国会質問

質問日:2021年 4月 22日  第204通常国会  国土交通委員会

流域治水は住民参加で計画と対策を―法案質疑

 4月22日、流域治水関連法案を審議する参院国土交通委員会(1回目)が行われ、武田良介議員が質問に立ち、住民の主体的参加による流域治水に転換するよう求めました。(スタッフ)

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介でございます。よろしくお願いいたします。
 流域治水の関連法について早速質問させていただきたいと思いますけれども、今回の流域治水のポイント、もう既に議論があるわけですけれども、河川区域中心だけということではなくて、広く集水域、氾濫域も含めて、あるいはそれと関係すると思いますけれども、あらゆる関係者の皆さんが共にこの治水に主体的に参画していくことが大事だという議論が先ほどもありました。答弁もありました。
 それだけに、この流域治水プロジェクトの策定に当たって、こういう集水域だとかあるいは氾濫域におられる住民の方々がどうこの計画の策定に関わっていくのか、主体的に関わっていくのか、ここは非常に重要だというふうに思っておりまして、先ほどから話ありましたけれども、重ねて、例えば、三月三十日に流域治水プロジェクト、各水系で発表されましたけれども、これ発表されるまでも住民がどう参加してきたのか、そんな問題意識も持ってちょっと質問させていただきたいというふうに思います。
 私の地元長野県でありますけれども、佐久市というところがあります。佐久も、台風十九号のときに大変大きな被害が発生をいたしました。そういう地域であり、今回発表されている取りまとめ案、流域治水プロジェクト取りまとめ案では、遊水地を設けるという計画がこの佐久市にもあります。
 佐久市では、この遊水地の候補地となっているところで農業をやられている方が、この土地は優良農地なんだということをおっしゃっておられます。ここで米の苗も作っているということがあって、その水路との関係で非常に適しているんだと、苗を作ることもですね。だから、ここを遊水地として潰されてしまうという思いを持っておられ、反対だということをおっしゃっておられるというふうにお聞きをしております。
 ここでちょっと国交省にお伺いしたいと思うんですが、遊水地で優良農地が潰されるなら反対だと、こういう声があるわけですけれども、どう答えていくことになるんでしょうか。

○政府参考人(井上智夫君) 個々の問題というものは地域の中でのお話合いということがまず第一だというふうに思っておりますが、遊水地の場合は、その地先だけじゃなくて、下流に与える水位の低下効果というようなことがあります。ですから、流域全体の中で考えるという面と、やはりその地域の中で土地を持っている方々、それから農業をされている方々、そういうふうな方と、今先生がおっしゃっていたのは長野県の管理の区間のところだと思いますけれども、事業主体である長野県あるいは佐久市、そこでしっかりと話合いをしていただいて、その中で地域の中で決めていただく、そういうふうなものの積み重ねの中で、それが積み重なってこの流域治水全体が進められていく、そういうふうに私どもは考えているところでございます。

○武田良介君 そうしましたら、もうちょっと具体的に聞かせていただきたいんですが。
 私、現場では、用地買収をして代替の農地という話もあるように聞いているんです。ただ、同じように農業ができなくなってしまうという声があるんだということも少しお聞きをしているんですが、現状は佐久はそうなのかなと思っているんですけれども、一方で、例えば地役権を設定をして、いざ洪水が来たときには補償しましょうという形で、遊水地の中なんだけれども農業を続けていただくという例は、これは今も全国にあると思うんですけれども、この点だけ確認させてください。

○政府参考人(井上智夫君) 今先生が御指摘のとおり、遊水地といってもいろんなやり方がございます。用地を買収して、容量を増やすためにその買収した土地を掘って、掘削して容量を稼いで、できるだけ治水の効果を上げようというようなこと、そういうときは用地買収を先行してやるやり方ですし、今の営農というような形を継続するようなやり方もあります。そのときは、地役権という設定で、大体おおむねこれまで三分の一ぐらいの補償をするというような形でやっています。ただ、その場合は、掘削をしないので治水効果は減るということになります。
 そういうようなことは、いろんなどういう使い方があるかというのは、まさしくその必要性、事業の効果、地元の方々の御理解、そういうことを含めて地域の中で決めていただいているということでございます。

○武田良介君 そうしますと、ためる容量が違うので、仮にそこで農業を続けるという場合には、ためる量が減るので、どこかでそれを補わなきゃいけないという、そういう話合いが必要になるということだと思うんですが、そういう話合いが調っていけば、仮に買収ではなくて地役権を設定するというような変更も今後あり得るということでいいんでしょうか、調えばですね。

