6月9日、国土交通委員会で建築物省エネ法改正案の質疑が行われました。建築物の省エネ対策で先進的ともいわれる長野県の施策を紹介しながら、国が地方の施策を支援し、地方でも雇用が増えるようにもっと積極的に対策をとるべきだと質問しました(スタッフ)。
議事録
○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
建築省エネ法ですけれども、当初、これ検討中とされていた法案でありましたけれども、今国会の提出というふうになりました。その背景には、やはり国民的な世論、気候変動対策に本気に取り組まなければいけない、そして住宅の断熱性能、省エネ性能の向上を追求しなければいけない、そういう国民的な理解があるからだというふうに思います。だからこそ、建築物省エネ法を国会に提出してくださいというインターネット署名も取り組まれておりましたけれども、一万五千筆超える署名が集まっているというふうに承知をしております。
今回この法案が提出されること、これ自身も当然のことだというふうに思いますが、問題は、気候変動対策として十分な対策になるのかどうか、また、健康で快適な住宅を必要とする方にその住まいを確保することができるかどうか、やっぱりこのことが大事になってくるんだろうというふうに思います。そういう立場で質問させていただきたいというふうに思っています。
配付資料も配らせていただきましたけれども、長野県では、二〇五〇年ゼロカーボンの実現に向けて、信州の恵まれた自然環境と森林資源を生かしながら国の基準を超える高い断熱性能を有する住宅を目指してと、令和三年度に信州健康ゼロエネ住宅指針というのを策定をしました。で、今年度です、この指針に適合する住宅への助成制度として、配付資料にありますような信州健康ゼロエネ住宅助成金というものを創設をしております。
これ、どういう性能の住宅かということをお聞きしました。最低基準は、国が義務付けようとしている等級四よりも高いZEHレベルの等級五ということであります。その上にある推奨基準、先導基準というものを長野県は設けておりまして、地域別に熱貫流率を定めるというふうになっております。大体、等級六そして七にそれぞれ該当するものであります。
長野県のように、等級でいうこの五、六、七というところを目指している自治体もある。しかし、先ほど来指摘があるように、国が等級四、ここから義務付けスタートということなんですよね。これ、これから断熱性能を高めようと、改修に力を入れようと、そういう自治体の目標を引き下げるというんでしょうか、足を引っ張るような、そういう効果になってしまうのではないかというふうに思いますけれども、国交省の認識を伺いたいと思います。
○政府参考人(淡野博久君) お答え申し上げます。
御指摘のように、この信州健康ゼロエネ住宅のように、一部の地方自治体におきまして、より高い断熱性能を有する住宅について基準を設けて、その普及に取り組んでいると承知してございます。
御指摘のように、国の方では、そういう動きも踏まえまして、本年四月にZEH水準に相当する等級五を追加をいたしまして、本年十月にはこれを上回る断熱性能の水準として等級六及び七を施行することといたしてございます。これは、先ほど御紹介のございました、それぞれ信州の場合の最低推奨、先導におおむね相当している水準ということでございますので、国がこういう上位の五、六、七という等級を設定した結果として、ほかの公共団体においても同じような取組がより進みやすくなってくるんではないかということを国としては期待しているところでございます。
○武田良介君 いや、先ほども答弁ありましたね、より高い水準が全国に広がるように期待をするということで。で、等級五というのも二〇三〇年ということでやりたいとおっしゃるわけですよね。そうであれば、もう取り組んでいるんだから、自治体は、国がどんどんと、等級四ということではなくて、五ということを今からやるべきではないかというふうに思うんです。
冒頭言いましたように、やはり気候変動対策なんですね。地球が悲鳴を上げている状況があるわけであります。十分な対策であるかどうかということが大事だと思いますし、広がってほしいというのであれば、国が目標を高めに設定していくと、野心的な目標を持っていくということが広げていく何よりの力だというふうに思います。
日経アーキテクチュアという雑誌の記事を見ておりましたら、断熱性能を高める上で、窓の性能を高めることが重要だということが強調されておりました。等級五と等級六は窓を替えていくことで達成できるということでありました。これ読みますと、価格についても、等級四に対して等級五は大体一三三%の価格でできるということでありました。
