28日の参院本会議で災害対策基本法改正案が全会一致で可決・成立しました。それに先立って23日の災害対策特別委員会で武田良介議員が、高齢者・障がい者等要援護者のための福祉避難所の課題について質問しました。(スタッフ)
議事録
○武田良介君 日本共産党の武田良介です。よろしくお願いいたします。
本改正案は、災害による被害の発生あるいはその被害の拡大ということを防止していくために、おそれの段階からの対応というのを位置付けている、これ非常に重要なことだというふうに感じております。
こうした背景には、台風十九号、私の地元長野県でも被災しましたけれども、こういったものを始めとした全国の大規模災害が恐らくあったんだろうというふうに思われます。その際に、避難の遅れですとか、あるいは高齢者などの支援を要する方々の避難の在り方、あるいは広域避難の問題と、こういうことが顕在化したのかなというふうに理解をしております。
私の地元長野ですけれども、その経験も踏まえて、今日はとりわけ高齢者の方ですとか障害をお持ちの方、そういった要支援者の方に注目をして質疑させていただきたいというふうに思います。
例えば長野市では、要支援者の方も一度一般の指定避難所に避難をして、それから二次避難所に避難していくという実態がございました。ですから、私も被災直後に幾つかの避難所を回らせていただきましたけれども、例えば、足の悪い方が、自分が横になってしまったら一人で起き上がることができないからということで数日間パイプ椅子に座ったままいらっしゃるとかですね、あるいは、血圧が自分は高いと、ただ、もう急いで出てきてしまって薬がなかったり、血圧が高いこと気にするんだけど、血圧を測ることすら設備が整っていなかったとかですね、こういったことがたくさんありました。
ですから、避難所でも医療的なケアですとかあるいは福祉的なケアですとか受けられる、そういう体制の整備というのが非常に重要になってくると、また、それを実施できる事前の備えというのが大事になってくるというふうに思います。
そこで、まずお伺いしたいんですが、福祉避難所についてであります。
長野市では、台風十九号、これ発災した際に、保健所の出先機関であります保健センターというのが市内に十二か所あるということでありまして、このうち一か所が福祉避難所として開設されたということでありました。お聞きしたら、五人の方が避難所に避難されたということでありました。五人ということで、どれだけ支援を求められていたのか、その量ですとか質というものを簡単に測ることはできないというふうに思うわけですけれども。
まず確認をさせていただきたいのは、福祉避難所とは何かということでありまして、その定義は何かということを御説明いただきたいことと、その福祉避難所は指定避難所の一類型だというふうに理解しておりますけれども、指定避難所に比べてどんな手厚いケアが受けられるのかということについて伺いたいと思います。
○政府参考人(青柳一郎君) お答えいたします。
まず、福祉避難所の前に、指定避難所の基準というのが災害対策基本法の施行令の二十条の六というところにおいて定められております。要件は一号から四号までございまして、これ全部はちょっと申し上げませんけれども、さらに、福祉避難所については、主として高齢者、障害者等の特に配慮を要する要配慮者を滞在させることが想定される施設でございますので、この一号から四号に加えて、「要配慮者の円滑な利用の確保、要配慮者が相談し、又は助言その他の支援を受けることができる体制の整備その他の要配慮者の良好な生活環境の確保に資する事項について内閣府令で定める基準に適合するものであること。」という基準を政令において定めております。
そして、この基準としては、内閣府令で定める基準として、一つは高齢者、障害者等の配慮を要する者の円滑な利用を確保するための措置が講じられていること、これはバリアフリー化を意味しております、それから災害が発生した場合において要配慮者が相談、助言その他の支援を受けることができる体制が整備されること、それから災害が発生した場合において主として要配慮者を滞在させるために必要な居室が可能な限り確保されることという、この要件を満たすものが福祉避難所ということでございまして、これ、指定避難所と比べますと、バリアフリー化などがされた施設環境で生活相談員やその他専門的人材からの支援を受けられて、要配慮者が滞在できるスペースが確保されているというところが違いが出てくるということだと認識しております。
○武田良介君 今御説明いただいた、答弁いただいたものを資料の一に付けておきましたので、御覧いただきたいというふうに思いますが。
