国会質問

質問日:2016年 10月 20日  第192臨時国会  環境委員会

リニア 相当な環境負荷生じると大臣の認識問う

 リニア中央新幹線の建設計画では、南アルプスを貫通するトンネル工事を伴うため、環境に深刻な影響があります。現地を視察し、住民合意のないまま建設に突き進むことに強く憤りを感じました。

 初質問となる今回、トンネル掘削に伴う発生土置き場の予定地とされる場所は、かつて大規模土砂災害が発生したとしてあることを指摘すると、環境大臣は「憂慮すべき」と答弁しました。

 国立公園でユネスコエコパークにも登録された貴重な自然を壊すリニア中央新幹線建設はやめるべきです。

 

山本環境大臣の認識を問う

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議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 リニア中央新幹線について質問いたします。
 リニア中央新幹線事業は、二〇一四年十月十七日にJR東海の東京―名古屋間の中央新幹線工事実施計画を国土交通大臣が認可をし、環境アセスも実施されています。その結果、地下水、水がれの問題、また発生土の問題、工事に伴う騒音や振動の問題、電磁波の問題など、様々な環境破壊や影響があると指摘をされております。
 環境影響評価の手続の中で必要となっている環境大臣意見、これ資料の一にも付けましたが、この資料一の第二パラグラフのところにはこういうふうにあります。「本事業は、その事業規模の大きさから、本事業の工事及び供用時に生じる環境影響を、最大限、回避、低減するとしても、なお、相当な環境負荷が生じることは否めない。」というふうにあります。これが環境大臣だというふうに思いますが、そこで山本環境大臣にお伺いしたいと思いますが、山本大臣もこの立場は変わりないでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) 平成二十六年の環境大臣意見では、リニア中央新幹線建設等に係る多大な電力消費に伴う温室効果ガスの排出、トンネルの掘削に伴う大量の残土の発生、多くの水系を横切ることによる地下水や河川への影響について十分な環境保全措置を求めております。
 この大臣意見については、環境影響評価法に基づいた、環境大臣が申し上げたものであり、当然のごとく、私としてもそれを踏襲してまいります。
○武田良介君 踏襲していくというお話がありました。相当な環境負荷が生じるというふうに書かれておりますので、だったら環境行政としてはその環境の保全に責任を持たなければならないというふうに思っております。
 では、リニアの実態がどうなっているかということです。リニアの八六%はトンネルということになります。最も難工事が予想されているのが山梨県や静岡県や長野県にまたがる南アルプスを貫通する工事です。
 この南アルプスとはどういうところか。資料の二を付けました。南アルプスには、三千メートル級の山々が十三座もある。南アルプスには大変たくさん雨が降るということで、雪の北アルプス、雨の南アルプスと、こういうふうにも言われています。それだけ南アルプスは水が豊かなところであります。問題は、このリニア中央新幹線の建設というのは、この南アルプスに穴を空けると、このことによって自然破壊が起こるのではないかということです。
 私、先日、山梨県にあるリニア実験線を視察して、また沿線住民の皆さんから直接お話も伺ってまいりました。資料、一つ飛びますが、四の一ですが、山梨実験線の建設のためにトンネル工事がされていますが、都留市にあるトンネルのすぐ下に行くと、トンネルから水が出たということで湧水をためる貯水槽がありました。ただ、全て出た水がこの貯水槽に入っているわけではなくて、その隣には池もありました。この池は、リニアの実験線が造られて、景観が壊れて、騒音もあり、日照も悪くなったということで転居された方の跡地だそうです。近くには沼地もあり、すぐ近くの沢は水量が減ったということも言われておりました。資料の四の二ですが、これは大月市の沢の水がかれて、ポンプアップした水を人工的に流して川を再現している、そういうところです。
 国交省にお伺いしたいと思いますが、山梨実験線の延伸区間において、トンネル掘削のために減渇水が起こったと認められた申出は何件あったか、お答えいただきたいと思います。
○政府参考人(潮崎俊也君) リニア山梨実験線の延伸区間においての今の御質問でございますが、JR東海によれば、平成二十年から平成二十五年の間に行われました山梨リニア実験線の延伸工事におきまして、当該工事との因果関係が認められた減渇水が三十四件あったとのことでございます。このうち三十三件につきましては、代替水源の確保など補償の対応を完了しており、残りの一件については、現在その代替水源等の確保に向けた調整を進めているという状況でございます。