今現に達成できている窓のその性能、改修ですね、これ技術的にもできる、等級五はできる、で、価格も一三三%ということでありますから、そうであれば、支援をもう少し上乗せをする、今から等級五目指していく、これ大事じゃないかと思いますけれども、改めて局長に伺いたいと思います。
○政府参考人(淡野博久君) 等級五、いわゆるZEH水準の断熱性能を有する住宅の整備を推進していくこと、これは非常に重要な課題だと考えてございます。
このため、今年度から、今年度予算におきまして、エコリフォーム推進事業として、このZEH水準の仕様に、満たすような形での改修を行う場合には国が直接補助を行うという制度も新設をいたしまして、現在その支援を行っているところでございます。
○武田良介君 長野県の制度は、求めている性能、国より高い、この点では評価しているんですけれども、同時に課題もあると思っておりまして、配付資料の一番下のところにも記載されているんですけれども、国の制度として、制度との併用は認めないというふうになっているんですね、なっているんですよ。
で、これ、なぜなのかと私も思いましたけれども、やはり国が求める性能がまだ長野県より低いからなんじゃないかなと思うんです。等級五を最低の基準として求めて、国の義務は等級四だと支援の対象も変わってくると、これも一つの要因ではないかなというふうに思いますが、これ利用者の方からすれば、やはり困惑する、ずれがあるんじゃないかというふうに思いますけれども、この点、局長、いかがでしょうか。
○政府参考人(淡野博久君) こちらは、恐らく県の方がこの自ら支援を行う場合に、そのこどもみらい住宅支援事業でございますとか地域型住宅グリーン化事業を活用する場合にはもうそちらで応援をするということで、予算の効率的な活用のために県として設定している方針だというふうに私は思っております。国として別にこういうことを排除しているわけではございませんので、恐らく県の予算の効率的な配分の観点からこういうルールを設定しているものと考えております。
○武田良介君 利用者の方からすれば、県なのか国なのかというのはそんなに違いがないわけだと思うんです。
それに、この日経アーキテクチュアという雑誌の記事見ましたら、各等級を実現するために掛かる建材購入とそれから施工に掛かる費用、合わせて幾らになるのかと、やっぱり一定掛かるんですよ。この雑誌では、東京なんかの六地域にしていますけれども、大体、等級四で百五十万円とか、等級五で二百万円、等級六で二百二十万円、等級七で約四百万円というふうにありました。
やっぱりこの支援は県だけのものではなくて国のものも一緒に使えると、その方がより高いものを目指すこともできるということもやはりあるのではないか、そういう選択もできるのではないかと。お金のある方だけが省エネ、断熱の改修ができるということも、またこれはよくないというふうに思いますので、低所得の方でも省エネ断熱改修ができるような支援を、国、県、市、連携して行っていけるように、是非取り組んでいただきたいというふうに思っております。
誰一人取り残さない住宅の省エネ、断熱化ということも重要だというふうに思っておりまして、健康の面から指摘をしたいと思います。
WHOが二〇一八年の十一月に、暖かい断熱性能のある住宅について、住宅と健康ガイドラインというものを発表をいたしました。これ各国に勧告をしているわけなんですね。こういう記載がございました。寒さによる健康への悪影響から居住者を守るために室温を十分に高くすべきであると。温暖な気候若しくはそれ以上に寒冷な気候である国においては、十八度が冬における多くの人口の健康を守るための安全でバランスの取れた室温として推奨されるということなんです。
この室温を十八度に保てるというのは、どの程度の性能を持った住宅なのか、この点について御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(淡野博久君) お答え申し上げます。
国土交通省におきましては、断熱改修を行った住宅の改修前後の室温や居住者の健康状態を分析するプロジェクトを二〇一四年度から実施しており、断熱化による健康面への効果に係るエビデンスの充実化を進めているところでございます。
そちらで得られた知見として、居間の室温が十八度以上の居住者は十八度未満の居住者に比較して健康診断の結果が優れていること、断熱改修後に居間と脱衣所の室温が十八度以上に上昇した住宅では、熱め、長めの危険入浴をする方が有意に減少することなどが報告されております。
一方で、最高水準の断熱性能を有する住宅であっても、全く暖房を切った状態では室温が十八度に保つということは非常に困難であると承知してございます。このため、適切な暖房を行うことにより、室温を十八度以上に保つとともに、住宅の高断熱化や暖房設備の効率化によって室温を十八度以上に保つために必要となる暖房エネルギー消費量を削減していくことが重要であると考えております。
