武田良介議員は8日の国土交通委員会での海上交通安全法の質疑で、2018年の台風21号による関空連絡橋へのタンカー衝突事故について取り上げ、海上の事故防止対策を求めました。(スタッフ)
議事録
○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
早速法案について質問させていただきたいと思いますけれども、近年、走錨した船舶による重大な事故も発生をしているということであります。人命が危険にさらされるということはもちろんですし、また経済的な損失、あるいは海洋環境への影響なども懸念されるということも考えれば、今後の対応が迫られているということだというふうに思います。
まず、二〇一八年九月に関空の連絡橋にタンカー宝運丸が衝突をした事故について、この教訓をどう生かしていくのかということで質問をさせていただきたいというふうに思います。
この事故を受けまして、二〇一九年の四月に運輸安全委員会は船舶事故の調査報告書を発表いたしました。この調査報告書を見ますと、今後の事故防止に生かすことを目的にしておりまして、船長が取るべき対応、それから海上保安庁が取るべき対応も、それぞれ示しておられます。例えば、船長が取るべき対策の例としては、ケイチュウリョクとお読みしたらいいんでしょうか、いかりを下ろして安定させる力といいましょうか……(発言する者あり)ハチュウリュウ。
○委員長(江崎孝君) 後でよろしいですか、その話は。済みません、お願いします。
○武田良介君 済みません、読み方ちょっと、申し訳ない。その確保ですとか、それから他船との十分な距離を取ることなど、船長に対応、対策を取ることとして掲げております。あるいは、海上保安庁が取るべき対策の例として、それぞれの海域を取り巻く環境に関する情報及び荒天時に実施される対策について事前に関係者に周知徹底すること、こういうことが掲げられております。ですから、こういうことが事故当時どういうふうに行われてきたのかということが今大事なんだろうというふうに思います。
この関空ですけれども、大阪湾周辺でといいますか、関空島周辺で周知されるべき内容というのは、関空島のところから原則三マイル離したところに錨泊してくださいということを周知徹底すべきだったということを伺っております。その内容も、リーフレットを作成して周知をしてきたと。
そこで、海上保安庁にお伺いしますけれども、二〇一八年のこの関空の連絡橋の事故が発生する前の周知はどうだったのか、このリーフレットをどのように周知されてきたのかについてまず伺います。
○政府参考人(奥島高弘君) お答えいたします。
まず、委員御指摘のリーフレットでございますが、これは関西国際空港の周辺海域において、走錨による船舶の衝突事故が平成十五年以降三件、また、平成二十二年には、事故には至らなかったものの船舶が二マイルにわたり走錨した事案が発生したことを受け、台風接近等の際には関西国際空港から三マイル離した場所で錨泊するよう指導するために作ったというものでございます。
このリーフレットにつきましては、関西空港海上保安航空基地、海上保安庁の出先機関でございますが、これのホームページへの掲載、この基地や近隣の保安部署の入港届などの受付窓口における配布、大阪府や兵庫県の船舶代理店の関係団体へ送付するといったことにより周知を図ってまいりました。さらに、平成二十三年から平成三十年までの間、大阪地区の海事関係団体の代表者が一堂に会する大阪地区海難防止強調運動推進連絡会議、これにおきましても毎年周知を図っていたところでございます。
○武田良介君 タンカーの所有者である日之出海運さんは、この三マイル離してくれということを十分承知していなかったというふうにおっしゃっているということもあるそうでありまして、日之出海運さんは福岡の会社というふうに私承知しておりますけれども、今お話にもありました大阪地区の海難防止強調運動推進連絡会議、これが大阪地区なので、また、そこに加わっている、この海運さんも加わっている連絡会議のところの支部も違うということもお聞きをしておりますので、そうすると、大阪湾のルールをそういった会社のところにも伝えていくという点で今後教訓にしなければいけないのではないかというふうに思っております。
今のは事前の周知の話なんですけれども、いざ荒天時にどういうふうに注意喚起の情報を伝えていくのかということも、また重要ではないかというふうに思います。
