「種の保存法」改正案の質疑で、武田良介参院議員は、国際的要請に応えた象牙取引規制を求め質問しました。
山本公一環境大臣は「実務上困難な面がある。業者の管理で適正化を図る」と答弁。武田議員は「それでは、取って代わることはできない。取引そのものを規制すべき」と重ねて追及。山本大臣は「国際的な制約が生まれてきているなら、理解されるよう、国内取引も合致していく必要がある」と答えました。
また、里地里山の希少種、絶滅の恐れのある蝶などを、保護区など設定し保護するよう求め質問しました。この「種の保存法」質疑には、環境NGOの方たちが傍聴に訪れました。
里地里山の環境の悪化や、人の手が入らなくなったことで、蝶などの昆虫や、メダカなどの淡水魚で、絶滅の恐れのある種が増加しています。今回の「種の保存法」改正案では、これに対応した新たな希少種を指定する制度を創設しています。
武田議員は、長野県が希少な蝶の保護のため、立ち入り禁止の保護区を設定。パトロールや、草刈り、火入れ大学による調査研究を行っていること紹介。国もこうしたものを踏まえ、種の指定や区域の指定、保護事業計画を積極的に進めるよう求めました。
山本公一環境大臣は「自治体、関係者と連携して、保護増殖事業の実施や生息地等保護区の指定を検討したい」と答えました。
また、武田議員は種の指定や保護区の設定にあたっては、市民やNGOの意見としっかり取り入れるべきと質問。山本大臣は「提案があれば積極的に検討を進めたい」と答えました。
議事録
○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
種の保存法について質問をさせていただきたいと思います。とりわけ象牙取引についてお聞きをしまして、時間の関係もありますが、第二種の話も最後にお聞きをできればと思います。
まず、基本となるワシントン条約から質問していきたいと思います。
ワシントン条約第十七回締約国会議、昨年の十月に南アフリカのヨハネスブルクで開催されまして、密猟や違法取引の原因となる国内市場を持つ国に市場閉鎖を求める決議が採択をされました。
以下、引用をよくしますので、決議と言いたいと思いますが、第三段落、改めて紹介したいと思います。「その主権の及ぶ範囲内に、密猟または違法取引の一因となる、合法化された国内象牙市場または象牙の国内商業取引が存在するすべての締約国および非締約国は、その未加工および加工象牙の商業取引が行われる国内市場を閉鎖するために必要な、法令上および執行上の措置を緊急にとることを勧告する。」。
五段落ですが、最後のところに、「上記勧告を緊急に履行するよう求める。」というふうにしております。
それから四段落、この市場閉鎖とはどういうことかについてでありますが、「この閉鎖に対し、何らかの品目についての狭い例外の設定は保障されうることを認識する。ただし、その例外が密猟または違法取引の一因となるものであってはならない。」というふうにしています。
この市場閉鎖決議を受けて、近年主要各国で対応が始まっていますが、簡潔にその対応状況、御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(亀澤玲治君) ワシントン条約事務局やIUCNなどが二〇一三年に作成をしました国内市場規模のランキングでは、中国、香港が一位、アメリカが二位となっております。
中国では、象牙の輸出入については、昨年三月から学術用や文化交流等の用途を除き禁止しているほか、国内取引についても今年の年末までに全面禁止することを公表しているというふうに認識をしております。
それからアメリカでは、象牙の輸入についてはハンティングトロフィー、いわゆる狩りの成果物を除いて禁止、輸出についてはアンティーク等を除き禁止をしております。国内取引については、州をまたぐ売買についてはワシントン条約で象牙の輸出入が禁止された一九九〇年以前に合法的に輸入されたアンティーク等を除いて禁止する一方で、それぞれの州内における売買については、多くの州で一九九〇年以前に合法的に輸入された象牙の売買は可能であるなど、州によってその規制内容は異なっているというふうに聞いております。
○武田良介君 中国でもアメリカでも、そういった年代だとか本当に一部のものに限り例外が認められて、それ以外は商業取引が禁止されるという具体的な議論が既に始まっています。
先日の坂元参考人のお話にもありましたが、アメリカが中国と協議を行って、二〇一五年九月に米国と中国の両国の国内象牙市場を閉鎖するということで合意をした。その後、香港やフランスも続いて市場閉鎖に動き出していくわけです。そうした中で今回の閉鎖決議という流れになってまいりました。この例外が認められた市場閉鎖に向けて日本でどのような規制がなされるべきかということです。
