年にありました。カネボウ化粧品が開発したロドデノールという化学物質が含まれている化粧品を使用した方、顔や首、手などに白斑、白い斑紋ですね、それが出てしまったと。カネボウは、開発の過程で成人女性約三百三十人を対象に試験を実施し、安全性を確認したというふうにしておりましたが、実際にはそういう白斑が出てしまったということです。
山本環境大臣にお伺いしたいと思うんですが、このカネボウの事件も踏まえて、化学物質の人への影響というのは当然個人差があるというふうに考えておりますが、大臣も同じ認識でよろしいでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) 一般的に、化学物質による人への健康影響については、御指摘のとおり個人差はあろうかと思います。
○武田良介君 常識的な質問をしたかなというふうに思っておりますが、当然個人差があるというふうにやっぱり思うわけです。そうであれば、個人差についても加味した、そういう検査を行うことが必要ではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(森和彦君) お答えをいたします。
まず、ロドデノール配合薬用化粧品によります白斑問題、これを踏まえまして、平成二十六年に、医薬品医療機器法上の再発防止策として、新規の成分等を配合した医薬部外品を対象に、承認申請のときに長期の人安全性に関する試験成績の提出を義務付けを行うとともに、医薬部外品、化粧品をより注意して使用してもらうように、添付文書等の使用上の注意の改訂や、市販後に迅速な対応が可能となるよう、個別に重篤な副作用情報というのを医薬品医療機器総合機構に報告することを製造販売業者に義務付けるなどの対応を行ってきております。
御質問の、その化粧品の対応を化学物質の方にも応用できないかという観点かというふうに思いますが、化粧品は肌に付けるなど人体に直接使用されることを前提として規制がなされております一方で、化審法は様々な用途と経路からの化学物質の暴露を評価するという体系になっておりまして、化粧品における事案への対応をそのまま反映させるということは難しいのではないかというふうに考えております。
ただ、いずれにしましても、化学物質の暴露から国民の健康を守るということは大変重要なことだというふうに考えておりまして、科学的な知見、それから健康被害の情報収集ということに努めて、しっかり対応してまいりたいというふうに考えてございます。
○武田良介君 カネボウ化粧品の事件で見ますと、白斑が現れたその後にカネボウ化粧品自身が調査をして、使用した方の二%の方からその結果が出たということを言われております。事前に三百三十人の方に安全性の確認をしたと言って、その時点でもし二%出ていれば、六人、七人の方がもうその症状出ていたわけですが、そこの段階では安全だというふうに言ったわけです。やっぱり個人差があるということもあるかと思いますが、カネボウの検査自身がどうだったのかということを疑問に感じざるを得ませんし、更に厳正な検査が必要だということはもう言うまでもないというふうに思います。
化学物質と生物の関わりについて研究されている私の地元の研究者の方にも少しお話をお聞きしました。この先生は、化学物質の暴露についてはこういうふうにおっしゃっておりまして、地域や職業、嗜好などで、趣味嗜好の嗜好ですが、より高濃度の化学物質に暴露される方もいますし、一方で化学物質に敏感な方もいるので、そのような個人差の実態を把握し、規制に反映していただきたいというふうに話されております。それから、事前の検査についても、試験項目以外の影響については未知な部分が多く、万全とは言えません、試験の種類を増やすなどして安全性を高める工夫が必要かと思いますということもおっしゃっておりました。
現在、国は、新規の化学物質について分解、蓄積、毒性それぞれについて検査するというふうに言っておりますが、やっぱり個人差もあるし、またあわせて、一つの化学物質による人の健康被害、これ調査をしても、日常生活の中では同時に複数の化学物質から暴露されるということもあろうかというふうに思います。そうした総合的、複合的な事前の検査ということも必要ではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(森和彦君) お答えいたします。
委員御指摘のとおり、単体での評価だけではなくて、複数の化学物質の相互作用を勘案しまして人への毒性の評価をするということにつきましては、例えばダイオキシン類につきましてはその暴露を合算して評価が行われていると承知しております。しかしながら、異なる複数の化学物質の相互作用を科学的に評価をするため、そのために適切な条件の設定をするというところが難しい問題がございまして、広く一般にこれを行うということは難しい、困難であるというふうに考えております。
このため、化審法におきましては、国際的な動向も踏まえつつ単体の化学物質の評価を行っておりますが、この評価に際しましては、毒性を厳しく評価するために安全係数を設けて行っているところでございます。
いずれにしましても、化学物質の暴露から国民の健康を守るということは非常に重要でございます。科学的な知見と健康被害の情報収集に努めるということをしっかり対応してまいりたいというふうに考えております。
○武田良介君 例えば、服を洗濯して、服に洗剤、化学物質が残っていると、併せて化粧品を使ったとか清涼スプレーを使ったとか、そういうことというのは当然想定されると思うんですね。そのときに、複数の化学物質が同時に肌に触れてどうなるのか。例えばそういうケース、幾らでも考え得るというふうに思うわけであります。
カネボウの例を紹介しましたが、この白斑が出てしまったというのは、薬事法で厚労省が認可を与える医薬部外品の使用によってこれが出てしまったと。これ、私、重大だというふうに思います。薬事法の医薬部外品の認可を受ければ、例えば美白だとか保湿だとかそういった、より効果があるというそういう宣伝文句をうたって商品を販売することができるようになると。ですから、言わば国がお墨付きを与えたような形で被害を広げてしまったというふうになるというふうに思います。
