国会質問

質問日:2018年 6月 5日  第196通常国会  環境委員会

「行革」で気候変動の「適応」に影響 体制強化を要求

武田良介参院議員は、気候変動「適応」対策を担う、地方環境研究所が「行革」で、統廃合、人員削減されている実態を質問。また、測候所の無人化で「目視観測が途絶えた地域も多い」と指摘。体制強化を求めました。
さらに、高原野菜の生産者からの「これ以上暑くしないで」との切実な声を紹介。石炭火力削減などエネルギーミックス(長期エネルギー需給見通し)の見直しを要求。中川雅治環境相は「必要に応じて計画を見直す」と表明しました。

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気候変動適応法案「体制強化を」

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 先日の参考人質疑の中で、パリ協定にも適応策を取ることが明記されているという旨も語られました。緩和策と適応策の一体的推進が必要であるということを改めて確信を持ちましたし、適応策について早川参考人は、止めどがないものだと、さらに、適応はどこに起こるか分からない、しかもそれぞれの顔を持っているということも話されました。それらのことを踏まえて今日は質問させていただきたいというふうに思います。
 今回の法案で地域適応計画を作るということになりますけれども、それ自身が非常に難しいというふうに言われております。私、長野県の担当者の方から話を聞きました。長野県では、この適応策取っていくために二つの課題、二つのボトルネックという表現をしていましたけれども、があると言っていました。一つは、影響シミュレーションやモニタリングができないこと、もう一つは、適応策を実際の暮らしに反映させる開発者などの段階で、まだまだ適応とは何なのかということが十分理解されていない、その必要性が十分理解されていないということをおっしゃっておりました。
 当然、これは長野県だけではなくて、各地で共通の課題だろうというふうに思いますけれども、長野県のような課題意識を共有されているかどうか、まず大臣にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(中川雅治君) 環境省では、本法案の国会提出に先立ち、地域における適応策の強化に向けて、地方公共団体や地域の研究機関等から、課題となる点も含め、様々な声をお聞きいたしております。私も職員からその報告を受けており、問題意識を持っているところでございます。
 地方公共団体からは、例えば、適応策の推進についての法的根拠がなく、組織内の理解が不十分である、あるいは、適応策を推進するための科学的な情報や参考とすべき優良事例が不足しているといった課題があるとの御意見がございました。こうした地方公共団体からの声をしっかりと受け止めて、今回の法案の作成に生かしたところでございます。
○武田良介君 今紹介した一つ目の課題ですけれども、現場では影響シミュレーションができない、モニタリングがなかなかできないと。これはどうしてそういうふうになるというふうにお考えでしょうか。
○政府参考人(森下哲君) お答え申し上げます。
 地域の研究機関が気候変動の影響についてモニタリングあるいはシミュレーションを行っていくには、その手法についての技術的な知見、そして経験、この二つが必要となりますけれども、多くの地域の研究機関においてはこれらの知見と経験、これらが必ずしも十分ではなく、そのため御苦労をなさっておられるというふうに認識をしてございます。
 このため、本法案では、地域において気候変動の影響についての調査研究等を行う大学や研究機関に地域気候変動適応センターとしての役割を担っていただきまして、このセンターが地域の気候変動影響に関するモニタリングやシミュレーションを適切に行うことができるよう、国立環境研究所が技術的な助言や研修等を行うということを想定をしてございます。
 これらの規定に基づきまして、地域においてモニタリングやシミュレーションを行う研究機関の活動をしっかりサポートしてまいりたいというふうに考えてございます。
○武田良介君 先日の参考人の質疑の中でも、片山委員の質問に対して浅野参考人も、国環研が持っている機能は、サイエンスの世界でどういう影響が生じるかということを冷静に見ている、ではそれに対してどのような政策を動かせばいいのかという社会科学的な部門は極めて弱いということも話されていました。
