議事録
○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
農地、農業用施設の災害復旧について質問をさせていただきたいというふうに思います。
昨年の台風十九号災害から一年以上が経過をいたしました。この台風十九号災害でも大変大きな農地、農業用施設の被害が発生をしております。主に市町村がその災害復旧の事業に取り組んでおりますけれども、田んぼだとか頭首工、こういったところの災害復旧は一定進んできましたが、まだ復旧事業の遅れが出ているというふうに伺っております。
まず、農水省に、この農業用施設の災害復旧、どういう事業か、簡潔に御説明をお願いしたいと思います。
○政府参考人(安部伸治君) お答え申し上げます。
農地・農業用施設等災害復旧事業は、豪雨、地震等の災害により被災した農地や水路等の農業用施設を復旧する事業です。
復旧に当たっては、復旧を急げば次の作付けに間に合う場合や二次災害の防止が必要な場合については、査定前着工制度を活用することで災害査定を行う前に工事に着手することが可能です。また、被災農家が営農意欲を失わないよう早期に復旧することが重要であり、原則、災害発生年を含む三か年度以内に復旧を完成させることとしてございます。
○武田良介君 先日、私、長野県の立科町というところに伺いまして、町長さんともお話をさせていただく機会がありました。立科町というのは、千曲川、まあ新潟へ行くと信濃川ですけれども、千曲川の上流部分に近いところでありまして、群馬県に近いような辺りなんですけれども。
そこでお話伺いましたら、災害復旧の事業について、事業者の不足、更に言えば、新型コロナの影響で、町が発注している農業用施設の復旧が遅れているというお話を聞いてまいりました。比較すれば、田んぼの災害復旧などは一定進んでいるということでありましたけれども、特に頭首工のお話されておりましたが、農業用施設の方がなかなか遅れているということでありました。
先にちょっと大臣にお伺いしたいと思っておるんですが、そのときに町長から言われたのは、先ほども営農が続けられるようにということで三年というお話がありましたけれども、お聞きしましたら、十月に発災をしております、今年の春の田んぼの作付け、頭首工が壊れているのでどうするかということで、土のうを使って、先ほどの仮復旧の関係ですよね、土のうを使って水を取るということをやったんだけれども、今年七月豪雨災害でその土のうすらまた流されてしまったと。じゃ、来年の作付けに頭首工、間に合うかというと、なかなかこれ間に合わないんですね。
やはりこういう遅れというものは次の、翌年の被害になる。より大きな甚大な被害になっていくこともある。そして、農業施設ということですから、農業が続けられるかどうかという地元にとって本当に大変な問題になる。私、そういう大変大事な問題だというふうに思っておるんですが、大臣の御認識を伺いたいというふうに思います。
○国務大臣(小此木八郎君) 今日も阪神・淡路大震災からこれは二十五年という話がありましたけど、私たちは、今ここのいらっしゃる皆さんのほか、日本国民、あるいは世界の方々もそうでしょうけれども、幾度かの大きな災害についての困難は乗り越えてきたと思いたいし、まだまだそれが、今委員がおっしゃったように、災害が重なって重なって重なってまた元に戻しちゃったと、戻っちゃったというその残念な思いとが交錯しながら来ていると思います。
国交省、農水省、自治体等はそういうことがないようにこれまで力を尽くしているというふうに思いますが、力を尽くしている結果が言ってみれば幸せな結果になっていないというものも多々ありますので、私たちがここでしっかりと議論をして対策を考えなきゃならないと、こういうふうに思っています。
被災地の早期復旧復興のためには、早期に事業実施、早期に完成させることがもちろん重要でありますので、常に改善をする、改善をするという気持ちを持ちながら、改善をさせるという気持ちを持ちながら関係省庁と連携してまいりたいと、先生方の御指導も仰いでまいりたいと思います。
○武田良介君 その結果に必ずしもつながっていない事例もあるというような大臣からの御答弁もありまして、本当にそうだと思うんですね。やっぱりそういう被災現場の一つ一つの実態を正確に捉えるし、やっぱりそこに応える仕事をやっていかなければいけないというふうに思っております。
具体の話にも入りたいと思うんですが、その前に一つ農水省の方にも確認をさせていただきたいんですけれども。
