議事録
○武田良介君 日本共産党の武田良介です。よろしくお願いいたします。
船員の働き方に絞って質問をさせていただきたいと思います。
今回の法案は、過酷な労働実態にある船員の働き方を改革しようということが大きな柱の一つになっております。働き方を改善するには、実態をリアルに把握することが前提だというふうに考えます。船員の労働実態を把握するためには様々なやり方があると思いますけれども、やはり国としては、船員法などの法律に基づいて違法行為がなされていないかどうか監査をしていくということは当然重要になってくるというふうに思っております。
そこで、まず、大坪海事局長に伺いますけれども、運航労務監理官による直近一年間の監査件数と処分件数について教えていただけますでしょうか。
○政府参考人(大坪新一郎君) 国土交通省では、船員の労働条件、労働環境の適正な確保、航海の安全確保などを図るために、全国に配置された運航労務監理官が訪船して監査を実施し、船員法など関係法令に違反した船舶所有者に対して処分を行っております。
令和二年度の運航労務監理官による監査は、船員の労務監査が三千二百六十二件、運航管理監査が千九百十九件の合計五千百八十一件が実施されております。このうち、船員労務監査の結果に基づく処分ですが、戒告が百十件、勧告が五十四件の合計百六十四件となっております。
○武田良介君 今御答弁いただきました内容について、資料に付けました。監査件数については、今、令和二年の答弁いただきましたけれども、平成二十六年度から直近七年間の推移を資料一にしました。それから、処分件数について、直近五年間の推移を資料二に、国交省に提供いただいたとおり、そのまま示させていただきました。
監査には二つあるわけですが、今御答弁にもありましたように、船員労務監査、これは船員法に基づいて行われる労働時間ですとか休日あるいは給与、こういった労働条件に関する監査。一方、運航管理監査、これは海上運送法だとか内航海運業法に基づいて行われる、言ってみれば、安全確保に関するその事業者の責任体制を監査するものだというふうに理解しておりますけれども、資料二の処分ですけれども、これ、ピンクのグラフ、船員労務監査、これによって明らかになった違反事例に対する戒告、勧告ということであります。
これ、資料二ですけれども、左の方にずっと並んでいるそれぞれの項目、これは船員法の章立てに該当するものだということで御説明を受けました。例えば、上から四段目ですけれども、労働時間、休日及び定員、これは船員法の第六章に該当するんだと。これ、六章は、第六十条第一項で、船員の一日当たりの労働時間は八時間以内とするというふうに規定をしておりますし、第二項で、船員の一週間当たりの労働時間は、基準労働期間について平均四十時間以内とするというふうにしております。休日については、六十一条で、船舶所有者は、船員に与えるべき休日は、前条第二項の基準労働期間について一週間当たり一日以上とすると規定をしている。六十二条では、休日を与えられない場合の補償休日についても規定をしているという、こういうことになっているということを紹介しておきたいと思うんです。
先ほど御答弁いただいた監査件数と処分件数についてですけれども、これまでこれらの数字は公表されてきませんでした。これまで公表されてきたのは、四半期ごとに、船員法などの関係法令に違反したその累計ポイントが百二十ポイントを上回った、そういう船舶所有者、これはその船舶所有者の名前を公表するということはやられてきましたけれども、全体としてどれだけ監査がされて、どれだけ違反があって、どんな違反だったのか、こういうのは明らかにされてこなかったわけですね。少なくとも、監査件数、処分件数ぐらい公表すべきではないかというふうに思いますけれども、局長、いかがでしょうか。
○政府参考人(大坪新一郎君) これまで、監査結果の公表については、災害等の防止、法令の遵守、航海の安全の確保等を怠ることへの警鐘として、船員法等関係法令に違反し、一定の処分基準を超えた場合のみ、船舶所有者名、処分の理由、処分内容について四半期ごとに公表しております。
今般の船員法改正を含めて、関係法令を遵守しない事業者が出ないように、今後も運航労務監理官による監査を着実に実施していくこととしておりますが、委員御指摘の監査件数、それから処分件数の公表については、どのような形で行うことが可能かについて今後検討してまいりたいと思います。
留意すべき点としては、海運事業者の場合、陸上に比べて非常に数が少なく、事業者名を非公表としても、この件数、場合によってはこの件数の少ない件数だけ見れば、どの処分、どの事業者が処分を受けたかということが特定されてしまう可能性もあるという、そういう業界の特性もあります。そのようなことも踏まえて今後検討してまいりたいと考えております。
