国会質問

質問日:2021年 4月 27日  第204通常国会  国土交通委員会

耐越水堤防の整備を—流域治水関連法の質疑で要求

 4月28日の参院本会議で流域治水関連法案が採決され、全会一致で可決・成立しました。それに先立つ27日の参院国土交通委員会で、武田良介議員は、2019年の台風19号で千曲川の堤防決壊が被害を甚大にしたことから、ねばり強い河川堤防を積極的に整備するよう求めました。(スタッフ)

 

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 前回に引き続きまして、流域治水における住民参加からまず伺いたいと思います。
 現行の特定都市河川法は、指定された河川は流域水害対策計画を作成することと第四条で規定をされておりますけれども、流域水害対策協議会については現行では規定されておりませんで、今回の法改正で新設するものというふうになっております。
 同法に基づきまして既に特定都市河川に指定されている河川、これは八水系六十四河川というふうになっているわけですけれども、法案によって新設される流域水害対策協議会は、新たに指定される特定都市河川だけではなくて、既に指定されている八水系六十四河川についても流域水害対策協議会を設置することになるのかどうか。当然そこに住民の参加も必要だというふうに思いますけれども、国交省に伺いたいと思います。

○政府参考人(井上智夫君) 流域水害対策協議会は、新たに指定される特定都市河川のみならず、既に指定されている河川についても設置することとしております。本協議会の構成員については、河川や下水道の管理者、知事や市町村とともに河川管理者等が必要と認める者をもって構成すると規定しており、住民が協議会に参加することが可能な制度となっております。参加者としては、例えば地域の防災活動を主導されている方や過去の洪水の歴史に詳しい方などに参加いただくことを考えております。
 本法案が可決され、法律を施行する際には、こうした考え方について全国の河川管理者等にガイドライン等を通じて広く周知してまいります。

○武田良介君 防災活動に携わってこられた方、あるいは洪水の歴史を知っておられるような、そういった方も含めて参加をという答弁でありました。
 この八水系六十四河川には既に流域水害対策計画が作成、策定をされているというふうに思いますけれども、この計画は、今般のような気候変動の影響を必ずしも考慮したものではなかったり、あるいは、そういった住民の参加という点では、参加されていない段階で策定されたものだというふうに思いますけれども、既存のこの流域水害対策計画は今後法案に基づき変更されていくと思うんですけれども、その際、新たに設置された協議会で住民の意見を反映した変更もなされるべきだというふうに思いますし、住民の皆さんが主体的に流域治水に参加することが大切だと前回の委員会でも申し上げさせていただきましたけれども、重ねて強調させていただきたいというふうに思います。
 ちょっと次に進ませていただきたいというふうに思います。
 いわゆる粘り強い堤防について伺いたいというふうに思います。
 先週の参考人質疑で、嶋津参考人は、耐越水堤防という表現で、粘り強い堤防の整備について全国に広げてほしいというふうにその重要性を強調されました。この堤防は、裏のり面も含めて全体をコンクリートなどで覆う、仮に越水があっても、住宅側ののり尻だとかのり面の洗掘などをできる限り防いで、粘り強い堤防ですね、そういうものだというふうに思いますけれども、費用も一メートル当たり百万円程度で、比較的低コストだというお話でございました。
 前回の委員会でも、井上局長の方から、粘り強い河川堤防の整備を積極的に進めるという答弁がありましたけれども、この粘り強い河川堤防の整備を積極的に進めるという方針を取っている理由について、大臣に御説明をいただきたいというふうに思います。

○国務大臣(赤羽一嘉君) いや、余り難しい理由はなくて、越水しても堤防、決壊しにくい構造に強化していくというのはこれは自然なことだというふうに思っておりますし、決壊までの時間を少しでも引き延ばすということは避難時間を稼ぐ効果も期待できるというふうに思っております。
 ただ、一言申し上げると、この粘り強い河川堤防とは何かという技術開発上のちょっと結論がまだ出ておるわけではございませんので、民間ですとか大学の専門家の皆様方からしっかりと御意見取らせていただきながらそうした整備も進めてまいらなければいけないと、そうした課題も残っておるところでございます。