○武田良介君 三十四か所も起こっているということは非常に重要だと思います。水がれが起こるということになれば、その沢の水を飲料水として使用されている方、農業用水として使用されている方、こういう方たちにとっても大問題ですし、何よりも地下水が抜ければ当然生態系への影響もあると。代替水源という話もありましたが、補償すれば済むという話では決してないというふうに思います。
 この山梨実験線、トンネル区間三十五・一キロメートルだと思いますが、今度は東京―名古屋間で見れば、トンネル区間は二百四十六キロにもなりますので、距離だけで見ても七倍、どれだけの水がれが起こるのか、影響が大きく出ることは間違いないというふうに思います。
 距離だけではありません。南アルプス、それから木曽山脈にかけて大変多くの活断層があります。今年の五月の二十六日に我が党の辰巳孝太郎参議院議員が国土交通委員会で、このリニアの問題について、品川―名古屋間の活断層帯は具体的に何があるのかという質問をして、文科省は、具体的な活断層帯の名前として、糸魚川―静岡構造線断層帯など七つを挙げております。断層のずれに対しての対策は全く取られていないということも追及いたしました。
 ちょっと資料戻りますが、資料二の二に付いておりますのは、地質学者で日本地質学会名誉会員の松島信幸教授が作成されたもので、もっと多くの断層がここには記されています。活断層があるということは、その周りに当然破砕帯もあって、そこに穴を開けたら地下水が大量に出かねないと、雨の南アルプスからもっともっと水が出てしまうのではないか、水が出たら南アルプスの地表面にも沢がれが、水がれが出たりする、生態系を壊すことになると思います。
 こうした水がれ、環境を壊す事業は許されないのではないかというふうに思いますが、山本環境大臣、いかがお考えでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) 環境大臣意見では、地下水がトンネル湧水として発生して、地下水位の低下、河川流量の減少及び枯渇を招き、ひいては河川の生態系に不可逆的な影響を与える可能性が高いことを指摘して、これらについて十分な環境保全措置を求めております。事業者であるJR東海においては、責任ある事業主体として、環境大臣意見を踏まえ、具体的かつ適切な環境保全措置を講じていただきたいと思っております。
○武田良介君 実際に水がれが起こっていると、もう山梨でも起こっているということが非常に大事だと思いますので、そこの認識をしっかり持つことが大事ではないかというふうに思います。
 次に、水以外の問題についてもお聞きしたいというふうに思います。
 長野県の大鹿村、ここをリニアが通るわけですが、釜沢というところから小渋川を渡って伊那山脈の方へリニアは突き抜ける計画になっています。ここにトンネルを掘るわけですが、資料の五の一、御覧いただければと思いますが、大鹿村は、その地図にも蛇紋岩崩壊地というところがありますけれども、こういうふうに、ここはかつて昭和三十六年のときに大規模な土砂災害が起こった場所です。これは通称三六災害というふうに言われております。
 国土交通省にお伺いしたいと思いますが、ここが三六災害が起こった場所だと、この事実、間違いないでしょうか。
○政府参考人(潮崎俊也君) 中部地方整備局の天竜川上流河川事務所によりますと、昭和三十六年の六月、当時の台風六号の接近と梅雨前線の停滞による豪雨のため、長野県の伊那谷地域の各地で土砂崩れなどの土砂災害が発生をいたしまして、その数は伊那谷全体で一万か所を超えたとされております。また、この災害によりまして、大鹿村では、村にございます大西山が崩落をいたしまして、三十二戸が流失、死者四十人、行方不明者十五人を出すという事態が発生したということでございます。
○武田良介君 今お話ありましたが、国土交通省の中部地方整備局のホームページ見ますと、三六災害の悪夢という資料も紹介されています。かつて大規模災害が起こった、このときは、今数もありましたが、全体で九十九名もの方が亡くなったというふうにここにも書かれております。資料五の二に付けておりますのは、今お話もありました大西崩れという大西山崩壊の当時の現地の写真です。これだけ本当に大きな被害が起こったのが三六災害だということです。
 この三六災害は、今お話ししました、トンネルを掘るという大鹿村だけではなくて、長野県の南信地方各地で広く起こっております。例えば、大鹿村の隣の松川町、ここも三六災害の際に大きな被害が出ております。松川町は、そのときの被害を忘れないようにということで、今も役場に当時の写真を飾っておられます。今、ここにリニア建設のために出てきた残土を置こうと、その予定地になって、地元の方は災害の心配をされております。
 国土交通省にお伺いしたいと思うんですが、これまでにないような前代未聞の残土が発生する、三六災害が起こったようなところに、かつて起こったと分かっているところに次々と残土を置いていくと、これでもし災害が起こったら一体どうするんでしょうか。
○政府参考人(潮崎俊也君) リニア中央新幹線のトンネル掘削工事などで発生をいたします建設発生土の置場につきましては、平成二十六年の七月にJR東海に対して述べました環境影響評価書に対する国土交通大臣意見の中で次のように述べております。
