土地基本法改定案は、住民無視の再開発事業を後押ししかねないと批判しました。
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住民無視の再開発も 土地基本法改定案を批判 2020.3.26
議事録
○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
早速、土地基本法、法案の質疑に入らせていただきたいと思います。国土交通省は三月十八日に地価を公示されました。全国平均では五年連続、宅地は三年連続、商業地は五年連続で上昇と、いずれも上昇基調を強めているということでありました。
最初に国土交通省に確認したいと思いますけれども、商業地の上昇の要因は何でしょうか。
○政府参考人(青木由行君) お答えいたします。
令和二年一月一日を評価時点といたします令和二年地価公示におきましては、商業地の全国平均の対前年変動率は三・一%と上昇となりました。これは、景気回復や良好な資金調達環境などを背景に、人材確保等を目的としてオフィス需要が堅調であり、空室率の低下、賃料の上昇傾向が継続していること、国内外からの訪問客が増加している地域や、交通インフラの整備や再開発が進展している地域において店舗、ホテル需要等が堅調であることなどから商業地の地価が上昇しているものと認識してございます。
○武田良介君 商業地では、例えば外国人観光客がいらっしゃるだとか、そういった店舗、ホテルの需要が旺盛になっていると、それが地価の上昇の要因だという、そういうことだと思います。
具体的にもう少し見ていきたいと思うんですけれども、国交省の令和二年地価公示説明資料、これ見ますと、今回の調査で東京圏で一位の上昇率になっているのが台東区の浅草駅近隣だということであります。これ、どのように書いてあるか、御説明いただけますか。
○政府参考人(青木由行君) 令和二年一月一日を評価時点といたします令和二年地価公示では、東京メトロ浅草駅付近の地点が前年から三四・〇%上昇と、東京圏の商業地において最も高い上昇率となりました。これは、浅草寺、雷門周辺を訪問する国内外の観光客の増加により、浅草地区を中心に店舗、ホテル等の需要が旺盛であることによるものと認識してございます。
○武田良介君 今御答弁いただいたのを資料の一に付けてございます。その太枠で囲ったところが浅草であります。
それで、少し経年的に見てみました資料の二であります。二〇一〇年から二〇二〇年までの浅草二の一の一の公示地価の推移、これを表したものであります。左の縦軸が公示価格、右の縦軸が前年比でありまして、比率を表すためにゼロ%のところに黒の横棒を引かせていただいております。ですから、二〇一〇年から一二年までは黒の下ですから前年比マイナスということになるわけです、下落ということになるわけですけれども。一三年からは上昇を始めておりまして、前年比では二〇一九年三五%、二〇二〇年三四%と急激に上昇しているわけであります。地価は、二〇一〇年と比べますと二〇二〇年は約三倍というふうになっているわけですね。理由は、先ほど御答弁もありましたように、外国人観光客のために店舗だとかホテルが増えてきているということだと思います。
これで、町はにぎわったということだけで喜ぶわけにはいかないという状況があるわけです。その地価の上昇、ホテルの乱立、こういうことによって地域住民に悪影響も出ているというふうに思いますけれども、どのようにつかんでおられるでしょうか。
○政府参考人(青木由行君) 近年の地価上昇は、かつてのバブル期とは異なりまして、地域の実需に基づくものというふうに認識しておりまして、これによりまして地域に深刻な悪影響が出ているとは認識してございません。近年、地価が上昇している地域におきましては、消費の活性化、地域の事業者の売上げの増加、雇用の増加など、地域経済の活性化などの好影響が生じているというふうに認識してございます。
○武田良介君 悪影響を与えているとは認識していないという話でしたけれども、その地価の上昇の要因になっているのはホテルの建設だとか再開発だとか、そういうことがやられてきたからでありまして、こういうホテルの建設あるいは再開発が行われれば、地価も上がって地域住民の方に影響が出るということは、これ想像付いたんじゃないかというふうに思うんですけれども。
大臣にも少しお伺いしたいと思うんですが、ホテルの建設だとか再開発があれば、大臣の御地元でもあったかと思いますけれども、地価が上昇するだとか、そういうことによって影響が出てきたという住民の声、聞かれたこともあるんじゃなかろうかというふうに思うんですけれども、私は、その浅草に住まわれております町会長さんからもお話を少し聞きました。お二人の方の声、ちょっと紹介したいというふうに思っております。ちょっと読み上げ、紹介します。
