国会質問

質問日:2017年 2月 8日  第193通常国会  国際経済・外交調査会

トランプ米大統領入国制限 米にも不利益 参考人質疑

 参考人質疑が行われ、武田良介議員は北朝鮮の問題などについて質問。丹羽宇一朗元中国大使は「隣国である中国、韓国、日本が話し合いに引きずり出すように。力と力は禍根を残す」と答えました。

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調査会参考人質疑動画

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 今日は四人の先生方、大変お忙しい中、本当にありがとうございます。
 時間もありますので、端的に、できるだけ端的にお伺いしたいと思います。
 最初に丹羽先生にお伺いしたいと思うんですが、中国大使としての経験もおありになって今も御活躍かと思いますが、大きく二つお聞きしたいと思っておりまして、一つは今のトランプ政権との関わりでありますが、例えば今、入国制限の問題は大変大きな問題になっています。国連含め各国が非常に批判的なコメントなども発表しておりますが、安倍首相はコメントする立場にないということもおっしゃっておりました。
 先ほどのお話の中で、全ての国と仲よくしていく必要があるという、日本の国是ということもおっしゃられておりましたが、そういう立場から、コメントをすべきとお考えなのか、もしすべきだというふうにお考えであればどういったコメントを発することが一番望ましいとお考えかということが一つ。
 それからもう一つは、今日、丹羽先生にお話伺うということで資料を見ておりましたが、雑誌「Voice」というところの中で、アジアの問題を考えるときに北朝鮮の問題は非常に大きな問題だということで、北朝鮮問題の解決のために必要なのは、まず日本と中国と韓国の三か国で北朝鮮が話合いのテーブルに着くことができるように協議をすべきと、その仲介の労を取るべきは日本であると指摘をされています。日中韓三か国が考えるべきは落としどころの設定であるということもおっしゃっているのを拝見をいたしました。
 そこで、お聞きしたいと思っているのは、その三か国の会合というのはこれまでもあってしかるべきだったのではないかというふうに思うんですが、なぜそれがなかなか行われてこなかったのかということと、おっしゃられていた落としどころというところ、どういったところが考え得るのか。
 大きく、北朝鮮と、それから入国制限の関係でまずお聞きしたいと思っています。
○参考人(丹羽宇一郎君) どうも大変に悩ましい質問をたくさんいただきまして、ありがとうございます。
 トランプさんの移民の入国制限につきましては、これはいろんな意見があって当然でございますけれども、やはり、つぶやきでおっしゃっている、ツイートされているトランプ大統領の真意は本当のところどこにあるんだろうか。全面的に禁止というのは、過去の歴史からいいましても、移民合衆国家であるアメリカの理念からいいましても、全面的な禁止ということは私はやるべきではないし、多分やっておられない、やるおつもりもないんじゃないかというふうに思うんです。ただ、不法移民ということにつきましてはいろんな制限があって当然だろうと。法に違反するようなことがあればやはり入国は差し控えてもらうというようなことは、どの国でもあり得ます。もちろんアメリカだけじゃございません、それはイギリスにしてもそうですけれども。
 やはりこの問題は、貿易との絡みからいって、イギリスのブレグジットと同じように身勝手過ぎる。いいとこ取りというような中で、移民によって、過去のイギリスにしろアメリカにしろ、いろんな利益が失われる、彼らに奪われるんだというようなことから移民は制限をする、しかしながら貿易は今までどおりやってほしい。これはイギリスの主張でありますけれども、アメリカにおいてもトランプさんは同じような考えを持っておられるんではないかと思うんですね。
 私が思うのは、やはりマネーロンダリングとか薬物とか、いろんな形で不法移民が入ってくるということは間違いのない事実で、この問題については、ある程度の制限を設けるということは私はやむを得ないことだと思います。アメリカにおいても多分そうなるであろう、そういう形になるであろうと思います。一律に全員入国禁止とか、そういうことは恐らくグローバリゼーションの流れの中ではやれませんし、やればやるほどアメリカにとってのマイナスになるだろうと。いろいろ技術者にしても、いろんな形でいろんな国のやはり協力、努力というものが、共同ワークというものがアメリカのこれからの発展にも必要であることは疑いのないことであります。したがいまして、そういう方向へ行くであろうというふうに私は思っております。
 それから、北朝鮮問題につきましては、アメリカの元の大使と私は親しいものですから前に話したことがあるんですけれども、北朝鮮については一体どうしたらいいと思いますかと、こういう質問を受けたことがあるんですね。どうしたらいいと自分が分からない、アメリカ人はよく分からないから、日本は近いだろうからどう思いますかという話がありまして、私はそのときはまだ民間でありまして、大使にも行く前ですが、ディスリガードと言ったんですよ。要するに、金正恩の発言を無視しなさい、みんなが騒ぐから余計勢い付いて、トランプさんもそういうところありますけれども、どんどんどんどんエスカレートしていくんだ。
