国会質問

質問日:2022年 5月 11日  第208通常国会  災害対策特別委員会

災害対策特別委員会で、台風19号災害被災者の「営農を続けたい」という声や、日本海溝・千島海溝地震防災対策特措法について質問

5月11日、武田良介議員は災害対策特別委員会で、日本海溝・千島海溝地震防災対策特措法改正案や、約2年半前の台風19号災害で被災した長野市内の方の土地が遊水地予定地にあるが、「営農を続けたい」と訴えている声をもとに質問しました(スタッフ)。

議事録

○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 まず、日本海溝・千島海溝地震特措法に関わって、一問伺いたいと思います。
 静岡市清水区に独立行政法人地域医療機能推進機構が運営をします桜ケ丘病院が、わざわざ津波浸水想定区域内に移転するという計画があります。私は、本年の四月二十五日の決算委員会において、わざわざ津波浸水想定区域内に病院を移転することが適切なのかと後藤茂之厚生労働大臣に質問したのに対し、後藤大臣は、医療機関というのは地域住民の健康、生命を守る重要なインフラであり、災害ハザードエリアへの移転かどうかにかかわらず、説明を受けるだけではなく、地域住民に対してやっぱり合意が得られるよう丁寧に状況を説明した上で、地域としての合意は必要になるだろうというふうに思いますと答弁をされました。
 二之湯防災担当大臣も同じ認識ということでよろしいでしょうか。

○国務大臣(二之湯智君) 医療機関の移転先につきましては、防災上のリスクを考慮することに加えて、患者のアクセス、必要な土地の確保、他の医療機関との位置関係、地域の地理的状況などを踏まえつつ総合的に検討をする必要があると思っております。
 本年四月二十五日の参議院決算委員会において、武田委員からの質問に対して厚生労働大臣が、地域住民に対して合意が得られるよう丁寧に状況を説明した上で、地域としての合意は必要になるだろうというふうに思いますとの答弁をしたことは私も承知しております。
 私といたしましては、医療機関は、地域住民の健康、命を守る重要な施設であることから、その移転を行う場合には、患者や地域住民に対して理解が得られるよう丁寧に説明を尽くしていただくことが重要であると考えております。

○武田良介君 患者のアクセスも含めて総合的に検討が必要だと。
 今、合意が必要というふうにおっしゃいませんでしたけれども、実際に津波が押し寄せた場合、瓦れきが病院の周りに散乱することもあります。自主防災組織の皆さんがこの病院に患者さんを搬送するということも静岡市では計画をされています。そういうことを考えた場合に、住民の皆さんが不安だというふうにおっしゃっているわけなんですね。そのことをしっかりと踏まえていただかなければいけませんし、私は、合意が必要であるというのは当然だと、後藤大臣がおっしゃっていることは当然だというふうに思っております。
 台風十九号災害から二年半、約二年半が経過をいたしました。まだ災害は終わっておりません。
 先日、地元であります長野市各地で被災者の方のお話を改めてお聞きをいたしました。その声を基に今日は質問させていただきたいというふうに思います。
 まず、信濃川水系の緊急治水対策プロジェクトによって進められている遊水地計画についてであります。長野市塩崎に計画されている遊水地について、国交省千曲川河川事務所が地元説明会を行っております。しかし、補償などどうなるのかということはよく伝わっていないというふうに思っております。
 まず、塩崎の遊水地は何年までに完成予定でしょうか。

○政府参考人(井上智夫君) お答えいたします。
 緊急治水対策プロジェクト、これ全体で、この遊水地も含めてやっているところでございますけれども、これにつきましては、今実質やっているところでございますが、令和九年度までを完了目標として進めているところでございます。

○武田良介君 これもはっきりしないんですよね。令和六年までに中間目標として整備するというのがたしか説明にあったと思います。全体は九年まで。じゃ、この治水、遊水地は何か所もありますから、どこがいつできるのか、そういったことも含めて地域住民の方、よく分からないんだというふうに思うんです。
 塩崎の遊水地ですけれども、これは長野市がアンケートを行ったと、そして用地買収方式によって整備する方針であるというふうにされております。そこで、遊水地の予定地となったところで農業をされている方から私、お話を伺いました。この方は、この土地で三十年以上、土づくりから努力をされてきた、自ら堆肥も作っている、施設園芸もされておられる方であります。しかし、このビニールハウスなど、資産価値は減価償却されて、買収額は幾らにもならないんだろうというようなお話をされております。
 用地買収によって支払われる買収額はどのように計算をされるのか。この方が考えているように、例えば農業用のビニールハウス、こういうのは減価償却されて計算されるものなんでしょうか。

