国会質問

質問日:2021年 4月 26日  第204通常国会  決算委員会

高校の通級、実情の把握と教員の増員を

   26日の決算委員会で、特別支援教育について質問しました。発達障がいの子どもたち、いわゆるグレーゾーンの子どもたちが増えていると言われますが、教育現場は…。
 
   高校での通級は2018年から始まっています。知らない方も多いのではないでしょうか。
現状を聞くと、「すべての都道府県で実施されている」とはいうものの、何校あるのか、何学級あるのかは「始まったばかりでわからない」と意味不明の答弁。せっかく始まった高校の通級の実情についてまず、把握するよう求めました。
 
 私は、通級による指導が必要と判断されながら「指導体制が整わず通えなかった生徒」が多数いることを文科省の資料から明らかにして、「教員を増やすべきではないか」と萩生田大臣に質問。
   大臣は「高等学校での加配を始めている」「増やすべき」と答弁しました。が、現状は体制がなくて通級に通えないのであり、高校通級提言には、国の役割として教員の加配が指摘されていることを紹介し、個別指導やチームティーチングなど現場の声をよく聞いた上で加配すべきだ」と求めました。
(添付しんぶん赤旗記事中、質問日の日付の4月23日は、26日の誤りです)
 

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 近年、発達障害の子供たち、あるいはグレーゾーンの子供たちが増えたというふうに言われます。私自身、通っていた小学校でも、いわゆる障害のある子供がいました。その子と一緒に遊びながら、学びながら、社会にこういう子もいると、しかし同じ友達の一人として育ってきたという思いがあります。
 しかし、私、最近聞く声としては、発達障害ですとかいわゆるグレーゾーンのお子さんを持つ親御さんから、特別支援学校に行くのか、あるいは小学校、中学校の通級に通うのか迷っていると、学習に付いていけないことが顕著になってもサポートし切れないこともあるのではないかと、そういった不安の声も聞くところであります。
 そこで、今日は特別支援教育について質問させていただきたいというふうに思いますけれども、まず文科省に伺いますけれども、なぜその発達障害と言われる子供たち、あるいはグレーゾーンと言われる子供たちが増えたというふうにお考えでしょうか。

○政府参考人(瀧本寛君) お答え申し上げます。
 小学校等においては、自閉症、情緒障害、学習障害、注意欠陥多動性障害等の発達障害により特別の支援を受ける児童生徒数は増加しております。
 様々指摘ございますが、私どもとしては、発達障害により特別の指導を受ける児童生徒の増加の背景としては、一つは、通級による指導あるいは特別支援学級等といった一人一人の教育的ニーズに対応した多様な学びの場の整備が進んできたこと、また二つ目としては、早期からの教育相談や就学相談が充実してきたことにより特別支援教育への理解が進んできたことなどが考えられるとしているところでございます。

○武田良介君 必ずしも、本当にそうなんだろうかと思うところもありますけれども、私は、その発達障害を持つ児童生徒さんというのは、これまでも社会の中ですとか、あるいは学校現場の中でも実は内包されていたんではないだろうかというふうにも思っております。そういう発達障害などの認識が国際的な背景も含めて広がってきたということも踏まえて、そういう子供たちを、何といいますか、言わば切り出してというのか、判断が付くようになったということで、発達障害の子供たち、あるいはグレーゾーンの子供たちというふうに見てきている、そういう背景もあるんではないかというふうに思っております。
 大臣は、私はそういうことが実態としてあるんじゃないかと、そういう背景も含めて学校現場でこれから特別支援教育ということを考えていかなければいけないんじゃないかというふうに思っておりますけれども、大臣の御認識について伺います。

○国務大臣(萩生田光一君) 今先生が仮説を立てていただきましたけど、私も同意する部分もございます。私が子供の頃には特別支援に対応しなかったけれども、今の状況で判断すればきっとそういうことだったんだろうなと思う友人もおりますので、そういう意味では、特別支援教育への理解が社会全体で進んできたということは一定評価をしたいなというふうに思っています。
 特別支援教育の更なる充実に向けて、平成二十九年の義務標準法の改正による小中学校における通級による指導に係る教員の定数の基礎定数化、また児童生徒の学習活動上のサポートなどを行う特別支援教育支援員などの配置に係る財政的支援の拡充、特別支援教育に関する教員の専門性の向上などに取り組んでいるところです。
 今後も、引き続きこうした取組を通じて障害のある子供の多様な学びの場の一層の充実を図りたいと思っております。