 そのときに言ったのは、アメリカはやはり北朝鮮から遠いんですね、一番近いところはどこだと、韓国と中国と日本ですよね。彼が最後に言いましたのは、君はディスリガードと言うけど、もし北鮮から難民が何万人、十万人と日本海あるいは四海、海の日本に押し寄せたとき日本はどうする、何人か制限して入れるのか、そんなことはできないね。まあそれは、空から海から、陸からは来ないけど、どんどん入ってきたときにどうします、自衛隊並べて全部撃ち殺すか、それはできませんね。じゃ、どうするつもりだという質問を受けまして、それは、その頃に難民が脱国をするということになれば、船なんか持っていないから来れないよと、私はそういう言い逃れをしたんですけれども、実際問題として、そういう問題が起きないようにするにはどうするか。
 やはり、今の状態からいいますと、北朝鮮とアメリカが話をするということは非常に難しいです。じゃ、どこが窓口になって話をするか、やはり隣国ですよね。アメリカからは離れているけれども、隣国はどこだ、韓国、中国、日本です。そして、その三か国はいずれにしても人、物、金は動いている。裏であろうと表であろうと、表は難しいけど、裏でやはり結構動いている。なぜ動くかと。本当に北朝鮮が潰れる、崩壊するようになれば何が起きるか。一番被害を受けるのは中国でしょう。延吉市とか延辺に私も行きました、大使の頃。本当に小さな川を一つまたげばそうですね。あそこに韓国という字はないですね。朝鮮です、みんな朝鮮民族。ほとんど北朝鮮ですね、あそこにいる人、二百万人ぐらいいると思います。朝鮮自治区みたいなのがあります。
 そうすると、中国としては崩壊するほどまで経済制裁等々はやるわけにいかない。やれば、アメリカは大丈夫かもしれないけど、中国は真っ先に、あそこに何十万人と人間が押し寄せたときどうするかです。朝鮮民族として中国の軍隊が撃ち殺すかと。例えば、北朝鮮が何かやるときに真っ先に軍隊を移動させるのは中国です。あの国境の川沿いにばっと軍隊を派遣するんです。事ほどさように、陸続きの国の思いというのは我々には分からない。日本は非常にその辺はのんびりしているけど、アメリカの大使でさえ、おまえそうなったらどうするか、手が打ちようがないですね。
 じゃ、それはどうするかといえば、今の段階で北朝鮮の金正恩とまともに話ができないです。どういう人か分からない。トランプ以上に暴言を吐くかもしれないし、何かやるかもしれない。全く人脈もない。韓国もルートほとんどないです。私の知っている、中国大使のときの韓国大使と親しいものですから、その話、したことある。全然ないです。その当時の韓国の中国大使は帰りまして、要するに北朝鮮と韓国の担当大臣になったんですよ。それほど北朝鮮についても造詣が深いんですけれども、彼自身も全く人脈がない。話ができない。
 そういう中でどうするかというと、やはり中国を我々が、日本なり韓国なりという隣国がやはり中国に話をして、何とか話合いの場に引きずり込むことはできないかというようなことを、すぐはいかないでしょうけど、少なくともその契機はつくっていかないといかぬじゃないか。力と力でやったら、確実に何事か、非常に想定外の見たくもないことが起きる可能性があると思うんです。これをやれば絶対大丈夫ということはありませんけど、少なくともやれるのは中国です。そして、そこにこういうことでどうだという話ができるのは多分アメリカと日本でしょう。
 ということからいいまして、私は、それをやれば確実だというようなことは世の中にはありませんけど、ベターウエーですね、社会科学は要するに演繹法ですから、ベターな方法を選ぶしかない、ベストというのはありません。したがって、これをやるしかないんではないかという方法は、やはり中国を動かして北朝鮮と話合いをさせる、そして、要するに、嫌な言葉ですけど、生かさず殺さずというような形で北朝鮮を壊滅的なことが起きないようにしていかないといけないと思います。もし壊滅的なことが起きれば、必ず隣国にシリア以上に大きな被害が及ぶだろうというふうに思いますので、唯一の道はそれだろうというふうに思っているわけです。
 じゃ、どうするか。それは、非常に今の安倍総理の立場からいって、中国にどうだと言うような雰囲気はありません。非常に難しい。しかしながら、何らかの北朝鮮とルートのある人がやはり中国側と一度話をするというようなことをアメリカの了解の下でやっていく必要があるんじゃないか。
 私が申し上げたいのは、力と力の対決は絶対にいい結果を生まない。これは間違いない。経済界もそうです。トランプが自動車紛争をやっていますけど、これは一九八〇年代からあれをやったおかげで、スーパー三〇一条を適用してからアメリカの四大自動車メーカーは実力をどんと落としました。GMも破産法の適用をしたわけです。それでもちっとも良くならない。何百万台という彼らは生産能力を失いましたよね。また同じことをトランプはやろうとしているということでございましょうから、力でもって押し切るということは必ずその国に禍根を残すことになるだろうというふうに思いますから、今申し上げたような方法しかないと思います。
○武田良介君 ありがとうございました。
 白石参考人と、また馬田参考人、榊原参考人にもお聞きしたいことあったんですが、時間ですので終わりにしたいと思います。
 ありがとうございました。

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