参議院本会議で、がん患者に対する自民党議員の暴言を追求し、受動喫煙対策の徹底を求め質問しました。
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議事録
(答弁を含む議事録は作成され次第掲載します。以下は健康増進法改定案参議院本会議質問の要旨です)
日本共産党の武田良介です。日本共産党を代表して、健康増進法改定案について、加藤厚生労働大臣に質問します。
最初に、衆議院の参考人質疑において、日本肺がん患者連絡会の長谷川理事長が答弁をしている際、自民党議員から「いいかげんにしろ」との暴言が発せられた件についてお聞きします。院として招致した参考人に対するものか否かにかかわらず、肺がんで苦しむ方に投げつけられた暴言であって、断じて許されないと考えますが、加藤大臣、いかがですか。
次に、受動喫煙についての基本的な認識について二点うかがいます。
本人には何ら責任はないにもかかわらず、受動喫煙により命を落とされる方々は、国立がんセンターの発表によれば、毎年1万5千人にものぼります。この現実を、大臣は、どう受けとめていますか。
日本は「たばこ規制枠組条約」を批准しています。「受動喫煙の防止」を謳った条約第8条を履行するために採択されたガイドラインでは、全面禁煙以外の換気や喫煙区域の設定は、受動喫煙を防ぐものとしては不完全であることを指摘した上で、屋内全面禁煙とすべきとしています。
ところが、本法案は、数々の例外や経過措置などにより、政府自らが掲げた喫煙室なしの屋内全面禁煙からはほど遠いものとなっています。
日本政府は、国際基準に照らして十分な対策を取るべきではありませんか。大臣の基本的認識をお聞きしたい。
続いて、本法案に盛り込まれた受動喫煙規制の内容にかかわって質問します。
本法案では、学校や病院などを対象とする第一種施設において、屋外であれば喫煙場所を設置することができるとしています。受動喫煙を防止するために必要な措置がとられることが前提だと言いますが、屋外での喫煙であり、風に流されることもあるでしょう。学校や病院に出入りする方への受動喫煙を防ぐことはできるのですか。
学校では敷地内全面禁煙の措置を講じている割合は、2005年の45.4%から、2017年には90.4%と前進しています。今回、喫煙場所を設けることができる規定を設けることは、かえって取り組みを後退させかねないのではありませんか。
第二種施設とされる飲食店では、原則屋内禁煙としながら喫煙専用室での喫煙は可能としています。本法案では、資本金5.000万円以下の事業者であり、客席面積100㎡以下の店舗では、直ちに喫煙専用室を設けなくてもよい経過措置もあり、既存施設の55%は適応除外になると指摘されています。地方の小規模都市などでは、小規模飲食店がほとんどで、何ら適応されないことも想定され、受動喫煙対策が不十分になることが懸念されます。面積や資本規模で区別せず、全面禁煙とすべきではありませんか。
喫煙室の設置を認めてしまっては、厚労省自らが「たばこ白書」で掲げた、喫煙室なしの「屋内全面禁煙」と、整合性がとれないではありませんか。
飲食店の全面禁煙に反対する方は「客足が落ちる」ことへの懸念を述べていますが、WHOが実施した国際調査は、レストランやバーを法律で全面禁煙としても、減収はないと結論づけています。愛知県や大阪府が県内・府内の「自主的に全面禁煙に踏み切った飲食店」を対象に行った調査でも、「売り上げはほとんど変わらなかった」という結果がでています。大臣は、この結果をどう受け止めていますか。
本法案では、喫煙室に20歳未満は立ち入らせないことを管理権限者に義務づけていますが、一人ひとり年齢確認することは現実的ではありません。実効性をどう確保するのですか。
昨年3月1日に示された「基本的な考え方案」では、第1種施設に「官公庁」も含んでいましたが、本改定案では「官公庁」ではなく「行政機関」とされ、国会や司法機関は、喫煙室の設置と屋外の喫煙が可能となりました。国会は多くの見学者等が訪れており、当初の案どおり「官公庁」として規制すべきではありませんか。
また、本法案では路上喫煙を規制する規定がありません。20歳以上の非喫煙者が1か月の間に受動喫煙にあった場所の30%が路上で、子どもが利用する公園、通学路も12%となっています。「望まない受動喫煙を防止する」のであれば、路上喫煙を規制する規定についても検討すべきです。見解を求めます。
次に「加熱式たばこ」について質問します。
加熱式たばこは、においや煙が少ないので、受動喫煙に気が付かず、知らずに健康被害を受けることも考えられるのではありませんか。
健康影響が明確でないといいますが、健康被害が明らかになってから対策するのでは遅いと、衆議院において参考人から指摘がされています。加熱式たばこも、通常のたばこと同様に規制すべきではありませんか。
第二種施設には、飲食店の他、劇場や体育館、ホテル、旅館などが含まれます。「加熱式たばこ」についても、その喫煙室を設ければ喫煙可能となっています。加熱式たばこ専用喫煙室では、喫煙をしながらの飲食等も、「当分の間」可能としています。「当分の間」とはいつまでですか。
2020年、東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。世界保健機関(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)による合意文書では、「たばこのないオリンピックを実現」することがうたわれています。この間のオリンピックは、会場だけではなく、レストラン等も含む屋内施設が全面禁煙の国や都市で行われてきました。今回の法改正は、この国際社会の要請に応えられるかが問われています。
本法案は、たばこのないオリンピックを実現するという長年オリンピック・パラリンピックで守られてきた屋内を完全に禁煙とする国際水準に、遠く及ばないのではありませんか。
「たばこのないオリンピックを実現」が謳われるようになって以来、一般の飲食店を喫煙可能とするオリンピック開催国は存在しません。こうした例外を認めた場合、たばこフリーオリンピックという伝統を初めて日本が破ることになるという認識はありますか。
オリンピック、パラリンピックを開催する東京都では、本法案よりも厳しい都条例を可決しました。この条例に対して、政府が3分の1の株式を保有するJT・日本たばこ産業は、「健康増進法改正案審議を注視し」「国が定める取り組みを、全国一律のルールとして、国と地方自治体が連携して推進することが望ましい」とする意見を公表し、暗に規制を本法案の程度にとどめるよう要望しました。
今後、各自治体で規制を強める条例案が検討されていくことが予想されますが、国として、そうした条例を尊重し、またそうした地域の取り組みを踏まえ、国の法規制も見直していくべきではありませんか。
以上、加藤大臣の答弁を求めます。
全ての国民が、受動喫煙から守られる対策を求めて質問を終わります。