国会質問

質問日:2020年 6月 2日  第201通常国会  国土交通委員会

大手開発業者優遇に 都市再生特措法

都市再生特措法は、特定の大手開発業者優遇につながりかねないと討論で批判。質疑で、コンパクトシティを進める「立地適正化計画」は、誘導地域で大型開発が行われ、誘導区域外では公共施設が集約されるなどして「暮らしていけない」と声が上がっていると指摘。人口が減少する地域に住んでいる人で「住み続けたい」と思っている人を支援すべきと訴えました。

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「特定の大手事業者につながりかねない」 2020.6.2

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 早速、法案の質問に入りたいと思いますけれども、現在指摘されているところですけれども、気候変動による影響が大きいというふうに思いますけれども、災害が激甚化する、頻発化するということがあります。台風だとか豪雨災害だとか、そういった災害に備えた対策が都市計画、まちづくりに求められているということはそのとおりだというふうに思いますし、また、それぞれの地域で、商店街だとか団地だとか、それぞれの地域で何とかその地域を盛り上げていこうと、地域の方たちの力を生かして魅力あるまちづくりを進めていく、今回の法案にも関わって非常に重要なことだというふうに思っております。
 その上で、立地適正化計画によるまちづくり、これについてはよく考えなければならない問題もあるのではないだろうかというふうに思いますので、そういった立場から質問させていただきたいというふうに思います。
 最初に国交省に説明いただきたいと思うんですけれども、今回の法案でその立地適正化計画を自治体の単独ではなくて共同して作成することができるというふうになるわけですけれども、その理由と目的について御説明いただけますでしょうか。

○政府参考人(北村知久君) 買物とか通勤などのその住民の生活圏が隣接する市町村と一体となっている小規模市町村、こういったところにつきましては、単独で立地適正化計画を作成することは難しい場合がございます。こういった場合におきましては、市町村が広域的に連携、共同して立地適正化計画を策定して、安全でコンパクトなまちづくりを進めることが効果的であると存じます。
 このような取組を促進するため、本改正におきましては、複数の市町村が共同して立地適正化計画を作成することができるということを法律上明記するとともに、本年度の予算におきましても、複数の市町村で計画を作成する場合には予算上の措置を講ずるという措置を講じてございます。
 国交省としては、コンサルティング、国の職員によるコンサルティングとか、あとはモデル都市の横展開等を通じましてこういった広域的な取組というものを応援してまいりたいと考えてございます。

○武田良介君 今説明もありましたけど、買物をするだとかということで隣の町まで出かけなければならないというような地域にあってはそういうことも必要なんだということだと思うんですが、一点確認ですけど、国交省の資料、私、見ていましたら、都市計画区域を有する一千三百七十四都市のうち四百四十都市、約三割が立地適正化計画を策定、これ、数字が平成三十年の十二月末時点の資料でしたのでちょっと今変わっているかもしれませんが、その人口規模が二十万から五十万の自治体では四分の三が取り組んでいるんだけれども、十万人未満の小規模の自治体が取組、遅れているんだというふうな資料もありました。
 だから、今御説明あったとおりかもしれないんですが、ちょっと重ねて確認ですけど、そういう自治体も立地適正化計画を作成する、持つことができる、全国に広げていこうということが狙いにあるということでよろしいんでしょうか。

○政府参考人(北村知久君) 立地適正化計画は、人口減少社会の中で町が、非常に町の人口が減っていく中でどういうところに住んでいただくか、どういうところに機能を誘導するかということを作っていただく計画でございますので、例えば人口がどんどん増えているようなところとか、あとは、また逆に都市計画区域がほとんどないような農村地帯というところでは必要ないと思いますけれども、それ以外の市町村においては立地適正化計画を作っていただくことが望ましいものだというふうに考えてございます。