その前提としてお聞きしたいと思うんですが、日本の象牙市場の今の政府の認識、種の保存法違反件数、平成二十八年度で六件あるというふうにされています。先ほど読み上げた決議三段落は、密猟又は違法取引の一因となる国内取引市場を有する国に対して市場閉鎖を勧告しているということですので、実態をありのままに見たら日本は違法取引のない国とは言えないのではないかというふうに思いますが、いかがですか。
○政府参考人(亀澤玲治君) 我が国では、近年、象牙の大規模な違法輸入、いわゆる密輸入は報告されておらず、ワシントン条約ゾウ取引情報システムの最新の報告、これは昨年のものでありますが、これにおきましても、我が国の市場は原産国における密輸、密猟や違法取引に関与していないというふうに評価をされておりまして、密輸入される象牙が一般に我が国国内で流通しているとは考えておりません。
○武田良介君 違法な取引はない、これが今政府の認識だということだと思うんです。しかし、それは、先ほどの主要各国との違いで見ても明らか、大きな差があるというふうに思うんです。
国内の問題について具体的にお聞きしていきたいと思うんですが、まず、日本にある象牙、これはどれだけあるのか、どのように日本に入ってきたのかということについて確認していきたいと思うんです。
日本の象牙の国内輸入量、環境省の資料で、一九八一年から八九年の間に約二千トン、それから、九九年、二〇〇九年に約九十トン、合計二千九十トンと、環境省の資料でこうなっています。これらが一体どうやって入ったのか。ワシントン条約が発効した後、一九八一年から象牙の輸入が禁止される八九年までの間、ワシントン条約による規制の下で輸入された期間です。
どういう規制かといえば、アフリカゾウは附属書Ⅱに属するので輸出国の発行する輸出許可書が必要だということだったわけです。しかし、一九八一年から一九八五年三月の間、日本は、ワシントン条約に定められた輸出許可書ではなくて原産地証明書、これで輸入を認めていたということで国際的な批判を浴びました。一九八四年に開かれたワシントン条約のアジア・オセアニア地域セミナー、この際には、日本に対して条約の履行改善を求める決議、これが上げられております。
環境省、簡潔に説明をお願いします。
○政府参考人(亀澤玲治君) 今から三十三年前の一九八四年十月に、マレーシアのクアラルンプールでワシントン条約のアジア・オセアニア地域セミナーが開催され、日本に対しまして条約の履行について速やかに改善を求める決議が採択されたものと承知をしております。
○武田良介君 そういったその決議そのものというのは、環境省の方でお持ちですか。
○政府参考人(亀澤玲治君) 決議文そのものはあると思います。
○武田良介君 この決議で、明確に指摘をされております。
日本政府が条約の規定及び締約国会議で採択された決議に従わず、一貫してこの義務を果たしていないと自ら認めていることを承知し、ちょっと云々続きますが、日本政府がワシントン条約を効果的に施行するための改善策を至急取ることを求めるということを言っております。
その決議の後、更に経過がありまして、イギリス王室のエジンバラ公が来日をされた。当時の中曽根総理大臣と会談をした。ワシントン条約について中曽根総理大臣は非難、非難といいますか、されております、これではならぬということを言われております。その翌日、中曽根総理大臣が閣議で対応を取ることを指示し、当時の環境庁自然保護局長が議長を務めたワシントン条約関係省庁連絡会議というものを設置をしました。この連絡会議が翌年、一九八五年三月二十八日、検討結果報告を取りまとめております。この報告の中にも、当面の対策というところの一番最初に、先ほど言いました原産地証明から輸出許可書への切替えということも書かれております。
この報告、環境省、また説明をお願いします。
○政府参考人(亀澤玲治君) ただいま御指摘のありました関係省庁連絡会議の記録に関しましては、確認をいたしましたけれども、御指摘の会合の記録は残っておりませんでした。
○武田良介君 記録が残っていないということ自身が私は非常に驚きでありまして、環境庁の自然局長が議長を務めて、しかも、国際社会から批判をされて検討したものを環境省で今確認できないということ自身が私は非常に驚きでありますし、そんなことではならないということを指摘したいと思うんです。
大臣に認識を伺いたいと思うんです。