浅草駅周辺は、インバウンド観光客を狙ったホテルや簡易宿泊所の建設、東武や東京メトロが再開発狙いでの土地買収が相まって地価を押し上げているのではないか。先頃、雷門すぐ隣のおもちゃ屋が閉店したが、十一坪の土地が二・一億円で売れたという。ずっと商売をやってきた個人商店が営業できなくなっている。長年の住民も住み続けることが困難になっている。大変迷惑な環境の変化だ。特に、高齢者が年金で暮らすことができず町会の運営が困難になり、コミュニティーが壊れ始めているというお話でありました。
また、別の町会長さんですけれども、大江戸線、つくばエクスプレスができ交通の利便性が格段に良くなったことで、中高層のワンルームマンション建設が進み、地価が上がり続けてきた。そこに、インバウンドを当て込んだ民泊やシェアハウス、旅館業法改正で猫の額のような土地でもホテルが可能になるなど、規制緩和が重なって地価の高騰に拍車を掛けているのではないか。最近は、賃貸マンションの一部屋から事業者が借り上げる民泊などが増えており、近隣住民の住環境が壊れ、安心、安全が脅かされていると、こういう話だったわけであります。
その地価の上昇の背景には、一方でこうした地域住民が住み続けられないだとか、あるいはコミュニティーが壊されてしまう、こういった事態が進行しているというふうに思います。これが土地の利用だとか取引の在り方として望ましい姿なんだろうかというふうに私は思うわけなんですけれども、大臣、どのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(赤羽一嘉君) 地価の動向のときに問題なのは、先ほど局長から答弁がありましたように、それが実需に基づくものなのか投機的なものなのかということだというふうに思いますよ。
ですから、昨日も予算委員会で共産党の委員の方からも質問されましたが、ほかの党もそうですけど、今こうした状況の中で観光業が大変打撃を受けている、インバウンドが来ない、そうして結局は地方の経済が駄目になり切っていると今日の委員会でも受けたとおりです。
それというのは、じゃといって反転攻勢をすると、そうすると、当然、そこの中に価値が出て、投資が生まれ、そしてその結果、土地の価格が上がるというのは、これは経済原理上、これはある意味じゃ自然だというふうに私たちは、私はそう認識をしております。
ただ、これ、余りにも強烈にちょっと異常な上がり方をしている、いわゆる先ほどありました平成元年前後のバブルの上昇、また終わりのとき、これは余りにも行き過ぎて、本当にそのときは、質問の通告にもありましたように、地域住民が住めないような現象、メリット、デメリットでいうと圧倒的にデメリットが多いような現象があったというふうなことで土地基本法を制定したということもあったと思います。
私は、今の状況は、長年続いてきたデフレ不況の中で賃金は上がらない、なかなか投資は呼び込めない、そうした中から比べると随分改善してきているというふうに思います。その結果、地価が全国で一・四%の上昇というのは、私は極めて健全な数字だと思います。
それとオーバーツーリズムの問題というのはちょっと別であって、観光客が来るから必ずしもそれが地域住民の弊害になっているというのは、そうしたことを言われる方もいらっしゃいますが、そのことによって地域の経済が潤っていると言われている方もかなりいらっしゃると思います。
インバウンドが来られて本当に迷惑だと言われている方もいらっしゃるかもしれませんが、私は観光担当大臣としていろいろな地域を回っている中で、やはりもう少子高齢化、人口減少化の中で地方創生も全く見通しが立たない中で、このインバウンド政策によってこれからも地方創生に立ち上がろうとしているところは数多くあるというふうに、これがもう客観的な事実なんじゃないんでしょうか。全く価値のなかった地域にそれが価値を生んで、地価が余りにも異常な数字じゃなければ、それはその地域が非常に価値を持ったという意味で、私は今のところの中では健全なのではないかと。
それとは別に、オーバーツーリズムの問題というのは、これ世界、G20の観光大臣会合でも共有したようなことでありまして、その地価の問題というお話ではなくて、別の形でオーバーツーリズムの問題は対処するべきだというふうに私は考えております。
○武田良介君 先ほどの実態を是非聞いていただきたいというふうに思いましたし、そのオーバーツーリズムという話もありましたけれども、いずれにしましても、その今回の法案も、住民生活の犠牲の上に成り立つ、そういう土地の利用だとか取引、そういうものを認める法律であっていいのだろうかと、大きく私はそういうことを考えているわけであります。
