国会質問

質問日:2021年 5月 11日  第204通常国会  国土交通委員会

タクシーへのダイナミック・プライシング導入、性急な議論やめよ

 武田良介参議院議員は5月11日の国土交通委員会で、タクシーの変動型運賃(ダイナミック・プライシング)の導入に向けて、規制改革推進会議で性急に議論されている実態を告発し、コロナ禍で苦境にたつタクシー事業に、雇用調整助成金特例措置の延長等を求めました。(スタッフ)

 

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 タクシー運賃におけるダイナミックプライシングの導入について質問をさせていただきたいと思います。
 これは、規制改革推進会議の投資等ワーキング・グループで検討をされております。言ってみれば、タクシー運賃を需給に応じて変動させるものでありまして、国土交通省からも説明求めましたけれども、閑散期に割安な利用が可能になって、これまでタクシーを利用しなかった層の需要の開拓が期待されると、そのことによってタクシー事業者から見れば生産性が向上していくんだというような説明を受けました。
 まず、秡川局長に伺いたいと思うんですけれども、利用者の側からタクシー運賃にダイナミックプライシングを導入してほしいと、こういう要望があったということなんでしょうか。

○政府参考人(秡川直也君) タクシーの利用者の皆様から、従来から、もうちょっと安い値段でタクシーを利用したいとか混んでいるときにタクシーがつかまりにくいといったお声がたくさん寄せられてまいりました。それで、タクシー運賃を需給によって変動させるダイナミックプライシングなんですけれども、このような御意見に応える一つの選択肢になるんじゃないかというふうに考えてございます。
 本年は、実際、実車による実証実験、ダイナミックプライシングの実証実験を行って、その中で利用者の御意向もしっかり把握しながら検討を進めていきたいというふうに考えてございます。

○武田良介君 事業者の方はそもそも高いからというお話の答弁でしたが、私聞かせていただいたのは、利用者の側から導入してほしいという要望があったのかということを聞かせていただきました。

○政府参考人(秡川直也君) 値段が高いと、利用者の声ということで私申し上げました。
 ダイナミックプライシングをやってくださいという、そういう利用者の声はありませんが、値段についてもうちょっと何とかならないかとか、もうちょっと利用しやすくならないかというお声はたくさん寄せられてきたということでございます。

○武田良介君 ダイナミックプライシングを導入してほしいという要望としてはないんだということの答弁でありました。
 二〇一六年に全タク連のタクシー業界において今後新たに取り組む事項というのを見ますと、四つ目のところにダイナミックプライシングというふうにあるわけですけれども、自交総連の皆さんが全タク連と懇談した際に、この点について全タク連の方々がおっしゃったというんですね。ダイナミックプライシングは、現在の運賃幅から一割くらいずつ上下させて運賃を変動させればお客さんが増えるのではないかということなんだけれども、増えるとは思えないという考えもあるんだと、そもそもライドシェア対策として、ライドシェア対策としてウーバーにできることはタクシーにもできますというつもりで活性化十一項目に書いたら、書いたのだからやれということを言われてしまっていると、事業者にもいろいろな考え方があって、簡単にはまとまらないんだと、特に地方ではやろうという声がないんだと、変動迎車料金で止めるつもりだったんだがというお話があったというふうに伺っております。
 この国交省が説明するダイナミックプライシングの目的、効果、新たな需要の開拓ということなんですけれども、本当に需要は増えるのかということをちょっと考えたいと思うんです。
 資料にも付けましたけれども、国交省にこの点説明を求めましたらそういった回答をいただきまして、要は、新たな層がタクシーに乗るのではないかということだったというふうに思うんです。こういうふうにあるんですね。例えば、買物で重い荷物を持って帰る際に、通常は徒歩で帰宅していた利用者が閑散時の割安な運賃によってタクシーを利用して帰宅するケースというのをこれ挙げているわけです。そういう方もいらっしゃるかもしれませんけれども、この例示だけで、いやあ、確かに上がるねというふうに納得するにはなかなか難しいというふうに思っておりまして、利用者の側から要望もない下で本当に乗客が伸びるのかということを疑問に思います。
 全タク連の方の声を紹介しましたけれども、お客さんが増えるとは思えないという声もあって、事業者もいろんな考え方があってまとまらないというのが今の現状、実態なのではないかと思いますけれども、局長、いかがでしょうか。