一九八一年から八五年までの間、ワシントン条約の規定に反して原産地証明で輸入をしてきた、そのことに対して非難され、決議まで上げられてしまった、こうした事実経過、私、日本としても恥ずべき経過だというふうに思いますが、大臣、いかがお考えでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) この問題に関する過去のいきさつ等々については私も説明受けてきておりますけれども、これから、私の立場から申し上げますと、今先生御指摘のあったような過去のいきさつを踏まえて、新たな一歩を踏み出したいというふうに思っております。
○武田良介君 国際条約に対する姿勢が問われる、日本としても本当に信頼に関わる大事な問題だと思いますので、今回の法改正に当たっても、しっかりと振り返るべき問題だというふうに思うんです。
一つ紹介しますと、当時の通産省の貿易局長が、この原産地証明でもよしとしていた問題について、当時衆議院の予算委員会で質問されて答弁されております。今までかなり不十分な運用をしていたということは誠に遺憾に存ずるわけでございます、輸出許可書がなければ輸入させない、そういう運用に直したいというふうに答弁をしております。不十分な運用をしていた、遺憾だということを言っていますので、こういう経過を踏まえていただきたいというふうに思います。
次に、こうした経過で日本に入ってきた象牙ですが、今も未登録の象牙、これは環境省の資料によっても国内に一千二百三十トンとも言われる量があるわけです。そして、これらの象牙は、所有しているだけだったら何ら規制がないわけでありますが、譲渡だとか販売、頒布、それを目的にした広告、こういう際には登録が必要になるということです。この登録について、本当に厳格に登録が行われているのかという声が上がっていました。そこで今回、登録審査の厳格化ということが言われております。
まず確認したいと思うんですが、この登録審査の厳格化、いつから始める予定ですか。
○政府参考人(亀澤玲治君) 登録審査の厳格化につきましては、全形牙の登録に当たって象牙の入手時期を科学的に証明する方法を導入することが可能かどうかも含めて検討した上で実施することとしておりまして、個人所有の全形牙の量を把握することを目的とした登録推進キャンペーンをまず進めた後に実施したいというふうに考えております。
○武田良介君 推進キャンペーン進めた後にという話でしたが、いつから始める予定か、もう一度お願いします。
○政府参考人(亀澤玲治君) その登録推進キャンペーンの方は個人所有の全形牙を対象として登録推進を促す目的で実施をしたいと思っておりますが、それにつきましては、改正法案成立後できるだけ速やかに開始をし、その後二年間程度を掛けて、しっかり周知をしつつ実施することを検討しております。
○武田良介君 資料にも付けましたが、環境省は、平成三十一年の夏から登録審査の厳格化を考えている、おおよその目安という話ではあろうかと思いますが、ということでした。今の答弁にもありましたが、登録推進キャンペーン、これをやって、それが終わった後、厳格化するということなわけです。
私、率直に疑問に思うわけです。普通は、審査が本当に厳格に行われているのかという疑問の声があったから厳格化するんであって、厳格化してからキャンペーンを始めるというのが普通だと思うんです。本来そういうスケジュールであるべきだと思うんですが、逆じゃないでしょうか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(山本公一君) 今回、個人所有の全形牙の量を把握するためにやるキャンペーンを始めるわけでございまして、多分、個人所有の方のお考えというのは、事業者の方々と違って、なかなか、いわゆるキャンペーンというものに当初戸惑われるだろうと思っております。そういうことを考えますときに、まずはキャンペーンの趣旨を個人所有の方に御理解をいただいた上で、その上で実態を把握して、平成三十一年頃からいわゆる厳格化というのを進めていく、つまり、何を申し上げたいかといいますと、今回の法改正によってまずは第一歩の、何といいますか、規制が始まるというふうに考えていただきたいと思っております。
私も、先生御指摘のとおり、日本の象牙に対する一つの法規制というものはこれが終わりではないと思っておりますので、国際的な情勢等々を踏まえた上で、日本もやっぱり国際的な、何といいますか、一つの同じ舞台の上で議論ができるようになっていくべきだというふうに思っておりますので。