○武田良介君 私は、その子供たちの特別な配慮を必要とするような特徴も広い意味で子供たちの個性だというふうに思っておりますし、そういう子供たちの個性もこの社会の中で、あるいは学校教育の現場の中で理解することで温かく内包できるような、そういう社会でありたいというふうに思っております。
 具体的に、高校での通級について質問させていただきたいというふうに思います。
 二〇一八年から高校での通級が始まりました。二〇一六年に高等学校における特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議、ここが高校の通級について集中的な議論を行って、高校の通級の制度化について文科省に提言したというふうに承知をしております。そこで制度化の必要性についてこういうふうに指摘しているわけですね。
 小中学校等においては、通常の学級、通級による指導、特別支援学級といった、連続性のある多様な学びの場が整備されているのに対し、中学校卒業後の進学先は、主として高等学校の通常の学級又は特別支援学校高等部に限られていると。困難を抱えている生徒、自尊感情の低下等の二次的な課題を生じていたりする生徒に対しては、高等学校において、速やかに適切な指導、支援が行われなければならないというふうにされておるわけです。
 こういう高校での通級の開始というのは大変重要なことだというふうに考えますけれども、その背景として、学校や教員、あるいは保護者の方、あるいは御本人からどんな要望があったんでしょうか。

○政府参考人(瀧本寛君) お答えを申し上げます。
 高校、高等学校におきます通級は、委員から御紹介のあった平成二十八年、二〇一六年の高等学校における特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議による報告を受けて省令等の改正をして、平成三十年度から制度化をされたものでございます。
 私も特別支援教育課長を経験してきたこともございまして、今でも特別支援教育関係の団体と関わりを持っておりますが、当時からも小学校で通級サービス、まあ通級指導を受けられたと。当時でいうと中学校はなかなか少なかったので、中学校で受けられなくなった、あるいは中学校もあったんだけれど、ここから先に上がったときにもう何も、高等学校の中では一部の学校で、そういう傾向の見られる子供の多い学校においては、先生によってはしっかりと勉強されて対応していた学校もないわけではないんですけれど、制度的にきちんとした制度がなかったという声は、これかなり上がっていました。
 したがって、先ほど申し上げた協力者会議の報告書の中でも、中学校において通級による指導を受けている生徒を受け入れている高等学校が、学校教育法に基づき適切に特別支援教育を実施できるようにする必要があることといった御指摘もあり、先ほど委員から引用いただいた御指摘などもこの協力者会議の中に、御指摘を受けて制度化の必要性が指摘されたということでございます。
 また、実は制度化に先立って、文部科学省ではモデル事業として複数の指定校においてこの通級に近い形の取組をしておりましたけれども、このモデル校の中でその指導、まあ今でいう通級指導ですが、その指導を希望する生徒数が当初計画していた予想を上回って希望されるような学校もございまして、通級による指導のニーズがそのモデル事業を通しても確認をされていたということもこの制度化の背景としてあったところでございまして、様々なそうしたニーズ、声を踏まえて制度化したというものでございます。

○武田良介君 中学校まではあったそういった支援が高校になって途端になくなってしまうと、これでは困るということが基本的な背景だと思うんですね。私も非常に共感をいたします。
 そこで、今現状どうなっているのかということを確認させていただきたいんですが、高校の通級は全国で何校、何学級、それから生徒は何人ぐらいいるんでしょうか。

○政府参考人(瀧本寛君) お答えを申し上げます。
 令和二年度の調査におきましては児童生徒数のみを把握をしておりますが、令和元年度に高等学校等における通級による指導を受けた生徒は一千六人と承知をしております。
 高等学校におきます通級は平成三十年度から制度化されたばかりでございまして、学校数あるいは学級数について網羅的な把握はしておりませんが、令和元年度には全ての都道府県において高等学校における通級を実施しているものと承知をしております。
 以上です。

○武田良介君 学校数、学級数、把握していないということなんですけど、これ私、把握した方がいいんじゃないかなと思うんですね。その二〇一六年の先ほどの提言の中でも、継続的にフォローアップしていくことが必要だというふうに指摘をされております。これは把握すべきではないでしょうか。

○政府参考人(瀧本寛君) お答え申し上げます。
 先ほど申し上げたとおり、三十年度から制度化したばかりでございますが、実態把握について、私ども全省的に教員の働き方改革という観点で様々な調査物の調査項目を鋭意減らしてきている中でもございまして、各自治体の負担等も勘案しながら、仮に取るとすればどういう頻度で取ったらいいかも含めて今後検討させていただきたいと思います。

○武田良介君 切実な願いから始まった高校の通級なんですよね。基本的なことは私、把握すべきだというふうに思います。
 もう一つ確認させていただきたいと思うんですけれども、高校の通級から卒業した生徒というのは、まあ始まったばかりという話なんですけれども、何人ぐらいいるのか、また、その高校を卒業した後の進路というのはどうなっているのか、把握されているでしょうか。

○政府参考人(瀧本寛君) 高等学校における通級は、先ほど申し上げた平成三十年度から制度化されたばかりでございまして、高校の通級から卒業した生徒数については網羅的には把握してございません。
 理念的には、平成三十年度に三年生でサービスを、支援を、指導を受けて卒業した方から、三年間通級指導を受けて卒業した方まであり得ると思いますけれども、先ほど申し上げた、できる限り学校現場への負担を少なくしていくという中で、今後、国が調査する意義あるいは目的等も踏まえて検討させていただきたいと思います。