○武田良介君 まだ作れていないところを政府がコンパクトシティーということも言いながらやっているんですから、広げていきたいと。今言った、本当に農村部とか不可能なところというのもあるのかもしれませんけれども、基本的にやっていくということだというふうに思います。
 その小規模自治体の立地適正化計画の策定という話で一点だけ発言しておきたいと思うんですけれども、本年度から予算措置においても始まっているその支援制度ということがありました。要は、社会資本整備総合交付金による事業ですね。都市再生整備事業のこの計画事業の制度、これ再編して、今度は都市構造再編集中支援事業、これを個別支援制度としてその補助率を二分の一にするということで、二分の一の補助率拡充していくと。この個別支援の制度を活用するには立地適正化計画を作成している市町村でなければならないんだと、それ以外のところが対象外だということがあるということもお聞きをいたしました。これ、立地適正化計画を作らなければ補助を受けることができなくなるということですので、大変な誘導策だなというふうに思っておるわけであります。
 いずれにしても問題だというふうに思っておりますのは、立地適正化計画の策定、それから実際のまちづくりに、先ほど来、大臣からも答弁ありましたけど、住民が主人公になって取り組めるかどうかということが非常に重要だと思っております。
 先ほど来、話が出て恐縮ですけれども、神戸市の三宮の駅前の開発ということがあります。この計画について、私も資料を読む限りで取り上げるのも恐縮なんですけれども、見ていきますと、国が立地適正化計画を二〇一四年に導入をして、その神戸市版である都市空間向上計画素案というのを神戸市が昨年の六月に策定をしたというふうに聞いております。
 素案の中に当然、都市機能誘導区域と居住誘導区域と示されるわけですけれども、居住誘導区域の外になってしまった方々、これが、先ほどの室井委員の話にもありましたけれども、神戸市による開発団地にお住まいの方たち、こういう方たちが相当数いらっしゃったというふうにお聞きしますが、約三割もの方がこの区域外に置かれてしまったということで、もちろん直ちに出ていきなさいなんという話ではないわけですけれども、しかし、これはどうなっているんだということで、穏やかではいられないという受け止めをされた方がたくさんいらっしゃったというふうにお聞きをしております。
 これ、誘導された地域のところでは人口が集中するということがあるんだということで、二〇一六年に新設されたJRの摩耶駅、この付近には分譲マンションが集中したということがあったんだそうであります。そのときには、児童が一気に急増したということがあって、周辺の西灘小学校というところは運動場に仮設校舎を建てて対応する必要があったんだということもお聞きをいたしました。学校内にある学童保育コーナーだけでは収まらなかったので、近隣の自治会館にその分館も設けたと。しかし、そのところも七十人で児童がひしめき合ってしまったということで、これ何とか対応しなければいけないということで課題になったそうであります。
 居住誘導区域外の方ですけれども、こちらはその人口も減りますし、民間の施設なども撤退するということになりかねないと。公共施設も集約化するという流れの中で、どんどん住み続けることが困難になってしまうという声が地域の方から出されたということを私もお聞きをしております。
 今、ちょっとずっと紹介しましたけれども、これは神戸の例ということでありますけれども、立地適正化計画に基づいて進められる誘導によって、こういった問題が全国でも起こり得るのではないだろうかというふうに思いました。
 その上で、国交省にこれも説明いただきたいと思うんですが、こういう住民の皆さんの声をどうやって反映していくのか、その仕組みについて説明いただければというふうに思います。

○政府参考人(北村知久君) お答え申し上げます。
 このコンパクトシティーをつくるための立地適正化計画の作成に当たりましては、地域住民の方々の意見を適切に反映することは、これも重要だと考えてございます。このため、都市再生特別措置法におきましては、この立地適正化計画を作成しようとする場合には、あらかじめ、公聴会の開催など住民の意見を反映させるための必要な措置を講じなければならないと、このように規定しているところでございます。
 さらに、この法律の運用を、私どもで主導させていただいております都市計画運用指針では、特に、居住誘導区域や都市機能誘導区域の外に置かれている方々、そういった方々については、その誘導区域内で講じられる特例が適用されていない、こういう方について十分な住民の合意形成プロセスを経ることが重要だと、このように記述をしているところでございます。

○武田良介君 今答弁いただいたように、公聴会だとかパブコメ取ったりだとか、ワークショップを開いて声を聞いていくということになっている。実際にその神戸の場合も、先ほど約三割が区域外に置かれてしまったということだったんですけれども、素案の段階でそういった声がいろいろ出される中で、計画が計画案に変わったときには五%ぐらいになったんだということもお聞きをいたしました。それは非常に重要なことだったというふうに思っております。
 先ほどの懸念の点になりますけれども、神戸の例でもう少し、私、資料読んだところでお聞きしたいと思うんですが、神戸の例の場合は、高層ビルだとかバスタが入るような大型ビルだとか、あるいは役所などが入る建物など大分大きなものが計画されているようでありますけれども、これ、神戸のことだけを何か言いたいわけではないんですが、一般的に、この都市機能誘導施設、公共施設の整備ということがやられるわけですけれども、必ずしも高層ビルだとか何かバスタだとか、そういった大きなものを造らなければならないと、そんなものになっていないと思うんですけれども、この制度自身はですね。その点だけ確認したいというふうに思います。

○政府参考人(北村知久君) 誘導施設につきましては、それぞれの地域ごとに必要な施設を誘導するということでございますので、委員御指摘のとおり、大規模な施設を図らなきゃいけないとか、そんなような目的にはなってございません、制度にはなってございません。