○武田良介君 私も、厳格化すること自身けしからぬと言っているわけではもちろんありません、それ自身は意味のあることだと思うんです。
ただ、キャンペーンを先にやって、その後厳格化するということになると、これはやっぱり順番が逆だと思うんですね。象牙を登録するということになれば、登録したらその後は日本の国内で取引できるようになるわけですから、これは更に取引を可能とする、象牙の取引を促進するということにやっぱりなってしまうだろうというふうに思うわけです。
これもワシントン条約の決議との関係でどうなのか。決議では、資料の一に決議付けておりますが、第六段落のd、「以下の事項を含む普及啓発キャンペーンを実施すること」というふうに入っていますが、その一つ目に、「供給および需要の減少」というのが入っております。それがキャンペーンの目的として一番目ですから、最も重視されているというふうに思うわけです。
そういう決議の厳格に履行とすると、そういう立場に立つのであれば、先に登録の審査の厳格化、これをすることが必要、不法な取引を規制することが優先されるべきだというふうに考えますけれども、大臣、この点どうでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) 今回の法改正によって一番、何といいますか、この問題を深刻に考えていただいている方は私は事業者だろうと思っております。事業者の方々はやっぱり非常に象牙に対する国際的な制約が厳しくなってきているということをあらゆるチャネルを通じて把握をしていらっしゃるだろうと思うわけでございますけれども、逆に、さっきも申し上げましたように、個人所有の方は恐らくそういう意識はまずないんだろうと思っております。
したがいまして、事業者同様に同じようなことを最初からするのは無理があるんだろうと思いますけれども、キャンペーンを通じて、象牙に対する物の考え方が国際的にこのようになってきているということをまずはやっぱり腹入れをしてもらう必要があるんだろうというふうに思っておりますが、先ほどから何度も申し上げますけれども、やっぱり個人所有の方の象牙に対する意識を変えてもらうということがキャンペーンのある意味で目的だろうと思っております。
○武田良介君 私、ちょっと深刻な問題だと思うんですね、今回のキャンペーンという問題一つ取っても。例えば、第六段落、先ほどの政府の認識そのものにも関わりますが、第六段落、正確にもう一度読む必要があると思うんです。
ここには、象牙製造産業が存在するか。象牙製造産業ということは、日本国内でそういう製造業者がいて判こ作るとかそういうことがあればこれは該当すると思うんです、日本も。合法化された象牙の国内取引が行われているか。合法ですから、これは当然日本も行われることになる。象牙の在庫が存在する締約国。これももちろん日本該当すると思うんです。
こういう国に対して供給及び需要の減少を含む普及啓発キャンペーンを実施するということを六段落のところで求めているということだと思うんですね。この決議の「供給および需要の減少」ということと登録を推進するということが矛盾すると思うんですよ、やっぱり。先ほども言いましたが、登録したら取引できるわけですから、市場になるわけです。利益が生まれる。じゃ、需要供給は増加していくということにやっぱりなるんじゃないかと思うんです。
厳格化される前の現在の登録というのは、先ほども話がありました第三者証明、これも認められているわけです。実際はどうやって日本に入ってきたか分からない牙であっても、第三者、友人とか知人とかがこれは大丈夫ですといって登録できてしまう。これ衆議院でも指摘されましたが、登録機関であります自然環境研究センター、ここに、登録申請者に対して、電話の問合せがあったときに、申請者に対してこのセンターの職員の回答として、昭和の時代ということなら問題ないですよと、条約適用前となるような取得年の記載を勧めるということも指摘をされてきたわけです。
やっぱりこういう問題を本当にしっかり捉えれば、先ほどの大臣の答弁にあったようなことだけではこの問題はクリアできないんだろうというふうに私は思うんです。こういった制度の立て付けを考えたら、キャンペーンの期間中にたとえ不法な象牙であっても日本の市場に潜り込ませることができれば、それさえできてしまえば後は国内で取引できるというふうにやっぱり見られてしまうのではないか、そういう制度になってしまうのではないかというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) そうならないための法改正だと思っておりますので、ただ、長い長い慣習の中で、日本という国の象牙の現実を踏まえていくときに、まずは、まずは業者の方々にこの問題の深刻さを認識していただく、先ほど御指摘のあった第六段落の一条にしても、まずは業者の方々に認識をしていただく、その上で個人所有の方々の新たな認識を持ってもらいたい。
