国会質問

質問日:2021年 5月 28日  第204通常国会  本会議

都心低空の羽田新ルート撤回、米軍ヘリ訓練の中心を

 武田良介議員は28日の参院本会議で、航空法改定案や航空行政の問題点をただすとともに、新型コロナの影響で苦境に追い込まれている旅館業やタクシー業界への支援を求めました。(スタッフ)

 

議事録

○議長(山東昭子君) 武田良介さん。
   〔武田良介君登壇、拍手〕

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 日本共産党を代表して、航空法等改正案について質問します。
 法案に入る前に、新型コロナ対策における中小事業者への支援についてお聞きします。
 私の事務所に、ホテル業の方からの訴えが届きました。コロナ禍でキャンセルが相次ぎ、いつ倒産してもおかしくない状態です、ホテル業にも支援をしてほしいという声です。
 GoToトラベルキャンペーンは、昨年度、一次補正と三次補正合わせて給付金ベースで約二・二兆円の予算が確保されましたが、約九千億円が積み残されています。GoToキャンペーンは展開できる状況ではありません。今やるべきことは、この予算を目の前で苦境にあえぐ宿泊業を始め観光関連事業者に対する減収補填に回すことではありませんか。
 タクシー業界からも、存続の危機だとの声が上がっています。緊急事態宣言が出されても、エッセンシャルワーカーとして、感染リスクと隣り合わせの状況にありながら、高齢者の通院、買物など地域の足を担ってきたのがタクシー事業者です。タクシー会社の廃業は地域生活に影響を及ぼし、とりわけ、高齢者や障害者など交通弱者にしわ寄せされてしまいます。国は、事業者の減収補填や運転手の直接支援に踏み出すべきではありませんか。
 もう一点、羽田新ルートについてもお聞きします。
 昨年三月から、住宅と都市機能が密集する都心部の上空を超低空で飛行する新飛行ルートの本格運航が始まりました。家の中で窓を閉めていても響く轟音で心が休まらない、お庭で遊んでいた園児が騒音におびえて泣き出した、落下物が不安など、怒りと不安の声が広がっています。
 そもそも、羽田新ルートはインバウンドを当て込んだ国際線増便のためと説明されてきましたが、新型コロナの影響で、増便どころか減便しているのが実態です。羽田新ルートは撤回すべきではありませんか。以上、国交大臣に答弁を求めます。
 米軍ヘリの都心低空飛行が問題になっています。この間、米軍ヘリが都心部を低空で飛ぶ背景として、羽田新ルートで低空飛行する旅客機との接触を避けるために、それよりも低い高度で飛ぶことが要因との指摘があります。防衛大臣、この指摘は事実ですか。
 国交大臣は、米軍ヘリの低空飛行訓練は羽田新ルートの低空飛行によるものと認識しているのですか。答弁を求めます。
 日本の航空法では、住宅密集地では三百メートル以上、非密集地では百五十メートル以上の上空を飛行することを義務付けていますが、米軍機は、日米地位協定によって航空法の適用を除外されています。
 しかも、横田基地所属ヘリのトレーニングエリア、訓練空域が明らかになりました。そもそも、米軍が勝手に訓練空域を設定していること自体が異常であるという認識はありますか。米軍ヘリの低空飛行の実態を徹底調査するとともに、直ちに中止するよう米軍に強く求めるべきではありませんか。防衛大臣の答弁を求めます。
 以下、法案について国交大臣に質問します。
 昨年末、政府は、コロナ時代の航空・空港の経営基盤強化に向けた支援施策パッケージを発表し、今年度予算にその支援策を盛り込みました。本法案はその施策の遂行に法的根拠を与えることが目的です。
 新型コロナ感染拡大による航空業界の苦境から、航空ネットワークを維持確保するために国が乗り出すことは必要なことです。しかし、これまで政府が過去二回にわたって行ってきた支援策は、航空業界の支援の前提条件として、航空会社に徹底した合理化、人件費、コスト削減が指導され、安全規制の緩和まで行うものでした。
 安全運航を支えるため、人材の雇用維持は極めて重要です。今回の航空会社への支援に際しても、雇用の維持と安全対策の確立は大前提ではありませんか。本法案は、航空会社に対し、コスト削減を含めた基盤強化計画を国に提出することを求めるものですが、これを根拠に雇用、人員削減、リストラが強要されるようなことはありませんか。
 本法案には、雇用を維持確保する施策の規定がありません。衆議院の審議では、国の基盤強化方針に雇用を守りつつ支援していく方針を記載する、航空会社の計画に雇用に関する記載をいただくと答弁していますが、法案の条文に明記されてこそ、雇用を維持確保する施策の実効性が担保されるのではありませんか。
 二〇〇九年のリーマン・ショック後のJALの経営破綻では、国の支援と引換えに一万六千人の人員削減が実施され、二〇一〇年末には百六十五名もの整理解雇が強行されました。ILOから四次にわたる勧告を受け、不当労働行為が最高裁で確定していますが、いまだに解決に至っていません。争議を解決するのは経営者の責任です。JALに対して争議の早期解決に向けた指導をすべきではありませんか。
 支援施策パッケージには、訪日旅行者二〇三〇年六千万人の政府目標の達成など、ポストコロナの成長戦略に向け主要空港のインフラ整備、成田空港の新滑走路建設などの大規模事業の推進が盛り込まれています。V字回復など安易な見通しのまま大規模事業を続けることは許されません。中止を含め見直しを検討すべきではありませんか。
 本法案で、航空保安検査を法的に位置付けることは重要です。保安検査員の労働環境、労働条件がひどいという根本問題を国として認識しながら、法案ではこれを改善するための実効性のある支援策がありません。
 現在、全国九十七空港のうち保安検査員の人件費を国が二分の一負担しているのは、国管理空港の十九空港だけです。アメリカでは、二〇〇一年の同時多発テロ以降、それまで民間に任せていた航空保安検査を国の機関である運輸保安庁、国家公務員が担っており、ドイツ、カナダなども国が担っています。
 航空会社、空港管理会社の経営状況や経営形態によって保安検査の体制が左右されることがあってはなりません。国の責任を明確にし、保安検査員は国が公務として直接担うべきではないですか。当面、処遇改善を急ぐためにも、保安検査員の人件費を全て国が負担すべきではありませんか。
 無人航空機、ドローンについてお聞きします。
 災害対応、取材、報道、インフラ維持管理、離島、山間部への荷物配送など、無人地帯を中心にした活用と技術開発は必要です。しかし、本法案は、これまで飛べなかった第三者上空、有人地帯での補助者なし目視外飛行を、物流などの分野で二〇二二年度から実施しようとするものです。有人地帯上空の飛行は、国民の命と安全に関わる問題であり、国民的合意が前提でなければなりません。
 第三者上空の合意なしの飛行は、民法に基づく土地所有権の侵害に当たることが指摘されていますが、この問題を国としてどう整理しているのですか。現状では、二〇二二年度からの第三者上空、有人地帯での補助者なし目視外飛行については厳格な安全性が担保されておらず、国民的合意が不十分という面からも、これを解禁することは時期尚早ではないですか。
 以上、国交大臣の答弁を求め、質問を終わります。(拍手)