そういうものが整っているというふうに市町村が判断をするとこれ福祉避難所になるということだと思うんですけれども、確認をさせていただきたいと思うんですが、一般にその避難所というと小学校の体育館を思い浮かべる方もいらっしゃるかと思うんですけれども、小学校の体育館だけれども、今、青柳統括官から御説明いただいたような条件を満たしているということであれば、これも福祉避難所に指定できるということでよろしいでしょうか。
○政府参考人(青柳一郎君) お答えいたします。
基本的にはそのとおりでございまして、先ほど御答弁した福祉避難所の基準に適合するということで自治体が判断していただければ、小学校の体育館の全部なのか一部なのかというのはそれぞれの自治体の判断になりますけれども、福祉避難所として指定することも可能でございます。
○武田良介君 私は、体育館を福祉避難所にすることは反対だとか、もちろんそういうことを言いたいわけではございませんで、というのも、実際に長野市のお話を伺った際に、指定避難所にいらっしゃるんだけれども、その方が福祉避難所のようなところに行った方がいいかなというふうに思われる方なんだけれども、指定避難所にいたいという方もいらっしゃるということをお聞きをいたしました。いろんな理由があろうかと思うんですけれども、私お伺いしたのは、指定避難所だと、行って、御近所の皆さんですとか一緒に避難をされているので、周りに顔見知りの方がいるので安心できるんだと、ただ、指定避難所は、ケース・バイ・ケースですけれども、小規模だった場合にそういった方々と離れ離れになって避難生活を送ることになってしまうと、だから私はちょっと我慢してでもこの指定避難所にということもあるんだということをお伺いをいたしました。
そういうことも考えると、先ほどの基準も、そういう条件があればいいんだということであれば、ふわりとした条件になっているわけですよね。そういうことを考えれば、福祉避難所の指定が進まないことが問題なのだというような問題の立て方というよりも、結論として、体育館であってもそういった避難生活上の環境を改善する、あるいは相談、助言ができる介護員がいる、そういう体制を整備してこそ、ことこそ大事なんじゃないだろうかと。結論としてそういうことができるかどうかというのがやっぱり大事なんじゃないだろうかというふうに思っております。
そこで、防災・減災、緊急防災・減災事業債についてお伺いしたいと思うんですが、地方公共団体が指定避難所として指定されている福祉避難所や社会福祉施設である福祉避難所の防災対策を行う場合に、緊急防災・減災事業債を活用することができるというふうにお聞きをしております。
この社会福祉施設には、社会福祉法人の福祉施設ですとか、学校法人の特別支援学校や幼稚園なども含まれるというふうに伺っております。この事業を使って、一般の小学校の体育館のバリアフリー化ですとか、あるいはエアコンの設置ですとか、こういった工事もできるということでしょうか。消防庁に。
○政府参考人(荻澤滋君) 緊急防災・減災事業債の対象となる事業といたしまして、指定避難所における避難者の生活環境の改善に資する事業というのがございます。具体的には、指定避難所におけるトイレ、空調の整備、バリアフリー化などが対象となるものでございます。
○武田良介君 できるということなんですよね。
そうすると、指定避難所に指定した体育館でも、そういう、例えば福祉的なケアですとか円滑な利用ができるようにということで、そういう改修ができる、で、自治体がそれが必要だというふうに判断するんであれば、今後、これ五年間延長していくという話も含めてお聞きをしておりますので、活用を検討していただくことも必要だというふうに思います。いずれにしても、そういった体育館でもそういった円滑な利用だとか進めていこうということで、これが国の大きな方向性になっているわけだと思うんです。
もう一つ、ちょっと確認をしておきたいと思うんですが、その避難所の区別よりそういった実質的なケアができるかどうかということの問題意識から、福祉避難所の確保・運営ガイドラインというのを私も読みました。そうしますと、ここに、福祉避難スペースですとか、あるいは緊急入所というのも出てくるわけですけれども、その福祉避難所とこれらの違いは何なのか、その自治体の職員の方は、いざ災害が発災したときにどこに避難していただくのかという判断をすることになると思うんですけれども、自治体の職員の皆さんにアドバイスをいただけないでしょうか。
○政府参考人(青柳一郎君) お答えいたします。
