国会質問

質問日:2021年 4月 20日  第204通常国会  国土交通委員会

流域治水 住民意見反映をー参考人質疑

4月20日、流域治水関連法案について、参院国交委で参考人質疑が行われました。武田議員は、住民とともに治水計画をつくっていく重要性などについて参考人の意見を聞きました。(スタッフ)

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。よろしくお願いいたします。
 今日は、三人の参考人の先生方、ありがとうございました。
 まず、今回の法案で、各例えば河川管理者とかだけではなくて、いろんな関係者の皆さんが一緒に流域治水について考えていくということが一つポイントだろうというふうに思います。その意味で、住民の皆さんとともに議論をしていく、理解を深めていく、流域治水というものを、概念的なものですが進めていくことが大事だというふうに思っております。
 これまでも、例えば河川整備計画などの策定をする際にも、この住民の意見をしっかり聞いていきましょうということは強調されてきたと思うんですけれども、私、地元長野県でありますが、台風十九号の災害が発生をいたしまして、大変な被害が出ました。そういう経験からしても、必ずしも十分ではなかったのではないかと、その住民の理解、共に計画を策定していくということが、問題意識を持っております。
 今回の関連法においても、例えば遊水地をどこに設けるのか、上流、中流、下流それぞれ事情もあるでしょうし、それぞれ土地の所有者の方ですとかそういった方も含め、いろんな思いがあるかと。ちょっとそんなことを念頭にしながら、この住民の理解をどう考えたらいいのかということについて、まず小池参考人と嶋津参考人に伺いたいというふうに思います。

○参考人(小池俊雄君) ある計画を科学的な根拠を持って作り、それを実行しようとしたときに、その理解をどう進めるかというところ、理解というのは、正しい、賛成反対ではなくて、その仕組みがどうなっていて、どういうふうな効果があるかとか、どういうふうな逆にデメリットもあるかとかというようなことを御理解いただくというプロセスが不可欠であると。そのときに、私、先ほど来申し上げておりますけれども、その橋渡し役のような役割を担う方が現代社会の中にはなかなか十分いない、特に地方、市町村レベルになっていくと難しいというのを私は感じております。
 そういう人材、具体的には、例えば地方大学の教員、研究者の方々と一緒になってそういう役割を担う人材を増やしていくとか幾つか方策はございますが、あるいは市町村の職員の方でも、そういう意識のある方々と御一緒にそういう能力を高めていくような教育プログラムを作るとかそういうことをしないと、なかなか橋渡し的な、要するに科学的な、合理的な議論というところへ一歩進めない、感情的な議論に陥ってしまう可能性が高くなるのではないかと思っております。
 以上です。

○参考人(嶋津暉之君) 御質問ありがとうございます。
 本当に、この流域治水をどう進めていくかということは、これやっぱり流域住民の理解、協力、これが必要であります。ですから、今回、やはりこの河川法改正の、一九九七年に河川法改正されて、河川行政を行政機関が進めるんじゃなくて流域住民で進めるということになった、一応それが、そういうことが必要だということでこの河川法が改正されたわけです。河川整備計画の策定に当たっては、そういう意見を言う場がつくられるようになったわけですね。公聴会が開かれ、あるいはパブリックコメントが行われるということで、そういう制度的には住民の意見を聞くようになったんですが、実際は、当初は結構各河川で議論がきちんと行われていたんですけど、今はもうかなり形骸化しまして、公聴会、パブリックコメント、形だけ行われるようになってしまったんですよ。それが本当に私はゆゆしき問題だと思っております。
 今回、流域治水を進めるに当たっては、やはり河川法改正の原点に立ち返って、住民の意見をきちんと聞く、例えば、協議会なんかつくって、そこで議論をきちんと行うと、意見を十分に言えるようにするということ。さらに、それだけじゃなくて、その協議会の議論が流域治水の在り方に反映されたかどうかということ、それをやっぱりチェックする、そういう機関も必要だと思うんですね。
 ですから、是非、今回の流域治水の推進に当たっては、単に流域治水で進めるということではなくて、流域住民の意見をどう反映させるか、そういうシステムを同時に考えて法案化していければと思っております。

