国会質問

質問日:2019年 6月 11日  第198通常国会  環境委員会

浄化槽法 負担増を迫られる自治体の実態をつかみ、意見を聞くべき

武田良介参院議員は、浄化槽法質疑で質問。

武田議員は、汲み取りや単独浄化槽(し尿のみ浄化する浄化槽)から、合併浄化槽(し尿と生活排水を合わせて浄化する浄化槽)への転換は重要と指摘。しかし、今回の法案にある「公共浄化槽」(複数の住宅で共同利用)は、自治体の負担増を強いるものとなっていると指摘。しかも、合併浄化槽の更新が助成の対象外となり、市町村設置の共同化のもののみとなります。

武田議員は個人設置の合併浄化槽による整備率が96%の長野県下條村を挙げ、こうした自治体が補助を打ち切られることにより「強制的に公共浄化槽への転換が迫られ、自治体独自の判断が阻害される」と指摘。こうした自治体の問題を法案策定の過程で検討したきたのかただしましたが、自民党などの議員立法発議者は答えられませんでした。

武田議員は改定案は自治体の実情を踏まえておらず「議論は尽くされていない」と反対しました。

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 浄化槽法の改定案について質問させていただきたいと思います。
 単独浄化槽やくみ取り式から合併浄化槽への転換が進められなければならないというのは、これは当然重要だというふうに思っております。現在も、浄化槽市町村整備推進事業が行われております。この事業には個人設置型と市町村設置型があります。これ、どんな事業かということですが、私の方からもう説明してしまいますけれども、資料の一にも付けさせていただきました。
 個人設置型、これは、設置者、管理者はあくまで個人になる、市町村が設置に対して補助をするものであります。費用全額に対して四割を補助対象として、国が三分の一、県が三分の一、市町村が三分の一を補助をすると。個人負担が大きくなるということがこの特徴だというふうに思います。
 市町村設置型ですけれども、これは、合併槽の設置を公共事業として捉えるということですから、国からの補助が三十分の十、三分の一となる、個人負担は三十分の三、一割ということで、個人負担を軽くできることが大きなメリットですけれども、市町村の負担は三十分の十七と重いものになると。浄化槽の性能によってその割合が変わるということは、資料にもある、この斜めで示されているところはそういう意味だというふうに思いますけれども、市町村の負担は重いものがあるということだと思います。
 現在でもこの二つの型の推進事業に取り組んでおられるわけですけれども、それでもくみ取り式や単独浄化槽からの転換が進まない理由というのはどこにあるんでしょうか。

○政府参考人(山本昌宏君) 御指摘いただきました点、単独処理浄化槽がなかなか転換できない理由としては、転換時の設置費用の個人負担が重い、特に宅内配管工事を含めて余計に費用が掛かるということで、この個人負担が大きいということがございます。それから、単独処理浄化槽を既に付けているということはトイレの水洗化が既に実現しているということで、なかなか設置者の転換のインセンティブが働きにくいというようなことが要因だと考えております。
 このことも踏まえまして、本年度予算では、合併処理浄化槽への単独処理浄化槽の転換というところに予算を重点化しまして、単独処理浄化槽から転換する場合に必要な宅内配管工事費を新たに補助の対象とするというようなことをしているところでございます。

○武田良介君 今御答弁いただきましたけど、個人設置型はやはり個人負担が重くなりますから、今説明もあったような、個人がその負担を決断しなければ転換できないということがありますので進まないと。それは私も理解できるわけですけれども、市町村設置型は、個人負担は軽くなる代わりに市町村の負担も重くなるということがある、ここについては答弁では今触れられなかったわけですけれども、どちらを選択しても個人あるいは自治体に重い負担がのしかかってしまう、それが転換が進まなかったという、それによって進まなかったというのが実態だというふうに思うわけであります。
 今回の法改正で公共浄化槽の設置が新たに位置付けられておりますけれども、これに対する推進事業というのは、個人型と市町村設置型、どちらに該当するんでしょうか。

○政府参考人(山本昌宏君) 改正案におきまして、御指摘の公共浄化槽につきましては、浄化槽処理促進区域内に存する浄化槽のうち、市町村が作成する浄化槽の設置に関する計画に基づき設置された浄化槽であって市町村が管理するものと定義されております。
 したがいまして、市町村設置事業で設置された浄化槽が公共浄化槽に該当するということになります。

○武田良介君 市町村設置型ということであります。つまり、今回の法改正で公共浄化槽の設置を進めるということは、市町村の負担を増やすということにこれはつながります。
 資料の二にも付けさせていただきましたけれども、資料を見ましたら、市町村設置型浄化槽のメリット、デメリットというのが中ほどにありますけれども、デメリットのところに市町村の金銭的負担増加、事務作業量増加というのもありますけれども、市町村の負担が増加するということがここにも記載をされております。
 今回の法改正で公共浄化槽を設置しようと、市町村の判断で地域指定を行っていくということになっていると思いますけれども、市町村自身の負担が増えて、それで本当に転換が進むのでしょうか。環境省、まずお願いします。

