「名古屋・クアラルンプール補足議定書」も採択された遺伝子組み換え(GM)生物等を用いる際の規制措置を徹底するよう求めました。
輸入したGMナタネの種子が輸送中に落ちて自生し、地元の菜花生産に影響を与えている三重県の事例を紹介。同補足議定書で追加された内容を国内法で担保するために法改正を行うことの重要性を指摘しました。
議事録
○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物多様性の確保に関する法律、いわゆるカルタヘナ法の改正案について質問させていただきたいというふうに思います。
今回改正となるカルタヘナ法は、二〇〇〇年一月に採択されたカルタヘナ議定書を受けて作られた国内法だというふうに承知をしております。カルタヘナ議定書は、遺伝子組換え生物、よく一般にGM生物とか言われるようでありますが、これによる生物多様性への影響を防止するための措置を規定したものだと。ただ、先ほども議論ありましたが、損害に対する責任及び救済、こういう分野については、各国の交渉が収束しないで、その後の議定書の締約国会議の中で議論が重ねられて、二〇一〇年、名古屋・クアラルンプール補足議定書が採択された、その中で損害についての責任、救済の分野について定めていくことになったと。今回の法改正が、この補足議定書で追加された内容を国内法で担保する、そういう改定だというふうに理解をしております。
そういうことからして、私は、今回のこの法改正もカルタヘナ議定書、それから補足議定書の目的や精神、これを正確に踏まえた国内法にすることが求められている、そのことが非常に重要だというふうに考えております。
まず、補足議定書の前文を読みますと、この議定書の締約国は、リオ宣言の原則十三を考慮し、リオ宣言の原則十五を再確認し、損害がある場合又は損害の可能性が高い場合における適当な対応措置について定めることの必要性を認識するということを言っております。ここに出てくるリオ宣言の原則十三、リオ宣言の原則十五とはどういうものか、読み上げていただきたいというふうに思っております。
○政府参考人(亀澤玲治君) 一九九二年の環境と開発に関する国連会議で採択された環境と開発に関するリオ宣言の第十三原則につきましては、各国は、汚染及びその他の環境悪化の被害者への責任及び賠償に関する国内法を策定しなくてはならない。さらに、各国は、迅速かつ、より確固とした方法で、自国の管轄あるいは支配下における活動により、管轄外の地域に及ぼされた環境悪化の影響に対する責任及び賠償に関する国際法を更に発展させるべく協力しなければならないと定めております。
また、第十五原則の方は、環境を保護するため、予防的方策は、各国により、その能力に応じて広く適用されなければならない。深刻な、あるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、完全な科学的確実性の欠如が環境悪化を防止するための費用対効果の大きな対策を延期する理由として使われてはならないと定めております。
○武田良介君 資料の一にも付けてあります。この十三原則、ちょっと長いわけですが、責任及び賠償に関する国内法を策定しなければならないというふうに明確に述べておりますし、十五原則はいわゆる予防原則を言っている。この精神にのっとって国内法を整備していくことが重要だということを考えております。
続いて、今回の法改正では損害の回復を追加するわけですが、その対象について、第三条の四で、先ほどもありました、「生物の多様性の確保上特に重要なものとして環境省令で定める種又は地域に係るものに限る。」というふうに限定をしていますが、具体的にはこれはどこになるというふうに今検討されているのか、確認をしたいと思います。
○政府参考人(亀澤玲治君) 我が国におきましては、生物多様性の保全の観点等から保護すべき特に重要な種又は地域を種の保存法や自然公園法等の各種法令で国が指定して、行為規制や保護増殖等を行っております。
このことを踏まえまして、生物多様性の確保上特に重要な種又は地域としては、種として種の保存法の国内希少野生動植物種を、また地域としては自然公園法の国立公園の特別保護地区や自然環境保全法の原生自然環境保全地域等を規定することを想定をしております。