 私も、今回の法案の審議するに当たって国環研に行ってまいりましたけれども、率直にそういうこともおっしゃっておりましたし、非常にそのとおりだなというふうに思いながら聞きました。国環研から得られる確度の高い情報を受け止める側にもう一つ能力がないとなかなかうまくいかないと、浅野参考人はそういうこともおっしゃっておられたことを私も指摘をしておきたいというふうに思います。
 都道府県が持っている地方環境研究所についてお伺いをしたいというふうに思います。
 全国に環境分野を扱うこの地方環境研究所がまず幾つあるのかという点と、それから、これ現状を見ますと、衛生部門、厚労省なんかが持っている衛生部門のところと環境の部門が合併しているところもこれ経過としてたくさんあると思いますが、環境部門のみで今専門でやっている機関は幾つあるのか、この二点、まず最初にお願いします。
○政府参考人(中井徳太郎君) お答え申し上げます。
 地方環境研究所は、環境に関する試験、調査、研究活動を行う機関といたしまして自治体により設置されておるものでございます。全国の環境に関する試験研究機関を会員といたしました全国環境研協議会という組織がございますが、現在、平成三十年四月現在で六十七機関がこの協議会の会員となってございます。
 この中には、委員御指摘のとおり、地方衛生研究所と統廃合したものが多くございます。また、農業系の研究機関など様々な機関と統廃合したものもあると認識してございますが、その環境に関する研究のみを行っている研究所の正確な数につきましては、現時点では把握できてございません。
 気候変動に関する影響、様々な形で現れてまいります。適応対策を適切に進めていくために、地方環境研究所を始め様々関連する研究機関と連携協力して取り組んでいくことが必要と考えてございます。
○武田良介君 分からないということでありました。元々は六十七あったものが、どんどん統廃合されて減っている。で、今、実態として分からないと。幾つ専門で元々やっていたものが統廃合されて、どれだけ残っているかということも分からないということでした。
 結局、やっぱり行革ということが言われる中で、どんどんどんどん統廃合が進んでいく中で、研究所も減る、そして職員の数も減ってきたということもあると思うんですが、地方環境事務所でも職員の数が減っていると思いますが、職員の数はどれくらい減っているでしょうか。
○政府参考人(中井徳太郎君) 地方環境研究所でございますですね。
 この職員の具体的な数につきましても、先ほど申し上げました全国環境研協議会というところが把握しているかというところでございまして、伺いました。現在、事務局、高知県の環境研究センターさんが事務局やってございますけれども、職員の具体的な数はこの全国環境研協議会においても把握していないというふうにお答えをいただきました。
 また、しかしながら、この地方環境研究所では、職員の人員削減等に伴って技術力の維持や向上、承継が課題になっているということはもう明らかでございまして、環境省の方にもこの協議会からそのようなことでの国の支援ということでのいろいろ要望も出ておるという状況でございます。
 大変申し訳ないんですけど、具体的にどういうふうに減っているか、その具体的な減った理由等についての把握というところは、この全国協議会さんの方においても正確にはちょっとお答えをいただけないという状況でございます。
○武田良介君 これもつかんでいないということで、私も非常に驚きました。やっぱり適応だと、で、それぞれの地域で適応策つくる、ここが一つ大事な役割担うということは間違いないわけだけれども、これまで統廃合されてきた、職員がどれだけ減ったということを、是非正確にこれつかんでいただかなければならないというふうに思いますし、そのことを求めたいというふうに思います。
 これ、先ほども農業関係のところと統廃合という話もありましたが、地方衛生研究所という厚労省のところと一緒になっているという関係がありまして、厚労省の方から見たら、これも厚労省としては、数確認していただきましたけれども、ある程度、数把握されているわけですね。
 厚労省が所管している地方衛生研究所の一か所当たりの平均常勤職員数、これ統合された全体の職員数からこの衛生部門を引けば環境のところが見えてくるというところがあるわけですけれども、二〇〇四年に平均すると環境部門が十五人、二〇〇八年で十三・三人、二〇一三年で十・七人と。これ、厚労省にも確認した数字ですけれども、少なくとも二〇〇四年から一三年に九年間で平均十五人が平均十・七人というふうに減らされているということになっております。これ自身がゆゆしき問題だというふうに私は思います。
 これ、減らされているのは地方の環境研究所だけではなくて、気象庁のところでも減っているということです。気象庁の観測所は管区気象台が全国に六か所、地方気象台は五十か所、それから測候所というものもあります。
