国会質問

質問日:2022年 4月 26日  第208通常国会  国土交通委員会

国土交通委員会で、知床遊覧船問題・所有者不明土地特措法について質疑

武田良介議員は、4月26日、参議院国土交通委員会で、

知床遊覧船事故の問題と、所有者不明土地特措法について質問しました(スタッフ)。

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 まず、知床遊覧船の事故について伺いたいと思います。
 亡くなられた方に心から哀悼の意を表したいというふうに思いますし、いまだ発見されていない方もいらっしゃいます。救命救助に全力を挙げていただきたいと、お願いを申し上げたいと思います。
 斉藤大臣は現地に既に入られました。今回の事故ですけれども、既に様々な指摘が地元の方、関係者の方からなされている状況であります。
 運航業者である知床遊覧船が、この日、出航という判断をしたことに対する疑問、あるいは今年四月二十日に日本小型船舶検査機構の中間検査では問題が指摘されなかったということだけれども、その検査そのものに対する疑問、あるいは航行ルートに問題はなかったのか、あるいは船長の経験不足はなかったのか、様々な指摘があるわけであります。
 大臣は特別監査を行うということですけれども、何を確認する必要があると考えて、この特別監査を指示されているんでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 今回の事故への対応に当たりましては、私自身も事故翌日の二十四日に現地に赴き、同日に開設した国土交通省の現地対策本部等において対応を行う職員に対して、行方不明者の捜索に全力で取り組むこと、当該遊覧船事業者に対する監査を早急に実施することに加えて、現地にお越しになった乗船者の御家族に対する支援や、十分な情報提供に最大限努めること等を指示しました。また、同日中に東京に戻り、国土交通省事故対策本部会議において、二十五日から現地対策本部に渡辺副大臣を派遣し、陣頭指揮を執ること等を指示したところでございます。
 国土交通省といたしましては、引き続き、捜索救助活動を始めとする事故対応に全力を尽くしてまいります。
 そして、今回の特別監査におきましては、事故時の状況、運航管理体制、乗組員の安全教育や昨年の同社への指導を踏まえたその後の安全管理規程の遵守等について、重点的に監査を行うこととしております。一昨日二十四日、昨日二十五日に監査を行い、社長からの聞き取りや関係書類の確認等を行っており、本日以降も実施してまいりたいと思っております。

○武田良介君 安全管理規程というお話もありました。
 これ、海上運送法の規定では、その事業許可申請をすることになっているわけですよね。ですから、それに伴ってこの事業計画、安全管理規程、届け出なければならないということになっています。
 ですから、提出された事業許可申請書、あるいはそれに対して国が出した許可書、事業計画、安全管理規程、これどういうものだったんだろうかと。私も事態を把握したいというふうに思っておりましたので、ずっと国交省の方にも問合せをしているんですけれども、これなかなか資料を提出いただけないわけなんです。
 大臣も特別監査を強調されております、事実を確認したいということをおっしゃっている。これ、我々も事故調査するために必要なものでありますので、是非これらを当委員会に資料として提出していただきたいというふうに私は思っておりまして、委員長のお取り計らいをお願いしたいと思います。

○委員長(斎藤嘉隆君) 後刻理事会で協議いたします。

○武田良介君 海上運送法では、この不定期航路事業を営もうとする者、これは航路ごとに国交大臣の許可を受けなければならないというふうにされているものでありますので、いつどのような審査をして許可がされたのか、今後解明が必要になってくるというふうに思っております。
 知床遊覧船は去年二回の事故を起こしていると、先ほどもお話がありました。五月には浮遊物に衝突する事故、六月には浅瀬に乗り上げ事故を起こしているということであります。
 これ、国交省に確認をしましたら、今回事故が発生した航路の事業許可日、二〇〇一年の七月六日ということなわけです。しかし、報道でも既に証言等出ているように、会社の社長さんも替わっているということであります。船長さんも経験が浅い方に替わっている。ですから、その事業許可以来の会社の体制の変更について、事業許可、事業計画など、変更申請が適切になされていたのかどうか、こうした問題も私は把握をしたいし、これ大臣としても把握すべきだというふうに思いますけれども、大臣の認識を伺いたいと思います。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 有限会社知床遊覧船は、昨年五月及び六月に海上の浮遊物への接触や浅瀬への乗り上げを起こしており、事故後に北海道運輸局が特別監査を実施いたしました。特別監査の結果、北海道運輸局より、同社に対して、船員による見張りの確実な実施や安全管理規程の遵守等の指導を行い、昨年七月、同社から北海道運輸局にこれらの事項について改善報告があったところでございます。
 そして、先ほど申し上げましたが、その後、昨年十月に同社に対して、監査ではございませんが、北海道運輸局職員が本船及び事務所を訪問し、このときの指摘がちゃんと行われているか、見張りの確実な実施を含めた改善内容について確認をしております。