先ほど、営農を諦めることのないように基本的に三年という話だったんですが、今回大規模な災害でありまして、事業者さんたちも一生懸命やっているわけなんですが、どうしてもこれ三年超えてしまうおそれがあると。もちろん計画上は三年以内でやろうというものになっているわけですが、超えてしまうおそれがある。その場合に、災害復旧の国からの補助が打ち切られてしまうことはないだろうかという懸念が出ておりますが、この点はどうでしょうか。
○政府参考人(安部伸治君) 先ほど申しましたように、被災農家が営農意欲を失わないように早期復旧が重要であることから、原則三か年以内に復旧することとしておりますが、河川や道路の災害復旧事業等との調整が必要な場合でありますとか、被害が甚大であるなど、三か年度以内に復旧することが困難である場合には柔軟に対応させていただいておるところでございます。
引き続き、地元の状況をよくお聞きして、適切な復旧に努めてまいります。
○武田良介君 そういう河川の工事と農業用施設の工事が重なってなかなか進まないだとか、そういう事例がある場合というお話でありましたけれども、それをどこで確認するんでしょうか。農水省の本省だとかあるいは地方の出先機関と県が確認をするだとか、あるいはその発注者が町であれば町と農水省がやるのか、どことどこがどんな分掌でそれ確認するのか、もう一言、具体的にお願いできますか。
○政府参考人(安部伸治君) 農地、農業用施設の災害復旧事業は市町村が実施主体となってございます。それで、県等を通じまして当方の出先機関であります農政局の担当者とやり取りをして、復旧の進捗状況等を確認しながらやらせていただいているという状況でございます。
○武田良介君 同様に、河川の関係もありますので国土交通省の方にも伺いたいと思うんですが、河川、まあ道路なんかもそうだと思いますけれども、災害復旧で三年を超えてしまう可能性があるという声出ているんですけれども、これ、国交省の方でも柔軟にやっていただけるということでよろしいでしょうか。
○政府参考人(井上智夫君) 自治体が施行する災害復旧事業については、地域の復旧復興を進めていく上で早期復旧が望ましいと考えております。
このため、自治体が三か年度以内に事業を完了できるよう、財政の許す範囲内において必要な予算措置を講じることとしております。ただし、工事の規模、難易度、地形条件等により三か年度以内に完了しない場合も、四か年度以降に必要な予算措置を講じることとしております。
被災地の方々が一日も早く元の暮らしを取り戻せるよう、引き続き被災箇所の早期復旧を全力で支援してまいります。
○武田良介君 丁寧に現場の実情をつかんでいただいて、本当に延長するべきものだというふうに判断されましたら是非柔軟に対応していただきたいというふうにお願いをしたいというふうに思います。
それで、先ほどの立科町ですけれども、両角町長とお話をさせていただきました。それで、来年の作付けに向けて何とかその頭首工の改修をということで考えているんだそうでありますけれども、先ほどの話のように、千曲川、長野県が管理している区間もありまして、その長野県が発注している千曲川の改修工事、それも同じ業者が請け負っているということがあって、頭首工の方にもなかなか手が付いていないという事情があるんだというふうにお話をされておりました。
一言言っておきたいと思うんですが、決してその県の発注している工事があるから頭首工の方が遅れてしまっていると、そういう批判をしたいわけでは私はなくて、技術的にも現実的にも、当然取水したいわけですから、河川の工事とその頭首工の工事というのはこれは一体だというふうに思いますし、そういうことを私は言いたいわけではないんですけれども、そのことは確認をさせていただいた上で、さらに町のその担当者の方にお話を聞きますと、この立科町というところでは大体十社会社があるそうなんですが、河川だとか頭首工を扱えるようなところは四社なんだということもお聞きをいたしました。同時に多くの工事を抱えて、事実上の工事のスタートがまだ切れていない、事実上四社が担っていますのでということがあると。
そこでお聞きをしたいんですが、その河川の被害が甚大で頭首工にも手が付かないと、こういうときに、国交省は十九号災害から復旧復興工事を円滑に進めるために発注者団体、事業者団体に対してどんな助言をされているのか、御説明いただけるでしょうか。
○政府参考人(天河宏文君) お答えいたします。
台風十九号からの復旧に当たっては、被災地における災害復旧事業の迅速かつ円滑な実施を図ることが重要であると認識しております。
このため、国土交通省におきましては、台風十九号における災害の発生直後から、応急復旧を優先するため、既に契約した工事、業務の一時中止、必要な人員等を円滑に確保できるよう前金払いの適切な実施、積極的に見積りを活用して積算するなど施工地域の実態に即した適切な予定価格の設定、遠隔地からの建設資材調達や地域外からの労働者確保に伴う設計変更による請負代金額の変更などの適切な支払などの措置を講じるよう、通知を発出しております。