○武田良介君 ありがとうございます。
名前はたくさん出てくるんですが、先ほどの議論にもあったように、大分、地域でいえば限られた地域になっているという状況だと思うんです。
先ほどもありました種の保存法で新設が予定されている第二種希少種、これは里地里山等での昆虫や淡水魚などの希少種を念頭に置いて定めるものだというふうに聞いておりますが、この第二種希少種、今回の対象に含まれるということでよろしいでしょうか。改めて確認をしたいと思います。
○政府参考人(亀澤玲治君) 御指摘の特定第二種国内希少野生動植物種も、絶滅のおそれが認められる国内希少野生動植物種であることに変わりはないことから、カルタヘナ法改正案に規定する生物の多様性の確保上特に重要な種に含めることを想定しております。
○武田良介君 里地里山に生息するような種ということなので、先ほどの限定と、今度は里地里山ということになってくると、また意味合いが違ってくるのではないかなというふうに思うんです。その里地里山にいる希少種を守るために、里地里山に例えばGMの植物が自生をした、それが害虫抵抗性を持つような、虫を殺すような、そういう性質を持つ、そういうGM植物が自生するということになったら、これ希少種に対して影響も出るわけで、これは防がなければいけないような事態になるんだろうというふうに考えております。
実際に、この遺伝子組換え生物が国内に広がっていくのではないかという市民の皆さんの心配というのは非常に強いものもあるのではないかと。それは、市民の皆さんの周りに遺伝子組換え生物が既に自生をしているからだというふうに思うんです。
国立環境研究所が行った道路沿いの遺伝子組換え菜種の分布調査、私も結果をいただきましたが、三重県内を走る国道二十三号線沿いの調査で、西洋菜種のうちGMの西洋菜種の割合、これ何%あったか御紹介をお願いします。
○政府参考人(亀澤玲治君) 平成二十八年七月に国立環境研究所が公表した道路沿いの遺伝子組換え菜種の分布調査では、輸入した遺伝子組換え西洋菜種の種子を輸送する主要ルートである三重県内の国道二十三号線沿いに生育している西洋菜種のうち、七五%から七八%が遺伝子組換え西洋菜種であることが報告をされております。
○武田良介君 私の資料の二番にも付けておりまして、資料の二番が五ページになってしまっていますが、二ページ目の下の方に、その七五から七八%というのも出ております。
菜種油を生産するためにGM菜種を輸入をして、それを、今回の場合四日市港ですが、その四日市港から搾るための工場に運ぶときにその種なんかを落として、どんどん自生をしているということです。七五から七八%ですから、非常に多い割合で既にGM菜種が自生をしているという、こういうことが今、三重県内に広がっているということだと思うんですね。
環境省にお伺いしたいと思いますが、こうしたGM菜種が在来種を含む菜種とも交雑をしているということがあると思うんですが、これ確認だけですが、間違いないでしょうか。
○政府参考人(亀澤玲治君) 環境省では、平成十五年度から主要な菜種輸入港周辺の主要輸送道路の橋梁や付近の河川敷等において、輸送中にこぼれ落ちた遺伝子組換え西洋菜種、いわゆるGM菜種等の生育状況調査を継続的に行っております。
これまでの調査では、こぼれ落ちた種子に由来するGM菜種と外来種である西洋菜種、若しくは同じく外来種である在来菜種との交雑が確認されておりますが、外来種との交雑個体の生育範囲の拡大は確認をされておりません。
なお、在来種との交雑は環境省の調査では確認されていないところです。
○武田良介君 資料の三の二ページ目の最後のところ、ちょうど下線も引いておりますが、この資料の三の調査では、西洋菜種の、下線の二段目ですけれども、近縁種への遺伝子流動等が確認されてきたということで、これも出ておりますが、先ほどの答弁の中で拡大は確認されていないという話がありましたが、私、三重県のお話聞きましたら、市民の皆さんが、GM菜種が道端に自生をしているもので、それを引き抜き隊といって抜く作業を定期的に毎年毎年行っていると。それでもどんどんどんどんGM菜種が生えてくるもので、毎年毎年やっているんだというお話もされておりました。