○武田良介君 台風十九号の被災を踏まえた河川堤防に関する技術検討会、ここの報告書でも、こういった当面する緊急的、短期的な取組として、この粘り強い堤防が必要だということを指摘されているということを私からも触れさせていただきたいというふうに思いますし、二〇一八年の十一月二十日のこの当委員会で、我が党の山添議員が、このいわゆる粘り強い堤防ですね、耐越水堤防、これを求めたのに対して、当時の石井大臣は技術的な課題があるという趣旨の答弁をされて、まだ消極的な姿勢だったかというふうに思うんですけれども、今、国交省自身がこれを積極的に整備を進めていくということを述べられるくらい、本当に今姿勢は大きく変わったということを私は今実感をしているところであります。
 例えば、衆議院の審議見ますと、由良川でも粘り強い河川堤防への強化を進めると、具体的な河川名を挙げて答弁もありました。私の地元長野県ですけれども、信濃川でも、一昨年の台風十九号で決壊した長沼穂保で粘り強い堤防の整備が進められております。
 現在計画されている粘り強い堤防は全国にどれくらいあるのかについて、国交省に伺いたいと思います。

○政府参考人(井上智夫君) 粘り強い河川堤防については、これまでは、平成二十七年の関東・東北豪雨において堤防上面の舗装によって決壊が遅延した事例があったことを踏まえ、全国の堤防を点検した上で、堤防が完成しておらず、氾濫リスクが高いにもかかわらず、当面の間、上下流バランスの観点から堤防のかさ上げをすることができない区間などにおいて、堤防の上面を舗装し、堤防の住宅側の斜面底部をコンクリート等で被覆するなどの対策を計画的に進め、令和二年度に完了いたしました。
 さらに、令和元年東日本台風により全国で百四十二か所の河川堤防が決壊し、更なる堤防強化の必要性が高まっていることから、今後は、斜面底部に加え、斜面もコンクリート等で被覆するなどより強化した構造を用いて、堤防が完成していても、狭窄部等によるバックウオーターの影響など、洪水時に水位が上昇しやすく、決壊した場合に甚大な被害が発生するおそれがあるにもかかわらず、その状況を当面解消することができない区間、先生御指摘の長野県の長野市の長沼のところもそうでございますけれども、などにおいて優先的に対策を進めるとの考え方で計画的に整備を進めることとしています。

○武田良介君 何か所今計画されているかというのは分からないわけですか。

○政府参考人(井上智夫君) 現時点は、今その検討をしているところでございますので、何か所ということは持ち合わせておりません。

○武田良介君 これからということなんですけれども、一つ長野市の例を紹介させていただきたいと思います。
 今もありました長野市の決壊部であります長沼ですね、ここは、今話もありましたように、全体をコンクリートで覆うようないわゆる粘り強い堤防、これが建設をされておりますが、しかし、もう一か所増えておりまして、長野市の塩崎という地域ですね、こちらは、同じく台風十九号の洪水でまさに堤防の越水が発生をし、裏のり尻からどうも洗掘されたのではないかと。相当堤体そのものがえぐられまして、文字どおり首の皮一枚という状況で決壊を免れたというところでありました。
 ここでは、長沼の方で、いわゆる粘り強い堤防を造りましょうという方向が示されたときに、塩崎の方については、これまで国交省がやってきた危機管理型ハード対策で対応しようということでありました。しかし、こちらもあと一歩というところだった。住民の皆さん始め、これを是非、粘り強い堤防、被覆型にしてほしいということの声は各方面から上がったというふうにお聞きをしております。
 例えば、長野市議会ですけれども、建設企業委員会というところの委員長報告という形で、粘り強い堤防を求める委員長報告、これを全会一致で上げたというふうにお聞きをしておりますし、長野市自身も、この粘り強い堤防を求める議会での質問に対して、長野市として求めるという答弁をされてきた。やっぱり、何より、住民自治協議会などを通じて、地元の皆さんが、住民説明会などの場も含めて繰り返し求めてきたということがあったと。
 今年の三月の市議会で、粘り強い堤防を求める質問に対し、長野市の方から、千曲川河川事務所より市長に対して、延長六百九十メートル間、コンクリートによる被覆型強化実施予定の報告があったということで答弁がなされたということでありました。私も、ずっと求めてきたものがついに動いたと、ついに変化が起こったということを実感しているところであります。
 大臣に確認をさせていただきたいと思いますけれども、こういう例も紹介させていただきましたが、今後設置される協議会で、住民からの要求があれば、流域治水プロジェクトの内容にこういった堤防も盛り込んでいくということでよろしいでしょうか。