   〔国務大臣赤羽一嘉君登壇、拍手〕
○国務大臣(赤羽一嘉君) 武田良介議員から、まず、宿泊事業者等の観光関連事業者への支援についてお尋ねがございました。
 宿泊事業者を始めとする観光関連事業者は、新型コロナウイルスの感染拡大やGoToトラベル事業の全国一斉停止措置等を受けて、大変大きな影響を受けているものと承知をしております。
 そこで、各都道府県や宿泊事業者等からの要望を踏まえ、GoToトラベル事業予算を直接的な減収補填に回すのではなく、本年四月以降各都道府県が実施を予定している域内旅行の割引支援又は前売り宿泊券等の割引支援の事業に対し、地域観光事業支援として国が財政的に支援することとしております。さらには、宿泊事業者が講じている感染防止対策に係る費用につきましても、過去に遡って、地域観光事業支援として財政的に支援をすることとしております。
 現在、各都道府県で議会に予算を上程いただくなどの支援策の実行のための手続を精力的に進めていただいており、引き続き観光関連事業者の状況を注視しつつ、必要な対策を適切に講じてまいります。
 タクシー業界への支援についてお尋ねがございました。
 タクシー業界に対しましては、事業継続、雇用維持のため、雇用調整助成金による支援を行わせていただいており、バス、タクシー合わせて推計でこれまで約千三百八十億円活用されておりますほか、地方創生臨時交付金を活用した約八百自治体、約千六百事業によるタクシーを含む公共交通事業者への支援が行われております。
 令和二年度第三次補正予算を活用した高性能フィルターを装着した空気清浄機等の設置等の感染防止対策への支援を行い、また、高齢者等のワクチン接種会場までの移動にタクシーが活用されるよう自治体に対する働きかけなど、取組を行っているところでございます。
 いずれにいたしましても、タクシーが身近で利用しやすい地域住民の移動の足となり、公共交通機関としての使命と責任を果たせるよう、引き続き必要な支援を行ってまいります。
 羽田空港の新経路の必要性や米軍ヘリとの関係についてお尋ねがございました。
 羽田空港の新経路、新飛行経路につきましては、平成二十六年からの東京都や千葉県等の関係自治体等から成る協議会での議論を踏まえ、まず、将来的な航空需要の拡大を見据えた我が国の国際競争力の強化並びに従来からの懸案事項でありました千葉県の騒音軽減等の観点から、国土交通省として令和元年八月に導入を決定したものであります。現在、大幅な減便が生じている中でも、こうした議論の経緯並びに今後の航空需要の回復などを踏まえ、新飛行経路は引き続き運用していく必要があると考えております。
 他方、新飛行経路の固定化回避について、航空機や管制の技術革新の進展も踏まえ、技術的観点から方策を検討する有識者会議を昨年六月に立ち上げたところであり、引き続き検討を進めてまいります。
 また、米軍ヘリとの関係につきましては、新飛行経路を運用している時間帯においても、その周辺空域において、管制機関に連絡を行うことで任意の高度で飛行することが可能な仕組みとなっていることから、新飛行経路の設定が米軍ヘリの飛行に影響を与えているとは認識をしておりません。
 航空会社の支援と雇用維持についてお尋ねがございました。
 航空輸送において安全の確保は大前提であり、また、航空業界の人材は日々の安全運航を支えており、航空ネットワークの維持確保の観点からも、その雇用の維持は極めて重要であります。
 今般の法改正により、航空会社は事業基盤強化のための計画を作成し、その取組状況を定期的に報告することとなりますが、国として、人員削減やリストラなど、雇用に関する個別具体的な指示を出すことは考えておりません。
 また、雇用の維持確保のための施策につきましては、本法案の規定に基づき、国の方針及び航空会社の計画に雇用を守りつつ基盤強化を図る旨を記載することにより、その実効性を担保してまいりたいと考えております。
 日本航空の整理解雇についてお尋ねがございました。
 日本航空の整理解雇につきましては、個別企業における雇用関係に係る問題であることから、日本航空において適切に対処をすべきものと考えております。このため、行政として関与することは適切ではないと考えております。
 大規模な空港整備事業の実施についてお尋ねがございました。
 コロナ禍で航空需要が激減している状況においても、社会経済活動や今後の経済成長を支えるために必要な空港整備事業につきましては着実に実施していく必要がございます。支援施策パッケージに盛り込んだ事業はいずれもこのような必要性を有する事業であることから、着実に取り組んでまいりたいと考えております。
 保安検査における国の責任の明確化、保安検査の実施主体及び費用負担についてお尋ねがございました。
 保安検査における国の責任の明確化につきましては、今般新たに策定する危害行為防止基本方針で、国が前面に立って主導的に取り組むことを明確に位置付け、国の責務として空港の保安対策の抜本的な強化を図るべく、しっかりと対応してまいります。
 また、保安検査の実施主体の在り方につきましては、有識者による検討会を開催し、実施主体ごとのメリット、デメリットや海外事例の詳細な調査分析を行いながら検討してまいります。
 保安検査員の人件費を含む保安検査の費用負担につきましては、諸外国におきましても受益者負担の考えが一般的であることから、国が一般財源で全額負担すべきとは考えておりません。
 無人航空機のレベル4飛行について、土地所有権との関係の整理と、その解禁が時期尚早ではないかという点についてお尋ねがございました。
 民法では、土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶと規定されておりますが、その範囲は、一般に当該土地を所有する者の利益の存する限度とされており、第三者の土地の上空を無人航空機が飛行することが直ちに所有権の侵害に当たるわけではないものと解されております。
 その上で、レベル4飛行につきましては、無人航空機の操縦者に対し、飛行予定の地域の関係者に丁寧に説明し、理解と協力を得るよう促すこととしているほか、厳格に安全を確保する観点から、技能証明や機体証明を受けた上で飛行ごとに国の許可、承認を受けることを必須としたところであり、国民的な理解に配慮しながら進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)

