日本共産党の武田良介参院議員は29日の災害特別委で、柏崎刈羽原発のある新潟県などの豪雪地域の原発事故避難について質問しました。
武田氏は、夜間・積雪時の原発事故避難はどうなるのかと質問。内閣府は「豪雪など、避難行動をとると危険な場合は、屋内待避を優先し安全に避難できることが確認された後に避難行動をとることが基本」と説明しました。
武田氏は、今年1月の積雪時の夜に避難計画ルートを自ら試してみた桜井雅浩・柏崎市長からの聞き取りや、地域住民からも「実際には避難できない」と批判されている問題点を指摘。「夜の大雪時、原発を避ける避難ルートは普段でも不通になる。柏崎市長の車もスリップして立ち往生。避難できるか」、「避難に支援が必要な要配慮者はどうなるのか。福祉バスは何台必要か」、「平時でも介護職員が不足状態」と計画の実効性を質しました。秋本司・原子力防災副大臣は「まず実態をつかみ計画の充実化」、「介護職員の応援派遣」など、関係機関と連携して課題検討、体制構築を図るとしました。
武田氏は「本当に要配慮者の避難支援を考えるなら介護報酬改定など現場の職員を増やすこと」が必要になると主張し、「現実的な避難計画が作れないとき、再稼働を切り離して考えるべきでない。再稼働できない。」と国の責任を質しました。秋本副大臣は「独立性の高い原子力規制委を所管する副大臣として、再稼働へのコメントは控えたい。稼働するか否かに関わらず避難計画の充実化に取り組んでいく」と述べ、住民の安心安全に対する責任ある答弁を避けました。
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議事録
○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
いつ起こるか分からないのが原発事故であります。いざとなったときに全ての住民が無事に避難できるかどうか、これは大問題だというふうに思っております。
新潟県の柏崎市など、原発立地地域は豪雪地域であります。大雪の際の避難には危険が伴うことは容易に想像できると思うんですけれども、まず内閣府に、夜間の積雪時に避難はどのように行われるのか、御説明いただければと思います。
○政府参考人(荒木真一君) 御指摘の豪雪時など、避難行動を取ると人命を危険にさらすリスクがある場合には、そのリスクを回避するため屋内退避を優先し、天候回復などにより安全に避難できることが確認された後に原子力災害に対する避難行動を取ることが基本となります。
こうした基本的な考え方を踏まえつつ、柏崎刈羽地域の地域防災計画、避難計画の具体化、充実化に向け、今後とも国と関係自治体とが一体となって検討を進めてまいります。
○武田良介君 屋内退避をしていく、命に危険がある場合には屋内退避ということなんですけれども、昨年の冬に北陸地方などで豪雪被害がありました。あのときには、山間部はもちろんですけれども、福井県だとか石川県のいわゆる市街地でも長期間にわたって身動きも取れないような状況が発生をいたしました。屋内退避、その間に例えば除雪もしますというようなこともおっしゃるわけですけれども、そんな簡単な話ではないというふうに思うんですね。除雪体制が何といっても弱まっているというのが今の現状ですから、そう簡単ではないというふうに思います。
私は、先日、柏崎市に伺って、市長ともお会いをしてお話をお聞きをしてまいりました。柏崎市長は、御自身が車を運転して、避難ルートとなる国道を夜間、積雪時に御自身で走行されております。避難ルートとなる国道三百五十三号、それから二百五十二号、二百九十一号などが柏崎市南部の方の避難ルートというふうになるわけであります。その際、車がスリップして立ち往生してしまった、またあるいは、除雪車が入れば待避場所が必要になるけれども十分な道幅がないだとか、こういった課題が指摘をされておりました。この避難ルートは、柏崎市の内陸、山側といいますか、の集落では、原発に向かっていくのではなくて、このルートを通って十日町だとか上越市の方に避難しなければならないと、こういうルートになっているわけであります。
夜間の大雪のとき、ただでさえ不通になり通れない、道路を通行することができないような状況で、実効性ある避難計画というのはできるのか、やっぱりこういうことだと思うんです。除雪すると言うけれども、被曝の危険もある中で誰がこれを実施をしていくのか、作業員もその避難の対象になってしまうんじゃないかというふうに思いますけれども、これはいかがでしょうか。
○政府参考人(荒木真一君) 先ほどの答弁の繰り返しになりますけれども、災害時の実際の状況を踏まえまして、避難行動を取ると人命を危険にさらすリスクがある場合には屋内退避を優先をし、そうでない場合には避難を行うことが基本となります。いずれにしましても、その状況において最もリスクが低減できる対応を取り、人命最優先に対応することが重要と考えております。
その上で、柏崎刈羽地域の原子力防災体制につきましては、避難先や避難経路の具体化はもとより、今御指摘のあったような降雪時の避難経路の確保のための除雪体制などにつきましても、国として引き続き新潟県等の関係自治体と連携しながら検討、調整を進めてまいります。
