軽井沢スキーバス事故から5年。6日の国土交通委員会で、事故の再発防止と到達点について質問しました。コロナ感染拡大で経営が苦しいなか、安全軽視に陥ってしまうことも懸念されます。遺族の方から伺った声も紹介し、再発防止策の徹底を求めました。(スタッフ)
議事録
○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
今年は、長野県軽井沢町のスキーバス事故から五年目を迎えた節目の年となっております。死者十五名、重傷者二十六名という大変悲惨な事故でありました。改めて、亡くなられた皆さんに哀悼の意を表しますとともに、御遺族の皆さんに心からお見舞いを申し上げたいというふうに思います。
私、先日、この事故の御遺族でつくられている一・一五サクラソウの会の田原さんからもお話を伺いました。田原さんは、もう五年という思いもあるはあるが、五年は長いなという思いもしているということをお話しになられました。それはどういうことかといいますと、まだイーエスピーの社長と運行管理者の刑事責任がはっきりしていないということをおっしゃっておられました。それと関連して、その再発防止対策もまだ途上ではないかという思いがあるからだということをお話をされておりました。
そういうことも聞かせていただきましたので、今日は、こういった軽井沢のスキーバス事故を二度と繰り返さないと、再発防止を徹底するという決意を共有させていただきたいというふうに思いますし、五年たって再発防止どこまで来たのかということを確認し合えればいいかなというふうに思っておりますので、お願いをしたいと思います。
まず最初にですけれども、赤羽大臣も事故現場に足を運ばれて、三月十二日にサクラソウの会の皆さんと懇談をされたというふうに伺っております。その懇談も踏まえて、今後の安全確保をどうしていくのか、大臣の所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(赤羽一嘉君) 私、五年前の事故発生後十日目の平成二十八年一月二十五日に、公明党の国土交通部会として現地視察を行わさせていただきました。大変悲惨な状況で、前途ある多くの若者が犠牲となる本当に悲惨な事故でございまして、二度とこのような事故を起こしてはならないと大変怒りに覚え、党の立場からも、当時の国土交通相に、貸切りバス事業者の安全対策や運行管理の徹底並びに不良事業者の追放の実行と、そして、当時は夜行バスによるスキーツアーというのが大変はやっておりましたので、それを主催する観光事業者の安全軽視の過激な価格競争の是正など、再発防止策について強く申入れをした立場でございました。
国土交通省では、この事故を受けて対策検討委員会を設置し、御遺族の皆さんからの御意見も受け入れさせていただきながら、平成二十八年六月に八十五項目に及ぶ貸切りバスの安全運行の総合対策を取りまとめ、その施策を順次実施しているというふうに承知をしております。
私も、この五年目の今年も事故現場に行かせていただいて、御冥福をお祈り申し上げながら、交通事故撲滅の誓いを胸に献花をさせていただきまして、その際にお出会いしました御遺族の皆様と、是非また別の機会にじっくりお話をという、そうしたお話もありましたので、この三月十二日にそういう場を設けさせていただいて、御意見を承らせていただいたところでございます。
この間、ちょっと重なりますが、貸切りバスにつきましては、道路運送法及び関係省令を改正いたしました。これ一番大きなのは、事業許可における五年ごとの更新制の新設をすると、不良の事業者をそこで退場させるということで、平成二十七年度では四千五百社、四千五百八社あったわけでございますが、この四年間で約五百社が業界から排除されたという状況でございます。
また、適正機関を新設して、全ての貸切りバス事業者に原則年一回の巡回指導も実施をさせていただいております。また、営業所ごとの運行管理者の必要選任数の引上げを行うなど、そうした各種の取組を行ってまいりました。また、発注元である旅行業者に対しましては、旅行サービス手配業者、いわゆるランドオペレーターの登録制度の創設、また、旅行業者が作成する募集広告のパンフレット等への運行する貸切りバス事業者の記載義務付けと、こうした取組を行ってきたところでございます。こうした施策の結果、この事故以後、貸切りバスの乗客の死亡事故はまだ現時点で発生しておりません。乗客以外も含めた死傷者の数も減少しておるところでございます。
ただ、コロナ禍の影響で貸切りバス事業者は大変厳しい状況になっておりますので、そうした状況であるからこそ、安全が軽んじられないようにしっかりと安全対策を推進しながら、貸切りバスの安全、安心の確保にこれからも万全を期してまいりたいと、こう考えております。