○政府参考人(井上智夫君) 国で整備する遊水地の用地取得は、国土交通省の公共用地の取得に伴う損失補償基準の規定に基づいて買収額を算定することとなります。この補償基準には、土地代金、建物の移転料、附帯工作物の移転料、農業補償などが項目として定められています。
 土地の補償については、近隣の土地の取引価格を基準として、土地の形状や道路へのアクセス状況などを考慮した上で価格を算定し、補償することとなります。
 また、建物や御指摘のビニールハウスなどの農地に設置している施設は、これらの経過年数を考慮した上で移転に掛かる費用を算定し、補償することになります。
 また、農業補償については、代替地の取得が難しく営農の継続ができない場合には、廃止、休止等の状況に応じて所得相当額などを補償することとなります。

○武田良介君 経過年数、考慮するということなんですよね。
 同じく、用地買収に関わって、この方、代替農地があればそこで農業を続けたいという希望を持たれているわけですが、国交省、国の方で代替農地を補償するということはあるんでしょうか。

○政府参考人(井上智夫君) 遊水地の整備に当たって、用地を買収させていただく土地の所有者の方々から実際に営農継続を求める声が上がっております。
 国土交通省では、地元自治体と連携して、営農の継続を希望される方々が引き続き営農ができるよう、一つは、例えば遊水地内での営農を継続されるのかどうか、その場合には補償はどうするのか、あるいは、遊水地の近隣地区で、耕作地で営農を行うか、その場合の代替農地が確保できるかどうかなど、どのような対応が可能か検討しているところです。
 いずれにしても、地域の要望を踏まえて、丁寧に対応してまいります。

○武田良介君 遊水地内で農業継続を望むのか、あるいは近隣で望むのか、それらを長野市なんかとよく相談しながら、調整しながらという答弁なんだと思います。
 今の答弁のような話を、地権者の方は、説明聞いたことないと、地権者というか私が聞いた農家の方ですね、おっしゃっておりました。
 地域住民の方にまとまった説明されていないのかなというふうに思うんですけれども、丁寧にというお話だったけれども、これ、どう知らせていくのか。その農家の方だとか、その地権者の方々、一人一人に個別に説明していくことになるんですか。

○政府参考人(井上智夫君) ここの塩崎地区に限らず遊水地では、アンケートを大体基本として、全体としてどれくらい、どんな御希望があるのかというようなことを、市あるいは地元の方々が中心となって、近隣の方々の意向を把握するということがありますし、それから個別にも聞いていくという、そういうような手順になっていきます。

○武田良介君 アンケートなんかをやった後に、あとは個別にやっていくということなんですね。
 そうすると、まとまって全体の説明会を開くだとか、これは一般論ではなくて、塩崎の住民の皆さんだとか、例えばこういう皆さんが求めれば、まとまって、補償の考え方はどうなっているのかとか、そういうことについてまとまってほかの住民の皆さんも一緒に話を聞くような場を設けるということはできるでしょうか。

○政府参考人(井上智夫君) これまでにも地元の説明会を開いてきておりますし、これからもそういうようなことの御要望があればやっていくべきだと考えております。

○武田良介君 ここ大事だと思うんですね。
 一人一人ばらばらにされると、周りの方がどういうふうに補償されたとかよく分からないまま、あっちが良かった、こっちが良かったという話にまたなっていくんですね。本当に現場に行って考えた、感じたのは、そういう説明が届いていないということであります。
 先ほど、代替農地の話もしました。聞かせていただきました。買収金額が低くなった。あとはその、国が補償するわけじゃないですからね、農地を。金額もらっているから、それによって代替農地を自分で確保するということになるわけです。本当に農地確保できるのかどうかという不安が私、生まれてくるというふうに思うんです。
 農家の方、私聞いたこの方、お金の問題ではないというふうにおっしゃっているんです。生きがいだと、農業は。この地域、よく御存じで、地下水に鉄分が多いんだという話をされました。ただ、その鉄分も、近隣だといっても地下水の水位が全然違うから、掘り方によっても変わってくる、結構難しいものなんだという話をされておりました。いろんな条件があるわけなんですね。
 通告しておりませんけれども、大臣、ここまでお話お聞きになって、遊水地になるところで農業が続けられるかと、こういう不安あるわけだけれども、大臣、一言見解を伺いたいというふうに思います。

○国務大臣(二之湯智君) 農業を生涯の仕事としている人は、やっぱしその土地で農業を続けたいと、こういう強い気持ちを持っておりますから、遊水地ができることによって農地が買収された場合に、農民の方の気持ちに寄り添って国として取り組んでもらいたいと、こう思います。