その問題を指摘した上で、薬事法の認可外にあるいわゆる一般の化粧品だとか、それから芳香剤だとか洗剤だとか、こういった家庭用品、こういうものも人への健康被害を検査すべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(森和彦君) お答えいたします。
御指摘のような芳香剤や消臭剤、洗剤といった家庭用品につきましては、医薬品等とは異なり、直接人体に摂取されると、そういうものではございません。そういうこともございまして、事前の検査というのは現状行っていないわけでございます。
しかしながら、家庭用品規制法という法律では有害物質の含有量等に対して厳しい基準を設定した上で、自治体の買上げ調査等を通じて、基準に違反がないか、そういったことの対応を行って製品の安全性の確認を確保をしているということでございます。
なお、化粧品につきましては、医薬品医療機器法に基づく化粧品の基準で、含有する成分を人体に対する安全性が確認されたものに限定をして、行政による監視や市販後の安全対策を行うということによって製品の安全性を確保するようにしてきているものでございます。
○武田良介君 直接触れないから大丈夫という、やっぱりそういう発想ではカネボウの事件から十分学んだということにならないんじゃないかというふうに思うんです。
今答弁もありましたが、一般の化粧品、家庭用品、そこに含まれている成分は大丈夫だということですが、それが使われて実際に人への健康被害が出ないのかどうか、やっぱりその検査をきちっとすべきだというふうに思いますし、こういう法律がある、こういう法律があるというお話もきっとあろうかと思うんですが、人への健康被害を本当に防止するということでいえば、もう何法だどうだということではなくて、しっかりとそのための手だてを取ることが今求められているということだというふうに思います。
カネボウの話を例にお話ししましたけれども、この問題、決して今も終わっている問題ではなくて、今も裁判が闘われている状況にあろうかというふうに思います。この背景にあったのは、いわゆる美白ブームなんかに乗って美白成分の開発競争が起こったということがやはりあろうかと思うんです。化粧品会社が美白効果の高い化学物質を製造、輸入して、美白効果だけを見て、その副作用だとか悪影響を十分見なかったと、そういう結果だということを指摘しておきたいと思うんです。
改めて山本環境大臣にお伺いしたいと思うんですが、今回の法改正の資料を見ても、先ほど来の話のある特例制度の見直しですね、これは産業界からの要望で盛り込まれたものだろうというふうに思っておりますが、大臣も同じ認識でよろしいでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) 今回の改正内容のうち、新規化学物質の審査特例制度の合理化は、平成二十五年五月の規制改革会議創業等ワーキング・グループにおける日本化学工業会の要望、平成二十五年六月に閣議決定された規制改革実施計画及び平成二十七年度経団連の規制改革要望を受けて、化学物質による環境汚染防止という目的を維持しながら、より科学的合理性のある規制手法に変更する観点から見直したものであります。
一方、毒性が強い新規化学物質の管理の強化については、新規化学物質の審査において近年、強い毒性を有する化学物質が確認されていることを踏まえまして措置を講ずるものでございますが、これは業界の要望により行うものではありません。これらは、科学的知見に基づいて、より実態に沿った精緻な化学物質管理を行うための改正であると考えております。
○武田良介君 実際に財界が求めているわけですね。二〇一五年度経団連の規制改革要望というものを見ますと、この化審法の総量規制等の見直しという項目が確かに書かれております。先ほど資料でもちょっと紹介しました、経産省と環境省の資料ですね、この中にはそれがしっかりと反映されて、特例制度の合理化案ということで、特例制度の全国数量上限について環境排出量に変更すると、財界の求めそのままに応じた形になっております。
私は、やっぱりカネボウのこの美白化粧品の問題から学ぶべきだというふうに思うんです。当然、事業者の方、また経産省からすればビジネスチャンスを失ってはならないということになろうかと思いますが、しかし、環境省には環境省の役割があるんだろうというふうに思うんです。
そもそも、化審法、これも、PCBによる環境汚染が社会問題化をして、そしてPCB類似の化学物質による健康被害の発生を未然に防止するために作られたものだというふうに思います。化審法のそもそもの精神、そもそもの目的からしたら、規制緩和をしていくということは許されないんじゃないかというふうに思いますが、山本大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) 審査特例制度の合理化は、事業者が抱える予見可能性の低下という課題を解決するために、全国数量上限を維持したまま製造・輸入数量を環境排出量に変更するものでありまして、人の健康や生態系への安全は引き続き維持されるものであります。また、毒性が特に強い新規化学物質の管理を見直すことで、そうした化学物質が不用意に取り扱われないよう措置を講じることにより、予防的な取組が図られることとなっております。
こうしたことから、今回の改正は科学的知見に基づいて規制合理化及び追加の規制措置を設けるものです。これらの措置により、化学物質による環境汚染を未然に防止するため、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。
なお、その上で、委員御指摘のように、環境省はこの化審法の成立の原点を忘れることなく頑張っていきたいと思っております。
○武田良介君 原点を忘れることなくということであれば規制緩和はやっぱり許されないというふうに思いますし、冒頭確認しましたけど、現行の化審法の特例制度でも、既に何の検査もしないで新しい化学物質がどんどんどんどん出されて、今それが増えているということでありますから、規制緩和は絶対に許されないということを述べて、質問を終わりたいと思います。