○武田良介君 二度と事故を繰り返さないという思いを私も改めて共有をさせていただきたいというふうに思いますし、今大臣からありましたように、道路運送法の改正で免許の更新制を導入したということがありました。私たちも、大変重要なものだというふうに理解をしております。そういった中で減らしてきたというお話がありました。
私が大変重要だというふうに考えておりますのは、今大臣からも少しありましたけれども、そういう法令違反を犯すような悪質な事業者を市場に参入させない、そのことがやはり大事なんだろうというふうに思います。減らしてきたということなんですが、現状どうなっているのかということを少し確認をさせていただきたいというふうに思っておりまして、ちょっと数字が続いて恐縮ですけれども、資料も見ながらお願いしたいと思いますが、国交省に確認をいたします。
国交省が貸切りバス事業者に対して行いました二〇一七年度以降の監督の件数、それから処分等の件数、処分率、そして許可の取消しとなった事業者の数、事業停止となった事業者の数、教えていただけますでしょうか。
○政府参考人(秡川直也君) 平成二十九年以降の数字を申し上げます。
監査件数は、二十九年千百六十九件、三十年度千五十六件、令和元年九百四十八件です。処分を行った件数は、それぞれ三百九十七件、四百八十三件、四百二十四件です。監査を件数で割った処分率ですが、三四・〇%、四五・八%、四四・七%です。監査の結果として許可取消しとなった事業者ですが、四事業者、一事業者、令和元年一事業者です。それから、事業停止となった事業者は、二十九年四事業者、三十年六事業者、元年十四事業者でございます。
○武田良介君 資料の一に付けさせていただきました。答弁は二〇一七年からということでお願いをしましたけれども、資料の上では二〇一五年から付けさせていただいております。スキーの軽井沢のバス事故が二〇一六年ということでもありますのでそういうふうに付けさせていただきましたけれども、あの軽井沢のバス事故が起きて以降も処分の件数、処分率、なかなか減っていないのかなというふうに思いました。それと、許可の取消し、それから事業停止という、こういう重い処分を受ける事業者も依然としてまだいるなということを率直に感じたところであります。
私が着目したいというふうに思いましたのは、これらの事業者の中には許可更新制が導入された二〇一七年度以降に事業参入している事業者もあるということであります。資料の二に付けさせていただきましたが、国交省に教えていただいた資料であります。これ見ましたら、令和元年度のところの四番と七番というところに、許可の年月日というのが出てきますけれども、これは、この二社は免許の更新制が導入された後に許可を受けているところになるわけであります。
この許可の更新制を導入したことは一歩前進だというふうに思いますけれども、完全に悪質な事業者をまだ排除できていないのかなというふうに思いますけれども、この点、現状を確認したいというふうに思います。国交省、いかがでしょうか。
○政府参考人(秡川直也君) 軽井沢バス事故以降、貸切りバスの新規参入に当たって、許可基準の厳格化を行っております。それに併せまして、新規許可事業者に対してはもう早く監査に入るということをやっていまして、その監査の結果、三十日以内にその監査での指摘事項を確認するという呼出しをやらせていただいています。それで、それでも未達成の場合には事業停止とか事業取消しという対応を行っております。
先ほど大臣から新しく事業者に入る制度が出たということがありましたけれども、監査とそういう制度というのは併用していまして、国家公務員が入る監査の方は、悪質な事業者に集中して入るということにしております。それで、監査で一回処分を受けますと、それが累積の点数になるということになっていまして、早くその悪い事業者を市場から排除しようという制度になっていますので、先ほど申し上げたように、数字的には処分の件数が多く出ていますが、そういう新しい制度が機能しているというふうに理解をしております。
○武田良介君 機能しているという趣旨の答弁なんですけれども、私が聞きたかったのは、全て排除し切れていないんじゃないかと。まだそういう事業者が、集中するにしても、悪質な事業者のその群があるわけですよね。だから、そういうところがあるじゃないかということを確認させていただきたかったんですけど、その点は、そういうことでよろしいですよね。
○政府参考人(秡川直也君) 制度が新しくなってもそういう悪い事業者がいるというのは、それは事実でございますので、事前の取締り、その事後の監査等々でしっかり把握して排除していきたいというふうに考えております。
