国会質問

質問日:2021年 5月 18日  第204通常国会  国土交通委員会

安全工事の保障ない―リニア新幹線事業の中止を

 18日の参院国土交通委員会で、日本共産党の武田良介議員は、大深度地下(地下40メートル以深等)での工事の安全を保障する法令上の根拠がないとして、リニア新幹線の整備事業の中止を求めました。(スタッフ)

   

 

 

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 東京外環道での陥没事故が発生をいたしました。被害を受けた住民の皆さんの間に不安と怒りが広がっております。ここは大深度地下でありました。今日は、同じく大深度地下での工事計画が認可されておりますリニアの地下工事、安全性について質問させていただきたいと思います。
 まず、この間の国交省の答弁を確認したいと思いますけれども、資料をお配りさせていただきました。こういう答弁ですね。大深度地下を利用したシールド工法を採用している、地上への影響は生じないものと考えている、大深度地下におけるシールド工法による工事については適切に工事が行われれば地上に影響は生じないものと考えている、こういう答弁でありまして、大深度地下での工事が地上に影響を与えないのは、大深度地下であるということと、それからシールド工法であるということを、この二つの条件をセットでずっと答弁されてこられました。
 まず初めに、改めて確認をさせていただきたいと思いますけれども、大深度地下における工事の安全性を担保する規定というのはあるんでしょうか。

○政府参考人(里見晋君) 大深度法を所管している立場からお答えを申し上げます。
 大深度地下の公共的使用に関する特別措置法における使用認可制度につきましては、地権者等による通常の利用が行われない空間であるという大深度地下の特性に応じた合理的な権利調整のルールを定めるものでございます。
 大深度法上、大深度地下の使用に当たって安全の確保に配慮しなければならないことはもちろんでございますけれども、直接、工事の安全性を担保する規定というものが直接あるわけではございません。個々の事業における工事の安全性につきましては、大深度であるかにかかわらず、それぞれ個別事業の施行の認可等に係る法令や基準等において定められているものだと理解をしております。

○武田良介君 大深度法ではその安全性を担保する規定があるわけではないということの御答弁がありました。
 今年の参議院の法務委員会で我が党の山添拓議員もこの問題を質問をしておりまして、このときの国交省の答弁も、大深度地下法によります使用認可制度では、単に大深度地下の工事であれば常に地上に影響を与えないということを前提としたものではないということの答弁もされております。そういうことだと思うんですね。少なくとも大深度地下法によってその安全性確認しているものではないということだと思います。
 これまでの答弁は、こういう大深度地下であるということとシールド工法を使っているという二つのことをセットにしながら地上への影響はないというふうに言ってきたわけですけれども、この答弁は不正確で、誤解を与えてきたのではないかというふうに思いますけれども、この点、大臣の認識を伺いたいと思います。

○国務大臣(赤羽一嘉君) 多分、御指摘の三月二十日の衆議院国土交通委員会、平成二十七年ですね、この大深度地下における工事の安全性に関して当時の国土交通大臣の御答弁は、大深度地下におけるシールド工法による工事については、適切に工事が行われれば地上への影響は生じないという趣旨を答弁されたというふうに承知をしております。ですから、シールド工法による工事であればということではなくて、適切に工事が行われることを前提にお答えをしているというふうに承知をしているところでございます。

○武田良介君 私、誤解を与えてきたんじゃないかというふうに思うんですね。
 少し紹介しますけれども、これまで、多くのメディアですとかあるいは住民の皆さんも含めて、大深度だから大丈夫だというふうに説明を受けてきたというふうに認識されていると思うんです。地上への影響はないと言われてきた大深度地下工事の前提が崩れた、こうやって報道している、あの外環道の事故をですね、報道しているメディアもありますし、あるいは大深度地下法の問題では、大深度地下は通常利用されない場所で、地上には影響を与えないとして地上の所有者には一切無断で掘削を認めてきた大前提がこの陥没と空洞の発見で崩れたと、週刊誌の報道もありました。あるいはジャーナリストの方も、東京外環道の陥没事故が同事業とリニアの見直しを迫るものというふうに指摘をした上で、二つの事業は大深度地下の公共的使用に関する特別措置法によって認可された、これは東京、名古屋、大阪など大都市の四十メートル以上深い地下部を、地下部の空間を超法規的に使用することを認めたもので、その理由は、大深度地下の工事は地上の住居などに影響を与えないという前提に立っているからだと、こういう指摘が次々とされております。
 何より、自宅の地下をリニアが大深度で通るんだという住民の方、これも、二〇一八年の住民説明会の際に大深度だから地上に影響はないと聞いてきたと、そういう認識だということをおっしゃっている、こういう方がいらっしゃるわけですね。
 やっぱり誤解を与えてきたのではないかというふうに私思うんですけれども、大臣、改めて、誤解を与えてきたんではないだろうか、この点いかがでしょうか。