○政府参考人(井上智夫君) 個々の地域についてどういうふうになるかということについてはちょっとその地域の中で決定いただくことになりますが、一般的な場合、もちろん、いろんな選択肢あらゆるものの中でどういう組合せがいいのかというようなことを考えていくということが基本でございます。

○武田良介君 優良農地が遊水地を造られることで潰されてしまうのは反対だという、私が今紹介したのはそういう声ですけれども、やはりこれ、関係者が増えてくればこういう声というのはぶつかってくるんだろうというふうに思いますし、流域治水の考え方そのものは非常に大事だと私やっぱり思っているんですけれども、それだけに、こういう声が出てきたときに丁寧に答えていかなければならないんだというふうに思うんです。
 それで、先ほども話ありましたけれども、今回、この百九の一級水系と十二の水系で流域治水協議会が設置をされるということです。上流、下流、本流、支川、あらゆる関係者の協働、総勢二千を超える機関が参画と、先ほども副大臣からも答弁がありました、協議会つくってきている。この協議会に、住民が構成員の一人として入っている協議会というのはあるんでしょうか。

○政府参考人(井上智夫君) 今委員御指摘のとおり、三月三十日に百九の水系でやるとき、これを検討するに当たりまして、流域治水協議会というようなことを設置いたしました。
 これについては、まずはそのプロジェクトの実施主体である流域自治体や農林関係部局など主要な担い手に参加いただく形でスタートを切りました。このため、現時点では住民が協議会の構成員として参加している事例はありませんが、流域治水は住民を含むあらゆる関係者が協働してハード、ソフトの治水対策に取り組むものでありますので、今後、協議会にも何らかの形で参画、参加していただくことが重要と考えております。
 先日委員の方々に御視察いただきました鶴見川におきましてもこれまで先行的にやっておりまして、公募に選ばれた住民が懇談会に入ったり、行政から成る協議会があって、それで報告、助言等を行っている、そういうふうな形がもう既に行われているものと承知しております。

○武田良介君 じゃ、今はないと、これまでは住民の参加というのはなかったということでありました。だからこそ、今のような遊水地、優良農地が潰されてしまうという声が今出てきて、大変なことになるのかなというふうに思うわけですけれども。
 少し確認しますけれども、じゃ、まとめてお伺いします。
 先ほども熊谷委員の方からもありましたけれども、特定都市河川に指定された場合に、流域水害協議会というのがつくられるわけですよね。指定されないケースもあり得るというふうに認識しておりますけれども、その場合には、今、流域治水プロジェクトを取りまとめてきたあの協議会がそれを引き継ぐというんでしょうか、そういう形になるんだというふうに理解をしております。
 ちょっとまとめてお伺いしますけれども、それぞれどういう条文あるいは規約によって住民の参加というのは今後保障されていくことになるんでしょうか。

○政府参考人(井上智夫君) ただいま委員御指摘のとおり、特定都市河川に今後この法が施行されて指定されることになれば、その中に流域水害対策協議会という法定の協議会が設置されることになります。
 ただ、これは法的なものでの位置付けとしての協議会ですけれども、既に流域治水というものは大きな概念で進めてやっているので、先ほど御説明しました流域治水協議会というのがもう既に一級水系の中で進んでいるというところでございます。
 こういう方に、是非今後とも住民の方々にも参加していただく、特に雨水の貯留とか避難対策に主体的に関わっていただく方には是非入っていただきたいということで、我々としては、そういうような関係者が入れるように、自治体の関係者と連携して考えております。
 では、その条文の方はどうなっているかということでございますが、改正後のものを含めまして、特定都市河川浸水被害対策法においては、住民意見の反映等を直接規定した条文としまして、流域水害対策計画の策定に当たって公聴会の開催等により住民の意見を反映させるための措置を行うよう定めた第四条第五項、それから、浸水被害防止区域の指定に当たって住民等が意見を提出する旨を定めた改正後の第五十六条第四項があります。また、流域水害対策協議会の構成員につきましては、河川や下水道の管理者、知事や市町村とともに、河川管理者等が必要と認める者をもって構成する、そのことを改正後の同法第六条第二項において規定しており、地域防災活動を主導されているような方々に参画していただくことが可能な制度となっております。