以上でございます。
○武田良介君 今言われたその適正な予定価格、適正な予定価格を設定することだとか代金の支払、工事の一時中止、いろいろ御説明もいただきました。
それで、私も現地でお話を聞きまして、河川改修に汗を流されている長野県の担当者の方からもお話聞きました。そういった文書が出されているということで十分県の方も承知をされておりまして、そういう立場から仕事をされているということでありました。ただ、そういう手だてを取っても、先ほど言ったような工事の遅れというのがあるというのが私の聞いてきた現実なんですね。
長野県では、いわゆる復興JV、東日本大震災のときに始まったあの取組を、過去の他の自治体がやっている事例なども参考にしながら私たちもそれやろうじゃないかということで取組もされておりました。
今御紹介いただいた、国交省からそういう通知出しているということだったんですけれども、この復興JVの取組を知らせるような事務連絡というのは、これは十九号災害を受けて出されているものなんでしょうか。
○政府参考人(天河宏文君) 発出しておりません。出しておりません。
○武田良介君 発出されていないということなんですけど、これ、私、是非発出する必要があったんじゃないかというふうに思いますし、問題意識が不十分だったんじゃないだろうかというふうに思っておりまして、その復興JVの目的というのは、これ政府の文書見ましても、大きな被害を受けた場合に、不足する技術者又は技能者を広域的な観点から確保することにより、復旧復興建設工事の円滑な施工を確保するため、これが目的だというふうになっているんですよね。
これが知らされていないということは、その不足する技術者や技能者を広域的に集める、そういう必要性は生じていないと、そういう必要性はないということの認識だったんでしょうか。この点どうですか。
○政府参考人(天河宏文君) 復興JVにつきましては、東日本大震災という未曽有の大災害、非常に範囲が広がったという大災害におきまして、同時に事業を推進しなければいけないと、そういう状況の中で、極めて特殊な形で、特殊というか、極めて特殊な事情に鑑みまして発出いたしました。
○武田良介君 いや、台風十九号災害だって大変大きな被害だったと思うし、特殊な状況でやったというんだけど、いや、私はその認識がやっぱり甘かったんじゃないかというふうに思っておるんです。
立科町は長野県の佐久地方というところですけれども、その佐久地方で見ますと、年間の公共土木の事業規模は大体五十億から六十億円だというふうにお聞きをいたしました。しかし、台風十九号の災害を受けて、復旧工事の査定だけで約二百億円の事業規模になっているというんですね。ふだん五十億から六十億の仕事量になっている佐久で、災害復旧の査定で二百億円ですから、大変な仕事になると。
これ、佐久地方以外のところからも応援を受けて仕事をしなければならないような実情があるというのは当然だというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(天河宏文君) 地域要件の緩和によりまして、地域以外の企業が参加するといったことは可能にしております。
○武田良介君 地域以外の人も可能だと、それは分かっているんです。それは可能だ、分かっているからこそ、長野県も復興JVだとか、先ほど御説明あったことも周知するということももちろんやっているわけです。だけど、なかなか外から事業者が入ってきて一緒に仕事をするというふうにならない。どうしても遅れてしまうという現実があるんです。
だから、この現実はなかなか国交省の方で十分認識いただけていないんじゃないかなというふうに思うんですけれども、今、全体として、私、建設業の皆さんの人手不足もあるんじゃないかなというふうに思っておりますが、済みません、この点通告していないけれども、人手不足はあるというふうに私思っているんですが、その点いかがですか。
○政府参考人(東川直正君) お答え申し上げます。
公共工事に関する人手不足、業者不足についてでございますけれども、全国的な建設業界の施工能力をマクロで見ますと、東日本大震災の復興が本格した時期に比べれば、建設技能労働者の過不足率は落ち着いてきておりまして、また、手持ち工事高もここ数年は安定的に推移しているなど、施工能力に問題はないと認識しております。