○政府参考人(秡川直也君) いろいろなお声があるという御意見、見方があるということは承知しています。それで、先ほど申し上げましたけれども、もうちょっと安い値段だったら乗るのにとか混んでいて乗れなかったんだというお客様もいらっしゃるので、そういう潜在的な利用者のニーズというのはあるのかなと思っています。
 ですから、先ほど御紹介いただきました投資等ワーキング・グループでやってみようという方向にはなっていますけれども、今年度は、まずその実証実験、効果があるのかないのか、利用者、事業者、運転手さんの声等も取りまとめて、どういうものなのかというのを実際にやってみるという一年になると思いますので、そこの状況をしっかり見ながら制度設計をしてまいりたいというふうに思っております。

○武田良介君 今後実証実験するというんですけれども、今後仮に運賃が安くなる時期ができたとしても、そのときに移動する目的がなければそもそもタクシーに乗らないわけですし、タクシーに乗るというのはそれなりの緊急性があって乗ったりする、やっぱりそういう状況があると思うんですね。ただただ下げればそれでどれだけ増えるのかというのは、これやっぱりまだまだ分からないんじゃないだろうかというふうに率直に言って思います。
 なぜ今タクシー運賃へのダイナミックプライシングの導入が規制改革推進会議でテーマになったのか。この点ですけれども、タクシー運賃、料金をめぐっては、変動迎車料金の制度、これが昨年の十一月三十日から申請可能になったというふうに伺っておりますけれども、矢継ぎ早にどんどんこの規制改革推進会議でダイナミックプライシングの議論をまた今度やっているという状況なんですが、この変動迎車料金ですけれども、十一月三十日に始まって、これまで申請はあったんでしょうか。

○政府参考人(秡川直也君) 御紹介いただきました十一月三十日に制度化をされました。現時点では、まだ採用している事業者はないということでございます。
 これは、制度化されて間もないということもありますし、昨年来、ずっとコロナの状況でタクシーはいろいろお客さんが減っていて、事業者さんも非常に苦しい状況だというところで、平時だったら進んでいる検討が進んでいないということもあるのかなというふうに思っておりまして、引き続き、事業者の取組を見守りつつ取り組んでまいりたいというふうに考えています。

○武田良介君 ないということでありました。
 変動迎車料金の申請もないわけですから、今実際どうなっているのかということも当然十分検証できない状況だと思うんですね。これが検証できないんだけれども、迎車料金でのその変動が検証できない下で運賃本体についてもこれ導入していくということで、どんどんどんどん進んでいるなという印象を大変強く受けるわけであります。
 これは、出発は河野規制改革担当大臣の一声だと思うんですね。昨年末、FNNプライムオンラインのライブニュースイットという番組で、タクシー業界について河野大臣が発言をされております。
 少し紹介したいと思いますけれども、ウーバーというライドシェアが最初に入ったときには規制がなかったが、だんだんと、ドライバーに最低賃金を保障しようとか健康保険を付けよう、運転時間の上限を定めるなどの規制が強まっている、それだったら、日本のタクシーは安全性、清潔さ、信頼性が世界一とよく評価されるので、日本のタクシーの選択の幅を広げていくと同じサービスが提供できるようになるんじゃないか、日本型のライドシェアがあってもいいんだろうというところからスタートしたというふうに述べておられます。
 このライドシェアということに触れていることも含めて、大変重大な問題だなというふうに思うわけですけれども、その上で、河野大臣はタクシー料金が上がる例というのを紹介をしています。例えば、金曜日の夕方、雨が降るとタクシーに乗りたい人が増えて、台数が決まっているからタクシーがつかまらない、そういうときはタクシー料金を上げるというふうに述べておられます。
 こういう状況になって困るのは、雨の日でも、仮に晴れの日でもタクシーを使わざるを得ない、例えば高齢者の方だとか障害をお持ちの方だとか、こういった方が一番困るんではないだろうかというふうに思うんです。
 全日本視覚障害者協議会、全視協と略して言いますけれども、高知県の方、こういうふうにおっしゃっています。事故や災害、悪天候などで運賃が上がるとタクシー以外に代替手段のない者にとっては大変な問題です、私たちは料金が見えません、ダイナミックプライシングになり、今は高い料金モードですと言われても信ずるしかありません、信頼関係にひびが入りかねませんというふうに訴えられております。
 こういったやっぱり高齢者の方だとか障害をお持ちの方、こういう方たちに対する配慮、これが十分検討されているのか、こういう声をしっかり踏まえるべきだというふうに思いますけれども、大臣、こういった声は耳に届いておられますでしょうか。

