公害健康被害補償法の改正について29日環境委員会で質疑が行われました。
現在大気汚染による認定被害者補償給付の一部に、自動車重量税が交付されています。その交付期限が2017年度末のため、今後も繰り入れられるよう期限を定めず「当分の間」とするものです。
武田議員は29日の環境委員会で、「当分の間」とは最後の一人まで救済するということか追求しました。中川雅治環境相は「最後の患者さんまで救済する」と表明しました。
続けて、大気汚染による公害患者さんの身体的、精神的な苦しみは続いている事を紹介。「よい薬ができても50m歩けばしゃがみ込む」「ぜん息というだけでなぜ救済されるんやと言われた」。
名古屋市では、区域指定解除後もNo₂やSPMが環境基準を超えていたこと、PM2.5は名古屋の全測定局で環境基準を達成できたのは2015年度だったことなどを挙げ、大気汚染が続いていた実態を示しました。
文科省が行っている全国保健統計調査によると、名古屋市と東海市はぜん息被患率が全国平均より上回り、とくに名古屋市南部では名古屋市内よりも平均を上回っています。
現在もいくつかの自治体では、独自に呼吸器疾患の医療制度を続け救済し続けています。
東海市では「大気汚染が原因として疑わしいから救済する」として医療費助成制度を創設し現在も制度を続けています。
「原因がはっきりしないから救済しない」国との違いは国民への姿勢の違いです。
全ての公害患者が救済されるよう国の責任で医療費助成制度を作るよう求めました。
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議事録
○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
公害健康被害補償法とは、公害健康被害者の迅速かつ公正な保護などを図るために、汚染原因者などの負担により補償給付を行うものです。今回の法改正は、補償制度の財源の一部である自動車重量税の繰入れ期間が二〇一七年度末であることに対して、一八年度以降も当分の間繰り入れるようにするものです。
公健法による被害者救済、いまだに三万四千人以上となっておりますが、この皆さんの補償給付が生活の命綱となることから、その維持は当然必要であって、その財源に自動車重量税を充てることは汚染者負担の原則からも当然であると考えております。
そこでお聞きしますが、当分の間とはどういうことなのか、これは最後まで認定患者の皆さんを救済するということでよろしいでしょうか。
○国務大臣(中川雅治君) はい、そういう趣旨でございます。
第一種地域の指定が解除された昭和六十三年よりも前に認定された最も若い方は三十歳でございまして、今後、数十年にわたり継続的に補償給付等が必要でございます。このため、本来引き当て措置については期限を定めないことが望ましいものでございます。他方で、補償給付等に充てる交付金は自動車重量税を財源としているため、これまでは自動車重量税の暫定税率の措置期限が到来するたび、本法に基づく補償給付等の在り方についても検討してまいりました。自動車重量税につきましては、既に平成二十二年度に暫定税率が廃止され、当分の間の税率が適用されることとなりました。
こうした点も踏まえて、全ての認定患者の方々へ補償給付等を安定的に行うため、引き当て措置について期限を定めずに当分の間とするものでございます。今後も、認定患者の方々への給付を確実に行うことを第一に、制度運営を進めてまいります。
○武田良介君 患者の皆さんは、法律用語としては半永久的という意味だというふうにも聞かされたということも言われておりましたけれども、本当にそうなのか、最後まで救済されるのかということ、今お聞きしましたらそういう趣旨だということをおっしゃっていただきましたので、非常に大事だと思いますけれども。
今回の法改正は、そういった補償給付を維持するために必要なものですから、賛成の立場でありますが、本来、補償給付などの財源は、東京大気汚染公害裁判等からも明らかなように、ディーゼル自動車を製造、販売している自動車メーカーなどにも課すべきものだというふうにも考えております。そのことを申し上げた上で、質問していきたいというふうに思います。
公健法の地域指定解除が行われた一九八八年、大気汚染はそれ以降どんな状況にあったか。先日、名古屋市やその南隣にあります東海市に行ってお話を聞いてきました。
名古屋市を例に確認したいと思いますが、まず、環境省にお伺いしたいと思うんですが、名古屋市のNO2とSPMの数値、大気汚染防止法によっていわゆる一般局と自排局それぞれが設置され、測定されていると思いますけれども、地域指定解除後も環境基準をクリアできなかったことのある測定局、一般局、自排局、幾つか、NO2とSPM、それぞれでよろしくお願いします。