先生御存じだろうと思いますけれども、皆さん方も御存じだろうと思うけれども、田舎へ行きますと象牙を、さっき榛葉先生もおっしゃいましたけど、床の間に飾っていらっしゃいます、全形牙を彫刻を施して。だから、そういう方々に、その象牙というものに対しては国際的な目が非常に厳しくなっていますよということをまずは分かっていただくと。
業者の方々はお分かりです、自らの業に関わる話ですから。このようなワシントン条約でこういうような状況になっているということはもう既にお分かりです。だけれども、事業者の方々に対しても、今回いわゆる届出制から登録制という形を取らせていただく、あなた方は注意してくださいよと、そうでなかったらあなたの商売は成り立ちませんよと言わんばかりの私は法改正になっているという認識を持っておりますので、是非御理解をいただきたいなと思います。
○武田良介君 事業者の方に対して、性善説に立てばそういうことになるのかもしれないなんていうふうには思うわけですが、実際のキャンペーンの今の仕組み上からすれば、やはり駆け込みで登録させる、そういうためのキャンペーンにならざるを得ないということを私はやっぱり思います。
やはり、日本政府の目で日本の国内だけを見たらそういうことかもしれませんが、国際社会からどういうふうに見られるのかというふうに考えれば、日本の中ではそういうふうに、登録さえできれば取引できるわけですから、今のうちに日本に入れてしまえという発想にならざるを得ないだろうということを重ねて指摘をしたいというふうに思います。
それから、規制対象について伺いたいと思うんです。譲渡や販売目的等で広告をする際など、日本では全形牙のみ対象に規制をしております。政府の全形牙とはどういう定義なのかについて、環境省、説明を簡潔にお願いします。
○政府参考人(亀澤玲治君) 緩やかに弧を描き、根元から先端にかけて先細るといった一般的に象牙の形と認識できるものを全形を保持している象牙と定義しているところでありまして、これには先端部を含み長さが二十センチ以上のものを含みます。
○武田良介君 決議では規制の対象をどのように考えているのか、先ほどの決議の六段落でありますが、「未加工象牙および加工象牙の国内取引を規制する」ということで求めております。
この未加工象牙、加工象牙とは何なのか。これは、資料にはちょっと付いておりませんが、第一段落のところに定義があります。未加工象牙は、一本牙、全形牙ですね、これはもちろん、カットピースも含め、表面を磨くとかそういう作業をしたものも含め未加工象牙だと。それから、加工象牙、これは彫刻が施されたものだということなんですね。つまり、その象牙から製品を更に製造することができるような象牙製品の材料と見られるようなものは広く未加工象牙というふうに認識をされ、それから、深く彫刻が彫られるなどして、そういう材料になりにくいもの、これは加工象牙というふうに分類される。ごく限られているわけですね、加工象牙の方が。
いずれにしても、この全形牙はもちろん、カットピースも含めて、象牙の多くは未加工象牙に分類されるということがこれ言えると思うんです。そうした象牙の国内取引を規制するということを決議の第六段落で求めていると。
国内取引の規制対象を全形牙に限定するということになれば、これは六段落のこの指摘と反するんじゃないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) 御指摘の決議一〇・一〇は、締約国に対して象牙の国内取引規制等を促すものであって、義務ではありません。また、この対象となる象牙の定義にはサイズ等は定められていません。よって、決議一〇・一〇では全形牙以外も対象としております。
我が国では全形牙以外も含め様々な措置による象牙の国内取引規制を行っており、御指摘の決議に十分対応しているものと認識をいたしております。
○武田良介君 私は十分対応できないんじゃないかということを思っております。
資料の五番を見ていただきたいと思うんですが、これ象牙の写真。先端だけ切られたほぼ全形の象牙、それから大体二分割したものになっておりますが、比較的大きい、今後象牙製品の材料となり得るようなカットピース、いわゆる分割牙が写っています。