○武田良介君 様々対応を取られているという答弁であるわけですけれども、次々されている指摘では、この船長の経験不足、あるいはそういう体制をつくった事業者の問題、こういった問題も指摘をされている。当然だと思うんですね、私。
 知床半島の先まで船で行くには、せめてゴールデンウイークぐらいまで、海が少し穏やかになってこないと、早かったんじゃないかと。ほかの事業者よりも早く今年初めての航行を行ったというふうにも言われているわけでありまして、今回の事故、一つ一つの事故事案に対しての検証、これはもちろん必要だというふうに思いますし、同時に、背景にある事業者の姿勢、さらに、国交省の対応も含めてこれ検証が必要になってくるというふうに思っておりますので、そのことを指摘をさせていただきたい。
 私、先ほど来言っているように、なかなか、どういう事案なのか全体像を把握したいんだけれども、国交省の方から説明いただけないこともあって、先ほど驚いたんですが、鉢呂委員の質疑を聞いていて驚いたんですが、船舶安全法に基づいて四月二十日に行われた日本小型船舶検査機構による中間検査では問題は指摘されなかったということなんですよね。しかし、検査は外観を見ると、そして船長に聞き取りをするという答弁がありました。
 これ、私、非常に驚きました。全国の運輸局で、今日の説明を聞いても、旅客船舶事業者に、旅客船事業者に対して緊急安全点検を実施するという説明ありましたけれども、こうした船舶へのチェック、こういうことをこれまで中間検査というところではやってきたと、今どういう検査をしているんだろうかと、十分な検査されるんだろうかということを率直に思ったんですけれども、この点いかがですか。

○政府参考人(高橋一郎君) お答えを申し上げます。
 船舶検査につきましては、船舶安全法に基づきまして、船舶安全法五条に基づく定期検査におきましては、五年ごとに船体外板の状態の確認、タンク内の確認などなど必要な検査を行いますとともに、船舶安全法五条の三項に基づく臨時検査では、海難等による大規模な修理を行った場合や船舶の安全性に影響のある改造を行った場合には臨時で行う必要な検査を実施しておるところでございます。また、そのほか、委員御指摘の中間検査として、船舶安全法五条二項に基づきまして、毎年、旅客船につきましては、船体の外観の確認、主機関等の効力試験などの検査を行っているところでございます。

○武田良介君 だから、今回やっているこの緊急の安全点検というのが十分になるのかどうかということだと思うんです。四月の検査では見過ごしたということでは、結果、こういう事故が起こっているわけですから、ならないというふうにもちろん思いますし、仮にそうであるとすれば、検査の強化、あらゆる手だてを取って必要になってくるだろうということも思いますので、指摘をさせていただきたい。
 この問題の最後に大臣に伺いたいと思うんですけれども、今回のこの事故を受けて、大臣、海外出張されるというお話もあったんだけれども、どうされるのかなというふうに思っておりましたら、海外出張については諸般の事情により取りやめることになりましたという文書が届けられました。諸般の事情って何だろうかと私も思ったわけです。当然、私は、大臣も現地に行かれた、今回の事故を受けて救命救助に最優先に取り組んでいく、そして事故の原因究明に先頭に立って仕事をしていく、そのために、それが諸般の事情だと、日本に残って仕事をされるんだということだというふうに思ったんですが、そういうことでよろしいでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) はい、そのとおりでございます。