関空のこの事故の際はどうだったかということで、事前に説明も聞きましたけれども、VHFという無線ですかね、船舶の方で聞ける、それによって事前に注意を呼びかけた上で、空港島から三マイル以内にいた十三隻のうち走錨の可能性があるというふうに見た六隻に対しては個別に注意喚起を行ったというふうに伺いました。
この走錨の可能性ありというのを、AISによって大阪湾内のどこに船が錨泊しているのか把握できていたはずだと思うんですね、十三隻入っていたということが分かっているわけですから、事前にもっと分かっていたのではないか。
宝運丸に最初に個別の注意喚起したのは十三時ちょうどというふうに伺っておりまして、衝突したのが十三時四十分ですので、最初の連絡が四十分前。しかし、もっと早くに三マイル以内に入っていたのではないか、そういう段階でもっと早く注意喚起することはできなかったんだろうかというふうに率直に思うんですけれども、この点いかがでしょうか。
○政府参考人(奥島高弘君) 当時の状況について御説明を申し上げます。
関西国際空港の周辺海域を管轄する関西空港海上保安航空基地におきましては、機会あるごとに、走錨防止の取組として、関西国際空港の陸岸から原則として三マイル以上離れた場所で錨泊することを注意喚起をしておりました。
関西空港連絡橋にタンカーが衝突した同日、平成三十年九月四日、これにおきましても、台風接近に伴う走錨に注意するよう、当該タンカーを含む大阪湾内の錨泊船に対し、大阪湾海上交通センター及び第五管区海上保安本部からAISメッセージ及び無線により、全ての錨泊船を対象とした一斉通報により注意情報を発出しております。
さらに、大阪湾海上交通センターでは走錨の監視を強化し、当該タンカーを含みます多数の錨泊船に対して、個別に船舶電話等で走錨の可能性について注意喚起を行ったところでございます。当時、関西国際空港から三マイル以内につきましては、委員御指摘のとおり、我々が把握している限り錨泊船が十三隻おりました。当該タンカーを含む六隻に対し、船舶電話等により注意喚起を実施してございます。
これらの対応にもかかわらず事故が発生したことから、今般、新たに海上交通安全法第三十二条、湾外避難、湾内の錨泊制限等の勧告、命令、こういったものを創設し、この規定に基づき、異常気象時に関西国際空港など臨海部の施設の周辺海域で錨泊する船舶に対し、移動や退去等を勧告、命令することができるようになります。今後、この新たな制度に基づき、より適切に対応することといたします。
○武田良介君 事実関係はそのとおりだというふうに思いますが、私の問題意識、もう一歩踏み込んで言いますと、その三マイル離れたところに錨泊してほしいという話があり、注意喚起をするに当たっては、AISを確認して走錨の可能性ありと、その判断も難しいというふうに伺いましたけれども、走錨の可能性ありというところに注意喚起をするということもありますが、三マイル以内のところに入ってくる、入ってきたと、もうその段階で注意喚起するということもできたんじゃないだろうかと。
細かなことをしつこく聞くようですけれども、今回の法改正で勧告や命令をするというときにも、こういった教訓を掘り下げていくことも大事じゃないかなというふうに思っておりまして、その走錨の可能性ではなくて、三マイル以内に入ってくるとか、例えばそういった基準の持ち方ですね、先ほども少しありましたけれども、その点は今回の法案にどう生かされるんでしょうか。
○政府参考人(奥島高弘君) お答えをいたします。
三マイル以内に入らないということにつきましては、行政指導というベースで我々の方からお願い、要請をしていたものでございますが、今般のこの法律により、法律に基づき、それを制限をし、あるいは禁止をし、あるいは移動を命令するということができるようになりますので、しっかりとした指導といったことができるようになると、このように考えてございます。
○武田良介君 是非お願いをしたいというふうに思います。
次に、関空の事故の後ですけれども、海上保安庁がこの事故を受けて再発防止有識者検討会を設置をいたしました。そして、二〇一九年の三月に第一次となる報告書も発表された。さらには、二〇一九年の台風シーズンを前に、海上空港ですとか重要施設周辺海域を優先的な検証対象として各管区でその対応を検討し、検討された対応を順次適用していくということでお知らせもされているというふうに承知をしております。
しかし、こうした中で、二〇一九年の九月、台風十五号による東京湾での走錨事故も発生をしてしまいました。改めてでありますけれども、この台風十五号の走錨事故について御説明をいただけますでしょうか。