○武田良介君 もちろんいろんな前提条件とかあるんだとは思うんですが、大体室温を十八度に保てるというのはどの程度の性能を持った住宅のことを考えているのかということをお聞かせいただきたいというふうに思っておりますが、じゃ、端的に言って、今回義務化される水準で十八度を保つことっていうのはできるんですか。
○政府参考人(淡野博久君) 結局、空調をどの程度、例えば十八度に設定して運転をするということで、空調を使い続ければ当然その十八度というのが空調によって保たれるわけですけれども、そちらの空調によって消費される暖房用のエネルギー、こちらを断熱等級を高くしていけばいくほど小さくすることができるということかと考えております。
○武田良介君 いや、それはもちろんそうだと思うんですけど、ですから、一般的に、夜寝る前に暖房を切りましたと、翌日の朝十八度を保てているかどうかというのが恐らく一番イメージ付きやすいと思うんですね。
だから、夜の、まあ季節による、もう若干よるのかもしれないけれども、どのくらいの性能が必要だというふうにお考えなんだろうかということを、まあそこは漠然としていると思いますよ、うん。どうですか。
○政府参考人(淡野博久君) 済みません、先ほどの信州の住宅に関するパンフレットにおっしゃったようなちょっと記述がございまして、そちらを紹介させていただきますと、暖房設定温度を二十度として、夜の十一時、二十三時に暖房を停止した場合の翌朝の室温でございますけれども、いわゆる等級五ですと、まあおおむね十度を下回らないくらいの水準になる。推奨という、先ほどの等級六ですね、等級六ですと、おおむね十三度を下回らないくらいになる。一番高い等級七レベル、こちらですと、おおむね十五度を下回らないという水準だというふうに、先ほどの信州の方のパンフレットでは紹介されてございます。
○武田良介君 まあ信州ですから、地域的な特徴もあって今のような数字になるというふうに思いますので、東京だとまたこれ違った状況になるのかなというふうに思いますけれども、今お話があったような状況だということであります。
先ほど答弁にもありましたけれども、十八度を保つということになると、健康診断の結果がいいとか、危険な入浴しなくて済むだとか、そういったエビデンスを国交省の方でも積み上げているんだということもありました。
WHOのこの医学的なエビデンス、私も見ましたけれども、その確からしさは中程度だというふうにはなっておりましたけれども、確かに心血管系の疾患の罹患率、この死亡率を下げていくというような記載もありました。非常にこれ重要な点だなというふうに思いますので、改めて断熱化、その重要性を確認したというところであります。
もう一点指摘をさせていただきたいと思いますが、住宅政策ですね。低所得者など経済的弱者の住まいこそ真っ先に対策が打たれるべきだというふうに思っておりまして、そういう点でいいますと、公営住宅をどうするのかということは大きな問題だというふうに思っておりまして、公営住宅の断熱性能を高めるために国は何をしようとしているのか、この点について説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(淡野博久君) お答え申し上げます。
公営住宅にお住まいの低所得者がより低い光熱費負担で良好な温熱環境を享受できるようにするため、公営住宅の省エネ性能の向上を推進していく必要があると考えております。
このため、本年度から、公営住宅の省エネルギーに関する基準につきまして、新築の場合は原則ZEH水準に引上げを行うとともに、整備に対する支援の強化を行いました。また、既存の公営住宅につきましては、省エネ改修や再生可能エネルギーの導入、モデル的な改修の取組に対する支援の強化を行いました。
このように、公営住宅などの公的賃貸住宅において、率先した省エネ性能向上に向けた取組を推進してまいりたいと存じます。
○武田良介君 今、答弁いただきましたカーボンニュートラル実現に向けた公営住宅への支援、これ、予算を見ますと、令和四年度予算で公営住宅整備費等補助、これが十七億円の内数というふうになっております。社会資本整備総合交付金の内数というものが使えるということなんですね。
大臣に伺いたいと思うんですけれども、五月の二十六日、二十七日の二日間、ドイツでG7の気候・エネルギー・環境大臣会合というのが行われたと。ここでのコミュニケを見ましたら、建築分野の中で、より野心的で効果的な政策の必要性を確認するということを言った上で、例えばこういう記述があるんです。建築物から排出される二酸化炭素を削減し、気候強靱性を高めるため、パフォーマンスが最も悪い建築物や公共建築物に特に重点を置き、改修、改築の年間実施率を高めていくというふうになっているんですね。