○武田良介君 先ほどの答弁で紹介いただいた公聴会だとか開いていくというときに、私もずっと神戸の例を紹介しながら一般論で聞いて申し訳ないんですけど、神戸でもワークショップを開いたときに、タワーマンションを造るという話なんかがあるということを聞いた住民の方が、タワーマンション建てて、じゃ、数十年後とか、みんな入った人が高齢化したときにどうなるんだろうかという不安の声が出されたということだとか、あるいは、近隣にある団地をリノベーションしてきれいなものに変えていくと、そういうことはないのだろうかというような声も出されたということは非常に重要なことだっただろうというふうに思います。
 やはり、私が懸念しているのは、誘導する、集約する、今度は魅力あるまちづくりということを強調しながら、大規模な開発がどんどん進んでいくことに傾いていくということが私は非常に懸念をしているわけであります。
 神戸の例でも、商業施設の入る市庁舎への建て替えが行われるだとか、その総事業費は民間開発も合わせれば一千億円単位になるというふうに市長も市議会で述べておられるそうでありますけれども、一部そういうものを造る方たちは喜ぶかもしれませんけれども、住民の皆さんの声がそこにしっかり反映された計画にならなければ、そういう計画でなければならないということを思っております。
 ちょっと時間の関係で先に進みたいと思いますけれども、先ほど少し答弁にもありましたが、居住誘導区域外で住んでおられる方たちなんですね。この点について国の対応を聞かせていただきたいと思うんですが、神戸市で素案を提示した際に市の方が行った説明というのは私もちょっと驚きまして、居住誘導区域外となる地域については、その地域では住宅ストックを抑制して、スーパーだとか病院が撤退しても新たな施設を誘致するのではなくて、代替手段として移動販売車や遠隔医療、ドローンを使った荷物配送、これを進めるんだということを説明されたんだそうです。この説明に市民の方が非常に驚いたというか、反応されたということをお聞きしました。
 神戸のこの説明がいい悪いという話ではないんだけれども、一方で誘導するわけですから、一方で中山間地あるいは、まあ中山間地というのが神戸の規模と合うかどうかというのはありますけれども、人口が減ってしまう地域というのはやはりあるわけで、こういう地域に対して国はどういうふうに取り組んでいこうとしているのか、この点について伺いたいというふうに思います。

○政府参考人(北村知久君) 立地適正化計画は、先ほども申し上げましたが、これ、人口が全体減少していく中でどういった町の機能を維持していくかということでございますので、計画を作って、ある程度そのコアの部分にいろいろな施設を維持していくと。委員集めるというふうにおっしゃいますけど、どちらかというと、右肩上がりの時代であれば非常にどんどんどんどん大規模開発で集めてくるということはあるんですが、今はどちらかというと、全国で直面している問題は、人口が減っていく中でどうやって地域のコミュニティーなり生活を維持していくかということでございますので、過大な投資をするというよりは、今ある病院とか福祉施設とかがちゃんと今後でも維持できるように、そのためにはある程度必要な機能が真ん中に集まっていないと結局全て共倒れになってしまうと。そういうものが撤退されてしまうと、もう市からなくなってしまうとどうにもならないということでコンパクトシティーをやっているということでございます。
 ですので、そういうことで、町全体の機能を維持した上で、ただ、居住誘導区域外の方については、私ども、コンパクト・プラス・ネットワークというような言い方してございますけれども、そういった方がしっかりと町の中に行けるようなということで、トータルで見て住民の方が今後も暮らしやすく住めるような、そういったまちづくりができるように国としても支援をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

○武田良介君 今の答弁、私も理解いたします。ただ、私が懸念しているのは、その過大な投資になったりだとかそういうことを懸念しているわけであります。
 最後に、大臣に一問だけ。私は、そういう周りの、この地域に住み続けたいというふうに思っている方たちが、たとえ中山間地とかいろんな地域、なかなか不便があったりするかもしれないけれども、そういう方たちの思いを応援していくということがやはり大事ではないだろうかというふうに思っておるんですけれども、大臣の認識、最後に一問、聞かせていただいて終わりたいと思います。