○武田良介君 亡くなられた方がいらっしゃるわけですよね。残された御家族の方もいらっしゃる。まだ発見されていない方もいらっしゃる。そういう方たちがたくさんいらっしゃる中で、今、今日、様々な指摘があるという問題だけは指摘をさせていただきました。これ事実だとすれば、本当に悲しいことだし、悔しい思いだし、許されないという思いを皆さんお持ちになるんじゃないかというふうに思います。
 海外出張ということも、シンガポールでカジノを中核にするIRの視察というものも含まれておりました。これ自身、私、必要ないというふうに思いますけれども、しっかりとこの事案に対応しなければならないということを申し上げて、限られた時間になってしまいましたけれども、法案について聞かせていただきたいというふうに思います。
 現行の所有者不明土地特措法、これが国会で成立してから四年になりました。この法律で土地収用法に代わる知事裁定の制度が創設をされているわけであります。四年前の現行法の議論では、収用手続への移行から土地取得までに三十一か月掛かっていた収用手続を、知事裁定に変えることで二十一か月に短縮することが目標だというふうに政府は説明をされておられました。実際、知事裁定の制度によって極めて短時間で土地取得がされているということが分かります。
 資料の一を付けさせていただきましたけれども、例えば上から四つ目は東海環状自動車道の新設工事で、これ、三重県いなべ市の土地、二十五・六七平米ですけれども、ここが対象だったと。これは、裁定に要した期間は八か月と極めて短期間だというふうに思います。
 土地取得に要する期間を短縮する目標との関係でこの知事裁定制度の実績をどのように評価をされているのか、そして、裁定後に真の権利者から申出があるとか、そういった土地所有権をめぐるトラブルは生じていないのかという点について国交省に確認をしたいと思います。

○政府参考人(市川篤志君) お答えいたします。
 所有者不明土地法に規定されております公共事業の用地取得の合理化、円滑化のための土地収用法の特例制度につきましては、お話ありましたとおり、令和四年二月時点で六件の裁定がなされております。また、この制度につきましては、所有者不明土地の収用手続に要する期間を制定前の約三十一か月から二十一か月へ短縮するというKPIを掲げておりますが、この裁定のありました六件の事業につきまして、収用手続に要した期間は平均すると約十五か月となっております。
 このように、特例制度の活用によりまして土地収用手続のスピードアップが図られており、制度創設の効果が発揮されているものと考えております。
 裁定のあった六件の事業につきましては、いずれも所有者不明土地法の規定に基づく所有者の探索が行われております。また、都道府県知事による裁定に当たりまして、不明所有者等の関係者から異議が出されてはおりませんで、また、裁定後に不明所有者が現れて異議を申し立てるなどの問題は特に発生していないと承知いたしております。