これ、拡大はしていないということを簡単に言ってしまうと、環境省の方も十分これ規制掛けられていないんじゃないかという市民の声が更に上がってしまうのではないかということは指摘しておきたいというふうに思います。
あわせて、これ、三重県にしたら非常に大問題だというふうに私思っておりまして、三重県は菜花の生産が大変盛んなところだと。三重県のブランド野菜、三重なばなをずっと売り出してきた。しかし、先ほどのGM菜種との交雑ということが三重で問題になりまして、三重なばなとして売り出したいが実はGM菜種だったということではこれはまずいので、菜花の種を県外から持ってくることになったということをお聞きしております。
三重の菜花の歴史は古くて、元々、菜種の油を搾って、そういう主要な産地としてやってきたということで、江戸の明かりは伊勢でもつというふうにも言われたことだというふうにも聞いております。その菜花がGM菜種に取って代わられるかもしれないという、そういう大変な問題なんだろうというふうに思うんです。
ちょっと、先ほどの補足議定書の精神について一度立ち返りたいと思うんですが、補足議定書の「目的」、これを読みますと、「この補足議定書は、改変された生物に関する責任及び救済の分野における国際的な規則及び手続を定めることにより、人の健康に対する危険も考慮しつつ、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に寄与することを目的とする。」というふうにあります。
衆議院の質疑でもありましたが、生物の多様性の持続可能な利用、ここに農業を含むということでよろしいでしょうか。これは確認だけですので簡潔にお願いします。
○政府参考人(亀澤玲治君) 生物多様性の保全及び持続可能な利用につきましては農業においても重要であり、この考え方は補足議定書においても同様であるというふうに認識をしております。
○武田良介君 補足議定書では、生物多様性の持続可能な利用ということで、農業を含むと。
それでは、現行の国内法であるカルタヘナ法ではどうかということなんですが、第一条、「生物の多様性の確保」というのがありますが、ここに農業を含んでいるのかどうか、よろしくお願いします。
○政府参考人(亀澤玲治君) 農作物は人が野生植物から改良を重ねて作り出した植物であり、野生植物とは異なるものであることから、農作物への影響につきましてはカルタヘナ法に基づく生物多様性影響評価の対象とはしていないところでございます。
○武田良介君 補足議定書では生物多様性の持続可能な利用というときに農業を含んで、カルタヘナ法では含まないということです。
しかし、三重の菜花の状況というのは、やはり三重のブランド野菜の採種の方法が変わったということもあるわけですから、客観的に、これは三重の菜花の生産、三重の農業に対して影響が出ているということだというふうに思うんです。
こうした農業の被害を含む損害に対して、補足議定書では第五条の「対応措置」のところで、締約国の権限ある当局が、「(a)損害を引き起こした管理者を特定すること。」、「(b)損害を評価すること。」、「(c)管理者がとるべき対応措置を決定すること。」を行うというふうに規定をしております。
補足議定書ではこういう規定になっているわけですが、現行のカルタヘナ法、また今回の改正案も含めてですが、このような対応措置の具体的な規定は盛り込まれているのかどうか、お願いします。
○政府参考人(亀澤玲治君) 回復措置命令につきましては、改正法案第十条の第三項、これは第一種使用等に関する措置命令を定めたものですが、それらの条項等におきまして、環境大臣は、カルタヘナ法に違反して遺伝子組換え生物等の使用等がなされたこと及び遺伝子組換え生物等による影響であって生物多様性を損なうもの等が生じたこと、これらを報告徴収又は立入検査等も活用しつつ認定した上で、使用等をした者等に対しまして当該影響による生物多様性に係る損害の回復を図るため必要な措置を命ずることとしております。
これらによりまして、御指摘の補足議定書第五条二の規定は、改正法案の中で担保できているものというふうに考えております。
○武田良介君 ちょっと分かりにくい答弁なんですが、要は、明示的には書いていないけれども、実際上はそういう手続をせざるを得ないので、書いていないけど実質的にはそういう意味を含んでいるということでよろしいんでしょうか。