○武田良介君 一つ確認をさせていただきたいと思います。
 千曲川河川事務所が作成した塩崎の遊水地の説明会資料では、用地買収方式、遊水地の全域を用地買収で、あっ、これ括弧書きですね、今の部分、で事業を進めさせていただきたいとの記載があるんですけれども、実際の面積だとか区画、その予定地に含まれていても一部農地は現状のまま農地として使い続けられるような、そういう変更はあるということでよろしいですか。

○政府参考人(井上智夫君) 塩崎遊水地を含む遊水地の整備に当たっては、買収可能な面積や営農を継続したいという耕作者の要望を踏まえた農地の面積も考慮して詳細な構造を今後検討していく予定であり、現在地域に示している内容を変更することはあり得ます。
 一方で、地域の安全を確保するためには必要な治水機能を流域全体で確保する必要があることから、多くの地権者に事業の必要性を理解していただけるよう丁寧に説明してまいりたいと考えております。

○武田良介君 あり得ると。治水の大事さということは、それは私も理解はします。本当に皆さんと理解を共通していくことは非常に大事だというふうに指摘をさせていただきたいというふうに思っております。
 次に、長野市の長沼、つまり千曲川の堤防決壊した地域の方ですね、ここで計画されている河川防災ステーションについて伺いたいと思います。
 これは、堤防の一部だけをスーパー堤防のように膨らませて、その上に被災箇所の復旧工事の資材だとか、あるいは災害対策の車両だとか、そういったものを置くと。で、平常時のときには市町村が設置する水防団の拠点になるだとか、そういった施設も一緒に置くと。こういうふうに活用していくものであるわけですけれども、地域住民の方の要望は、決壊したその堤防、この堤防の一部を膨らませた盛土ののり面も堤防と同じようにコンクリートブロックなんかで覆う、いわゆる被覆型の補強を行ってほしいということなんです。
 これ、地元説明会でも地域の方が河川事務所に求めているということなんですけれども、河川事務所の回答は、確かに堤防は、堤防そのものは被覆型でやっていますということなんだけれども、ここは堤防ではないからできないという説明をされるんだということでありました。じゃ、これ堤防じゃなかったら何なのかと。河川管理施設には変わりないんだけれども、これは側帯なんだということを私お聞きをしました。
 そこで伺いたいんだけれども、側帯をコンクリートブロックなどで覆う、そういう被覆型の補強を行うことはできないのか。逆に言うと、阻むような何か法令はあるのか、この点はいかがでしょうか。

○政府参考人(井上智夫君) 長沼地区で計画されている河川防災ステーションは、町側に堤防を拡幅する形で盛土を行うものです。その上面に水防センターを整備するとともに、コンクリートブロックや土砂等の堤防復旧のための資材を備蓄します。河川防災ステーションは、堤防が決壊した際に復旧の拠点となることから、のり面を含め、その安全性を十分確保する必要があります。
 委員御指摘の、コンクリートブロックでその防災ステーションののり面を強化する対策については、この河川防災ステーション付近から越水した場合に越流水の状況がどうなるのか、そういうことを検討した上で、必要な箇所についてはのり面の保護についての対策を実施するし、仮にその越流水が来ないというようなことであればそこについての対策はしない、そういうような考え方で進めていきたいと考えております。

○武田良介君 だから、まあ技術的にというんでしょうか、越流水がどうなるかという検討をしながら、コンクリートブロックで補強することも否定されない答弁だったというふうに思います。阻む法令あるのかということを聞いたけれども、それはないということでよろしいですかね、つまり。

○政府参考人(井上智夫君) はい。特にそういうふうに、側帯だったらできないとか、そういうものではございません。

○武田良介君 地域住民の皆さんは、やっぱり被災者ですから非常に不安なんです、目の前で堤防決壊しましたから。それが、特に強化されていなくて、言ったら盛土があるわけですよね。実際、越流して、そこがまたえぐられたら大量の土砂がまた我が町に来るという恐怖感持っておられるわけなんです。
 だから、私お話伺ったときには、河川事務所は、いや、できないんだ、できないんだという話をひたすらされる。何でできないのか、本省に問い合わせたのかと言ったら、問い合わせてないと、そういうお問合せいただいておりませんと昨日本省も言っておりましたから、それで、できない、できないという話だけが現場で進んでいる状況があるということは私この場で指摘をさせていただきたいというふうに思うし、今の答弁も私、是非地元の皆さんにもお知らせさせていただきたいというふうに思っております。
 いずれにしても、やっぱり被災者の方が主人公じゃなきゃいけないと思うんです。どういう河川整備するのか、強化策を取るのかということいろいろあるにしても、被災者の方が主人公だと、このことを絶対に忘れないで取り組む必要があるということを私は強調したいというふうに思っております。
 信濃川水系の河川整備計画、この変更原案というものが示されております。あっ、済みません、今日資料とか配っていないんですが。
 ここでも被災者の方の疑問をお聞きをいたしました。信濃川上流部を千曲川というふうにいいますけれども、長野県内の部分ですね、いいますけれども、千曲川は、いわゆる本川の部分と犀川という大きく分けて二つの水系から成っておるわけですけれども、目標流量について河川整備計画が変更になると。その原案を見ると、本川については目標流量増えているんですけれども、犀川の方については増えていない。これでいいんだろうかという疑問の声があるわけなんです。
 何で犀川の方は目標流量増えないんでしょうか。

