武田良介参院議員は、豚コレラの対応にあたっている公務員獣医師の不足・偏在を挙げ、防疫体制にも支障が生じていると指摘。公務員獣医師の現場の実態を踏まえた獣医療全体の体制強化を求めました。
議事録
○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
愛玩動物看護師法について質問をいたします。
獣医療の現場について、公務員獣医師の方からも、またあるいは産業動物獣医師やられている方からもお話を聞いてまいりました。そのことを踏まえて質問させていただきたいというふうに思います。
まず、豚コレラの問題に関わって質問をいたします。
現在、豚コレラが大問題になっておりますが、この対応に当たられる公務員獣医師の方々、獣医師の偏在も存在する中で、公務員獣医師が足りないという現実があるというふうに思います。今回の法案を検討するに当たって、公務員獣医師の現場での獣医療についてはどんな獣医療が求められているのか、体制は十分なのか、あるいは処遇はどうなのか、こういった点で現地の実情をより深くつかむヒアリングや検討はなされたものなんでしょうか。発議者の方に伺います。
○衆議院議員(鬼木誠君) 御指摘のとおり、公務員獣医師の現場での獣医療において、その体制の在り方や処遇について課題があると承知しております。昨今の豚コレラ等、また家畜伝染病といった課題もございます中で、公務員獣医師の仕事、役割の大切さも認識しているところでございます。
そうした中で、私の地元福岡県などでは独自の俸給表を作って獣医師の採用を力を入れておりましたり、また、県によりましては、県庁入庁の年次ですね、年齢制限の引上げなどによってその採用拡大を努めているという状況もされているということでございます。
今後、必要に応じて検討することになると考えております。
以上です。
○武田良介君 今後必要に応じて検討ということでありましたが、直接関係ないというふうに思われるのかもしれませんけれども、皆さんもですね、思われる方もいらっしゃるかもしれませんけれども、小動物の分野では一定の獣医師の方がいらっしゃる、動物看護師の方もいらっしゃる一方で、産業動物、公務員獣医師の現場ではやっぱり偏在で足りないということが指摘をされ、福岡のような取組も私は伺っておりますけれども、そういうことも指摘されている。それだけに、総合的に、本法案を審議する上でも、獣医療の全体像、その実態をつかんでいくことが大切ではないかということを考えております。
私、長野県の担当者の方にお話を伺ってきました。この方はもちろん防疫員であられて、獣医師の免許も持たれている方々でありますけれども、豚コレラ発生の際のお話を伺ってまいりました。
長野県で発生という事態を受けて、二十四時間以内の殺処分をしなければならないということで、県職員の方、市町村職員の方、自衛隊の方々などとともに防疫員の方も現地に入ったと。二十四時間以内の殺処分を終えて防疫員の方が引き揚げることになってから、その埋却だとか汚染物品の処理、消毒という作業を残った県や市町村の職員の方が当たられるということなんですけれども、専門的な知見が十分ないがために混乱が生じた、作業が遅れたということをおっしゃっておりました。
つまり、防疫員の方だけではなくて、専門的知見を持った方がもっと現場に必要だということの証左だというふうに思うわけです。そうであるならば、公務員獣医師の現場の実態を踏まえた獣医療全体の体制強化についてもっと議論がなされるべきではないかというふうに考えますけれども、発議者の方、いかがでしょうか。
○衆議院議員(高木美智代君) お答えいたします。
御指摘のとおり、地方自治体の現場におきまして公務員獣医師の担う役割は大変大きなものがありまして、その数が不足しているのではないかという指摘があることは承知をしております。そのため、県独自で公務員獣医師や産業動物の診療業務に従事する獣医師を志す学生や高校生に対して修学資金を貸与するなど、制度を設けている県もあると聞いております。承知しているだけで十九県でございます。
御指摘の課題の解決に向けまして、今後も議論を深める必要があると考えております。
○武田良介君 今日は農水副大臣にも来ていただきまして、今紹介しました殺処分の際の話だけではなくて、捕獲された野生のイノシシが豚コレラに感染していないかどうかということについてこの防疫員の方が仕事に当たられている、こういうお話も聞いてまいりました。