○武田良介君 そもそも法令違反なんですよね。ですから、それは許さないという立場で対応することがどうしても必要になってくるだろうというふうに思いますし、今日、国交省に提出いただいて資料にさせていただきましたこういう数字も、これまで公表されてきませんでした。今、答弁ではこれからどういう形でできるか検討するということでありましたけれども、これも初めてのことになると思います。是非しっかり検討いただいて、件数だとか、この処分と監査の件数ですね、これぐらい明らかにするというのは是非できると思いますので、重ねてお願いをしたいというふうに思います。
これ、船員の方々からは、処分件数が少な過ぎるんじゃないかという声が出ているんですね。船員の労働実態はもっと過酷で、処分されるような事案というのはたくさんあるんじゃないかという、今の数字が必ずしも実態を反映していないんじゃないかという、そういう指摘なんですね。
そこで、監査の実態について確認をさせていただきたいと思うんですが、現在行っている監査というのは、その日に寄港する船舶を入港通報によって把握をして、何月何日の何時から何時までどの港に入港、停泊するかということが記載されているので、それで監査に入る時間的余裕がある船舶に対して実施をしているというふうに説明を受けました。監査の内容も、その事業の支障とならないように、一定時間を区切って、時には船員労務監査も省略をして行われるというふうに説明を受けました。
これ、実態としてそういうことで間違いないでしょうか。
○政府参考人(大坪新一郎君) 船舶の入出港の情報等に基づいて監査を決めているのは事実です。
ただ、その際に、過去の監査履歴や処分の有無などを勘案して監査対象船舶を選定して船舶へ立ち入り、船員への聞き取り、法定書類の確認等を行っています。また、船内への立入検査の結果、必要があると認めた場合には陸上の事業場へも立ち入り、関係法令の遵守状況を確認しているところであります。
○武田良介君 ちょっとお答えいただいていないように思うんですが、私が事前に説明を聞いたときには、例えば二時間とか三時間、その船に対して訪船して監査をすると。その際に、船内の施設なども確認をしなければならないから、二時間、三時間、全て、その労働時間、帳簿がちゃんと付いているかどうかとかですね、そういったことを監査することだけに充てるわけにはいかないんだと。だから、場合によっては簡略して、あるいは省略して省いてやることもあるんだというふうに説明を受けていますよ。そういうことでよろしいですか。
○政府参考人(大坪新一郎君) 全ての法令に向けて全部の項目を、全て船内の備品から船員に関する記録簿の全てを見ているかということについては、時間の制約があるというふうに理解しております。
ただ、実際に立ち入ったときには、労働時間及び休日の数の状況、船内における安全管理、衛生管理の状況、医薬品、衛生用品の備蓄状況などを確認しているということでございます。時間的制約があるということは事実だと思います。
○武田良介君 法改正の前にこういう監査の実態、これまでどういう監査やってきたのかということも含めて明らかにしなければならないという問題意識で質問させていただいておりますし、こうした監査でどれだけ法令違反が摘発できたのか、ここが問題になってくるというふうに思います。
交通政策審議会の船員部会が二〇一九年四月二十六日の会議で配付した資料、これ三に付けましたけれども、内航の業務実態調査の概要というのがあります。これは二〇一七年七月から九月までの間でありまして、対象の隻数が、貨物船が十七隻、タンカー二十四隻、対象の船員数も二百八十七人、八千八百九十七人日分の労働時間を集計したものということであります。
この結果見ますと、資料の左下の方ですけれども、一日の総労働時間が十四時間を超えた船員が発生した船舶、その割合が貨物では三五・三、タンカーでは六六・七%というふうになっております。資料の二の処分件数から見ると、実態に開きがあるのかなというふうに思うわけですが、もちろん、これ一概に比べることはできないということは私も思っております。思っておりますけれども、実態として、現場を知る方の声としては、資料三にあるような、こっちの方が現実に近いんじゃないかというふうにおっしゃっているわけです。これまでの監査は十分だったのか、本当にそうなのかということを私ちょっと考えなければならないというふうに思うんですね。
ここまでの議論も踏まえて、大臣に伺いたいと思うんですけれども、監査の重要性、当然重要だと思うんですが、その御認識と、また、今後こういった監査の実態を見直していく、そのお考えについてお答えいただきたいというふうに思います。
○国務大臣(赤羽一嘉君) この監査自体が実態と乖離するんであれば、何のために監査をしているか分からないという話になりますから、そうしたことも踏まえて、本法案では、船長に任せ切りの体制を改めて、記録簿の作成、保存を陸上にいる使用者の義務として労務管理者の責任者を選任すると、そして適切な労務管理を行う仕組みを構築するということに、そうした法案の内容でお願いをしているところでございます。