○政府参考人(早水輝好君) お答えいたします。
まず、NO2でございます、二酸化窒素でございますが、指定地域の解除後の昭和六十三年度から平成二十八年度までの測定データによりますれば、その間に環境基準を達成していない年度があった名古屋市内の測定局数でございますが、一般環境大気測定局で一局、自動車排出ガス測定局で七局でございました。なお、平成二十二年度以降は名古屋市内の全ての測定局で環境基準を達成しております。
また、もう一つのSPM、浮遊粒子状物質でございますけれども、同様に昭和六十三年度から平成二十八年度までの測定データによりますれば、その間に環境基準を達成していない年度があった名古屋市内の測定局数は、一般環境大気測定局で二十局、自動車排出ガス測定局で九局でございました。なお、SPMについては、平成二十四年度以降は名古屋市内の全ての測定局で環境基準を達成しております。
以上でございます。
○武田良介君 最近では達成しているという話がありましたが、達成できていない局がたくさんある。しかも、見るとこれ、結構長期にわたって達成できていないですね。これ以外にも国交省が設置している常設局もあります。NO2、SPM、達成できていない局、特にSPMなんかはたしか十二局あって十二局達成していないと思うんです。
これPM二・五についても確認をしておきたいと思うんです。環境省が調査を始めた以降、名古屋で基準を超えていたのは何年度まででしょうか。
○政府参考人(早水輝好君) お答えいたします。
PM二・五でございますが、まず環境基準の達成状況でございますけれども、常時監視を開始いたしたのが最近でございまして、平成二十二年度から平成二十八年度までの測定データがございます。
これによりますと、先ほどと同じような評価の仕方をいたしますと、この間に環境基準を達成していない年度がありました名古屋市内の測定局数は、一般環境大気測定局で十一局、自動車排出ガス測定局で七局でございました。なお、平成二十八年度には名古屋市内の全ての測定局で環境基準を達成しているという状況でございます。
○武田良介君 達成できていないところがあるんですね。
PM二・五は粒子が非常に小さくて肺の奥まで入りやすいと、それだけ肺がんだとか呼吸器系、循環器系にも影響があるのではないかということで懸念がされているわけです。そのPM二・五の環境基準を超えた状況がこれだけこう続いていた、そういう実態を確認したいというふうに思うと同時に、国の対応が遅いというふうに言わざるを得ないというふうに思うんです。
環境基準を超えていた名古屋市で、じゃ、子供たちの健康状態はどうなっているのかと。子供たちの気管支ぜんそくなどは増え続けています。名古屋市教育委員会が毎年発表している学校保健統計調査では、名古屋市全域の小学校の気管支ぜんそくの被患率、平均で一九七五年に〇・六四%だったものが二〇一七年に四・九五%、大幅に増えているんですね。中学校でも、同じように一九七五年に〇・四一%だったものが二〇一七年に四・三七%と大幅に増えております。
資料にも付けましたけれども、被患率は全国的に高くなっていくわけですが、名古屋市は全国に比べて被患率が一貫して高い。しかも、名古屋市内の中で見ても、南部の南区だとか港区、天白とか瑞穂区とか、こういったところでも一貫して高い。名古屋市の南隣である東海市でも同じように被患率が高いんですね。ここにはやっぱり明確な傾向があるんです。
こうした状況を見れば、指定解除のときに公害は終わったという掛け声が掛けられたわけですが、そんなことはやっぱり言えないのではないかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(中川雅治君) 文部科学省の平成二十九年度学校保健統計速報によりますと、先生御指摘になられましたように、名古屋市の小学校、中学校及び高等学校の児童生徒のぜんそく被患率は全国平均を上回っております。また、厚生労働省の患者調査の結果によりますと、近年、ぜんそくの総患者数は増加傾向にあると考えられます。
ぜんそくは様々な原因により発生する非特異的疾患であり、環境省として、名古屋市における被患率が高い理由や全国の患者数の増加の理由についてお答えすることは困難でございますが、科学的に十分解明されていないものの原因として、アレルギー素因者の増加、都市的生活様式の拡大による食生活や住環境等の変化、高齢化の進展などの指摘があると認識いたしております。