イノシシが捕獲されると、防疫員の方が岐阜県との県境まで約二時間掛けて二名で現地に行くということでした。非常に大切な仕事なんですけれども、それだけで一日が終わってしまうと。これまでの本来の防疫の仕事に加えて豚コレラの対応が入っているので非常に忙しいと。何より豚コレラの終息について先が見えないことが本当につらいところだということをおっしゃっておりました。
今回のこの豚コレラの経験を踏まえて、今後更に求められてくる防疫措置、これをどう行うかということから考えても、やはり獣医療の体制、全体の体制の強化ということを行う必要があるのではないかというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。
○副大臣(高鳥修一君) 武田委員にお答えをいたします。
豚コレラの防疫対策を始め、安全で良質な国産畜産物を安定的に国民に供給するためには家畜を健康な状態に保つことが重要であり、委員御指摘のとおり、公務員獣医師を含む産業動物獣医師の果たす役割は大きいものと承知をいたしております。
産業動物獣医師につきましては、地域によってはその確保が困難なところがあるという状況であることから、まず産業動物獣医師への就業を志す獣医学生等に修学資金を貸与する地域への支援、それから獣医学生に対する臨床実習への参加の支援、そして中堅獣医師等の能力向上を目的とした臨床研修の実施への支援等の施策を実施しているところでございます。
このような施策の実施を通じまして、産業動物獣医師の確保を図り、獣医療全体の体制強化に取り組んでまいりたいと考えております。
○武田良介君 この獣医療全体の体制を強化していくということは非常に大事だと思うんですね。これまでも、口蹄疫だとか鳥インフルエンザだとか重大な疾病、感染病などが発生した場合に、この防疫体制に支障を生じかねないということがこれまでも指摘をされてきたところだというふうに思います。今回の愛玩動物看護師の議論と同時に、大局的に獣医療の現場の声や実情をよく捉えて、また獣医師の偏在という課題についても正確につかみながら対応していかなければならないということを強調したいというふうに思います。
発議者の方にお伺いをしたいと思うんですけれども、本法案は、現在の民間資格である認定動物看護師のうち、愛玩動物看護師の道に進む方のみを国家資格化するものであります。認定動物看護師の資格を持って産業動物に進む動物看護師の方もいらっしゃる中で、愛玩動物の看護師に限っていくということになれば、愛玩動物看護師に進む方のみが増えるということにはならないのか、その偏在を生むということにはならないのか、伺いたいと思います。
○衆議院議員(小宮山泰子君) 御質問ありがとうございます。
産業動物については、畜産業者等が産業動物等の飼育に関して一定の知識、経験等を有していることが多いと考えられ、産業動物等の看護師についての具体的なまた要望は現時点では上がっていないと承知しております。この点においては偏在につながるとは考えておりませんが、委員御指摘のまた産業動物の看護師に関しても、今後必要に応じて検討することになると承知しております。
○武田良介君 今後必要に応じて検討ということでありましたけれども、この産業動物の看護師自身はこれまでも求められてきた経過があるわけであります。
例えば、農水省が二〇一〇年八月に出されております獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針、この中で、例えば社会的ニーズの高まりという中で、小動物分野、産業動物分野等の獣医療の現場において、獣医師による高度かつ多様な診療技術の提供が求められており、このためには、獣医師と、動物看護職、検査技師、家畜人工授精師、削蹄師等の獣医療に関わる他分野専門職との連携の必要性が高まっているということも指摘をされておりますし、それから、動物愛護法が二〇一二年に改正された際の附帯決議、これも、「将来的な国家資格又は免許制度の創設に向けた検討を行うこと。」というふうにあるわけであります。この指摘を踏まえた議論がなされていくべきだということを改めて強調したいというふうに思います。
この愛玩動物看護師というのは、先ほどもありましたように、ただ獣医師の方を助けるというだけではなくて、獣医療が高度化、多様化する中で、その診療現場でのチーム医療に役割を果たしていく大きな役割があるというふうに思っております。それだけに、動物看護師全体の処遇の改善も必要なのではないかというふうに思っております。