○武田良介君 トラブルはないということで確認をいたしました。
 財産権に関わってくる話でありますので、今後とも、土地収用法の手続を避けるために所有者の探索をおろそかにすることがないように、くれぐれも運用には気を付けていただきたいということを申し上げておきたいというふうに思います。
 相続などを契機にした土地の共同所有の場合に、一筆の土地の部分、一部でも所有者が分からない場合は所有者不明土地ということになるわけであります。この場合、一部の所有者が判明している所有者は確知所有者というふうに言われるわけですよね。
 法案は、三十八条から四十条で、所有者不明土地のうち管理不全状態にある土地について、土砂災害の防止や周辺地域の環境悪化防止のため、市町村長はこの確知所有者に必要な措置を講じるべきことを勧告できると。で、従わない場合に命令、代執行ということであります。これらの権限を市町村長に与えること自体は必要であるというふうに思いますので、その点を踏まえた上で質問させていただきたいと思いますが。
 例えば、一筆の十分の一の確知所有者に対しても、一筆全体について必要な措置を求める勧告がされるわけですよね。そこから命令、代執行というふうになるわけですけれども、勧告に応えたくても、例えば高齢だとか、あるいは離れて住んでいる、資力が十分にない、様々な、場合によってはですね、機械的に運用することになると、確知所有者に対して気の毒な状況も生まれるのではないかというふうに思いますが。確知所有者の方は、管理できるのにそれをただただ怠っているという方だけではないというふうに思うわけであります。
 管理の責務のみ強調するということでありますと、資産価値よりも管理コストの方が高い、コストの方が大きい土地なんて相続したくないという風潮も広まりかねないというふうに思います。そうした風潮が広がるということは、今後の国土づくりに対しても決していいことではないというふうに思いますけれども、この点について大臣の御認識を伺いたいと思います。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) まず第一点目の、確知所有者に酷ではないかという観点ですけれども、今回創設する勧告、命令、代執行制度は、令和二年の土地基本法改正において土地所有者は土地を適正に管理する責務を有する旨が明確化されたことを踏まえ、市町村長が管理不全状態にある所有者不明土地の確知所有者に対し、所有者の責務として管理不全状態を解消し、災害の発生等を防止するために必要な措置を講ずるよう、勧告、命令し、代執行できることとするものです。
 その際、確知所有者に対して、所有者の責務を超えた措置を求める不合理な勧告や命令がなされないよう、条文上、一つに、改正後の第三十八条において、必要の限度において勧告することができると規定し、二つ目に、改正後の第三十九条において、確知所有者が有する共有持分により実施可能な措置に限って命令することができると規定しておりまして、三番目に、さらに改正後の第四十条第一項において、管理不全状態を放置することが著しく公益に反する場合に限って代執行することができると規定しておりますので、確知所有者に酷な事態が生じないよう手当てしているところでございます。
 それから、土地は相続したくないという風潮ということに関しまして、このような状況に踏まえ、令和三年に民事基本法制の見直しの一環として相続土地国庫帰属法が制定され、相続等により土地を取得した方々が法務大臣の承認を受けてその土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする、いわゆる相続土地国庫帰属制度が創設され、来年、令和五年四月二十七日から施行されることとなっております。
 また、今回の法案でも、地域で所有者不明土地や低未利用土地等の利活用に取り組む特定非営利活動法人等を市町村が指定する制度を創設するなど、所有者不明土地等の所有者が土地を利活用し適正に管理する機運を高める取組を推進するための新たな制度を創設しているところでございます。相続土地国庫帰属法や今回の法案の附則には、施行後五年を経過した場合に施行の状況についての検討を行い、必要があるときには見直す旨が規定されており、国土交通省といたしましても、法務省を始め関係省庁としっかりと連携し、適切な対応を図ってまいりたいと思います。

○武田良介君 もう時間が来てしまいます。
 最後にお聞きしたかったのは対策協議会の話でありまして、推進法人も今回規定をされます。これに対しては監督の仕組みが入るということになっているんですね、推進法人は。しかし、協議会の方にはこの監督の仕組みというのがない。
 先ほども少しありましたけれども、資料の二も付けました。不明土地、農地、林地も結構多いんですよね。こういうところに太陽光パネルだとか、乱開発のようにやられてしまわないのか、協議会の方にも監査の必要があるのではないかと、この点についてだけ、国交省、よろしいですか。

○委員長(斎藤嘉隆君) 時間が来ていますので、端的にお願いします。

○政府参考人(市川篤志君) はい。
 お答えいたします。
 協議会に関しましては、法律上、国や都道府県の監督権限は規定いたしておりません。一方で、地域福利増進事業を活用して再生可能エネルギー発電設備を行う場合には、都道府県知事は、地域住民の共同の福祉や利便の増進を図るものかどうか、その施設の利用条件が公平かつ適正な利用を図る観点から適切かどうか、事業者が事業を遂行する十分な意思と能力を有するかどうかといった観点から、事業内容を確認した上で、事業の実施に問題がないと判断した場合のみ裁定を行うこととされております。
 また、事業期間中においても、都道府県知事は、必要に応じて事業者に事業に関する報告をさせることや、立入りの実施等を行うことにより、事業の実施状況をモニタリングすることになります。
 また、再生可能エネルギー発電設備の整備につきましては、電気事業法など関連する法律や都道府県の条例などによる規制の適用も受けることになります。これらの規制に従っていない事業については、国や都道府県が、個別の法律や条例に基づき、事業内容の是正を図ることも可能でございます。このため、地域福利増進事業として実施される再生可能エネルギー発電施設、設備の整備につきましては、国や都道府県知事の監督の下、適切に実施されるものと考えております。
 国土交通省としても、適切に事業が実施されるよう、関係する法令の遵守や地域福利増進事業制度の趣旨について、所有者不明土地法に基づく基本方針やガイドライン等により丁寧に周知してまいりたいと考えております。

○武田良介君 終わります。

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