○武田良介君 流域治水プロジェクト、これまでまとめてきた協議会の規約というのを資料で付けさせていただきました。資料の二の一と二という二枚になるんですけれども、ざっと紹介しますと、協議会の構成というところで減災対策協議会というのを位置付けるというふうになっておりまして、この減災対策協議会、二の二ですけれども、これはどういう構成になるかといえば、事務局は、必要に応じて別表一の職にある者以外の者、学識経験者等の参加を協議会に求めることができると、ここでその住民の皆さんも参加してもらうということを読むというふうにお聞きをしております。
 今答弁いただいたのは指定された場合の条文の方だと思うんですけれども、必要となったときに参加していただくことができる、そういう方たちをもって構成するという規定になっている。必ず参加しましょうと、できますよというふうな条文ではないんだけれども、先ほども答弁ありましたように、今後その関係者の皆さんに参加していただくようにしていきたいということで井上局長からも答弁ありました。
 大臣に一言いただければと思うんですが、大臣も、これまでもこういう住民の皆さんの参加というのは大変大事だというふうに繰り返し御答弁いただいておりますけれども、規定だとか条文はこういうことではあるんだけれども、是非住民の参加が必要だというふうに私も思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(赤羽一嘉君) 今局長の答弁でも、法文上も住民の参加は別に否定されてありませんし、何よりもまず、なぜ流域治水をやるかというと、それは地域住民の命と暮らしを守るためでありますから、その地域住民不在の対策というのはあり得ないと、これは明言しておきたいと思います。

○武田良介君 住民参加の大切さということに関わって、先ほども少しありましたけれども、上流と下流というところの相互理解というんでしょうか、非常に重要だなと私も思っておりまして、一つ私が経験したことも御紹介させていただきたいと思うんです。
 私、地元長野県ですし長野市に住んでおりますけれども、決壊したところの長沼地域というところの皆さんと一緒に、新潟県の方に伺わせていただいたことがあります。そのときに、新潟県の水害の歴史ですとか、あるいは現在行っている下流域、中流域も含めてですね、中流、下流の治水対策、何をやっているのかということを一緒に学ばせていただきました。新潟県の水害の歴史を知りましたし、長沼の地域の皆さん御自身も被災者であるわけですから、大きな経験だったと思うんですね。
 そのときに、国土交通省にも、大河津分水路といって、中流域の最後のところから日本海に早く出して、余り新潟市の方の下流域に洪水が行かないようにしよう、その分水路の今改修工事という、もう大プロジェクトですけれども、今やっておりますが、そういう説明も国交省から現地で聞かせていただきました。お世話になりました。ありがとうございました。
 やっぱりそういうことを千曲川の上流域、ああ、千曲川じゃない、信濃川の上流域の皆さんも理解するということは非常に重要だったというふうに思うんですね。そういう進捗との関係で、長沼の皆さんにすれば、狭窄部の開削、先ほども少しありましたけれども、これが非常に大事なんだけれども、それがなぜすぐできないのかとか下流域との関係とか、理解を深める上で非常に重要だったというふうに私は思っております。
 先ほどありましたように、信濃川の中でも流域治水プロジェクトを作るために協議会つくるわけですけれども、非常に長大なので、上流と中流と下流ということで三つの協議会に分かれている、やっぱりここが一つ信濃川の特徴だと思うんですね。それぞれの協議会にこれから住民の方が参加していく、これは当然だということで今御答弁もいただきました。この協議会同士が交流するということと同時に、一方で、住民の皆さん自身が理解を深めていく、そういう懇談の場みたいなものも設定してもいいんじゃないだろうかというふうに私思っております。
 やっぱり先ほどもありましたように、住民の皆さんが主体者としてこれに参加していくというときには、三月三十日に発表された流域治水プロジェクト、遊水地はこうだ、反対の意見が出てきてどうするかということだけではなくて、それを自分たちが主体者として、三月三十日前から本来は一緒に議論して作っていくということが重要だったのではないか、それが本当に住民の皆さんも主人公とした、主体者とした本来の流域治水の住民参加の在り方ではないかなということを私は思っておるわけであります。
 その点について、最後、大臣に一言いただきたいと思います。

○国務大臣(赤羽一嘉君) おっしゃるとおりでありまして、やっぱり地域住民の皆様を守るためには、やはりなかなか難しいんですけど、住まわれているところだけではなくて、上流、下流、本川、支川までのことまで理解をしていただくというのは非常に大事だと思っています。
 そうした意味で、昨年、千曲川、信濃川水系、大変大きな災害、ああ、一昨年ありましたので、そうしたことの拠点として、今、長沼地区ですか、決壊した穂保地区について河川防災ステーション、また、信濃川流域のところでももう一件造るということで決定をし、着手し始めましたので、そこが中心となって、地域防災力の向上につながる、地域住民の皆様の御理解を深められる場としていきたいと、こう考えているところでございます。

○武田良介君 結果を押し付けていくということではなくて、本当に地域住民の皆さんと一緒に治水を考えていくことが重要だというふうに思います。
 ありがとうございました。

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関連資料

しんぶん赤旗「住民参加の流域治水に 武田氏 懇談の場が必要」

参考資料

2021年4月22日国交委質疑提出資料