国会質問

質問日:2021年 3月 23日  第204通常国会  災害対策特別委員会

実現可能な原発避難計画策定は困難

23日の災害対策特別委員会で武田良介議員は、水戸地裁判決に関連して原発周辺の住民の避難計画について質問。要支援者などの避難を支える医療スタッフを増やすことなどを求めました。(スタッフ)

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 日本原子力発電が再稼働を目指す東海第二原発をめぐりまして、水戸地裁が三月十八日、運転を認めない判決を下しました。判決要旨には、実現可能な避難計画や実行できる体制が整っていると言うには程遠く、第五の防護レベルは達成されていないというふうにされております。
 この東海第二原発は三十キロ圏内に九十四万人の人口を有する原発ということが言われておるわけですけれども、静岡県の中部電力浜岡原発には三十キロ圏内に約八十三万人、新潟県の東京電力柏崎刈羽にも約四十四万人の方がいるというふうに言われております。
 もちろん人口だけではないと思いますけれども、それ以外の問題については今後、この後、質疑させていただきたいというふうに思いますが、これらの原発でも実現可能な避難計画を策定していくということは、これは困難を極めるというふうに思いますけれども、大臣の認識をお伺いいたします。

○国務大臣(小此木八郎君) 災害時の避難計画ですが、地域住民の安心、安全にとってこれはもう重要であることは言うまでもない話です。各地域では、複合災害も想定した上で、地域の原子力防災協議会の枠組みの下、避難計画の具体化、充実化に取り組まれているものと承知しております。
 自然災害における取組や知見を共有するなど、各地域での原子力防災体制の充実強化に向け、引き続き内閣府防災としても連携協力してまいりたいと存じます。

○武田良介君 今日、神谷政務官にも来ていただきました。いかがでしょうか。困難極めるというふうに思いますけれども、いかがお考えでしょうか。

○大臣政務官(神谷昇君) お答えいたします。
 東海第二地域では、人口が多く、複合災害も想定した避難経路や避難車両の確保などの課題がございまして、関係省庁と関係自治体が参加する東海第二地域原子力防災協議会の枠組みの下で、避難計画の策定や原子力防災体制の更なる充実に取り組んでいるところでございます。引き続き、関係自治体と緊密に連携をいたしまして原子力防災体制の強化に取り組んでまいります。
 他方、全国のうち八つの地域では、各地域の協議会の枠組みの下で、複合災害も想定しました上で関係自治体の避難計画の具体化、充実化を図り、それらを含め地域横断的な対応といたしまして緊急時対応を取りまとめておりまして、訓練等を通じまして改善に取り組んでおります。
 そして、地域が抱える様々な課題の解決は、委員御指摘のとおり、決して容易ではございませんけれども、引き続き、各地域の原子力防災体制の強化充実に向けまして、国といたしまして関係省庁と連携して全力で取り組んでまいります。

○武田良介君 共同通信が行いました自治体アンケートをちょっと紹介をしたいというふうに思います。
 全国十九の原発の三十キロ圏内で、原発事故時に自力避難が難しい高齢者だとか障害をお持ちの方など避難行動要支援者の方、この方が合計で二十四万六千人になるということでありました。このアンケートによりますと、UPZ内、五キロから三十キロの圏内で最も多くの避難行動要支援者の方がいらっしゃるのは島根県の松江市、二万八千八百七十六人というふうにされております。ちなみにその後、いわき市、いわき市はその圏を、五キロから三十キロという圏域を独自に設定しておりますけれども一万五千四百二十五人、その後、石川県の七尾市一万四百十九人などなど続いていくわけですが。
 こうしたその高齢者、障害者などの要支援者の方は、病気だとか障害の状況も違うということもありますし、またこれ日々変化するものだというふうにも思っておりますが、そういうこともありまして、一人一人のその個人計画を作成するというふうに伺っております。避難に関する個人計画のひな形といいますか、内閣府からも資料をいただきましたけれども、同居家族だとか緊急連絡先を書くのはもちろん、特記事項として、ふだんいる部屋、寝室、その位置、あるいは不在のときの目印、避難済みのときの目印などなど記入するようになっているわけですね。一人一人の計画をこれ作成するのは非常に大変だというふうに私も思いましたが、今日お聞きしたいのはその更新についてであります。
 その健康状態ですとか症状というのは日々変わってくるというふうに思いますけれども、一度避難計画を仮に作ったとしても、それを更に更新していく必要がある。その更新の頻度という点ではどのように考えているのか、あるいはその更新の方法などの指針を自治体に対して示しておられるんでしょうか。