一方、この長野県立科町地域における状況の詳細は十分承知しておりませんけれども、一般的に、我々直轄工事におきましても、災害のあった地域などにおきまして一時的に例年より多くの不調、不落が発生するというケースがございます。こうした場合には、先ほど通知がございましたけれども、積算価格を高くするとか、あるいは現場の技術者の有効活用や早期復旧の実現の観点での適切な規模での発注をするといった取組を我々させていただいているところでございます。
こういったことで直轄のは取り組んでおりますけれども、そういった取組はきちっと発注者協議会を通じて関係自治体に周知してきているということでございますけど、改めてまた長野県や立科町にきちっと周知をもう一度させていただきたいんですけれども、先ほど委員御指摘の点は、もしかしたらそういう発注のところではないのではないかと、問題点がですね、そういった積算のところではないのではないかという御指摘もございましたけれども、そこのところはよく長野県と立科町とが相談いただけるように国からもお話をしていきたいと思いますし、もし困ったことがあったら相談に国としても乗っていきたいというふうに思います。
○武田良介君 今御答弁ありましたけれども、今の答弁の中でいえば、全国的に人手不足ではないと。災害だとかそういうことがあって瞬間的に需要が高まることがある、それに対しては対応しています。先ほどの、発出しているような、答弁で説明いただいたような予定価格だとかいろいろ対応していますと、不調、不落が起こらないようにやっておりますという話だと思うんですが、しかし、やっぱり現実は冒頭言ったような状況なんですよ。
この認識がどうしてずれていくのかということを私も非常に思うんですが、聞きましたら、契約はされています。町が発注している頭首工だとか河川の工事も含めていろいろありますけれども、契約はされているけれども、農地でいいますと、実際に工事が始まっているのは三分の一程度なんだそうです。農業用施設は五分の一程度なんだそうです。契約しているから着工というふうに出るんですけど、実際には違うんだということもおっしゃっておりました。
ちょっと大臣に通告していなくて申し訳ないんですが、こういう認識の違いがどうも生まれているように思うんです。現場では人が足りないというふうに言っている。でも、国交省は今ほどのような答弁で対応しているというふうに言うんですが、しかしやっぱり現場は足りていない。やっぱり、どうしてこのギャップが生まれるのか、ここをしっかりと調べていただく必要があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣、この点で是非調べていただきたい。いかがでしょうか。
○国務大臣(小此木八郎君) 日頃から私たちは関係省庁との連携という言葉を発していますし、昨日も衆議院でそこは議論になったんですけれども、関係省庁だけじゃなくて、自治体、国と自治体、あるいは自治体とその県民の皆さんなのか、その地域の皆さんとの連携を、情報共有を常にこれは大事にしておくことは非常に重要であるというふうに考えます。
○武田良介君 是非、じゃ、立科なら立科でもいいんですけれども、実情をつかんでいただきたいと思うんですが、そういうことでよろしいでしょうか、今の答弁は。
○国務大臣(小此木八郎君) そういうことだと思います。
国会議員、こちらにいらっしゃいますけれども、そういう地元のこと、立科だけにかかわらず、こういったことの本当の現状、このことを私たちが知ることは非常に重要なことだと思っています。
○武田良介君 それぞれつかもうというだけじゃなくて、政府としてしっかりこれつかんでいただきたいというふうに私は思っております。
長野県は一九九八年にオリンピックが開かれまして、そのときに投資額がピークに達しているということをこの間も改めて伺ってまいりました。そのときから比べると、投資額がもう四分の一になっているというんですね。だから、本当に業界としては非常に大変な状況になってきているということも言われておりました。決してこの認識の差を曖昧なまま私も終わらせるわけにもいかないなというふうにも思っております。
建設業全体としても、今なかなか人手が足りなくて大変だということはもちろんあるというふうに思いますし、今日もテックフォースという話もありましたが、これ例えば国交省の方でも地方整備局なんかが行くわけですけれども、これ自身なかなか人が足りなくて大変だという声も伺っております。定員削減ずっとやってきたわけだけれども、そういうことではなくて、人を増やしていく、県とか市町村ももちろんですね、最前線ですから、こういったところもちゃんと人を増やしていくということも含めてこれから必要になっていくと。
もう時間ですので終わりにしたいと思いますけれども、そのことを訴えて、終わりにさせていただきたいと思います。
関連資料
しんぶん赤旗記事「復旧工事人手足りず/武田氏 農地被害 実情把握を」