国会質問

質問日:2019年 2月 27日  第198通常国会  国際経済・外交調査会

日韓文化外交、国は前に出ず環境整備を

二月二七日、国際経済・外交調査会で、文化・人的交流などについての参考人質疑が行われました。

元文化庁長官の近藤誠一氏は外務大臣の依頼で日韓の文化・人的交流に関する有識者会合の座長となり、まとめた提言について「政治的な対立が国民感情とか市民交流に影響を与えちゃいけないということをはっきりと認識をし、政府としては、市民は引き続き民間交流やりなさい、お互いをもっと知りなさい、それが中長期的な友好関係、秩序の基礎になるんだということをはっきりと政府は言うべきだというのがこの提言の一番の肝」と指摘。

武田良介参院議員は、日韓で市民社会がソフトパワーで交流し、歴史的に力を付ける展望について質問しました。

近藤氏は「国として日本の文化の力をフルに使いたいというときに、国が前面に出て、これが日本の文化だということをやることは余り得策ではない」「理屈ではなくて感性で感じてもらうことで日本の文化の良さが伝わっていく、そういう環境を徹底的につくるというのが政府の役割であり、それに必要な資金を提供するのが企業の役割であると。そのようにはっきりと役割分担をすることが日本の文化外交の一番重要な点」と指摘しました。

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日韓市民社会交流を

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。

 今日は、三人の参考人の先生、本当にお忙しい中ありがとうございます。

 まず、高倉参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 今日お話をいただきました、このボランティアに基づく今回のプロジェクト、「世界はきっと、ひとつになれる」ということで、私も大変興味深くお話を聞かせていただきました。

 その上で、ちょっと端的に、一つは、聞き漏らしただけかもしれないんですが、確認をさせていただきたいと思いましたのは、プリンターで着物が作れてしまうという話も驚きましたけれども、今、手作りで工芸品として着物を作れる方、経産省の話ではピーク時の七%まで着物の生産減っているというお話ありましたけれども、そういった職人の方というのは今全国にどのくらいいらっしゃるものなのかというのが一つと、もう一つお聞きしたかったのは、高倉参考人自身が着物に対してどういうところに魅力を感じておられるのか、その参考人の感じている着物の魅力ということを、ちょっと時間短いんですが、お話しいただければなというふうに思っているんです。

○参考人(高倉慶応君) ありがとうございます。

 着物の魅力自体は、まあぶっちゃけた話ししますと、私も呉服屋が継ぎたいわけじゃなかったんですけれども、本当に、父が病気で倒れちゃって、もう家がどうするこうするともめて、嫌々始めた仕事です。ですから、当初、済みません、古賀議員が笑っていらっしゃるのは事情を御存じだからだと思いますけれども、そういったことも含めて、実は最初から魅力というものがあったとは思いませんでした。要するに分からなかったわけです。要するに、これが今の多くの日本人と同じ状況だと思います。

 ところが、知れば知るほど、こんな感覚的に細かいところまで気を遣って一枚の布に絵を描いて、それをある日のためにやっているんだなとか、その背景にある日本人の精神性とか、また、その自然との調和にしても、やっぱり季節というものをまた考えながらデザインを考えたりとか、そういったいわゆる日本人の感性というものが背後にあって、しかも技術もすごい。ただ、今は評価はされていないという、浮き彫りになってくる。

 ここがいわゆる私から思う着物のすばらしさでもあり、もっともっと評価されるべきだと。もっと日本人が知れば分かってくるのに、なかなか学校でも教わらないし、家の中でも今もう誰も教えてくれないし、帯の締め方も分からない人同士でどうしようこうしようという話になっちゃっているから、それが原因なので、それに大きなインパクトのある何かプロジェクトを世界に向けて発信することによって、それがまた返って、日本にレスポンスとして返ってきて、日本人が気が付いてくれればいいなというふうに思っています。

 一言で言うなら、日本人がやっぱり美しくあろうとしたときにこの衣装を生み出してきたので、やっぱり、一言で言えば、日本の着物のすばらしさ、美しさだと思います。これは世界中どの国にも負けない、エレガントな美しさを持っていると思っています。これがある意味、品位となってくださることを期待しています、日本のですね。

 あと何でしたっけね。──はい。職人さんの数は、例えば大島つむぎというのは、これ鹿児島県にありますけど、この間、奄美まで行きましたが、生産反数は一%からもう〇・一%ぐらいになっているんですね。今現在、泥染って皆さん多分御存じかもしれませんが、泥でこうやる、あれやっているところは三軒しかなくて、しかもそのうちの二軒はもうすぐやめます。もう唯一だけ残った、ここが、息子さんは一応帰ってきていますけど、大島は作りたくないと言っています。

 というところが多々あって、この先生が隠居したら、若しくはやめたらこの技術がおしまいという技術が、僕が知っている限り百ぐらいあります。それはもうこの五年以内に確実に起こります。それはもう間違いないと思います。だから、職人さんの数は最盛期の売上げと、ごめんなさい、売上げというか、全体のあれと同じなので七%ぐらいまで減っていますけど、実際は百分の一になっていると思います。