   〔国務大臣岸信夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(岸信夫君) 武田議員にお答えいたします。
 まず、米軍ヘリの都心低空飛行についてお尋ねがありました。
 御指摘の米軍機の飛行については、米側からは、飛行に当たっての安全確保は最優先であり、従来から米軍機の飛行はICAOのルールや日本の航空法と整合的な米軍の規則に従って行われているとの説明を受けています。その上で、羽田新ルートとの関係について予断を持ってお答えすることは差し控えます。
 防衛省としては、引き続き米側に対して安全面に最大限配慮し、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう強く求めていくとともに、航空機の航行の安全確保については最優先の課題として日米で協力して取り組んでまいります。
 次に、米軍の訓練空域及び低空飛行についてお尋ねがありました。
 一般に、米軍が日米安保条約の目的達成のため、実弾射撃等を伴わない通常の飛行訓練を米軍の施設・区域でない場所の上空で行うことは認められているものと認識しています。
 また、米軍機の飛行訓練は、パイロットの技能の維持向上を図る上で必要不可欠な要素であり、日米安保条約の目的達成のため極めて重要なものですが、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動することが当然の前提です。三月の日米防衛相会談でも、米軍の安全かつ環境に配慮した運用の確保が重要であること等を確認するなど、日米間でもこうした認識の共有を図っています。
 防衛省としては、引き続き関係自治体、関係省庁及び米側と緊密に連携し、皆様の御不安を払拭すべく、しっかりと取り組んでまいります。(拍手)

○議長(山東昭子君) これにて質疑は終了いたしました。

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しんぶん赤旗⇒「羽田新ルート撤回を 武田氏が批判 参院本会議」