これ、もっと予算を付けて、本気になって始めていくべきではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 今年の五月二十六日から二十七日にかけて、ドイツ・ベルリンでG7気候・エネルギー・環境大臣会合が開催され、コミュニケが取りまとめられました。
このコミュニケにおきまして、建築物に関しては、二〇五〇年までに温室効果ガス排出ネットゼロを達成するために、より効果的な政策が必要であるとした上で、例えば先ほど御紹介ありました、ストックの改修、改築の年間実施率を高めていくことや、ゼロカーボン、ゼロエミッションの新築建築物を理想的には二〇三〇年までに実現するよう促進していくことなどが盛り込まれております。
国土交通省としては、このコミュニケを踏まえつつ、補助、税制、融資などあらゆる政策を総動員して、ストックの省エネ改修及びZEH、ZEBの普及などを推進し、二〇三〇年度までに省エネ基準をZEH・ZEB水準に引き上げられるよう全力で取り組んでいきたいと決意しております。
○武田良介君 もちろんそういうことだと思うんですが、その予算の規模だとかそのテンポをどこまで速くしていけるのかどうかということが、やはり快適で健康な住まいを確保する点からも、気候変動の点からも重要になっているということだと思うんです。重ねてそのことは指摘をさせていただきたいと思います。
ちょっと時間がなくなってきておりますが、政府が打ち出しております総合緊急対策、この中を見ますと、省エネルギーの推進として、住宅に関わって二つメニューがあると思うんですね。一つは国交省が所管するこどもみらい住宅支援事業、二つは環境省が所管する住宅の断熱改修ということであります。
それぞれに伺いたいというふうに思うんですけれども、どれだけの着工件数、それから省エネ効果を期待しているのかについて御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(淡野博久君) お答え申し上げます。
まず、国交省として推進しておりますこどもみらい住宅支援事業でございますけれども、新築、あとリフォーム両方対象でございまして、いずれも十万戸前後の住宅で活用されることを想定してございます。
省エネの効果については、いろいろな仮定の置き方がございますので、あくまでも試算でございますけれども、最大で年間百万ギガジュール程度の削減に相当するのではないかと考えております。
○政府参考人(白石隆夫君) お答え申し上げます。
さきの緊急総合対策におきまして、住宅の断熱改修などをより即効性のある形で省エネ対策を実施するということで、環境省で実施しております既存住宅における断熱リフォーム支援事業について、取り組みやすく即効性のある対策を促すために要件を緩和いたしまして、居室だけの窓改修等を補助対象に追加する等の措置を講じてございます。
この事業におきましては、昨年二万件程度の補助実績がありまして、今回も同程度かそれ以上の改修の実施を想定してございます。一件当たり一五%程度の省エネ効果を見込んでおりまして、実際の申請が戸建てか集合住宅のいずれかによって効果に幅ございますけれども、年間約一から三万ギガジュールの省エネ効果があるというふうに推計をしてございます。これ、CO2換算いたしますと、千から三千トンCO2、こういった削減効果になるというふうに考えてございます。
引き続き、こういった住宅の脱炭素化に取り組んでまいります。
○武田良介君 時間ですので終わりにさせていただきたいと思いますけれども、再エネはもちろんですけれども、省エネを進めていくことも、先ほどもお話ありました、特にリフォームなんかは、住宅のリフォームなんかはですね、地域の大工さんの仕事にもなっていく、雇用が生まれる、地域経済も元気になっていく、そういう面も含めて、これ私たち非常に重要だというふうに思っておりますので、そういった取組、更にこれからも進めていけるように頑張りたいというふうに申し上げて、終わりたいと思います。
○政府参考人(淡野博久君) 委員長、答弁の訂正をちょっと。
○委員長(斎藤嘉隆君) はい。淡野住宅局長。端的にお願いします。
○政府参考人(淡野博久君) はい。
済みません。先ほど、長野県の補助で国のこどもみらいですとか地域住宅グリーン化と併用ができないという点については、県がそういうルールを決めているというふうに御説明を申し上げましたが、確認をいたしましたところ、この長野県の独自の補助自体が、国の社会資本整備交付金による国費、これを活用して行っているということですので、国によるほかの補助金との併用ができないということからそういうルールにしているそうでございます。
○武田良介君 終わります。