厚労省に最初に確認したいと思うんですが、衆議院の議論の中で、現在の動物看護師の収入や今後の処遇改善に関わる質問で農水省が答弁している中で、獣医師の給与については厚生労働省が行っております賃金構造基本統計調査で把握ができる、ただ、動物看護師については現在対象となっていないために統計的に把握できていない状況だという答弁がありました。
厚生労働省に確認したいと思うんですが、動物看護師というのはこれ厚労省の賃金構造基本統計調査の対象と今度はなってくるのか、国家資格化されることによってなってくるのかどうか、お伺いしたいと思います。
○政府参考人(土田浩史君) お答え申し上げます。
賃金構造基本統計調査におきます調査対象職種についてでございますけれども、まず統計法に基づきます統計基準であります日本標準職業分類での取扱いがどうなっているか、また国民全体の調査でございます国勢調査における取扱いがどうなっているか、また当該職種に従事する労働者の数、ボリューム、そして当該職種の賃金の把握に対するニーズの大きさ等を勘案いたしまして、適時見直しを行っていくということにしているところでございます。
したがいまして、愛玩動物看護師が国家資格になることをもって直ちにこの調査の対象となるというものではございませんが、統計基準でございます日本標準職業分類におきます当該職種の取扱いにつきまして注視してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○武田良介君 国家資格化をもって直ちに統計で取るわけではないと。先ほどの答弁紹介した中にもあったように、現在でも特につかんでいるわけではないということなんですね。つまり、今も分からないし、これからも、国家資格化する中で例えば給与がどうなるのかということが分かるわけではないということなんです。
環境省にもお伺いをしたいと思いますが、衆議院の答弁の中で、処遇の向上に向けて、その社会的役割の周知、認知度の向上、必要な環境整備をやっていくということを答弁されておりますけれども、これは動物看護師の処遇改善だとか賃金の引上げにつながっていくというふうに捉えていいんでしょうか。
○国務大臣(原田義昭君) 動物看護師の活躍はこれから本当に必要であろうと、今回の法律を成立を見まして、ますますそう認識するところであります。
国家資格取得者が従事する業務内容、勤務実態等については、関係団体の協力を得ましてこれから必要な情報の積極的把握に努めてまいりたいと、こういうふうに考えております。
○武田良介君 処遇が改善されるという明確な答弁があるわけではなかったかというふうに思うんですが、なぜ聞くかといえば、こういう動物病院で働かれている動物看護師の方々の処遇が必ずしも良くない、低賃金であるということも、そういう指摘をする声も私も聞いているからであります。せっかく獣医療に関わっていきたいという思いを持っていかれる中でも、ブラック企業のようなことではいけないというふうに思うわけであります。
これ、実態が分からないということなんですけれども、原田大臣にも伺いたいと思いますが、まず、この現在の認定動物看護師の処遇について実態を調査していく、これ必要ではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(原田義昭君) 先ほど答弁いたしましたように、今度はいよいよ本格的な具体的内容、勤務実態等について、更にしっかりとした調査をして把握しなければならないと思っております。当然、関係団体の御協力も得なきゃいけませんし、最終的に、今委員がお話しになりましたように、その処遇の改善も含めて、また業界全体がそういういい方向に進むように、私どもも環境省として努力をしたいと、こう思っております。
○武田良介君 実態の調査を始めていくということで、前向きな答弁いただいたというふうに思います。
本当に、重ねてになりますが、強調したいのは、愛玩動物の看護師というだけではなくて、獣医療の全体像を本当に捉えて体制を強化していくための議論がなされなければならないということを私は本当に思っておりますし、そういった処遇の改善もなされて、社会的な地位の向上、やっぱりこれが図られていくということが本当に大事だということも強調して、質問を終わりたいというふうに思います。