○国務大臣(赤羽一嘉君) そんなに性急に事を進めようという話じゃありませんので、今言われたような声が世の中で沸き起こっているというふうな認識はございません。
 我々は、常に申し上げておりますが、タクシー業において安全を損なわないというのは大前提であります。河野大臣のその発言を私はよく聞いておりませんのでよく承知をしていませんが、河野さんも、日本版ライドシェアというのが何を指しているか分かりませんが、いわゆるライドシェアは認めることはできないというふうに言っていてこの話は始まっているというふうに承知をしていますので、その発言については私はコメントできませんが。
 申し上げているのは、従来日本一の、タクシーは日本一、世界で云々と褒めていただきましたが、私はそんなに、それほど高く評価していなくて、ひどい状況でありました。タクシー業界に、私ははっきり申し上げて、何もしないんであれば本当に崩壊するよと、しっかりと自らがどう利用客の立場に立ってサービスを向上していくのかということをしなければ本当に大変なことになりますよということは、私、タクシー議連の公明党の責任者の一人だったので、そういうことを申し上げました。
 この間、アプリを採用したり、また料金体系も随分見直したりとか、先ほどちょっと局長が答弁したのは、このダイナミックプライシングではなくて、初乗り料金を、当時七百三十円かな、を四百十円にして、これは明らかに、高齢者の皆さんが近くの病院に行くときにタクシーを利用しようとか、これ大変、最初は、恐らくドライバーの皆さん嫌がっていたんですよ、同じ乗せるのに七百三十円の水揚げがないというのはどうなんだと。ところが、それは実証実験的に多分始めたと思いますが、東京のは結果としては非常に評価されて、全国どこでも導入していると。
 ですから、私、運賃の変更がどうかというのはやってみないと分からないという部分があるので、実証実験をするということは一つ何事においても意味がないとは言えないんではないかと、こう思っております。
 しかしながら、このダイナミックプライシングについては、国交省の立場としては、公共交通機関としてその政策目的というのはどうなのかとか政策評価はどう定めるのかとか、公共交通機関が、やっぱり運賃が一物一価じゃないというのは非常に混乱も起こすんじゃないかという懸念もございますので、そうしたこともありますし。
 今お話ありましたように、東京都内のタクシー事情と地方のタクシー事情というのは全く違いますから、地方においてはまさに公共交通機関そのものですし、ダイナミックプライシング神戸でやってもどうかなというんですから、もっと地方部で行くと、何というのか、ぴんとこないんではないかと、そのメリットもデメリットも余り関係ないんじゃないかなという気がしますが、都心部のようなところで、交通手段もたくさんあって、その中で時間帯とか一時的な状況のときになかなか車がつかまらないみたいなことに対して知恵を出すというようなことは検討してもいいのかなということで、やると決めたわけじゃありませんけど、実証実験をしてしっかりと検討を進めるということでございますので、余り性急に御心配いただかなくても、我々、基本的には安全というのは損なわないというのを大前提にしているということだけは申し上げておきたいと思います。

○武田良介君 性急に進めないという答弁もありましたし安全性が前提、それから、公共交通としての、何ですか、タクシーの役割、そこに影響を与えないようにということで懸念もあるという御答弁もありました。また、都市部と地方の違いもあるだろうというお話もありました。
 性急に物を進めるわけではないからそんなに心配いただかなくてもという話だったんですが、しかし、この運賃、タクシー運賃そのものにダイナミックプライシングを導入するということ自身、特に何か法改正が必要なわけでもないわけですよね。ですから、国会でこれまで十分議論されてきたわけではないけれども、私が今日僅かな時間ですが指摘をさせていただいたようなことというのも、特に全体で議論しているわけじゃありませんから、だからこそ全国的に声が起こっているわけでもないと思うんですよね。こういったことをどんどんしっかり議論していかなければ、私は、大変矢継ぎ早に、変動料金の問題だとかその他いろいろありますけれども、料金に関わってそういったことがどんどん行われている、これで本当にいいんだろうかということを私はやっぱり考えなきゃならないだろうというふうに思っております。
 もう時間が来てしまいました。
 先ほど局長の答弁の中にも、コロナ対策ということもありました。全タク連の方の要請見れば、活性化の十一項目とは別に、コロナ対策の中で、雇調金の特例措置の延長ですとかあるいは持続化給付金の増額、複数回の支給、こういったことを幾つか並べた項目もありました。そこにはダイナミックプライシングをやって応援してほしいという話ではなかったんですよね。
 やっぱりこういったことこそこれから必要になってくるだろうということを指摘をさせていただいて、質問を終わりたいと思います。

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関連資料

しんぶん赤旗⇒「利用者から要望なし 武田氏 タクシー運賃変動問う」

参考資料

2021年5月11日国交委質疑提出資料