○武田良介君 これ、なぜ私伺ったかといいますと、就労の問題というのもあると思うんですね。
 今年一月に出された、新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議、その報告というのを私見ましたけれども、この中でも、発達障害などの障害のある生徒は、一般枠での就労のほか、いわゆる障害者手帳を持って障害者枠で、雇用枠で就労することも考えられるため、こうした制度についてよく理解してもらい、それぞれに応じた適切な指導、支援を行うことが必要だということも言われている。
 あるいは、これ、保護者の方からしても大変心配のあるところだと思うんですね。せっかく高校の通級ができて、高校の卒業後の進路は進学するのか、あるいは就職するのか、高校通級の指導、支援がどう生きたのか、こういったことをしっかり分析していく上で必要だということを指摘をさせていただきたいというふうに思います。
 資料をお配りさせていただきました。
 これは高等学校及び中等教育学校における通級による指導、その実施状況の調査ということなんですけれども、二〇一九年一年間の調査で、全ての高校、中等教育、国公私立の別も問わない、全日制、定時制、通信制、これも問わないというものでありますけれども。
 これ見ますと、通級による指導が必要と判断した生徒の数は合計で二千四百八十五人、学校が気付いただけでもこれだけの生徒がいるということだと思うんですけれども、うち通級による指導を行った生徒は合計で一千六人と。これ、先ほどの答弁の数字でよろしいですかね。よって、行われなかった生徒数というのは一千四百七十九人いらっしゃるのかなというふうに思うんですが、文科省に確認いたしますけれども、その理由で一番多かったのは何なんでしょうか。

○政府参考人(瀧本寛君) お答え申し上げます。
 この調査においては、実際に通級による指導を行わなかった生徒のうち最も割合の多かった理由は、指導体制が取れなかったためとなっております。
 以上です。

○武田良介君 支援が必要だというふうに判断されたけれども、指導体制が取れなかったために四〇%以上の生徒が通級指導を受けられなかったわけですね。
 何でこんなことになってしまったんでしょうか。文科省、いかがですか。

○政府参考人(瀧本寛君) お答え申し上げます。
 これは、全国データでございますので、都道府県によっても状況は異なるということもちょっとお聞きをしておりますが、この調査において、一つは本人や保護者が希望しなかったためという理由があったり、その指導体制が取れなかった、さらには、その他についても調査をしておりますが、その他の中には、支援は必要だけれども残念ながらその当該生徒が不登校で通学していないためといった例も挙げられていると承知しております。(発言する者あり)指導体制が取れなかったことについて、大変申し訳ございません、そのうち指導体制が取れなかったことについては、済みません、通級担当ができる適切な、通級をやるに当たっては一定の特別支援の能力が必要ですので、人物が得られなかった場合とか、場合によってはですけれども、都道府県などの財政状況等によってそうした通級が始められなかったような事例などもあり得るものと考えております。

○武田良介君 大臣、率直に伺いたいと思います。
 特別支援教育に関わる先生方、もっと増やしていくべきだと思うんですが、いかがですか。

○国務大臣(萩生田光一君) まず、小中学校において、平成二十九年三月に義務標準法を改正し、発達障害などの障害を持つ児童生徒に対する通級指導を行うための加配定数について、対象となる児童生徒数に応じて算定されるいわゆる基礎定数化を図り、平成二十九年度から十年間で計画的に改善することとしました。高等学校においては、通級による指導が制度化された平成三十年度から教員定数の加配措置を新たに設け、充実を図っているところです。
 また、外部人材においても積極的に導入することとし、通常の学級において子供の学習活動上のサポート等を行う特別支援教育支援員の配置や、看護師、外部専門家等の配置に係る財政的支援を行っております。
 さらに、指導体制の充実に加え、教員の専門性の向上を図るため、令和元年度からの小中高等学校の新しい教職課程において、特別支援教育に関する科目を一単位以上必修とすることとしました。
 また、先日、政令を、省令を改正しまして、小中学校の教員免許状の取得に必要な介護等体験を特別支援学校に加えて特別支援学級でも行えるようにしました。また、特別支援学校での体験について、従来二日間としていた目安は廃止をし、三日間以上の体験が行われるようにしたところです。
 文科省としましては、引き続きこうした取組を進め、障害のある子供の多様な学びの場の更なる充実を図ってまいりたいと思いますし、端的に申し上げて教員増やしていく必要あると思っていますので、その努力をしていきます。

○武田良介君 先ほどの協力者会議の中でも、国の役割として加配を行う必要があるという指摘、やっぱりされているんですよね。加配のことも、大臣、答弁の中で触れられましたけれども、個別の指導のためにどういう先生が必要なのか、あるいは複数の指導、チームティーチングなどが必要なのではないか、そういった現場の声をよく聞いて加配していただきたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

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