福祉避難所の対象者のガイドラインにおきましては、身体等の状況が特別養護老人ホームや老人短期入居施設等へ入所するには至らない程度の者であって、避難所での生活において特別な配慮を要する者であるというふうにしております。
御指摘の福祉避難スペースについては、福祉避難所までの基準は満たさないものの介護等の必要なスペースを確保したものということで、一般の避難所では避難生活に困難が生じる要配慮者が対象ということになってまいります。
一方で、在宅での生活の継続が困難な要配慮者、あるいは福祉避難所での避難生活も困難な、先ほども申し上げた基準だけの福祉避難所での避難生活が困難な要配慮者について、福祉の各法律に基づく緊急入所によって対処をすると。状況が、災害発生後であれば、状況が悪化してしまった場合には施設への緊急入所ということが行われるということになろうかと思います。
今委員からもお話あるように、一昨年の長野のような、ずっと椅子に座りっ放しだったというようなことが起きないようにするためにも、やはり、個別避難計画の作成を通じて、その当該要配慮者が災害発生時にどこに行くのがいいのか、本人とよく話合いをしながら、我々も、ああそうかと思いましたのは、近所の人と一緒にいた方がいいというようなケースであれば、それもコミュニケーションを取る中で、単純に状態が結構福祉避難所並みだからといって福祉避難所の方に行くというのではなくて、通常の避難所の中に福祉避難スペース的あるいは福祉避難所を設ける形で対処をするというようなことも十分考えられると思いますので、そこら辺はよく自治体の職員が判断を適切にできるように、指針等でも周知をしていきたいと思います。
○武田良介君 大臣にお伺いしたいと思うんです。
私もずっとレクでも事前に聞かせていただいて、やっぱりその福祉避難スペースとか福祉避難所とか緊急入所とか、それぞれ何かとかっていう話を、例えば国と自治体、国と市町村の間でやっているだけというよりも、我が地域でどういう福祉的なケアが必要なんだろうかということを、住民の方も含めて一緒になって考えていくということの方がやっぱり大事なんじゃないだろうかというふうに思うんです。それに対して、今備えとして、避難所としてはどういったところを設置するべきなのか、そこに備えるべき施設は何なのか、あるいは今、これから議題になってきます個別避難計画はどうするのかということを住民の皆さんと一緒になって考えていく、行政の中だけにしない、ここが大事なんじゃないだろうかというふうに思っておりまして、大臣、御所見を伺えればというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(小此木八郎君) 配慮する方が配慮される方の気持ちを分からないで勝手に配慮をして、実は有り難迷惑だったという話にならないことが大事だと思って、ただ、世間にはそういうことはよくある話だと思います。私たちも、国民のためにやっていて、自分の選挙区を歩いて、全然選挙区のためになっていなかったなんていう例は、言いたくありませんけど、あったとも思います。
だから、この場合、だけど、大きな災害になってきて人の命が本当に懸かっているということについては今おっしゃったようなことは必要であると思いますし、そのためにも、いろんな経験や知識を通じて、そういう経験が必要になってくるということ、その経験そのものを私たちはこの場でも生かしていかなきゃいけないと、こういう考え方を持っております。
○武田良介君 今のような話を受けて、その上で、その計画策定だとか実際のそのスムーズな避難ということは繰り返し私も指摘してきましたけれども、自治体の体制ですとか、あるいは医療、介護に携わっている皆さんのそういった体制、これを取っていくことが非常に重要なんだというふうに思うんです。
長野市も発災した直後に、やはり、先ほど言ったように避難所でのそういったケアは非常に切実でした。でも、一方で、例えば県立の総合リハビリテーションセンターというところが被災をしたりですとか、介護施設なんかも被災をしました。ですから、支援をしたいけれども、まずそこに入所されている方、入院されている方のケアですとか移送ですとか、そういったことから必要になって、想定していたプランが実行できないということはやはりあるんだろうというふうに思うわけであります。
先日のこの委員会でも、大臣にも原発の関係から質問させていただきました。医療や看護の専門スタッフですね、増やしていく必要があるのではないかということを聞かせていただきまして、大臣からも、知見や認識、経験を踏まえた更なる人材育成が大事になってくるという御答弁をいただきましたが、私、是非もう一歩踏み込んで、今からもうこの体制取っていくということをやらなきゃいけないというふうに思うんです。