○武田良介君 是非お願いします。
もう一つですけれども、貸切りバス事業者の運賃の下限割れについてであります。
これ、当然ではありますけれども、運賃の下限割れということになれば、労働者の賃金ですとかあるいは安全投資に必要な資金を確保する上で支障が出てしまうということで、やはりこの軽井沢のスキーバス事故が一つのきっかけで、改めてこれ注目しなければならないというふうに思っております。
そこで、二〇一七年以降、下限割れの運賃で貸切りバスを運行していた事業者の数、それから、二〇一五年以降になりますけれども、運賃の届出違反、確認された営業所の数は幾つあるでしょうか。
○政府参考人(秡川直也君) 下限割れ運賃、これはアンケート調査というサンプル的な数字なんですけれども、平成二十九年度は八十一事業者、三十年度は百九事業者、令和元年度は、これちょっとサンプルが少なかったかもしれませんが、ゼロ事業者ということでございました。
それから、監査の際に運賃の届出違反が確認された営業所ですけれども、平成二十七年度は十四、二十八年度八十一、二十九年度七十七、三十年度百七、令和元年百七営業所というふうになっております。
○武田良介君 この下限割れ、これもまだあるというのが現状じゃないかなというふうに思うんですね。先ほどありましたけど、抽出のアンケートですのでちょっと比較が難しいですとか、そういったことはあろうかというふうには思いますけれども、私も、説明受けたときに、このアンケートも抽出でやっているのでどれだけ実態を反映しているのかという話も含めてちょっと疑問符が付くというようなことも説明を受けておりますので、それでもこれだけ数が一定出てきているということは、私、よく見なければいけないというふうに思っております。
ちょっと時間がありませんので、最後に一つお伺いをさせていただきたいというふうに思うんですけれども、このサクラソウの会の田原さん、冒頭私もお話を聞かせていただいたというふうに言いましたけれども、もう一つ田原さんがおっしゃっていたのは、今、コロナの下でバス事業者が大変な経営的困難にあると、コロナがいつ明けるか分かりませんけれども、明けてもう一度営業を再開するというふうになった場合に経営が苦しくて安全がないがしろにされると、そういう状況で再び営業を開始することはないだろうかということを大変心配をされておりました。
それからもう一点、バスのドライバーさんですね、ドライバーさんからもお話を聞くと、既にもう今でも一年間運転していない、もっと延びることは間違いないと思いますけれども、しばらく運転していなくて、いざ運転するといったときに技量がどれだけ落ちているだろうか、そのことも非常に心配だということをおっしゃっておりました。
やはりスキーのバス事故、あの軽井沢のバス事故の教訓というのは、一つはドライバーさんの技量という問題はもちろんあったというふうに思いますし、安全を軽視するような経営がなされてきたということがこれまでの調査でも明らかになってきたと思うんです。やはりこのことをコロナを受けてこの後どうしていくのかということが非常に重大な課題ではないかというふうに思っております。この点で国交省のお考えを聞きたいというふうに思います。
○政府参考人(秡川直也君) 私どもも、田原さんから同じような問題意識、問題提起をいただいてございます。
今御指摘いただきました、まず事業者の方は、先ほどの監査、巡回指導でしっかり見ていきたい。あと、長期間にわたって運行を休止していた貸切りバス事業者の運転手さんのその技量の問題ですね。
再開するに当たって、例えば、その貸切りバス運転者に同じ会社の路線バスに乗務させるとか、貸切りバス運転者が乗務へ復帰する前に指導員、ベテラン運転手さんが添乗して実車の指導を行うということを既にやっていらっしゃる事業者もいて、こうしたいい事例というのを今後到来するお客さんが増える時期の前に横展開をするとか、あと、安全対策に関する講習会を私どもで開くというふうなことでドライバーの技量というのをしっかり維持していきたいなというふうに考えております。
○武田良介君 田原さん、やっぱりおっしゃっていたのは、再発防止、二度と繰り返さないということだと思うんですね。コロナという状況の下でその後どうするのか、技量の話もありましたし、今度、経営が大変だということから、まあ潜っていたといいますか見えないところにいた事業者が出てきてそういう運営をしないかどうか、このところはしっかりと見ていただきたいということを重ねて申し上げて、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
関連資料
しんぶん赤旗記事→「貸し切りバス 悪質業者排除求める 武田議員 軽井沢事故くり返すな 参院国交委」