○武田良介君 住民やあるいは関係する皆さんの理解という点で、首藤参考人にも一つお伺いをしたいというふうに思います。
 先ほどの意見陳述の中でも、例えば活火山法なんかでも同様に避難の計画を作っていかなければいけない、施設に対してまずその指定をするというところからうまくいかないというのが現実なんだというお話がありました。お話の中でも、その施設の側からすれば、そういった計画を策定するですとか、あるいは周辺の環境なども含めて理解を得ることが必要なんだというお話だったんだと思うんですけれども、自治体の側からすれば、先ほどもありましたような専門性をどう培うかという問題、あるいは人員体制がなかなか十分ではないという話があったかというふうに思います。
 私も、最大の問題意識そういうところにありまして、そもそも、そういったものを指定していくというその最初の段階からうまくできない。現場の声といいましょうか、実態、具体的な例というところでもう一歩踏み込んで御紹介いただけると大変助かるかというふうに思うんですが、お願いします。

○参考人(首藤由紀君) ありがとうございます。
 現場の声に耳を傾けていただいて、大変有り難く思っております。
 市町村が例えば、避難促進施設と活火山法の方では言いますが、そういった要配慮者利用施設をうまく指定できない理由として、様々なものがあります。
 元々そういった施設の関係者の方が決して火山防災とか火山災害に関心がないということもあるでしょうし、あるいは、指定をされると観光施設なので非常にダメージが大きいという抵抗感があるということもお伺いします。また、市町村の側でもうまく説明がしにくいというところがありまして、やはり専門的な知見があるわけでもなく、一般の行政職員でございますので火山について詳しく説明ができないですとか、あるいは火山現象について詳しく様々な現象を御紹介できないですとか、そういったところがあるかというふうに思っております。
 恐らく、洪水の場面でも、いろいろな洪水に関する現象があったりですとか、あるいはハザードマップ一つ取っても、これはある特定の、例えば仮にここが破堤したとした場合のハザードマップですとか、そういったハザードマップの意味を説明するのも非常に難しいですので、そういった形で、まず、どんなリスクがあるということが説明するところから難しいことになっているのかなというふうに思います。
 その上で、それを理解していただいて、やるべきことをやるということを理解していただいて実際に実行に移していただくという場面では、やはり施設の方も、避難計画を作ると言われてもどう作ったらいいのか分からないですとかそういったことがございますので、今、国土交通省さんですとか、内閣府の方ですかね、モデル事業のような形で実際に避難確保計画を作るお手伝いをするような事業もありますので、そういったところで知見を積み重ねて、避難確保計画の作り方ですとか訓練のやり方を知見として広めていく必要があるかと思います。
 加えまして、先ほど来コーディネーターというようなお話がいろいろと出ておりますけれども、コーディネーターを一番うまく育成して社会に根付かせていくためには、それが一つのお仕事として成り立つという仕組みが必要だと思います。
 実際に、私の専門の分野では、心理学でカウンセラーというものがございますけれども、昔は、カウンセリング、心理カウンセリングに対して報酬というものが認められておりませんでした。それが診療報酬の中で位置付けられるようになってカウンセラーというものが普及したという事実がございますので、コーディネーターについても、きちんとそれが報酬のあるお仕事として位置付けていくことが大事ではないかというふうに思います。
 以上でございます。

○武田良介君 ありがとうございます。大変参考になるお話いただいたかなというふうに思っております。
 ちょっと重ねてもう一つ、首藤参考人にお伺いしたいと思うんですが、私こういう問題意識持っているのは、例えば、しばらく前ですけれども、共同通信の方が自治体アンケートというのを取りまして、専任の、災害に対応する専任の方が全くいないですとかあるいは一人というようなところが回答された市町村のうち三四%ぐらいだったかと承知しておるんですけれども、そういう体制がなかなか取れないということが報道されていたことも一つあります。
 もう一方で、専門性を培っていくというときに、もちろん国の方も様々研修を行ったりですとかされているわけですけれども、これは以前からずっとやってきているけれども、なかなか、今おっしゃったような、理解を得るためにうまく説明ができないとか、なかなかそういった課題というのは解決してきていないのかなというふうに思うんです。
 ですから、ここから例えば専門性を培うときに、人の配置というのはまたちょっとあれかもしれませんけれども、専門性を培っていくというときに、今やっている研修ということで本当にいいのだろうか、もう一歩何か踏み込む方策というんでしょうか、お考えがあれば聞かせていただきたいと思います。