○政府参考人(佐藤暁君) お答えいたします。
 先般、高齢者や障害者などの避難行動要支援者の個別避難計画の作成につきましては市町村の努力義務とする災害対策基本法などの改正法案が国会に提出されたところでございます。
 それで、当該個別避難計画の更新についてのお尋ねですけれども、令和二年に個別避難計画の制度的な検討を行った有識者会議において、避難行動要支援者の状態の変化や災害時の避難方法などに変更があった場合に更新することが必要であるとともに、その更新の考え方については、各自治体の地域防災計画において定めることが適当である旨の提言をいただいているところでございます。
 原子力災害に係る個別避難計画につきましても、各地域における事情を踏まえつつ、自然災害に係る個別避難計画作成の取組とよく連携しながら、自治体による作成、更新の取組の支援に取り組んでまいりたいと思います。

○武田良介君 地域で、地域防災計画の中で更新をしていく。今現状、十分把握されていると、今の、これからのやり方で、その有識者会議を踏まえた方向で十分現場で把握されていくだろうという見通しをお持ちなんでしょうか。

○政府参考人(佐藤暁君) お答えいたします。
 私ども、原子力防災におきましては、こちらの個別避難計画とはまた別に、先ほど政務官から御答弁ありましたように緊急時対応というものを作成しておりまして、こちらの中で、まさに要支援者の方々の避難につきまして、まさに一対一に近い形で、どこのお住まいの場所からどこに避難するのかと、そういったことも含めて計画を取りまとめているところでございますので、こういった緊急時対応が取りまとめられている地域においては、こうした要支援者の避難についてはできるだけ適切に対応できているものと認識しております。

○武田良介君 一人一人にやっているというお話がありましたけれども、先ほどの共同通信のアンケートを紹介をいたしますと、支援する側の体制整備では六割の自治体が不十分だというふうに回答されたということでありました。その理由は、人材不足あるいは移動手段確保の難しさ、こういうのが挙がっております。支援者と要支援者のマッチングが完全にできないと、こういう悩みとともに、例えば柏崎市は、ストレッチャーなどの移動手段など人員の確保に苦慮しているという回答もあるそうであります。
 移動手段の確保が大切であると同時に、私、とりわけ避難を支援する医療スタッフの体制ということも非常に重要だというふうに思っております。これはもう、今新型コロナの感染拡大という下でその重要性というのは国民的に皆さん実感されていることだというふうに思いますけれども、その上、もちろん自然災害の発生の際にも、そして原子力災害が発災することを考えても、その対応を考えなければならない。そうであれば、医師ですとか看護師ですとか介護士の方、専門的な知識を有する医療スタッフの方、こういった方を今から増やしていく必要があるのではないかというふうに考えますけれども、認識を伺います。

○政府参考人(佐藤暁君) 避難行動要支援者といった、先ほどから御指摘あります、避難に時間が掛かり、特別の移動手段や避難先が必要となるなど、避難に際して配慮を要する方の安全の確保は重要な課題であるというふうに認識しておりまして、きめ細やかな対策を行う必要がございます。
 それで、原子力防災における避難などについての地域横断的にその計画を取りまとめております緊急時対応におきましては、避難行動要支援者と医療スタッフなどを含めた支援者の人数を調べた上で、支援者がいる場合は共に避難し、支援者がいない場合は行政、自治会あるいは自主防災組織などの協力により避難することとしています。
 それで、原子力災害時に避難行動要支援者に対して適切な支援を行うことができるよう、私どもも関係自治体と一体となって、支援者に対して計画に基づく訓練あるいは研修を進めておりますし、それとともに説明会の開催やチラシの配布などの普及啓発も行うなど、その養成に努めるところでございます。