ちょっと細かいことでありますけれども、運航労務監理官の行う監査につきましては、これまでは実際に船舶を訪問しなければ記録簿を確認できませんでしたけれども、今後は陸上の事務所に立入り監査を行い、効率的な確認や指導を行うことが可能となりますが、それだけでは終わらず、そういうことが可能になりますが、船も訪問しながら、現場の状況と船員さんの特に生の声を直接に把握することも重要でありますので、しっかりとした正しい監査がして、究極的にはやはり船員の皆さんの働き方改革に資するように取り組んでいかなければいけないというふうに認識をしております。
○武田良介君 今回の法改正でも、陸に労務管理責任者を置くというふうになっている。私やっぱり気になるのは、その詳細、労働実態をどう把握していくのかというのはこれから省令でということになるんですね。やっぱりそれがどれだけ実態を把握するものになっていくのか、こういった問題意識がありますから今日は指摘をさせていただきましたし、先ほども話がありましたように、現場の船員がもっと法令違反あるんじゃないかというふうに言っている。仮にそうだとすれば、船員の不足ですとかあるいは定着しないという課題もなかなか解決していかないということになりますから、この省令の中身も含めてしっかり見なければならないということを重ねて指摘をさせていただきたいというふうに思います。
最後、ちょっと時間がないんですが、この船員法を始めとした労働者として身に付けておくべき基礎知識の普及啓発ということについて質問させていただきたい。
厚生労働省に来ていただきました。「知って役立つ労働法」というハンドブックを作成していただいておりますけれども、この作成することとなった経緯、またその活用の実績、どうなっているのか御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(村山誠君) お答え申し上げます。
御指摘のハンドブックは、平成二十一年に学識経験者や労使の実務者を参集して開催した研究会の報告書におきまして、労働関係法令を知ることは労使双方にとって不可欠であり、分かりやすさを最優先にしたハンドブック等を作成、配布するといった取組を強化すべきという御提言がなされたことを受けて、平成二十二年に作成後、労働法の改正状況を踏まえ、逐次改訂しているものでございます。また、御指摘のハンドブックの内容を就職を控えた学生や生徒の皆さんにも興味を持っていただけるように、漫画を取り入れ、ストーリー仕立てにして分かりやすく取りまとめたQアンドA冊子を平成二十七年より作成しております。
このハンドブックとQアンドAは私どものホームページでダウンロード可能な形で公開いたしますとともに、特にQアンドA冊子につきましては、全国の大学、高校等の学校や、あるいは児童養護施設などのほか、新卒応援ハローワークを含めました公共の職業安定機関などにも配布しておりまして、令和元年度の配布実績は約八十三万部ということでございます。
以上でございます。
○武田良介君 国交省も船員向けにこれからこういうハンドブックと同等のものを作成をして、全ての船員、船員を目指す若者だとか学生、こういった方に行き渡らせることが必要ではないかというふうに思いますけれども、最後に大臣の御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(赤羽一嘉君) 私は、目的は非常に大事だというふうに思いますが、その手段がそういう本がいいのかどうかというのは若干懐疑的でして、八十何万部配ったということよりどれだけ読まれたのかということの方が大事なんではないかと、これは個人的に感じた考え方でございます。別に否定しているわけじゃありませんし、厚労省のあれも私知りませんで、ホームページ繰ってみようかと思いますが。
いずれにいたしましても、船員の皆さんがそうした基礎知識をよく理解をして、そして実態で、労働現場でそうはなっていないことについてやはり声を上げられるということが大事だというふうに思っておりますので、いずれにしても、御指摘の趣旨を踏まえて、効果的なというか、形でそうしたことを徹底できるように、それは当然やらなければいけないというふうに認識をしております。
○武田良介君 パンフレットの作成を予定しているというふうに私事前にはお聞きをいたしました。その内容を充実したものにしていただいて、しっかり徹底していただきたいということを重ねてお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。
関連資料
しんぶん赤旗→「船員労務監査見直せ 海事産業強化関連法成立 武田氏要求」