 お聞きしたいと思うんですが、測候所はまず当初幾つあったのかということと、この測候所も原則廃止ということも言われ無人化が進められていくということがずっとありましたけれども、現在までに幾つ無人化されているのか、まずお聞かせください。
○政府参考人(後藤浩平君) お答えいたします。
 測候所につきましては、気象観測を主な業務とする官署として、平成七年度には全国九十六か所に設置されておりましたけれども、気温、風等に関する自動観測技術の進展を踏まえまして、気象庁では徐々に機械化、無人化を進め、平成十七年度末には四十六か所となっております。その後、平成十八年六月に「国の行政機関の定員の純減について」が閣議決定され、観測業務の可能な限りの自動化を実施することなどにより測候所を原則廃止とすることとされたことから、平成二十二年度までに帯広と名瀬の二か所としたところでございます。
○武田良介君 九十六あったものが九十四無人化されて、今二つということでありました。
 これ、無人になるとできないことがやっぱりあるわけですね。目視によって観察する、観測するということができなくなっていく。例えば、生物季節観測というのがあるということでありました。桜の開花時期を記録するということに代表されるようなものだというふうにお聞きをしておりますけれども、その土地のその地域の桜という植物の毎年のデータを取っていくということができなくなるということでした。
 これ、測候所は二〇〇六年から一〇年頃までに、先ほどの話ですけれども、どんどん無人化されて、今二つのみと。先ほどの、もう閣議決定の話も出ましたので分かりましたけれども、そういう全廃ということがうたわれて、閣議決定があってどんどんどんどん減らされてきたということなんです。
 これは本当に大変な問題だということで、一つ紹介したいと思うんです。
 今お話にありました名瀬の測候所、奄美にあるわけですね。鹿児島の奄美にある、群島のところにあるわけですけれども、今も常駐者が大体二十人ほどいらっしゃる測候所だというふうにお聞きをしました。奄美では、二〇一〇年に奄美豪雨被害が起こった。測候所にまだ人がいたわけですね、二〇一〇年のときに、今もあるわけですけれども。日頃から自治体と測候所職員が緻密に情報共有し、連携をしていたために、気象庁が記録的短時間大雨情報を出すよりも早く自治体は住民に避難を呼びかけることができたと、そういう事例があったということをお聞きしております。
 これは、やっぱり現場の状況をきめ細やかに把握できる、そういう専門的な知識を持つ測候所があったからできた対応だったというふうに思うわけです。しかも、これ災害は二〇一〇年で、先ほどの閣議決定の話からしても、全廃だと言われたけれども、是非残してほしいというふうな声が地元からも上がって残されて、今のような災害対応ができた。だから、測候所を残してきたということの意義を改めて強調しておきたいというふうに思いますし、今回の適応の法案ということですけれども、むしろその測候所や地方気象台も含めて体制の強化、人員、予算も含めて必要だということを思います。
 ちょっと時間もないんですが、地方環境研究所の話に戻りたいというふうに思います。
 先ほどの生物季節観測、桜の開花の記録などの話ですけれども、これ実際には貴重なデータが失われているというふうに思います。例えば、この廃止のことがどんどんと言われて大問題になっていた二〇〇九年のときの読売新聞の記事を見ましたけれども、名古屋の地方気象台で主任予報官をされていた方が質問に答えて記事になっていましたけれども、桜の開花やセミの初鳴きというんですかね、初めてセミが鳴いたときなどの生物季節観測は廃止されてしまうと。地球温暖化の指標としても注目されつつあるが、一世紀近く続いた記録が途切れた地域も多いということも指摘をされております。これからいざ適応策考えようというときに、一世紀近く続いた記録が途切れてしまう、そのことの重みがあるというふうに思います。
 そこで、大臣にお伺いしたいと思いますけれども、地方環境研究所の体制の強化に向けて、予算措置も含めて力を尽くす必要があるというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(中川雅治君) 御指摘のとおり、環境省の環境研究所はもちろんでありますが、地方の環境研究所の充実ということも重要でございます。そして、加えまして、地域において動植物の生態の変化や季節感の変化などについて長期にわたって観測を行っている住民団体もございます。そういった観測を行っております地域の研究機関、また住民団体の協力もいただいて、情報基盤の充実を図り、気候変動影響の評価にも活用していく新たな取組について検討していかなければならないと考えております。