○政府参考人(山本昌宏君) 御指摘の点につきましては、今回の改正と並行して予算措置で、本年度から、先ほども申しましたように、単独処理浄化槽からの転換の部分、なかなか設置、転換に踏み切れなかった方に対する宅内配管工事についての新設ということもありますし、あと共同浄化槽というような形で、従来、各戸別の浄化槽でなくて、ある程度おうちがまとまっているところについては集合型での浄化槽の整備も可能にすると。そういったような選択肢を増やしておりますので、市町村としてより柔軟に地域の実情に応じた整備が進められるようになっているというふうに考えておりますので、こういった予算措置と相まって進めてまいりたいというふうに考えております。

○武田良介君 助成をする、その宅内配管の助成をするということなんですけれども、しかし、資料の一にも付けましたように、市町村の負担の割合というのが基本的に一番大きいわけですね。この負担をどうするのかということは、やはり引き続きこれは課題だろうというふうに思っております。
 発議者の方にもお伺いをしたいと思いますけれども、市町村設置型でくみ取り式や単独浄化槽から合併浄化槽への転換を進めようという今回の法改正、これで、先ほどの質問ですけれども、市町村の負担を増やして本当に転換が進むのかということについて、法案作成の過程で検討されておられるのでしょうか。

○衆議院議員(小宮山泰子君) 公共浄化槽は、現在行われている浄化槽市町村整備推進事業と同様で市町村が浄化槽を整備することとなっており、御指摘のとおり、市町村の負担が増えることは想定されております。今回の公共浄化槽については、市町村に整備を義務付けるものでもなく、市町村においては財源と見合いを踏まえながら公共浄化槽の整備を進めていただきたいということで予定をさせていただいております。
 他方、単独浄化槽の合併浄化槽への転換を促進するためには、公共浄化槽が重要な仕組みであると考えております。地形の問題など様々な課題で今まで浄化槽を入れづらかったところ、また単独浄化槽の転換がしづらかったところなどもございます。
 市町村が公共浄化槽の仕組みを活用できるように、政府においては、市町村の負担軽減策や助成制度の周知を含めて適切な運用がされるものと考えております。

○武田良介君 自治体の負担が増えるということは指摘をされているということでありました。
 それで、環境省から事前に私もお話伺いましたけれども、市町村の負担を軽減をしていくためにPFI方式で運営をしていくということ、これを今環境省の方でも進めておられるわけでありますが、御説明いただきましたら、これまで全国十七の自治体でPFI方式を導入したということをお伺いをいたしました。昨日もお伺いしましたら、このうち、今一期目で、運営中の自治体が九自治体あって、導入後、一期目を終えて二期目も継続しているという自治体は二自治体、PFI方式をやめた自治体が六自治体あるということでありました。
 なぜPFI方式をやめることにならざるを得なかったのか、この点については法案作成の中で何か検討があったのかどうか、発議者の方にお伺いをしたいと思います。

○衆議院議員(小林鷹之君) お答え申し上げます。
 現在行われております浄化槽市町村整備推進事業におきましては、PFI方式を導入している市町村もありますし、一方で、先生御指摘のとおり、地域の実情に照らしてPFI方式が継続されない場合もあるものと承知をしております。
 今回の法改正案に盛り込ませていただきました公共浄化槽につきましては、PFI方式に限定するものではなくて、公共浄化槽を整備するに当たっては市町村において必要に応じて適切な手法を検討していただきたいと考えております。政府におきましても、どのような手法が本当に効果的なのか、市町村に対し周知をしていただきたいと考えております。
 なお、今回の法改正におきまして、公共浄化槽の整備等に関して必要な協議を行うために市町村は協議会を組織することができることとなっておりまして、この協議が調った場合につきましては、その構成員はその協議結果を尊重しなければならないこととしております。この協議会におきまして、地域の実情に応じた公共浄化槽の整備手法について協議することも考えられると考えております。