○国務大臣(赤羽一嘉君) 先ほど申し上げた大臣答弁が国土交通省の見解でありまして、それとはちょっと別の形で、様々なマスコミですとか週刊誌の報道が、まあいろんな報道があるというのはこの件に限らず私たちは体験していることで、変な言い方、無責任に言うわけじゃありませんけど、あらゆる報道について私たちが誤解を与えてきたかどうかというのは、それはそれぞれマスコミ各社ですとか評論家の皆さんの見識でやられていることであって、先ほど質問していただいたように当時の国土交通大臣の答弁が国交省の認識であって、ここの大深度におけるシールド工法による工事については、適切に工事が行われれば地上への影響は生じないという趣旨を答弁したというふうに私としては承知をしておるところでございます。

○武田良介君 地域住民の方が受けた住民説明会というのは、もちろんこれ、JR東海であったり国交省の方も含めて説明があったと思うんです。そういう説明会に参加された方が大深度地下だから地上にいる私たちには影響ないんだと、そういう説明を受けてきたというふうに実際認識をされているわけでありますので、私は誤解が広がってきた、与えてきたというふうに思いますし、先ほど最初の答弁いただきましたけれども、少なくとも、大深度で工事をする、その工事の安全性を担保する規定はないということは確認をさせていただきたいというふうに思います。
 では、実際に外環道の陥没事故を受けてもなお、このリニアの工事は安全にできるというふうに言えるのかどうかということについて伺いたいというふうに思います。
 JR東海の金子社長は、東京外環道の陥没事故の原因となった特殊な地盤は、リニア工事では首都圏、愛知県にはないというふうに言及をされております。
 国交省にお尋ねいたしますけれども、その事実は間違いないというふうに国交省として認識されておられるでしょうか。

○政府参考人(上原淳君) お答えいたします。
 リニア中央新幹線におきましては、シールド工法による大深度地下でのトンネル掘削工事につきまして、第一首都圏トンネルのうち東京都品川区から町田市の間の三十三・三キロメートルの区間及び第一中京圏トンネルのうち愛知県春日井市から名古屋市の間の十七・〇キロメートルの区間において計画をされております。
 本年三月、調布市の陥没を受けました東京外環トンネル施工等検討委員会有識者委員会の報告書が公表されましたが、リニア中央新幹線の事業主体であるJR東海としても、この報告書を十分に踏まえて工事を行うこととしております。
 具体的には、地盤の特性に応じた工事の施工方法など工事の安全確保に関して、有識者委員会の検討結果を受けて、実施すべき対策について現在検討中であること、また、先ほど説明会のお話が出ましたけれども、トンネル掘削工事を開始する前には、工事を行うルート沿線の住民を対象といたしまして、有識者委員会の検討結果を受けた対策等につきまして説明会を開催する予定ということになっております。
 委員御指摘の調布市の陥没が起きたような、三つの条件というふうに言われておりますが、そうした地盤については、JR東海におきましては、平成三十年の大深度地下の使用の認可申請に当たり、地形、地質に関する既存資料を収集、整理をしておりまして、その支持基盤の連続性の確認のためにボーリング調査を実施いたしております。
 こうしたことを踏まえた社長の発言だというふうに認識しておりますが、先ほど答弁させていただきましたとおり、この有識者委員会の示した対策を今踏まえて具体的な対策をJR東海として検討しているということでございますので、この三つの条件がそろった地盤があるかないかにかかわらず、JR東海がどういう対策を実施していくかということは現在検討中であるというふうに私どもは認識しております。

