国会質問

質問日:2017年 4月 19日  第193通常国会  国際経済・外交調査会

アメリカのシリアミサイル攻撃への日本の評価 他国との信頼関係への影響について質問

 「アジア太平洋における平和の実現、地域協力及び日本外交の在り方」のうち、「信頼醸成と永続的平和の実現に向けた取組と課題」に関し、「日中、日米関係」について質疑を行いました。

 シリアへのアメリカによるミサイル攻撃に関し、日本の評価が他国との信頼関係においてどのように影響すると考えられるか質問しました。

 

 

 

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 今日は、三人の参考人の先生、大変お忙しいところをありがとうございます。
 最初に、フクシマ参考人にお伺いをしたいというふうに思っております。
 今回の調査会のテーマが信頼醸成ということがありまして、最近のシリアの問題に関わって一つお聞きしたいと思うんですが、シリアへのミサイル攻撃そのものは私も許されないことだろうというふうに思っているわけですけれども、日本から見て、日本と他の国の信頼関係の醸成というときに、安倍首相はこの間、ミサイル攻撃に対して支持ということだったわけですが、これ、日本とアメリカの関係ということでいえば信頼関係を築く上である意味有効なのかもしれませんが、そのほかの国との関係の信頼醸成といったときにどういった影響があるというふうにお考えになられるか、まずお聞きをしたいというふうに思っております。
○参考人(グレン・S・フクシマ君) 先日のトランプ政権のシリア攻撃に関しては、私が理解する限り、アメリカの同盟国の中には余り表立って反対している国はなかったんではないかというふうに思います。アメリカ国内ではいろいろトランプ政権に対する批判もありましたが、私も間違っているかもしれませんけど、安倍総理も、攻撃を賛成するというか、アメリカの決意に賛成するという言葉遣いだったと思うんですが。
 今回のトランプ氏の行動に対してアメリカ国内でも海外でもいろいろ解釈があって、アメリカ国内のことを申しますと、一方では、彼の説明では、写真を見て、子供がああいう化学兵器で殺されたことを見て非常に同情した、それによってシリアに対する考えを変えたということを彼は言っているんですが、実際には、そういう非常に単純な感情的な、ある意味ではそういう反応だったのか。
 むしろ、シリアに対するメッセージ、ロシアに対するメッセージ、ちょうど習近平さんとの夕食のときでしたので、中国に対するメッセージ、北朝鮮に対するメッセージ。あと、アメリカ国内においては、やはりオバマ大統領が赤い線を引いたといっても行動を取らなかった、それに対して、自分は前のオバマ政権とは全く違う、オバマ大統領とは違う決断力を持って行動を取るというメッセージ。あともう一つは、今アメリカ国内で一番多分トランプ政権に対して問題とされているのはロシアとの関係で、去年の大統領選挙のとき、トランプ陣営がどこまでロシアの政府と協力をしてヒラリー・クリントンを倒すことをやっていたかという調査が今ちょうど始まっているときなんですけれども、ロシアとの関係が余りにも近過ぎるという、そういうアメリカ国内の批判に対する一つのメッセージというふうにも見られていますので、相当いろんな形の解釈があると思うんですね。
 特に私がアメリカにいて感じたことは、安倍政権がアメリカのシリア攻撃に対するその決意に対して賛成したということに対して、特に私の知っている限りそんなに批判的な声は出ているというふうには私の知る限りありません。
 以上です。
○武田良介君 ありがとうございます。
 ちょっと関連するかと思うんですが、伊藤参考人にお伺いをしたいというふうに思っておりまして、先ほどの話の中にもG5からG20という話もありましたが、これまで必ずしも経済的に力が強かったわけではないそういう国も、今国際社会の中で発言力を持つように変わってきたというところがあると思います。
 今日は日米同盟の関係を中心にお話をいただきましたけれども、例えばアメリカから見てそういった国々に対して今どういうことを重視しているのか、トランプ政権になって予測が難しいという側面もあるかもしれませんが、そういった国との付き合い方という点で御意見いただければと思います。
○参考人(伊藤剛君) 基本的にアメリカ・ファーストということですから、アメリカの利益になるのであれば付き合うし、そうでなければ基本的には全てフェイクニュースだ、つまりうそだという話。つまり、自分の都合のいい者は友人で、話をするに値すると、自分にとって都合のいい者は、うそを宣伝しているといううそを言うという状態になっているのが現状ではないかというふうに考えます。
 基本的に、歴史的に見てアメリカの外交というのは、七〇年代と八〇年代末という冷戦の国際構造が大きく変動する頃に、負担に耐えかねてと言うとちょっと言い過ぎですが、やっぱり為替相場というのは大きく変わっているということは事実でありまして、結果的にこれは、アメリカの大きく持っている負担を同盟国にうまく経済的なメカニズムを使ってちりばめる、分散させるということを結果的にやってこれたんだというふうに思います。
 そういう意味で、そもそもアメリカにとってみれば、いわゆる一般的な頭の数を数える多数決原理で、アメリカ以外の国が多数決でアメリカを負かしてしまうということに、やっぱり非常に、何といいますか、反対といいますか、嫌悪感といいますか、我々がこれだけのことをやっているのに一体これだけ反対が出るのは何事だという気持ちが非常に高いと。ですから、例えば五〇年代にできた軍縮会議もそうですし、七〇年代にできたサミットもそうですし、基本的に、国際機関の中で多数決原理でうまくいきそうにないとどこかその外にぱっと新しい機関をつくる、それがまた有効に機能するとアメリカは考えるわけですよね。
 逆に今度、いわゆる新興国の立場に立ってみれば、我々はこれだけだんだん経済力大きくなってきているから先進国クラブの中に入れてほしいという気持ちが非常に強くなると。実際、国際社会全体の先進国と途上国の間の分散というのはだんだんと狭くなってきたのは確か、統計的にも確かでありますから、そういう意味ではオバマ大統領のときにG20という新しい枠組みができたことも確かであると。
 ところが、権利は主張するわけです、先進国クラブの中に入れてくれ、こういうこともやってきたと言うと。ところが、国際的な責任、環境、人権、災害に関する救援、あるいは義援金の募集とかそういうことになりますと、急にグローバルなイシューで国際的な責任を持つ、環境とか典型的にそうですけど、そうなると、いや、我々まだ発展して間もないですからということで、要するに権利の主張と義務の履行というのでかなり差があるというのが現状でないかと思います。
 昨今見てみますと、アメリカのトランプ政権は、何といいますか、大統領の周りを家族で固めている辺りから始まり、自分に都合の悪いのはみんなフェイクニュース、うその報道だというところから始まって、非常にこれまでのアメリカにはなかったような政治スタイル、それを政治スタイルと呼ぶべきなのかどうかも疑問だと思うくらいの状況になっておりますので、これだけフクシマ先生の言うように多くのポリティカルアポインティー、政治的任命が全く固まっていないということも含めて、政治的任命が固まっていないということは自分の意思を隅々まで通すこともなかなか不可能だというような状況になっていますので、もうちょっとやっぱり時間を見て、一体どういう人がその任命職に就くのか。ひょっとしたら任命職は余り十分埋まらないままでこのままいくかもしれないという気もしていますし、ちょっとトランプ政権に関しては本当にもうなかなか分からないといいますか、分からないということは逆に言うと一貫性もないし、一貫性もないということはさしたる戦略も余りトランプ政権には現状では存在していないというのが実際のところではないかというふうに考える次第です。
 以上です。
○武田良介君 ありがとうございます。
 高原参考人にもお聞きしたかったんですが、ちょっと時間があれですので、またこの後、時間があれば御質問させていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

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