災害が発生した際にはそういった人たちが求められるということはもちろんですし、今、新型コロナという状況もあります。やっぱり、コロナのことを踏まえても、医療提供体制が脆弱だったということが明らかになったんじゃないだろうかというふうに思うんです。そうすると、今からこの医療提供体制をしっかりと取っていくことが非常に重要になってくる、その平常時の医療提供体制もゆとりを持たせるぐらい今から増やしていくことも必要になってくるんじゃないだろうかというふうに思いますけれども、大臣の御認識を伺えればと思います。
○国務大臣(小此木八郎君) たった今ありました武田委員とのその質疑の中でもお話ししたように、そういった意味での知識や経験というのが大事になってくることから、先日もこういう人材育成が大切になってくるということを申し上げたと思います。
ただ、一方で、そういった人材の育成には時間を要し、一朝一夕に増やせるものではありませんけれども、災害時を想定した計画作成や訓練などを通じて災害対応の体制整備及び強化を図っているところでもあります。
いずれにせよ、他省庁ともこれはしっかりと相談をしながら、どういうことが可能か、人材育成についても勉強してまいりたいと存じます。
○武田良介君 是非、一朝一夕にできないからこそ今から増やす必要があるんだということを大臣からも是非御答弁いただきたいというふうに思います。
自治体の体制ということも、個別避難計画作っていく上で、非常にマンパワーが不足するということで指摘されてまいりました。
ちょっとお伺いしたいと思いますけれども、現状の確認という意味で、防災部局が、自治体のですね、防災部局がどれだけの防災計画などを作成しなければならないのかということを確認をさせていただきたいというふうに思いますが、お願いできますでしょうか。
○政府参考人(青柳一郎君) お答えいたします。
配付資料にもございますけれども、内閣府防災担当、消防庁で所管しております法律等において自治体に作成義務がある計画として、一つは災害対策基本法に基づいて全ての自治体が作成する地域防災計画、それから、これは特定の地域ですけれども、都道府県が活動火山対策特別措置法に基づいて作成する避難施設緊急整備計画がございます。それから、努力義務を課しているものとしては、南海トラフの地震の法律に基づく対象地域内の自治体が作成する南海トラフ地震防災対策推進計画、それから、日本海溝・千島海溝の法律に基づいてやはり同じくこの地域内の自治体が作成する推進計画、それから、大規模地震対策特別措置法、これもエリアが限られておりますけれども、この地震防災強化計画、それから津波対策の推進に関する法律に基づく都道府県、市町村が作成する津波避難計画といった特定の災害を警戒すべき地域で作成を推進している計画ですとか、防災基本計画に基づいて都道府県や市町村が作成する業務継続計画と受援計画といったものが努力義務としてございます。
○武田良介君 地域限られているものもありますけれども、非常にこれたくさんありますし、お聞きしましたら、内閣府に作っていただきましたけれども、まだこれで全てじゃないんだということも同時に聞いております。また、これ、そこに頼みましたが、ほかの部局に言わせれば、介護施設の関係の避難ですとか廃棄物の処理ですね、災害廃棄物の関係ですとか、いろんなことがやっぱりほかにもたくさんあるんだというふうに思います。
長野市の方にも聞きましたけど、防災監一名いらっしゃるけれども、それでも今回の個別避難計画作っていこうということを考えた際にはそういった他の部局との連携も必要になってくるし、なかなか困難だと。あるいは、先ほどの避難所の話についても、その運営のマニュアルを作りたいんだけれども、そもそも設置をどうするのかという、そこの仕事が終わらないということもお聞きをしております。それだけやっぱり忙しいんだというふうに思うんですね。
大臣、重ねてになりますけれども、自治体のこの体制しっかり取っていくことが大事だと、お願いしたいと思いますが、いかがですか。
○委員長(新妻秀規君) 申合せの時間が来ておりますので、答弁は簡潔に。
○国務大臣(小此木八郎君) 不断の見直しも必要だと思いながら、今おっしゃったことについてはしっかりと、私たちだけでなくて、市町村、そして地域の皆さんとも共有をしながら考えてまいりたいと思います。
○武田良介君 済みません、今日気象庁に来ていただいたんですけれども、時間が足りなくなってしまいまして質問できませんでした。申し訳ございませんでした。
終わります。
関連資料
しんぶん赤旗記事「避難所 医療体制増を 武田氏 福祉的ケア強化要求」