○武田良介君 因果関係はっきりしないという、要はそういう答弁だと思うんですが、私も名古屋市の南区にある測定局、実際にそこにも行きました。要町というところだとか元塩公園というところ、ここ、数値を見ても非常に高い、一貫して高いところです。国道とか高速道路も重なって、車が集中して走るわけですね。測定局のすぐ横にマンションも建っている。こういうところで関係ないというふうに何で言えるのかということだと思うんですね。
公健法は大切だと、今回の法改正も補償給付の維持は必要だからやるということですけれども、それ以外は本当に冷たいというふうに私は思います。今も公害による患者さんの苦しみは続いているということを私は訴えたいと思うんですね。
私は、名古屋市、東海市伺って声聞いてきましたけれども、そもそもこの名古屋市の南部地域、皆さんも御承知かと思いますけれども、繊維工業なんかを中心とする工業地帯だったわけですが、一九六〇年代に中部電力だとか新日本製鉄、こういったものが操業して一大工業地帯になった地域ですね。道路交通網もできていく、六〇年代から工場の操業による大気汚染が深刻化して柴田ぜんそくに代表されるような健康被害が起きていく、工場からの汚染は改善の方向に向かうものの自動車排ガスによって健康被害が発生していくというふうになった地域です。
皆さん、声を聞くと、夜中の発作、とりわけ深夜二時から三時ぐらいにかけて発作が非常に出やすいということもおっしゃっておりました。これに苦しまれている。たんが止まらない、ティッシュを使うためにごみ箱がすぐにいっぱいになってしまう、それぐらいたんが出るんだというお話をされていましたし、目まいなどの症状、今でも苦しんでいるんだということをおっしゃっておられました。今年八十二歳になられる方、いい薬ができても、五十メートル歩けばしゃがみ込んでしまう、ぜんそくは治ることないと、むしろ加齢とともに悪くなっているということをおっしゃっておられました。
大臣、こうした声、どのように受け止められますか。
○国務大臣(中川雅治君) 今先生からぜんそく患者の苦しみをお聞きいたしまして、大変な御苦労をされておられるということを改めて感じたところでございます。私としても、公害による健康被害を始めとするこうした状況を二度と繰り返してはならないという思いを強くしたところでございます。
環境省といたしましても、健康被害を受けた方々が安心して暮らしていけるように、環境行政に全力を尽くしてまいりたいと考えております。
○武田良介君 二度と繰り返してはならないということであれば、やはり国の姿勢を改める必要が私はあると思うんですね。
更に声を紹介したいと思うんです。公健法が暮らしと健康を支えている一方で、周りから冷たい言葉を掛けられたという方もいらっしゃるんですね。よう生きとるなと言われたことが今も気になっているというふうに言われただとか、ぜんそくというだけでなぜ医療費救済されるんやというふうに言われた。
それから、鹿児島から名古屋に移られたという方、医療費負担について、当時二万四千円の収入だったそうですが、レントゲンなどを撮ると八千円掛かるために受診できなかった、親子三人食べていくことが本当に大変だったから、公健法に認定されたことは本当に助かったというふうにお話もされておりました。公健法によって救済されて、こうした助かったという声もあるわけです。
公害に苦しむ方は、身体的な被害はもちろんですけれども、経済的な被害、負担、精神的な被害、またその相互の連鎖ということも含めて苦しんでおられるというふうに私は受け止めました。国は、新しい救済制度をつくっていくことで全ての公害認定患者を救っていく、やっぱりそういう立場に立つべきだというふうに私は思います。
患者会の皆さんが求めておられる救済制度の概要、これは、東京都の医療費助成制度に倣って公健法の四疾病に対して医療費の自己負担分を救済する、その財源負担は国、自治体、道路公社等関連業界で賄うということが提案されておりました。これはもう東京都の医療費助成の制度で前例もあるわけですので、無理な話ではないというふうに思うんですが、新たな救済制度に踏み出すべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(中川雅治君) ぜんそくは、先ほど申し上げましたが、大気汚染のみならず様々な原因により発生する疾患でございます。
環境省といたしましては、環境保健行政を実施する立場から、環境汚染に起因する健康影響について対処しております。大気汚染につきましては、窒素酸化物や浮遊粒子状物質等の濃度に低下傾向が見られておりまして、また、環境保健サーベイランス調査において、大気汚染とぜんそくの関連性について、一定の傾向として捉えられる状況にはないと有識者検討会において評価されていることを踏まえますと、新たな医療費助成制度を創設するような状況にはないのではないかと考えております。