○武田良介君 実情については説明も今いただきました。それから、協議会の話も説明をいただきました。だからこれでできるんだということで進めようということなんですけれども、しかし、事前に環境省から私もお話伺った際にも、PFI方式でなぜうまくいかなかったのかというその原因分析はされているのかということを私、お聞きしましたけれども、これ、されていないということで明確にお答えをいただきました。
 このマニュアル、これも作ってPFIの推進ということも一つ書きながら、しかし実際には六つの自治体で継続されなくなった。とすれば、こういうマニュアルも含めて、この中身どうなのかという検証があってしかるべきだというふうに思うんですけれども、しかしそういう原因分析はされておられないということでありました。
 つまり、今回の法改正によって公共浄化槽の設置を進めようと、しかしそれは市町村の負担が増えていく、そのためにPFI方式も、まあ、だけじゃないという話ありましたが、PFI方式を推進しようということも進めていく、しかしそのPFIは必ずしもうまくいっていないと。こういうことで本当に転換が進んでいくのかということに対しては、私は疑問も持っておりますし、更に議論が求められるということを指摘をさせていただきたいというふうに思っております。
 私、長野県の下條村というところに行ってまいりました。ここは、約三十年前から下水道ではなくて合併浄化槽を整備する決断を行って個人設置型で合併浄化槽を普及させて、現在九六%の整備率というふうにお聞きをしております。下條村は、今後、合併浄化槽の更新が必要となったときにどれだけの負担がのしかかるのかということを不安に感じておられるということもおっしゃっておられました。
 一つ環境省に確認したいと思うんですが、先ほどの個人設置型、これは、合併浄化槽から合併浄化槽の更新に対しては今年度で補助は打切りと聞きましたけれども、間違いないでしょうか。

○政府参考人(山本昌宏君) 本年度予算につきましては、既存の汚水処理の未普及解消につながるものあるいは災害復旧対応に資するものに重点化するということにしてございますので、個人設置事業における合併処理浄化槽から合併処理浄化槽への交換、既に生活雑排水の未処理汚水がないというものについては助成の対象外としてございます。
 ただ、一方、市町村設置事業につきましては、例えば大型浄化槽による共同化など経済的、合理的な場合については、合併処理浄化槽から合併処理浄化槽への交換といったようなものについても引き続き助成の対象としているというところでございます。

○武田良介君 確認をさせていただきます、今の答弁を確認させていただきたいと思います。
 つまり、下條村のような合併浄化槽で全村整備しているところは、例えば、更新の時期が来て、今度は公共浄化槽に転換していくということが言ってみれば強制的に迫られるような形になってまいります。設置費用だとかその管理費用を計算して、合併から合併に更新した方がいいのか、それとも公共浄化槽にした方がいいのか、そういうことを検討するということもできないまま、判断することもできないまま、公共浄化槽を選択せざるを得ないということになるのではないか、自治体の独自の判断を阻害することになるのではないかというふうに思いますけれども、こういう検討はこれはされているのでしょうか。発議者の方にお伺いをしたいと思います。

○衆議院議員(小林鷹之君) 委員におかれましては、長野県の下條村の具体的な事例を御紹介いただきまして、ありがとうございます。
 お答えいたしますが、合併浄化槽の整備につきましては、ただいま局長から答弁があったとおり、この度の政府の対応におきましては、合併浄化槽から合併浄化槽への転換については補助対象から外れたものと承知をしておりますが、それ以外の単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換ですとか災害復旧対応などの場合につきましては、引き続き、これまでの個人の合併浄化槽の設置を対象とした助成制度が存続するものと承知をしております。
 いずれにしましても、今回の法改正で創設される公共浄化槽の制度をどのように活用するかは、地域の実情に応じて市町村において自主的に判断されるべきことと考えております。
 なお、今回の法改正に伴いまして、今後、政府において個人負担分の更なる軽減のための支援措置が講じられ、合併浄化槽の整備の促進が進むことを期待しているものであります。

○武田良介君 大臣に、最後に一問。
 その下條村のような合併浄化槽を整備してきたところの転換は、これは国として支援していくべきではないかと。あっ、私、通告していませんでしたか。失礼しました。
 環境省にお伺いしたいと思います。
 これ、国として支援していくべきではないかと、下條村のような、合併から合併への転換ですね、いかがでしょうか。

○政府参考人(山本昌宏君) 先ほど申し上げましたように、まだまだ千二百万人残っている汚水処理の未普及人口をなくしていくというのを、国土交通省を含めて関係省庁と連携してしっかりやっていくというのが重要だと考えております。
 個別の市町村につきましては、今回、補助制度も様々改善をしたところでございますし、一部、御指摘の点、対象外になる部分もありますが、そういったものをどういった形で運用するのかと。あるいは、今回の改正法が成立しましたら、浄化槽に関する制度が大きく変わりますので、それを活用してどんなふうに未普及をなくして生活排水の処理を進めていくのかというのは、個別の自治体の事情に応じて様々なケースがあると思いますので、しっかりとそこは各市町村の御事情も伺いながら、制度の運用あるいは補助事業の運用について引き続きしっかりと検討してまいりたいと考えております。

○武田良介君 時間なので終わりたいと思いますけれども、今回の法改正は、生活環境保全のためとはいえ、単独浄化槽の所有者に罰則を科すことや公共浄化槽の設置に係る所有者からの同意を得ること、自治体負担の問題など、慎重で十分な議論が必要だと考えます。
 そもそも、なぜ会期末なのか。議論が十分尽くされないまま、本日も二法案をまとめて成立させるということでは立法府の責任を果たせないということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

すべて表示

関連資料

しんぶん赤旗「市町村の負担増える 武田氏/浄化槽法改定案に反対」

参考資料

環境委員会配布資料