○国務大臣(赤羽一嘉君) ちょっと済みません、その前に、答弁させていただく前に、ちょっと地元の神戸のことで、私、この計画はよく分かりませんけれども、タワーマンションを推進するような、今の市長が、そういう御発言がありましたけど、久元市長はタワーマンションは造らないというふうに宣言もしておりますし、ちょっとそうした事実関係は正しくやっていただいた方がいいと思います。
 これ、私も、今、この神戸だけじゃありませんが、地方地方で自治体が中心になって、議会の中で様々な意見を酌み取って、そして決めていくわけですから、それを国会の場で様々なことを、批判しているわけじゃないと言われましたが、このお配りの資料も、三宮の町の良さがどんどん失われていますという、こんなビラどこなのかと見たら、これ、ちょっと、お認めになられているんですからいいんですけど、こういうことも別に私、神戸市民ですけどそういうふうに思っておりませんし、ちょっといかがなものなのかなというふうに思います、正直言いまして。
 それで、先ほどのお話ですけど、この区域外の方について、これはどうするかというのは、それは首長の皆さんも、その議会、様々な議論の中で工夫をするというふうに思っております。
 富山市も、コンパクトシティーの成功例ということで私も視察を行きましたが、あそこ合併をして大変広くなっておって、中心市街地だけじゃないところについては、バスのおでかけ定期券みたいなことをやって、ネットワークということで拾っていると。確かに、拡散をしていくと病院もそういう公共施設が維持できなくなっていくからということで、あそこはLRTの駅のところに相当意図的に集約をして、その途中では相当御批判もあったと聞いておりますけれども、それは十五年掛けてやって大変な成功事例となっているということは、これは私はすばらしいなと思いましたが、これは、あくまで私の言いたいことは、その富山市、市長さんが市議会と市民の皆さんとの議論の中で決めたことだというふうに思っているんで、それは国として結果として大変評価をしているということでございますので、だから、私、申し上げておきたいのは、そうしたことについてどうするかというのは、どこまで行っても市町村の中で、前回も、前回というか衆議院のときも共産党の高橋議員からの質問にも同じように答えていますけど、地元の皆さんの声を拾いながら、どう選択するかは首長の、またその議会の判断で決めることではないかと思います。

○武田良介君 終わります。

 

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都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案に対する反対討論要旨

 

私は日本共産党を代表し、都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。

昨年の台風19号では、14県42市町において、立地適正化計画の居住誘導地域で浸水被害が発生しました。立地適正化計画を作成している自治体のうち、浸水想定区域など災害時の危険区域を居住誘導区域に含めている自治体が9割を超えていることが分かりました。本法案で、まちづくり計画を防災優先にし、浸水想定区域や土砂災害危険区域など災害リスクが的確に反映され、建築制限など規制が盛り込まれたことは当然のことであります。

しかし、民間都市再生事業計画の認定申請延長や一体型滞在快適性等向上事業に関して、問題があり賛成できません。

 

法案に反対する第1の理由は、民間都市再生事業が、大都市部の大規模開発事業を進める民間大企業、大手不動産、デベロッパーなど特定の大規模事業者を、容積率緩和、税制措置などで、優先的に優遇するものであるからです。その事業計画の認定申請の延長は認められません。

2002年に都市再生特措法を制定した当初、都市再生政策は、バブル崩壊後の低迷する大都市開発事業の打開策として打ち出されました。しかし、現在は、都市再開発ラッシュで、大手建設、不動産、開発事業者は、史上最高の利益を更新し続けています。その意味において、都市再生政策は、役割を終えています。アベノミクスによる都市再生政策は、国際戦略特区都市再生プロジェクトや国際競争拠点都市整備事業など特定の開発事業者等への手厚い支援をいっそう露骨にしています。2005年から民間都市再生事業計画の認定は132件にのぼり(20年4月末現在)ます。これらの開発事業者には、容積率緩和に加え、免税等による優遇は、13年度から7年間で400億円を超える額にのぼっています。

また、本法案にある民都機構の支援対象の拡大は、民間都市再生事業と同様に大規模事業者を優遇するものであり反対です。

 

第2の理由は、「一体型滞在快適性等向上事業」が、大都市部を中心に、「まちなかウォーカブル」推進事業などと一体として行われる「都市構造改変」や、他の都市開発事業とともに、特定の大手開発事業者を優遇する大規模開発事業を後押しする懸念があるからです。

「歩きたくなるまちなか」など、歩行者の利便に配慮したまちづくりは、クルマ中心のまちづくりから、歩く人に重点を置いたまちづくりへの転換であり必要なことです。

しかし、本法案で推進する「まちなかウォーカブル」事業は、官民連携と称して、街路、公園、広場など公共空間を利活用した民間事業を集中的・一体的に支援するとし、民間事業者に行政の普通財産を時価よりも低い対価で貸し付けるなど優遇します。さらに、大手開発事業者を含む都市再生推進法人に、道路や都市公園の占用・使用の許可に係る事務をおこなわせ、民都機構から融資を受けられるようにもします。

今年度から、予算措置においても、都市再生整備計画事業制度を再編し、民間事業者などが行う「都市構造再編集中支援事業」を個別補助を2分の1に拡充しています。

同事業は、こうした大手開発事業者を含めた民間事業者を優遇することになりかねません。

 

以上、反対の討論を終わります。

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関連資料

赤旗記事「大手優遇につながる/都市再生特措法改定案 武田氏批判」

参考資料

国土交通委員会資料20200602