○武田良介君 非常に驚きを持って聞かせていただきましたし、その着物の魅力、美しさ、まず知れば分かるがというところも含めて今後の参考にさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

 近藤参考人にもお伺いをしたいと思うんですが、お話の中で、私なりに問題意識に思っておりますけど、文化を外交にしていくときに、国がアクターとなってやるときに、その意図をどう発信するのか。それがプロパガンダとしてコントロールできるのかできないのかといったことが一方であると思いますし。

 そこで、参考人もお話しいただいたように、その秩序、平和の鍵という中で、やはり市民社会の役割ということを強調されておられたというふうに思うんですが、具体的に、例えば今、日本と韓国の間でということもあったと思うんですけれども、この間それぞれの、国家アクター、また企業間なんかでいろんな問題が起こりました。それはそれとしながら、市民的な、市民社会がソフトパワーで交流していくということだと思うんですけれども、国家、企業アクターがいろんなことが起こっている間に市民社会はどのように力を付けてきたのか。とりわけ、日本と韓国という中で市民社会がどのように歴史的に、力を付けてきたというのが正しいのか、どのような経過を経ているといいますか、その展望といいますか希望という意味でちょっとお聞かせいただけないかというふうに思っているんですが。

○参考人(近藤誠一君) 国として日本の文化の力をフルに使いたいというときに、国が前面に出て、これが日本の文化だということをやることは余り得策ではない。昔、共産圏がよくやりました、国威発揚のため。それは受ける側がどうしても割り引いてしまいます。それよりも、環境だけつくり、後は日本の文化が持つ力が自然に発揮されて相手を魅了する。

 繰り返しになりますが、日本が大事にしてきた文化というのは、自然に優しい、人に優しい、繊細である、美しさを徹底的に追求する。それは誰にも通じるものです。それを制限をしないでなるべく自由に出す。そして、民間の方々も、もっと積極的にそれを自分でまず認識をして、それを相手に伝える。

 これも言葉で説明するとなかなか通じません。しかし、実際の、着物であれ、まき絵であれ、びょうぶであれ、書であれ、そういうものをどんどん出すことで、そこに何か、ああ
、いいな、何かいいな、美しいなと感じてもらう。理屈ではなくて感性で感じてもらうことで日本の文化の良さが伝わっていく、そういう環境を徹底的につくるというのが政府の役割であり、それに必要な資金を提供するのが企業の役割であると。そのようにはっきりと役割分担をすることが日本の文化外交の一番重要な点だと思います。

○武田良介君 ありがとうございます。

 渡邊参考人にも最後にお伺いしたいんですけど、先ほど回していただいた資料、フランスとの、何会議でしたかね、白い本、ざっと読ませていただきましたけれども、その国の文化を知るだけではなくて、その国の実情を知っていくことも大事だというようなお話がその中にあったかというふうに思っておりまして、なぜそう感じられたかということもそうですし、一方で、文化を入口に知っていくといいますか、ということもあろうかというふうに思いますので、とりわけ参考人がフランスとの関係で経験しておられるようなことだとか、もう少しお話しいただければなというふうに思っております。

○参考人(渡邊啓貴君) 形になるものは、いろいろ美しいもの、はっきり分かりやすいものがあるんですけれども、それをどう意味付けしてくれるか、どう解釈するかということだと思うんですね。そのことについてやっぱり、先ほどから言っている言葉で繰り返しで恐縮ですけど、コンテクストというか、それをどうつくっていくのか。それは、その文化的な製品だけではなくて、やっぱりその社会の在り方というのを理解してもらった上で本当に理解してもらえると思うんですね。そういう意味で、日本の文化は盛んに世界に広がっていますけど、日仏の交流の中で社会科学の分野の交流が進んでいなかったんですね、ないんですね。それで私、そういうことを思い付いたわけでございます。

 コンテクストということで、あと三十秒だけお時間いただきますと、これは高倉参考人の領域になりますけど、今日、着物の話に随分傾斜しているので、ちょっと気が付いたことを補足させていただくと、源氏物語絵巻を西陣織で出しているんですね、長い、物すごい時間を掛けて作られた。これ、西陣織というのはフランスのジャガードという機械で再生してくるわけですよね。だから、これをお返しするんだというので、西陣織でフランスに返した。こんな長い源氏物語絵巻です。けんらん豪華な、物すごく時間が掛かった。これ、コンテクストが随分あると思うんですね、日本の歴史の、明治以降の歴史で。そして、それを物できちっと示して、しかも美しいと。こういうのは一つ成功例ではないかと思います。永続的な成功例ではないかなと思います。

 失礼いたしました。

○武田良介君 ありがとうございました。

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関連資料

しんぶん赤旗記事「日韓市民社会交流を/参院国際経済・外交調査会 武田氏が質問」