○武田良介君 いろいろお話しいただきましたけれども、金子社長が言及しているのは、今答弁にありましたように、あくまでその外環道の事故原因となった特殊な地盤、それと同じ地盤は首都圏、愛知県にはないということだと思うんですね。ですから、別のメカニズムによって陥没事故のようなものが発生する可能性ということまで否定しているものではないと思うんですね。
 今答弁の中にもありました二〇一八年の大深度地下法の申請をした際の書類、そこが大深度であることを証する書類ですね、これを私も見ました。これ見ますと、その中に地盤急変部に関する考察というのがあるんですね。この地盤急変部ということは、地面に埋まった谷ですとか段丘ですとかあるいは断層のことで、そこは地層が変わるために工事を行う際に注意を要する場所だということだと思うんですね。
 それがどういうふうにあるのかと、この中に記されておりまして、首都圏でいいますと、結論だけですけれども、世田谷層が分布する多摩川左岸付近で横断する可能性のある埋没谷、埋没谷って地中に埋まってしまった谷ということですよね、埋没谷、同じく下末吉の台地の埋没谷、あるいは国分寺崖線、崖線って崖ですね、崖線、それから多摩川低地の埋没谷、四か所が文献調査、地盤調査に基づいて確認された地盤急変部であるとJR東海がしているというふうに私理解しておりますし、中部も指摘をされておりまして、矢田川累層から海部・弥富累層に変わる地層の境界、あるいは文献調査によって推定活断層が急変部になり得ると。この中部圏については、地盤調査してみたら、地層境界については支持基盤上面は同じ程度の標高であって、余り落ち込みもないし、推定断層も違うだろうと、ボーリングデータしたら違うだろうということで、これは違うと判断すると、そのボーリングのデータまで全部一緒に記載されておりませんでしたので私よく分かりませんけれども、判断するとJR東海は言っているわけですね。
 そうしますと、その外環道と同じではないけれども、同じではないけれども、例えばこの地盤急変部があるといって首都圏では少なくとも認め、中部圏でも推定されるところはあると言い、こういうところで今後崩落などが起こる可能性というのは否定できないというふうに考えますけれども、国交省の認識を伺います。

○政府参考人(上原淳君) お答えいたします。
 先ほど答弁をさせていただいたとおりでございますが、JR東海社長の発言は、これまでのボーリング調査あるいは文献調査の結果を踏まえて、この三つの条件がきちんとそろった地盤があるかないかということを発言したものでありまして、JR東海が実施すべき対策は別途考えていくものだというふうに認識をしております。
 また、私どもといたしましても、大深度区間を含むリニア中央新幹線の工事は建設主体であるJR東海の責任で行われるものでございますが、本件の大深度工事における安全対策等につきましては、JR東海に対しまして検討の結果を報告するように求めております。また、報告内容に従って適切に工事が進めるよう指導していくことにいたしておりますので、そうした点は、委員御指摘の点もしっかり踏まえながら対策を検討していくように指導したいと思っております。

○武田良介君 対策をどうするかと聞いたわけじゃないんですよ。地盤急変部があるとJR東海が自ら示した文書の中にあるから、そういうところで東京外環道と別のメカニズムも含めて今後事故が起こることはあり得るでしょうと、だから、外環道でいろいろ対応を取りました、それに対する対応をやります、それだけでは安全とは言い切れないでしょうと、そのことを伺っています。

○政府参考人(上原淳君) お答えいたします。
 現在、JR東海におきましては、まずは、この調布で起こりました陥没事故の有識者会議の対策が出ているわけでございますので、それを踏まえて対策を検討中であるというふうに聞いております。
 その対策の内容につきましては総合的に我々の方でも話を聞いていきたいというふうに思っておりますが、まずはこの有識者委員会の対策を踏まえた検討を行うことが適切であると我々は認識しておるところでございます。

○武田良介君 いや、ですから、対策を聞いているんじゃないんです。対策を聞いているんじゃなくて、今後、そういう地盤急変部とかがあるから安全性が確認されているわけじゃないですねと、これから起こり得るんですよねということを確認しているんです。否定できないということだと思うんですよ。いいですか、そういうことで。

○政府参考人(上原淳君) お答えいたします。
 通告をいただいておりませんので、その安全性がそこでこの調布の事案とどう異なってくるかとか、そうした科学的あるいは工学的な検討につきましては、私ども、今責任を持って答弁することができないということでございます。

○武田良介君 時間が来ましたのでまとめたいと思いますけれども、否定できないということだと思うんですよ。
 それは、だって、これから大深度の地下で、実際に調布でああいうことがあり、これからアルプスも含めてやっていこうというときに、まあ大深度法の世界とちょっとアルプス違いますけれども、やっていこうというときに、いろんなことが当然起こり得るわけですよね。だから、調布のことをまず見てと言うけれども、それだけでは全く不十分になってくるということだと思うんですよ。
 そういう認識を私は持たなければならないということを指摘させていただきたいと思いますし、そういう意味では、もう本当に見通しがどうなっていくのかということだと思いますから、リニアの中止を求めて、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

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関連資料

しんぶん赤旗⇒「大深度安全保障なし 武田氏 リニア中止求める」

参考資料

2021年5月18日国交委質疑提出資料