○政府参考人(井上智夫君) 令和元年東日本台風では、千曲川の立ケ花地点で河川整備計画の目標を上回る、目標流量を上回る洪水が発生し、本川沿いを中心に、堤防の決壊等により大きな被害が発生しました。そのため、今回の変更では、本川について目標流量を見直し、令和元年東日本台風と同規模の洪水に対し、災害の発生の防止又は軽減を図ることとしています。
 御質問がありました千曲川支川、犀川の目標流量については、当該流域に令和元年よりも大きな降雨が発生した平成十八年の洪水を基に設定しています。令和元年洪水の実績流量はこの流量を下回ったものの、この犀川の安全度の向上ということは早急に図るべきと考えており、平成十八年の洪水を安全に流せれるような目標流量に基づき、しっかりと河川整備を進めていくこととしております。
 なお、気候変動による水災害の激甚化、頻発化も踏まえ、目標を上回るような洪水への備えも重要と考えております。現在、気候変動の影響を反映した河川整備基本方針の見直しについて、信濃川水系も含め全国の水系で進めており、本支川のバランスや河川整備の進捗状況、さらには流域治水の取組等を踏まえた上で、犀川を含む流域全体での安全度向上について検討してまいります。

○武田良介君 時間がないので、最後に一問、決壊部の堤防高について。
 なぜ長野市長沼の穂保で堤防が決壊したのか。検討結果を私も改めて見ましたけれども、堤防が上下流、前後区間に比べて相対的に低くなっていると。だから、そこから越流水深、深くなって、全体としても流速が速くなる。つまり、その剪断力も強くなるということが働いていた。一つ、こういう指摘があるわけであります。
 実際に、今整備計画の話もありましたけれども、堤防高上げるということになるわけですけれども、相対的に低いということは変わっていない。ですから、被災者の方たちは、やっぱり今の気候変動じゃないですけれども、そうはいっても、越水することはある。そうすれば、またここが剪断力が強くなるのではないか、切れるのではないか。その一メートルも二メートルも全体上げてくれと言っているわけではありません。前後に比べて数十センチだと思いますけれども、低くなっている部分、これをそろえて堤防を整備するということはできないのかという声でありました。
 重ねてですけれども、やっぱり被災者の方であります。目の前で切れた、また切れたら、そういう不安を住民が持ったらここにみんな住めないという思いを持っているわけであります。この堤防高の問題、いかがでしょうか。

○政府参考人(井上智夫君) 堤防の高さは、様々な降雨波形を基に算出される計画高水流量や背後地の土地利用等に基づき設定された計画高水位を考慮して計画堤防高を定め、この高さに堤体の将来の沈下量相当分を加えたものです。
 令和元年東日本台風で決壊した千曲川穂保地先の堤防は、被災前はそれまでの堤体の沈下により一部の区間で周囲の堤防より相対的に低い箇所があったものの、計画堤防高は確保されていました。
 当該地区の堤防復旧に当たっては、先ほど申し上げたとおり、計画堤防高に今後の沈下量相当分などを加えて施工しました。このため、復旧後の堤防高は被災前よりも高くなっております。また、整備区間の上下流の堤防が河川勾配に沿って滑らかに、左右岸の堤防高が同等となるように整備を実施しています。
 今後、移動計測車両などの新技術も活用し、当該地区の堤防沈下状況等について継続的な観測を行うとともに、計画堤防高以上になるように管理することを基本としつつ、上下流、左右岸の高さを維持できるよう努めるなど、適切に維持管理を実施してまいります。

○武田良介君 時間ですので終わりにしたいと思いますが、やっぱり国交省の皆さん、河川整備これまで一生懸命やられているとは思うんだけれども、実際、決壊してしまった被災者の方に、その技術的な話だとか、あるいは行政の手続的な話とか、こういうことが前面に出ると被災者の皆さん本当理解できないと思うんです。やっぱり、被災者の皆さんが主人公ということを、改めて重要だということを指摘をさせていただいて、質問を終わりたいと思います。

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