これが密輸されたという例でありますが、二〇〇六年の八月二十一日、マレーシアで荷積みされて、韓国経由で大阪港に陸揚げされた密輸象牙であります。カットピースは六百八本、重量二・四トン、象約百三十頭分ということであります。この写真にある象牙は、これ日本の解釈によると全形牙ではないわけです。先端部切られているということもあります。
大臣にお聞きしたいと思うんですが、この資料にあるようなもの、いわゆるカットピースなども含めて規制しないとワシントン条約を履行することにならないと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) これまでも象牙に関しては、カットピースや加工品等についてまで登録対象とすることは実務上困難な面があることから、それらの譲渡し等を事業として行う事業者の管理を行うことにより流通の適正化を図っているところでございます。
今回の改正案では、事業者の管理を届出制から登録制に強化をするわけでございまして、加えて、カットピース等の入手の経緯等必要な事項を記載した管理票の作成について、これまで任意だったものを新たに義務化をいたします。これらの措置によってカットピース等の流通管理を強化する考えであります。
○武田良介君 実務上無理だという話もありましたが、私はやっぱりそれではならないというふうに思うんですね。
決議の六段落のところ、やっぱりこれは、全形、分割という話もありますが、未加工象牙の取引規制、強制的な取引規制、これも求めているわけでありまして、今、事業者の登録の話もう一度ありましたけれども、事業者の登録ということと取引の規制ということとやっぱり違いますので、その決議の履行ということでいえば、取って代えることは決してできないのではないかということを重ねて指摘したいと思うんです。
それから、管理票や今の事業者登録の話についてもありましたが、ちょっと管理票についてお聞きしたいと思うんです。
現行法上、管理票の作成は任意なので、管理票が作成されていない、そういう象牙もあるわけです。そのような分割牙、これを譲渡する際には今回も管理票は不要になっていると、そういう象牙が残るということだと思いますが、間違いないでしょうか。
○政府参考人(亀澤玲治君) 今回の改正法が施行された後におきましては、改正法施行前から存在するカットピース等で管理票が付いていないもの、それと、カットピース等で政令で定める要件に該当しない一定規模以下のものにつきましては、管理票が付かないこととなるというふうに考えております。
一方で、管理票が付いているカットピースだけでなく、管理票が付いていないカットピースにつきましても、象牙取扱い事業者は譲受け等に関して台帳を作成し、入手先の氏名、住所等を記載の上、保存することが義務付けられるとともに、一定期間ごとに台帳を報告させることになっていることから、管理票のないカットピースについても、その増減等のチェックを通じて管理が可能となるというふうに考えております。
○武田良介君 管理票のないものが残るということは確認をしました。管理票付きの分割牙と管理票なしの分割牙がどちらも存在する。日本の市場はそういう市場だということになります。
先ほど分割牙が密輸された例というのを示しました。管理票なしの分割牙の合法取引が不法に持ち込まれる象牙の隠れみのになるのではないかというふうに思うんです。何とか日本市場に分割牙を潜り込ませれば、合法を装って取引ができ得る市場というふうに見られないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) カットピースについては現行法でも台帳に記載する義務があることから、法改正後、台帳上、管理票のない象牙の記載量が増えるような状況が確認されれば、立入検査等によってその入手先等を調査することが可能と考えております。
国際社会から不正な市場が日本にあると見られることがないよう、しっかりと国内市場の管理を行ってまいりたいと思っております。
○武田良介君 先ほどは実務上なかなか困難という話もあって、その上で今の答弁を聞いても、ちょっと本当にそれで大丈夫というふうにはなかなか思えないわけですね。
大臣に最後にもう一回お伺いしたいと思うんですが、本当に大事だと思うのは、ワシントン条約を本当に厳格に履行していくということだと思うんです。そのためにも、事業者を登録制にするだとか、管理票を、今御説明のあった、付けるだとか、これは意味のあることではあるというふうに私も思っております。