○武田良介君 人命最優先というのはそのとおりだというふうに思いますけれども、実際に避難できるかどうか、これから検討していくというのが今の答弁も結論だと思うんですけれども、東日本の大震災では、特定区域ということで、物資が届かない、避難用の車両も行けない、実際に滞ったというのが実態だというふうに思いますし、市長からお話を伺いましたけれども、やはり中山間地だけに高齢独居の方もいらっしゃる。どうやって避難するかといえば、自分で運転するにしてもきっと軽トラだけれども、高齢になって運転技術としても大丈夫なんだろうか、本当にその柏崎市の現実に合わせて避難できるのかという問題意識を繰り返し述べられておられたということを強調しておきたいと思うんです。
私が特に心配しているのは要配慮者の方の避難でありますが、これも内閣府にお聞きをいたしますけれども、この原発の周辺に要配慮者の方は何人いらっしゃるのか、これはPAZとUPZ、それぞれで分かれば教えていただけますでしょうか。
○政府参考人(荒木真一君) 今細かな数字はございませんので、今まさにどのぐらいの方がUPZあるいはPAZ内におられて、それぞれの方がどのような移動手段が必要であるのか等々につきまして、今把握、調査等々の検討を進めているところでございます。
引き続きその検討を、新潟県等々含めまして関係自治体と連携を取りながらしっかりと把握をした上で、移動手段を含めて検討してまいりたいと思います。
○武田良介君 新潟県が三月に出しました広域避難計画というところ、別紙四というところに要配慮者の施設というのが添付されているかというふうに思います。
全てちょっと紹介しませんけど、これ見れば、PAZの中にある入所型の福祉施設、まあちょっと施設はあれですが、合計でいうと五百六十九人の方が定員数というふうになっておりますし、それから、通所型の福祉施設ということでいうと二百八十一名の方が定員というふうにもなっている。UPZ以遠については即時避難区域の結果を踏まえて今後検討を進めるというふうになっておりますから、そういうことなんだろうというふうに思うんですね。
これだけの方を避難させるために必要な福祉車両、福祉バスというのは何台必要になるんでしょうか、いかがでしょうか。
○政府参考人(荒木真一君) 今議員御指摘のように、先ほどありましたPAZ内に千人弱の方がおられる、あるいはUPZ内についても、在宅の方を含めて今後詳細に把握していかなきゃいけないと思っています。
また、それぞれにつきましても、福祉車両が必要なのか、あるいは自家用車で介護の方と一緒に移動できるのか、その辺も含めて今まさに調査を進めているところでございますので、しっかりとその調査を進めた上で必要な移動手段の確保に努めてまいりたいと思います。
○武田良介君 いずれにしても調査ということなんですけれども、もう少し具体的にお聞きをいたします。
新潟県に設置されております避難委員会の資料を私、見ました。例えば、介護施設入所者の避難について、天野和彦さんという、この方は福島県内の最大規模だったビッグパレットふくしまの避難所の県庁の運営支援チームというところで責任者をされていた方だというふうに伺っておりますけれども、この方がこの避難委員会で課題を上げておられるわけです。
例えば、介護施設独自の避難手段確保はそもそも困難で、要介護者が介護設備のないバスで安全に避難できるのだろうか、それから、段階的な避難区域の拡大による避難回数、距離の増加ということもあった、一斉に避難できる先を探すも、大人数を受け入れられる介護施設はほぼ皆無だとか、もう本当、様々な現実の課題が浮き彫りになったということを指摘をされておられるわけです。
こういう課題に対してどのように取り組んでいくのか、解決していくということをお考えなのか、あきもと副大臣にお伺いできればと思います。
○副大臣(あきもと司君) 基本的には今、荒木審議官からお答えをさせていただいたところでございますけれども、いずれにしましても、その実態をまずはしっかり把握をさせていただくことが一義的には必要であろうかと思います。
そして、要介護・支援者であれば、例えばボランティア等、スタッフとして付添いをしてもらうとか、そういったことを、いろんなことを事前の計画の中で取決めをさせていただいて、支援が必要な皆さんのケアというものをより手厚くできるような体制というものをこれからしっかりと構築をさせていただきたい、そういう思いでございます。
○武田良介君 実態をつかみ、ボランティアなど更に体制を厚くということだったんですけれども、この天野さんの指摘に、そもそも介護職員の減少が問題だということも指摘をされておられるわけです。いざ避難となった際に、施設の職員の方は必ずしもみんなその利用者の方と避難するわけではなくて、御自身の御家族と一緒に避難されるということも当然あるわけだと思うんです。
残った職員の方の負担が極端に増すことになるんじゃないか、劣悪な環境の下、不眠不休の介護により介護の質も低下するんじゃないだろうかと、こういう実態にあるということも指摘をされているわけですが、こういう現実、これはどのように解決していくおつもりなんでしょうか、あきもと副大臣、お願いします。
○副大臣(あきもと司君) まさに御指摘の点が誰もが感じる点でございますけれども、やはりこれも、避難先の緊急時また必要となる職員の数、又は職員との十分な打合せ、こういったものをまずしっかりと整えていくことが必要であるというふうに考えております。