○政府参考人(奥島高弘君) お答えをいたします。
令和元年九月に台風十五号が東京湾に接近した際には、四件の走錨に起因する事故が発生をいたしました。
そのうち、臨海部に立地する施設に衝突したものとして、走錨した貨物船が南本牧はま道路に衝突した事故、走錨したケミカルタンカーが本牧海づり施設に衝突した事故の二件がございます。また、船舶同士が衝突したものとして、横須賀港内において走錨した貨物船が錨泊をしておりました漁業実習船に衝突した事故、川崎沖におきまして走錨した貨物船が錨泊中の貨物船に衝突した事故の二件が発生しているところでございます。
○武田良介君 経過でいうと、関空の事故があり、有識者検討会も立ち上げ、しかし、また事故が発生してしまったということなわけなんですけれども、私が気になっているのは湾外避難なんです。十五号のときにはこういう事故が発生してしまったわけですが、その一か月後に台風十九号がまた来て、このときには湾外避難を実行したというふうに伺っております。
そうすると、率直に、一か月後の十九号ではできて、やっているので、十五号のときにやらなかったんだろうかと。その一年前に関空の事故があって、十五号のときにはできなかったんだろうかとちょっと率直に思うんですけれども、この点はどうでしょうか。
○政府参考人(奥島高弘君) 御説明いたします。
関西国際空港連絡橋への衝突事故、これは平成三十年の九月でございますが、これを受けまして、海上保安庁では、荒天時の走錨等に起因する事故の発生防止に係る有識者検討会、これを設置し、令和元年以降の台風シーズンに向けて対策を検討したところでございます。この有識者検討会における検討結果、これを踏まえまして、関西国際空港を始めとした海上空港や火力発電所など全国の臨海部に立地する施設の周辺海域におきまして、台風接近時等に船舶の錨泊を制限するほか、監視を強化するといった対策を講じたところでございます。
しかしながら、令和元年九月に台風十五号が東京湾に接近した際に、走錨した船舶が先ほど申し上げたように海上施設や他の船舶に衝突するという事故が複数発生したことから、同年十月の台風十九号の際には、東京湾のこの過密な錨泊状態を改善すべく、緊急的な対策として、行政指導により湾外避難等を推奨したところでございます。
これらの状況を受け、令和二年から交通政策審議会において湾外避難等の制度化に向けた検討を行い、同審議会の答申に基づき、今般法案を提出することとしたものでございます。
○武田良介君 直接お答えいただいていないように思うんだけれども。
重要だと思うんです。その有識者検討会をつくって、重要施設を位置付ける、海上空港ですとか、それも火力発電所ですとか石油の備蓄倉庫ですとか、こういうのが挙がっておりますので、そこを守るという非常に大事な議論をされているというふうに私も思っているんですが、十五号のときになぜやられなかったのかということを素直に私は思っているわけですね。どうですか。
○政府参考人(奥島高弘君) お答えいたします。
関空連絡橋への事故を受け、有識者検討会議を開催いたしました。この検討会の中には、そういった危険のある場所を指定して、海域の監視あるいは錨泊の制限といったことをすべしという答申をいただいたところでございます。ただ、その中に湾外避難といったところの対策は、その中の結論としてはございませんでした。
そういったこともありましたが、一方で、先ほど申し上げましたように、十五号の際には、東京湾の過密化、これを原因とする事故が発生しているということで、まずは指導というベースで湾外避難等を行い、そして、今般、それを法制化するということでございます。
○武田良介君 実際これから法改正がされて、勧告したり、あるいは命令をして湾外避難を行っていくということもあろうかというふうに思うんですけれども、確かに、今言われたように、先ほどの答弁でも二日ぐらい前からという話もありましたかね、強風圏に入ってくる二日ぐらい前という話だったでしょうか、そういったタイミングですとか、あるいは実際に安全に湾外に避難がされるかどうか、やはりそこのところはよく見なければいけない。そういうことを考えても、この間の走錨事故がどのように発生したのか、そのときに海上保安庁がどう対応してきたのか、改めて検証していくことも必要だというふうに思いますので、質問をさせていただきました。
質問を終わります。ありがとうございました。