○参考人(首藤由紀君) ありがとうございます。
 行政の職員を対象とした研修の場合、やはり専門職としてまでを育てるというのは難しいと思います。行政の職員の方には異動がございますので、例えば防災担当になっても、数年でまた違う部署に異動されるということになると思います。ただ、もちろんそれは、そういった方々への研修も無駄ではございませんで、全体としてのスキルやノウハウの底上げをするという意味では重要ですし、実際に、とある都道府県ですとか市町村の中には、過去に防災担当になった経験職員はいざとなったら災害対応の中核を担うんだという形で、経験職員にそのような意識付けをしているところもございます。
 望むべくはですが、それに加えて、やはり各市町村あるいは各都道府県に一つか二つの枠を設けて、防災専門職のような形でそういった職員を位置付けるようなことができればなというふうに思っております。これは、行政だけではなくて例えば学校現場でも、学校で安全対策をすることは昨今非常に重要になっておりますけれども、一般の教職員にそれを兼務のような形でやっていただくのは難しいと考えておりまして、防災や安全担当の方を一つ、お一方ずつでもいいので席を設けていただくというようなことが大事なのではないかというふうに思います。
 以上でございます。

○武田良介君 ありがとうございます。参考にさせていただきたいというふうに思います。
 嶋津参考人にもお伺いをしたいと思います。
 こういう関係者の理解を得ていく、非常に大事だと思うんですが、先ほども、滋賀県の条例についてお話をいただきました。その滋賀県の条例を作っていく中で住民の理解がどう深まっていったのかというんでしょうか、どのように住民の議論がなされてきたのか、私たちはこの滋賀県の条例の策定からどういったことを学んでいったらいいのか、改めてお伺いをしたいというふうに思います。

○委員長(江崎孝君) 嶋津参考人、挙手をお願いします。

○参考人(嶋津暉之君) ごめんなさい。
 御質問ありがとうございます。
 ちょっとこれは、できたのが、条例ができたのが二〇一四年ですよね。その頃は、随分滋賀県の中で議論が行われました、この流域治水どうやって進めていくかということ。それを踏まえてこの条例ができたわけです。条例ができた後もしばらくの間は、それをどうやって動かしていくかということで、随分各地域で、各流域ごとにそういう委員会をつくって議論が行われてきました。
 ただ、ちょっと今、最近ちょっと情報がこちらへ入ってこないかもしれませんけれども、少しその辺の議論がしなくなってきているという危惧を持っております。それは、やっぱり知事も替わったからかなんて、そんなことを言っちゃいけませんけれども、そういう面もあるかと思っておりまして、流域、そこの治水対策というのは随分頑張っているというのを電話でお聞きするんだけれども、随分頑張っているんだけれども、なかなか限界があるようですね。
 ですから、やはりトップダウンで流域住民の意見をきちんと聞いていかなきゃいかぬという方向性を打ち出すことがやっぱり大事でありまして、今回の流域治水の推進に当たっても、上からちゃんと聞かなきゃ駄目だという方向で持っていくように、この委員会でもその辺をですから働きかけをしていただければと思っております。

○武田良介君 最後になると思いますが、嶋津参考人にもう一点お伺いしたいと思います。
 そういう住民の声という意味で、私は長野県の、先ほど御紹介いただきました耐越水堤防というのが、十八年ぶりという形になるんでしょうか、造られるというふうになりました。やはり地域の住民の皆さんは、粘り強い堤防、決壊しにくい堤防、そういったものを求める声がありましたけれども、なかなかこれが広がってこなかった。これから更に広がっていくことを期待するというんでしょうか、決壊には至らなかったけれどもあと一歩というような堤防も同じ長野市内にありまして、そういったところも含めて、要望する声というのはずっとあったわけなんですけれども。
 今後こういったものを広げていくことは私重要だと思っておりますけれども、広げていく上でどんなことが重要になっていくのか、御所見があればお伺いをしたいというふうに思います。

○参考人(嶋津暉之君) 御質問ありがとうございます。
 これは、本当にもう国交省の姿勢いかんということなんですよね。既に技術的にも開発されて、実施例もあるということ、ただ、これが十八年間眠っていたわけですね。ようやく千曲川の決壊地点に導入されたということです。
 完璧な工法ではありませんよ。それは、物すごく大きな洪水のときにこれが耐えられるかというと、それは分からない面もあります。しかし、かなり耐えられるということ、これは非常に重要であります。ですから、その耐越水堤防工法を用いて各堤防を強化していくことが是非とも必要なんですね。お金もそんなに掛かりません。
 ですから是非これを進めていただきたいんですが、ようやくこの千曲川で十八年ぶりにできましたので、何とかこの耐越水堤防がもっと広がるように、是非働きかけをお願いしたいと思います。

○武田良介君 時間が参りましたので、終わりにさせていただきたいと思います。 今日は、参考人の皆さん、ありがとうございました。

すべて表示

関連資料

しんぶん赤旗→「治水 住民意見反映を  武田氏に参考人『議論大事』」