○武田良介君 是非お願いしたいと思うんです。私も見ましたけれども、中環審が、これどんどん削られていくさなかだと思いますけれども、平成十八年に「環境研究・環境技術開発の推進戦略について」ということで答申を出しておりました。この中でも、予算の関係云々、厳しい財政状況云々で減らされているけれども、機能の充実が求められるということも言われておりました。是非その立場で対応していただくことが必要だということをお願いしておきたいというふうに思います。
 ちょっともう時間がないのであれですが、気温上昇ということで、私、農業への影響ということもありまして、長野県の八ケ岳高原というところへ行ってきました。
 簡潔にちょっとだけ紹介したいと思いますけれども、あそこは高原野菜の産地であります。原村だとか、山の向こう側は南牧村、川上村というところもありまして、高原野菜の産地です。セロリだとかレタス、キャベツ、いろんなものを作って、朝それを取れば首都圏にその日のうちに消費者に届けることができるということもあって、そういったブランド的な産地といいますか、になっているわけです。
 元々、例えばセロリですけれども、大体八百五十メートルぐらい、標高でいいますと、そのぐらいのところで作っていたということですが、どんどん気温が上昇するに従って、百メートル一度というふうに昔の方はおっしゃったそうで、そんなに正確かどうかは別にして、今は大体千百メートルぐらいのところで多くの農家さんは作っているそうです。ただ、時期を半年ぐらい生産したいということも当然あるので、どこで作るのか、ある程度、出荷時期に応じて作付けしているところも違うとおっしゃっておりましたけれども、一番上が今大体千三百メートルぐらい。ただ、それより上になると、もう八ケ岳の噴火の影響で石がごろごろしているからそれ以上上はもう作れない、これ以上気温が上がったら、もうブランド産地としてやってきたここのセロリがどうなるのかということもおっしゃっていた。
 それだけに、適応と緩和は一体だと。だから、これから、二度目標ということも言われていますけれども、どこまで気温が上がってしまうのか。緩和策が不十分になって見通しが付かなかったら適応策だって十分取れないというふうになっていくわけですから、そこの必要性、緩和策の必要性ということはやっぱりあろうかというふうに思っております。
 大臣にその点で、そういう見通しを持ててこそ適応策も実効性あるものになるというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(中川雅治君) パリ協定におきましては、世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏二度高い水準を十分に下回るものに抑えることという目標を定めております。並びに、世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏一・五度高い水準までのものに制限するための努力をして継続するということをパリ協定で規定をしているところでございます。
 こうした世界全体での目標を我が国もしっかりと実現できるように、緩和策をこれから長期戦略を含めてつくっていきたいというように考えているところでございます。
○武田良介君 最後に一問だけ。
 高原野菜の産地に行ったときに最後におっしゃっていたのは、これ以上暑くしないでくれということをやっぱりおっしゃっておられました。
 前回の質問では、石炭火力に関わって二月合意の見直しということもお聞きしました。削減目標の引上げということも当然だというふうに思いますが、もっと言えば、エネルギーミックスだと思うんですね。今回の適応法案を審議するに当たって、やっぱりこのエネルギーミックスの見直し、これ是非やっていただきたいというふうに思いますけれども、最後に大臣、いかがでしょうか。
○委員長(斎藤嘉隆君) 中川環境大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。
○国務大臣(中川雅治君) はい。
 エネルギーミックスは、二〇三〇年度二六%削減の目標を達成するために整合的なものとなるように定められているところでございますが、この毎年の進捗状況を点検をして、少なくとも三年ごとに目標及び施策について検討を行い、必要に応じて計画を見直すということになっております。
○武田良介君 終わります。

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