 発生土置場から流出土砂による河床の上昇や渓床、これは渓谷状の河川の水底のことでございますが、渓床への堆積に伴う災害危険度の増大、また崩壊などに伴う土砂災害、濁水の発生に伴う河川環境への影響を最大限回避するよう、発生土置場での発生土を適切に管理することというふうに東海に対して求めてございます。
 これに対しまして、JR東海は、この補正後の環境影響評価書におきまして、発生土の土質に応じたのり面勾配の確保や、擁壁、排水設備といったそうした対策設備の設置、また土砂流出防止に有効なのり面への播種、いわゆる植物の種をまくということでございますが、播種や緑化などにより発生土置場の崩壊に伴う土砂災害などが生じないように努めるとしております。
 今後、JR東海では、関係法令、河川法等の関係法令ございますけれども、に従って、地元自治体と協議をしながら、この環境影響評価書に示した措置を的確に講ずることによりまして土砂災害の防止に努めるということでございます。
 国交省といたしましても、こうした環境保全の措置をしっかり講じながら、安全かつ確実に事業が行われるよう、引き続きJR東海を指導監督してまいる所存でございます。
○武田良介君 最大限回避するように努力するのは当然の話だというふうに思うんですが、私が聞いたのは、災害がかつて起こった、分かっている、そういうところに残土を置く、そういうところだと分かっていて残土を置いて災害が起こったら、常識的に考えたら事業者の責任だというふうに思われるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。もう一度お願いします。
○政府参考人(潮崎俊也君) まずは、環境影響評価書に基づきまして、私どもあるいはJR東海におきましても対策を着実に実施するということでございます。
 一般的に、こうした土砂に対する対策は、先ほど申し上げたように大きく三つあると考えておりまして、まず水をいかに適切に処理をするかということ、またその上で、堆積をさせますその土砂の形状、特に斜面の勾配でございますが、こういうものをしっかり確保をして問題のないようにするということが基本でございまして、そうしたことが着実になされるよう、私どもも東海も対応してまいるつもりでございます。
○武田良介君 私が聞きたいこととちょっと違う答弁かと思うんですが、ちょっと環境大臣にも、今のやり取りも聞いてお伺いしたいと思うんです。
 これまで災害が起こったようなところに残土を置いていくということ、これで本当に災害が起こったらどうなるのかと。環境大臣の御認識、いかがでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) 通告をいただいていない御質問でございますのでお答えにくいわけでございますけれども、一般論的に申し上げますと、憂慮すべきことであると思います。
○武田良介君 十分な答弁だとは思いませんが、こういう心配をしているのは私だけではありません。
 例えば、長野県は、アセスの過程で一貫して環境保全の点からも意見を述べておられます。資料の六に、長野県知事の二〇一四年六月十六日に出されました環境影響評価書への要望書を出しました。この前文の四段落目にはこういうふうにあります。「事業者に対しては、地域の環境保全に責任を有する知事の意見であることを十分に認識した上で、環境影響評価書に適切に反映することを強く求めたところですが、」、ちょっと飛ばしますが、「一部の事項については、知事意見が十分に反映されたとはいえないものと考えております。」というふうにあります。
 環境大臣意見、これ資料の一にありますが、これの下から二段落目のところには、「本事業は関係する地方公共団体及び住民の理解なしに実施することは不可能である。」というふうにも言っております。そうなると、この長野県知事意見の要望はどうなるのか。知事意見が十分反映されたとは言えないというふうに言って要望書を出しているわけですから、これで理解が得られたというふうに山本環境大臣、お考えでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) 事業実施に当たり、関係する地方公共団体や住民の理解を得ることは極めて重要だと考えております。環境大臣意見においても、地元自治体の意見を十分勘案し、住民への説明や意見の聴取等の関与の機会の確保についても十全を期すことを求めております。
 事業者であるJR東海においては、住民への説明等について、責任ある事業主体として、環境大臣意見を踏まえ適切に対応いただきたいと考えております。
○武田良介君 長野県知事意見は、資料にもありますが、三点言っておりますが、この三点の中で見ましても、例えば非常口を減らしてくれという話だとか、それから三番目、地上の構造物、これの見直しなんかも言われておりますが、これについては全然答えられておりません。これで理解が得られたというふうには到底ならないというふうに私は思います。
 それから、JR東海の姿勢についても指摘をしておきたいというふうに思っております。