同時に、この今回の法案は土地の管理ということにフォーカスしておりますけれども、三条の二項のところは、土地は、その周辺地域の良好な環境の形成を図るとともに当該周辺地域への悪影響を防止する観点から、適正に利用し又は管理するものとするという条文がこれ新設されているわけですけれども、これが、今言いましたようなホテルの建設、再開発やってはならないと、こういう意味合いがこの条文に含まれないんでしょうか。
○政府参考人(青木由行君) お話ございました本法案の第三条第二項におきまして、周辺地域の良好な環境の形成、周辺地域への悪影響の防止の観点から、適正な土地の利用、管理を行うべきことを基本理念として明確化するということにしてございます。
この基本法の性質上、本法の規定内容に基づきまして、具体的な施策につきましては、関係省庁あるいは地方公共団体の個別法あるいは個別施策によって措置されることになってまいりますけれども、御指摘の再開発につきましては、これまでも行ってきております、より周辺地域の環境と調和をして、より周辺地域に好影響が波及する事業とする取組、これを充実する方向で検討が進められるものというふうに考えてございます。
○武田良介君 要は、規律するものではないということだと思うんですけれども、いずれにしても、土地の利用ですとか取引、これやっぱり地域住民の理解と納得が前提だというふうに思います。
もう一つお伺いしたいんですが、今度の法案は、逆にその土地の取引に関して懸念される条文が盛り込まれているんじゃないかというふうに思っておりまして、その第一条の目的のところには土地の取引の円滑化ということがうたわれ、四条に土地の円滑な取引という条文がこれも新設をされております。
これは、今進行しております、先ほど言いました地域住民への悪影響を考慮しないようなホテルの乱立だとか再開発を後押しすることにならないのだろうかと、そういう懸念を否定できるんでしょうか。
○政府参考人(青木由行君) 近年、空き地、空き家など低未利用の土地あるいは放置された土地が増加する中で、土地の有効活用、適正な管理を確保するために、こういった土地を利用、管理する意思と能力を持つ者に土地等を円滑に移転することが必要であるとの問題意識から、本法案におきまして、円滑な取引について基本理念として新たに規定することとしたところでございます。
加えまして、国、地方公共団体が講じることとなる基本的施策の一つとして、これは十四条一項になりますが、円滑な土地取引に資するための不動産市場の整備に関する措置等を講じることを規定しております。この規定に基づきまして、例えば、古民家再生のためのクラウドファンディングの活用などの不動産投資市場の整備でありますとか、既存住宅の流通のための不動産市場の整備など、低未利用の土地の有効活用に資する取組を推進することを想定しているところでございます。
○武田良介君 私が紹介しました事例というのは、他の地域でも起こっていることであります。
京都では、京都市の中京区で、親の代から住み慣れた土地で暮らしておられたという高齢者の方が、土地の所有者が替わったら立ち退きを求められたと。家賃も数倍に値上げをされる。それでも立ち退きを拒否していたら裁判を起こされたと。周りには民泊に利用できるマンションが次々と建っておりまして、この方が住んでいる土地も民泊目的ではないかというようなことも言われておりました。
結局、現行法でも今度の法改正でも、地価の上昇の背景にあるホテルの建設あるいは再開発、こういうものによる地域住民への悪影響を解決するものではないんじゃないだろうか、土地基本法はそういったものでいいんだろうかというふうに思いますけれども、大臣、最後にいかがでしょうか。
○国務大臣(赤羽一嘉君) 私は、ちょっと随分意見が、何というか、かみ合わないなと思って聞いていましたが、やっぱり放置されて、様々な防災・減災という視点ですとか、必要なインフラが整備できないですとか、何というか、周辺の人たちが迷惑を被るとか、こうしたことを利活用する、そして、誰が持っているか分からないような土地は少なくとも解消しながら管理不全な土地は解消していくというのは、防災・減災、また国土強靱化というか、安心、安全な国民生活に資する、私はすばらしい法案なのではないかというふうに思っております。
○委員長(田名部匡代君) 時間が来ています。
○武田良介君 今大臣が答弁になったところは私も何ら否定するものではありませんけれども、こういう懸念を申し上げさせていただき、質問とさせていただきました。
終わります。