ただ、今回の法改正だけではワシントン条約の厳格な履行というふうにやっぱりならないんじゃないかということの問題意識であります。国際的な市場閉鎖の流れの中で日本だけが国内市場の取引を続けるということになれば、一九八四年に決議を上げられたようなこと、また再びこういう決議が上げられてしまうような、非難が寄せられることは必至ではないだろうかと。その前に国内市場取引そのものを規制する、そういうところに踏み出すべき、決断をすべきときだというふうに思うんですが、大臣、どうでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) 先生の御指摘のことがあるからこそ今回の法改正につながっていると是非御理解をいただきたいなと思っております。
私も、就任以来改めてこの象牙の問題をいろいろと勉強する中で、大変非常に難しい話であるなと思いつつも、国際的な一つの制約の世界が新たに生まれてきているならば、それにやっぱり日本という国も、何といいますか、理解をされるように、国内取引の世界も合致がしていくように仕向けていく必要があるというふうに思っております。
先ほど何度も申し上げましたけれども、これはまだ第一歩だと私は思っておりますので、これからいろんな面に、現実を見ながら、現状を見ながら、確認しながら新たなことを考えていきたいと思っております。
○武田良介君 ワシントン条約、本当にアフリカゾウの絶滅の危機という問題に直面をしながら国際社会が一致して進めていこうという決議の内容でありますから、日本政府の立場としても厳格な実施ということを求めておきたいと思います。
最後、時間限られておりますが、第二種の制度について簡単にお聞きをしたいと思います。
私、長野県の出身でありますが、長野県の条例に生息地等保護区を指定するという条例があります。資料の六枚目に付けておりますのはチャマダラセセリというチョウでありますが、これは長野県の木曽にあります開田高原の一部にしか見られなくなっているということで、そこに一部保護区を設定をしております。これは環境省のレッドデータブックでも絶滅危惧のⅠBに指定をされておりまして、長野県ではⅠAに指定をされております。
長野県もいろんな取組をしておりまして、緊急の立入禁止区域をつくるだとか、違法採取のパトロール、地元区による草刈りとか火入れ、里地里山を保全しようとするわけですね、生息の実態を明らかにするために、複数の大学による調査研究、こういったこともやっております。
先日、参考人で来ていただいた矢後先生にもちょっとお話を聞きましたら、もう長野県に里地里山的な希少なチョウが本当に最後に多く残っている、もうほとんど長野だと言っても過言ではないというお話も、最後お話ししましたらおっしゃっておりました。
長野県でこうした具体的な取組始めております。県の指定もしております。こういうものもよくよく踏まえて、国も、二種の指定、種の指定や区域指定、保護事業の計画、積極的に進めていく必要があるというふうに思いますが、この点、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) 特定第二種国内希少野生動植物種として具体的にどの種を指定すべきかについては今後検討していくことといたしておりますけれども、御指摘のチャマダラセセリのように、地元自治体が絶滅危惧種の保全に積極的に取り組んでいることは大変心強いことと感じております。
したがいまして、環境省としても、特定第二種国内希少野生動植物種として指定する種の保存対策については、積極的に保存に取り組んでいる地方自治体を始めとする関係者と緊密に連携して、保護増殖事業の実施や生息地等保護区の指定を検討してまいりたいと思っております。
○武田良介君 今、県の話でありました。
最後に、NGOや市民の皆さんからの意見をしっかりと取り入れて、種の指定だとか保護区の指定だとか進めていくことも言われました。海のレッドリストの話も先日の参考人の質疑の中でもありました。こうした皆さんの意見を積極的に取り入れていくという問題について、最後に大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(山本公一君) 今回の改正法案では、種指定について国民提案制度を盛り込んでおります。NGO等からの種指定の提案と併せて、生息地等保護区の指定や保護増殖事業計画の策定の提案があれば、種の保全上の効果が高いと考えられるものについて科学委員会でも議論をいただき、積極的に検討を進めていきたいと思っております。
○武田良介君 時間になりましたので、終わりたいと思います。
ありがとうございました。