また、避難元の市町村からの要請を基に、県が関係機関、これは医療福祉関係団体ですね、そういったところから調整してやはり派遣をしてもらうということも我々の中では考えているところでございまして、いずれにしましても、施設職員の理解を得ながら、施設職員の状況等にも配慮をしつつ、避難計画の策定を含む原子力防災体制の具体化、充実化に向け、関係自治体とも連携しながら検討を進めていきたいという思いでございます。
○武田良介君 派遣応援ということなんですけれども、そういうことだけで本当にクリアできる問題なんだろうかということだと思うんですね。もうただでさえ介護の現場は、今、他の職場に比べて処遇が、賃金が低いとか処遇が良くないということで人が集まらないという実態がある。
実態をつかむというお話が繰り返しあるわけですけれども、報告を上げていただいても、例えば一年たったら、半年たったら、もう職員の方どれだけいるのかということもまた状況が変わってくる、そういう状況にある中で、本当にこれで対応できるんだろうかということだと思うんです。
この点では山本大臣の認識も是非お聞かせいただければと思うんです。原子力防災に限らず、山本大臣の認識もお伺いできればと思います。
○国務大臣(山本順三君) 原子力災害については、御案内のとおり所管外ということになりますから、私の方から答弁する立場にございませんけれども、今、年に一回、原子力災害と自然災害、これの複合災害を想定した合同訓練、これを行っておりまして、こうした観点での必要な連携は今後とも引き続き図ってまいりたいというふうに思っております。
○武田良介君 本当に要配慮者の方の支援を考えるのであれば、やはりこういった医療や介護の分野、これまでの社会保障の切捨てを進めてきたような立場を改める必要があるというふうに思いますし、例えば診療報酬だとか介護報酬を改定して本当に職場で働く皆さんを増やしていく、そういったことも必要になっていくということを私は指摘をしたいというふうに思いますし、そうでなければ本当の災害対策にならないんだろうというふうに思うんです。どの問題でもやはり今後検討していく、実態をつかんでいくということなんですけれども、本当にそれで対応できるのかということがあると思うんですね。
新潟県は、避難を含めた三つの検証ということを今やられておりまして、それがなければ、検証ができなければ原発の再稼働の議論もできないということを言われているわけですけれども、現実的な避難計画を作れないというときに、再稼働を切り離して考えないで、やっぱりそれは再稼働すべきではないと、再稼働はできないというふうに考えるべきだと思いますけれども、あきもと大臣、いかがでしょうか。
○副大臣(あきもと司君) 私は環境省の外局としての独立性の高い第三者委員会である原子力規制委員会を所管しておりまして、また、原子力防災担当副大臣も兼務している立場でございますので、原子力発電所の再稼働についてのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
その上で、原発が存在をし、そこに核燃料がある限り、稼働するか否かにかかわらず、避難計画の策定は地域住民の安心、安全の観点から重要だと考えております。
現在、国として、避難計画の具体化、充実化に向け、ただいま御指摘のある新潟県の柏崎刈羽地域原子力防災協議会の枠組みの下、様々な課題を一つ一つ解決すべき、地域の実情を熟知している関係自治体と一体となって検討を重ねているところでございまして、避難計画整備に終わりや完璧はないという認識の下、今後とも国がしっかり関与しながら、関係自治体とともに具体化、充実化に取り組んでまいりたいと思っております。
○武田良介君 大臣と間違えてしまいまして申し訳ございません。
時間が来たので終わりにしたいと思いますけれども、最後に一言、この後議題になると思います災害弔慰金の改正案について一言申し上げたいというふうに思います。
同法案は、阪神・淡路大震災など、被災者生活再建支援法施行前の災害に係る災害援護資金について、一定の所得、資産要件を満たす被災者の返済を免除できるようにし、保証債権の放棄や破産等の場合の返済免除を行えるようにするものであり、我が党としても賛成するものであります。
同時に、法案によって阪神・淡路大震災における少額返済者の約九割が返済免除される見込みですが、資力要件に満たない者や行方不明者が残るため、被災自治体は引き続き返済を求めることになります。生活再建が進まないために返済が滞っているにもかかわらず、なぜ二十四年がたっても返済し続けなければならないのかというのが被災者の皆さんの気持ちであります。
また、資力要件による返済免除を被災者生活再建支援法の施行前に限定していることも不十分だと言わざるを得ません。
○委員長(山本博司君) 時間が参っておりますので、短くおまとめください。
○武田良介君 済みません。
支援法施行後の災害においても、多くの被災者が生活を立て直せないために返済が困難となっております。このような実態を踏まえれば、どの災害においても、低所得者への返済の在り方を根本から検討することが求められております。
七月豪雨、大阪北部地震、熊本地震などのこの間の災害による被災者支援の実態を見れば、被災者生活再建支援法を拡充し、生活再建が進むよう支援することが重要になっていると考えます。被災者生活再建支援法の支援対象を半壊世帯等へ拡大すること、支援金額の引上げなどの見直しが喫緊の課題であることを申し添えておきます。このことを発言して、質問を終わります。