○国務大臣(赤羽一嘉君) 何か一貫して住民にというふうにこだわられているようですが、前回も申し上げましたように、住民不在の流域治水対策はありませんし、住民にかかわらず、その協議会で出された意見でしっかりと検討していただいて、適切な流域治水対策がなされることを期待しているところでございます。

○武田良介君 是非、住民の声をしっかり反映する流域治水にしなければならない、主体的に参加される、そういうものにしなければならないと、私、大変こだわっておりますので、そのこと、重ねてお願いをしたいというふうに思います。
 次に、補助制度について伺いたいと思うんですけれども、先日の参考人質疑の中でも嶋津参考人が指摘されていたことでありますけれども、今度の法案では、浸水被害防止区域を創設をして、区域内の住宅や要配慮施設等について、居室の床を高くすることや敷地のかさ上げをしたりすることを地区メニューに追加することというふうになるわけですけれども、その際に、既存住宅の建て替え、改修に対する補助制度はあるのかどうか、また、現在はなくても今後そういった補助制度を設ける可能性はあるのかどうかについて、国交省に伺いたいと思います。

○政府参考人(井上智夫君) 浸水被害防止区域は、浸水被害が頻発する危険な土地を都道府県知事が指定し、新たな住宅等に係る開発や建築を許可制とすることで、その安全性を事前に確保しようとするものです。区域指定によって、新たな住宅等が立地する際には、かさ上げ等の安全措置があらかじめとられることになります。
 また、既存の住宅等については、防災集団移転促進事業により、被災前に安全な土地への移転が可能となります。
 本区域については、できるだけ住まないようにすることも必要との考えの下、現時点では建て替えに対する支援策はございません。
 一方、お住まいの皆様のお考えとして、水害リスクを理解した上で、既存の住宅を建て替えるなどの安全措置を講じ、その区域に住み続けたいとの意向から建て替えへの支援に関する要望があった場合には、どのような支援策を講ずべきか、検討してまいります。

○武田良介君 滋賀県の例が参考人質疑の際にも紹介をされました。昨日、国交省の方からもお話聞きましたけれども、滋賀県のような建て替えですとか改修に対して助成をするというのは、これは非常に効果あるというふうに考えているというようなお話もありましたので、是非今後こういった措置もしていただきたいということをお願いしたいというふうに思います。
 これも嶋津参考人が指摘されていたことでありますけれども、法案の浸水被害防止区域、これは何年に一度の降雨による浸水域を想定しているのかということについて伺いたいというふうに思います。

○政府参考人(井上智夫君) 浸水被害防止区域の指定に際して想定する降雨については、浸水被害が頻発する危険なエリアにおいては、必要な安全対策を講ずる場合には住むことを許容するものの、できるだけ住まないようにすることも必要との考え方の下、比較的高頻度の降雨を対象に設定することとしております。
 なお、的確な避難を実施するため、洪水浸水想定区域を設定する際は、想定最大規模のおおむね千年に一度以上となる降雨を設定しております。指定に際して想定する降雨は流域ごとに定めるものであり、画一的に設定するものではございません。

○武田良介君 災害が激甚化する中で、例えば今回の流域治水のプロジェクトも三月三十日の案というのが出されているわけですけれども、住民の皆さんからすれば、もっと大きな災害、激甚な災害が発生することもあるのではないかというふうにその案を見ながら考えられることも当然だと思うんですね。そういうときに、繰り返しになりますけれども、三月三十日に出されたああいう案を、これが一つの結果であると、これを理解してほしいという姿勢ではなくて、地域住民の皆さんの意見も踏まえて更に変更していく、より良いものを作っていく、それでこそ住民の皆さんも理解をし、一緒に本来の流域治水ができるんだと、そのことが大切だということを重ねて指摘をさせていただいて、質問を終わりたいと思います。

すべて表示

関連資料

しんぶん赤旗→「耐越水堤防の整備を 流域治水関連法 武田氏が要求」