今後とも、環境保健サーベイランス調査を継続し、地域住民の健康状態と大気汚染との関係を注意深く観察してまいりたいと考えております。
○武田良介君 国民の声をしっかりと受け止めていただきたいというふうに重ねてお願いしたいと思いますし、今、サーベイランス調査ということもおっしゃられましたけれども、そのサーベイランス調査の中でも、統合解析の結果を見たら、とりわけ六歳児について、統合解析スタートした二〇〇八年度以降、毎年SPMと有意な正の関連性が認められていると環境省自身の調査で言っているわけですので、そのことはもう重ねて指摘させていただきたいというふうに思います。
名古屋市南部の地域で闘われたいわゆるあおぞら裁判という裁判ですけれども、これは、中部電力だとか、先ほども言いました新日本製鉄等々の大企業と国道を設置し管理する国に対して、一九八九年に提訴されて、二〇〇〇年に判決、被告各社の共同不法行為を認めるとともに、国に対しては国道二十三号の差止めが命じられたというふうになっています。東京の裁判の和解、これ見ると、自動車メーカーも含めてその責任を明確にしておりますので、こういったものを踏まえれば、国と大企業、自動車メーカー、その責任は明確であって、そのことを踏まえて新たな救済制度に踏み出すべきだというふうに思います。
名古屋市は、特定呼吸器疾病患者医療費救済制度、これ一九七一年につくっているんですね。これ始まったのは、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法、これ国が一九六九年につくりましたけれども、これが内容が医療面に限られていたという点と、それから名古屋市南部地域が指定地域に含まれなかったと。なので、名古屋市が独自に手当てをするために名古屋市独自の救済制度がつくられたというものなんですね。ただ、これ今打ち切られているんです。その理由は公健法の指定解除があったからなんですね。国と同じ理由でやめているわけです。
ただ、一方で名古屋市は、それでも公健法の指定解除から三年間は市の条例の新規認定を受け付けましょうという措置をとったんです。そうしたら、その三年間の間に市の制度の新規認定が大体二千人増えるんですね。ぜんそくなどの患者さんが明らかにたくさんいらっしゃる中で救済してきた、国が公健法の指定解除をした後も潜在的な公害患者さんを約二千人も救済してきたというふうになると思うんです。
これを環境省はどう受け止めておられるのか。公健法の改悪をして新たな認定を打ち切った姿勢を改めて、全ての被害者の救済へと国が姿勢を改めるべきだというふうに思いますけど、いかがですか。
○国務大臣(中川雅治君) 各自治体でぜんそく患者等を認定して医療費を助成する制度があるわけでございますけれども、これらの自治体の制度は、アレルギー対策としてぜんそく患者の健康回復及び福祉の増進を図ることを目的として運用されているものなど、大気汚染による影響に係る民事責任を踏まえた公健法に基づく補償給付とは性格を異にするものとして各自治体において独自に行われていると認識しております。
環境省としては、環境保健行政を実施する立場から、今後とも、環境保健サーベイランス調査を継続し、地域住民の健康状態と大気汚染との関係を注意深く観察してまいりたいと考えております。
○武田良介君 東海市も助成制度つくっているんです、一九七一年。これは指定解除後、現在も続けられておりまして、二千七十七人、こちらで計算しましたら、市の助成制度で新規認定されているんですね、指定解除後。これ、なぜできたのか。
当時、市長さんがこういうふうに議会で言っているんですね。本市は大気の汚染地域でありまして、その罹病の原因も大気汚染にあることは十分に推察され、また、患者の治癒、療養、これも他地区に比べて非常な困難があると推察されますので、この四つの疾病に対しましては、東海市からこの四つの疾病を駆逐する、こういう意味におきまして、市民の健康を守るために、老人医療の無料化の延長と考えまして助成することに踏み切ったわけでございますと。
推察され、対応するということも言っている、駆逐するという決意まで述べておられる。東海市は、疑わしいから救済する、因果関係はっきりしなくても疑わしいから救済する。今の話は、国は、疑わしきは救済しないという話なんですね。この姿勢の違いは何なのか。やっぱり、政治の姿勢、国民に対する姿勢、そこにあるのではないか。やはり、その政治の姿勢を改めて、新たな救済制度をつくるべきだということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。