 私、長野県の大鹿村の釜沢地域に行きまして、お話をお聞きいたしました。こういう話がありました。JR東海の説明では、釜沢地域には一日に三百台のダンプが通ることになると言われた、恐喝以外の何物でもないと。仮置場にしてくださいと言われても、どうぞと簡単に言えない状況だったが、じゃ、別の地域に迷惑掛けるけどいいんですねと迫られたというお話がありました。
 また、JR東海は、これまで、リニア工事の着工について住民の皆さんとの合意が必要だと言ってきた。しかし、最近は、住民の皆さんの理解が進んでいるかはJRが判断すると、こう言い始めた。説明会を数多くやってきた、質問もたくさん出されたから理解は進んだと考えていると、JR東海はこういうふうに言っているそうであります。しかも、説明会に参加した人に言わせれば、質問の回数が限られる上、再質問も認められない、だからJRの言い分を聞かされるだけになってしまうと。そういうJRの都合のいい運営になっている。これで住民の理解が得られたとJRが判断する。
 事業者であるJR東海が住民の理解が進んだかどうかを判断するというようなことは、合意をつくっていく上であってはならないというふうに考えますが、環境大臣、どうでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) 繰り返しになりますけれども、事業実施に当たりまして、住民の理解を得ることは極めて重要です。事業者であるJR東海においては、責任ある事業主体として、環境大臣意見を踏まえて、十分な住民への説明など適切な対応をお願いいたしたいと思っております。
○武田良介君 大鹿村では、つい先日、十月の十四日にもJR東海の説明会が開かれています。JR東海は着工の条件が整ったと述べたそうです。しかし、地元住民の皆さんは十分理解が進んだという状況では決してない。大鹿リニアを止める実行委員会が、この説明会の終了後に記者会見を開いています。ここでは、これまでより一層理解と同意が遠くなった、着工を判断したプロセスも不透明だというふうに批判をされています。JR東海は、十七日の月曜日には、大鹿村に対し工事着手の意向を示したとも報道もされています。しかし、大鹿村だけではなくて、沿線住民の皆さんはどこでも理解している、合意しているというふうに言える状況ではないというふうに思います。
 改めて山本環境大臣にお聞きしたいと思いますが、こうした住民の声を正面から受け止めるべきではないでしょうか。理解なしに実施は不可能と、環境大臣意見、これ踏襲するということですから、工事はやめるべきと明言すべきではないでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) 繰り返しになりまして本当に恐縮でございますけれども、事業実施に当たりましては住民の理解を得ることは極めて重要でございます。特にリニア中央新幹線事業は、その事業規模の大きさから相当な環境負荷が発生する懸念があると元々認識をいたしておりまして、事業者であるJR東海においては責任ある事業主体として適切かつ丁寧にやっぱり実施をしていただきたいと考えております。
○武田良介君 JRにはそうやっていただきたいといっても、地元の皆さんはそういう姿勢じゃないというふうに言っているわけですから、この声をしっかり受け止めていただかなければいけないというふうに思うんです。
 リニアの建設というのは、今度は財政投融資で三兆円もの公的資金を入れることにもなりまして、いよいよ国の責任が問われるような巨大事業になっているというふうに思います。しかし、現場ではどうかといえば、環境大臣意見にもあるような不可逆的な環境への影響、それから災害へのおそれ、建設時の住民の皆さんの生活への影響、もう様々な問題があります。そしてやっぱり地元自治体や沿線住民の皆さんの声を正面から受け止めるべきだというふうに思います。
 今日十分質問し切れませんでしたが、私これまで各地行ってまいりました。山梨県の南アルプス市、この土地は、建設が予定されている土地は地下水が大変豊富で名水が湧き出していると。地元住民の皆さんは、その水脈が絶たれると。だからこそ、ここは地盤が軟弱だという心配の声も上げておられました。それから長野県の南木曽町、この妻籠宿では、一日何十台、何百台とダンプカーが通ったら観光客が減ってしまうのではないかと。何十年とその地域を守り続けてきた、それを観光資源としてきたこの妻籠宿がどうなるのかという心配の声。静岡は、大井川の水が毎秒二トン減るという、もう本当に切実な声を上げておられました。それから岐阜県、リニアの走行や新駅の建設による騒音、電磁波、日照の問題、様々な問題を岐阜県でも聞いてまいりました。沿線住民の皆さんの理解はまだまだ得られていないというふうに思います。
 大鹿村では明日二十一日にも工事着手に同意するかどうかの判断が下されるのではないかという話もありますが、こんな事業を強引に進めることは絶対に許されないと、リニアの建設はきっぱりやめることを求めて、質問を終わりたいと思います。

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