○武田良介君 そういう計画があるのは私も存じております。それが本当にうまくいくのかということを私は質問させていただいておりますし、聞かせていただきたいのは、そういった医師だとか看護師だとか医療スタッフ、こういう人たちを増やしていく必要があるのではないかということを私聞かせていただきました。
 大臣、この点ではどうでしょうか。自然災害もちろんです、原子力災害もそうです。やっぱり医療スタッフ増やしていく必要があるというふうに思いますけれども、大臣、いかがお考えになりますでしょうか。

○国務大臣(小此木八郎君) 災害、様々な形のものがあると思います。自然災害、今言われている、テーマとしている原子力災害、共に危険の伴うものでありますからこそ、知見ですとかあるいは認識、そういったものを含めた、経験踏まえた更なる人材育成というものが大事になってくると思います。
 自然災害においては、令和三年度に実施を予定している個別避難計画作成のモデル事業において、福祉関係者に防災に関する研修を行うなどの特色ある取組を行う自治体を支援することとしており、高齢者などの方々の避難の実効性を高めるための人材育成も推進をしていく予定であります。
 要支援者の円滑な避難に関しても、自然災害における取組や知見を共有するなど、各地域での原子力防災体制の充実強化に向けて、引き続き内閣府防災としても連携協力をしてまいりたいと存じます。

○武田良介君 大臣からも大事になってくるということで御答弁をいただきました。
 医療体制ですとかそういったスタッフの方が十分にいないと、先ほどの水戸の判決じゃないですけれども、実現可能な十分な避難計画というふうにならないのではないかというふうに思いますので、重ねてお願いをしたいというふうに思います。
 それともう一つ、原子力災害と豪雪という複合災害ということを考えた想定も必要だというふうに思っております。
 この雪と放射線ということについて見ますと、湿性沈着というふうにいいまして、放射性セシウムなどが雨だとか雪などに吸着して、付着をして地表に落ちてしまう、放射線量が高い範囲が生じる可能性があると、こういう指摘をされている方がいらっしゃいます。山澤弘実さんという名古屋大学の教授の方がこういう指摘もされている。
 これは、雪はその場にとどまりますので、遮蔽効果が余り高くない木造住宅であったような場合、雪が落ち、そこに湿性沈着している場合、屋内退避をしているさなかに被曝をしてしまう、あるいはその線量が高まってしまうということが指摘をされているわけですけれども、こういう指摘をどのように考えておられるんでしょうか、原子力防災の。

○政府参考人(佐藤暁君) お答えいたします。
 今委員御指摘のとおり、雨や雪が降り湿性沈着をした場合には、継続的に高い放射線量になる場合があり得るというふうには認識しております。こうした場合は、湿性沈着などにより継続的に高くなった線量があらかじめ定められた基準値を超えた地域においては、原子力災害対策本部の指示により避難や一時移転を行うこととしております。
 以上です。

○武田良介君 そのあらかじめ定められたというのは、どこに定められているんでしょうか。

○政府参考人(佐藤暁君) お答えいたします。
 こちらのあらかじめ定められた基準値というのは、原子力規制委員会が作成した原子力災害対策指針というものがございます。こちらは、そうした原子力災害に対する科学的、技術的、専門的なものをまとめたものでございまして、こちらにOILというような言い方で基準を定めているところでございます。