○政府参考人(亀澤玲治君) 補足議定書と同じ文言は使っておりませんが、補足議定書の考え方を踏まえて、法律の中ではその考え方を規定をしているということでございます。
○武田良介君 現行法では明文で書き込まれていないということ自身、私は問題があるんじゃないかというふうに思っています。
事前にもお話聞きましたが、最後の方に民事対応ということも出てきました。民法で対応措置の手続を取るという話もあるわけですが、実際に民間同士で問題を解決しようということになった場合にどうなるのかということもあると思うんです。損害の評価というのは非常に難しいのではないかというふうに思うわけです。GM生物というその特殊性ということもありますし、非常に判断が付きにくい問題があるんじゃないかというふうに思うわけです。
GM生物をつくり販売する側、管理者は国際的にも展開するような大企業になり得るというふうに思いますし、片や日本国内で被害を受ける者ということになれば、個別の農家さんということも当然あり得るでしょうし、せいぜい農協だとかそういったものだろうというふうに思うわけですが、GM菜種による被害の全貌を証明することができるかどうかということは少し考えただけでも、これは本当に民法に任せていていいのか、それで本当に救済になるのかということは指摘をしたいというふうに思うんです。
EUの対応も一つ紹介をしておきたいと思うんですが、補足議定書の責任規定、これは汚染者負担の原則に基づいて大枠を定めたEUの環境責任指令が扱うということを言われております。これも、ある論文では、環境責任指令の未然防止措置と修復措置が補足議定書の対応措置を完全にカバーし得ると考えられるというふうに指摘をされております。
こうした内容はそれぞれの国内法で定められるわけですから、EUを見習って、今の話、カルタヘナ法でも今回の改正の内容に明示的に盛り込む必要があるんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(亀澤玲治君) 御指摘のEUの環境責任指令は、汚染者負担原則に基づいて環境責任の枠組みを確立することにより、環境的損害を予防又は回復し、損害を被った資源と事業を基準となる状態に戻すことを目的としたものと認識をしております。
我が国におきましても、遺伝子組換え生物等については、カルタヘナ法の改正によりまして回復措置命令を命ずることができるようになることから、同様の対応を図ることができるというふうに考えております。
○武田良介君 やはり、その責任と救済という点で明確に書いていく、そこの弱さを残してはならないだろうというふうに私は思っております。
カルタヘナ法の第一条、「目的」のところに、この法律は、カルタヘナ議定書の的確かつ円滑な実施を確保し、もって人類の福祉に貢献するとともに現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とするというふうにしております。
今読みましたが、議定書の的確かつ円滑な実施を確保する、これがカルタヘナ法だということですから、的確にこういう項目を含むべきだというふうに思いますが、最後に環境大臣の認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(山本公一君) 現在までの先生の御意見等をお伺いしながら、まずは遺伝子組換え生物等の使用によって生物多様性に悪影響が生ずることを未然に防止していくということが重要だろうと思います。
そのため、カルタヘナ法に基づく事前の承認又は確認の手続等を一層確実に実施をしていきたいと思います。さらに、万が一遺伝子組換え生物等によって生物多様性に損害が生じた場合にも適切な対応を取ることができるよう、補足議定書をできるだけ早期に締結するとともに、改正法案をお認めいただいた場合には、その着実な実施に努めてまいりたいと思っております。
○武田良介君 未然に防止する、やっぱり非常に重要だと思います。それに本当に力を尽くすとともに、実際に三重の菜花とかパパイヤの話もありましたけれども、実際に被害が出るという状況も起こりつつあるわけですから、その点の救済という点も含めて更に強化をすることが必要だろうということを述べて、質問を終わりたいと思います。