○武田良介君 最悪の事態を想定して対応していく必要があるというふうに思いますので、この問題もよく注視していかなければならないというふうに思います。
 じゃ、実際にその避難を始めたときにどうか、豪雪ということも条件も踏まえてですね。豪雪で道路が不通になった場合にはその除雪作業がもちろん必要になるんだというふうに思いますけれども、原子力災害がなくても、この冬も大変な豪雪になりました。市街地、住宅地で生活道路も含めて一週間、二週間、身動きが取れないというような状況も生まれてしまったわけですけれども、この際、原子力災害も発生した際ですね、どうやって避難するんでしょうか。

○政府参考人(佐藤暁君) 今御指摘の件でございますけれども、自然災害による直接的なリスクが極めて高い場合には、原子力災害に対する避難行動よりも自然災害に対する避難行動を優先させ、まずは何よりも人命の安全確保を最優先とすることが重要であると考えております。
 それで、具体的には、今豪雪というお話ございましたけれども、豪雪時に大雪警報が発表されている間においては、避難行動により人命を危険にさらすリスクを回避する必要があるため、天候が回復するまで屋内退避を優先とすることを基本としております。それで、これらの判断につきましては、自治体あるいは原子力災害の現地本部が設置されているオフサイトセンターと連携して得られた豪雪などの自然災害の被害状況やあるいは原子力発電所の事故状況などを踏まえて、全面緊急事態以降においては、全閣僚や原子力規制委員長などによって組織される原子力災害対策本部において原則として判断がなされるところでございます。

○武田良介君 答弁をいただきましたけれども、先ほど来、少し答弁に出てきておりましたが、緊急時対応、私も福井エリアのものというのを読ませていただきました。もちろんそういった除雪に対する対策を取りましょうということで改定もされたんですね。それは承知をしておりますが、これ開いたのは昨年の七月三十日ですか。その後、まさに豪雪被害が発生したわけですね。だから、体制を強化します、こういうふうに判断をしますということはもちろん御説明されるんだと思いますが、そうじゃなくても、原発の災害がなくても、これまでも豪雪の被害があったときには交通渋滞が起こる、生活道路が不通になるということが繰り返されている。
 もう一回書いたといっても、この冬もあったわけですから、これで本当に原子力災害が同時に起こった場合に十分な避難計画となるのだろうかということをお伺いをしたい。もう一度、いかがですか。

○政府参考人(佐藤暁君) お答えいたします。
 委員御指摘の、例えば福井のその豪雪の件でございますけれども、今年の冬の更なる豪雪、ございました。これにつきましては、私どもも大変問題視というか重要に受け止めておりまして、こちらにつきましては福井県と改めてこうした対応につきましては調整を行っているところでございますし、そもそも自然災害としての豪雪対応というのは福井県自身も積極的に対応しているやに伺っております。そうしたものをこうした緊急時対応の改定にとどまることなく対応してまいりたいというふうに考えております。

○武田良介君 避難計画上は屋内退避ということになっている方も避難を、恐怖の余り避難を始めてしまう方もいらっしゃると思うんです。今作られている計画というのは、そういった方が発生するということも想定されている計画なんでしょうか。

○政府参考人(佐藤暁君) お答えいたします。
 ただいま委員御質問の件は、自主的な避難ということかと思います。私どもも、屋内退避の指示が出されている地域においてそうした自主的に避難される住民が一定の割合で発生することは否定できないんじゃないかというふうに認識しております。そのため、平素から屋内退避の考え方あるいは効果について、関係自治体と一体となって、説明会の開催などの普及啓発、あるいはこうした避難計画に基づく訓練を行っているところでございます。
 今後とも、こうした取組を通じて屋内退避の考え方や避難方法の定着を図っていきたいと、そういうふうに考えております。

○武田良介君 定着を図るということなんですけれども、その実現可能な避難計画を作るということは非常に難しい、いろんなところと調整もしなければいけない、やっぱりそういう問題だというふうに思いますので、そこしっかりとこれからも検証をしていきたいというふうに申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

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関連資料

しんぶん赤旗記事→「原発避難計画は困難 武田議員 人材も移動手段も」