国会質問

質問日:2022年 5月 11日  第208通常国会  本会議

本会議で、盛土規制法案について質問

武田良介議員は、11日参議院本会議で、盛り土等規制法案について質問しました(スタッフ)。

 

盛り土規制対象広く

発生土処理費も適正に 武田氏が主張

 衆院で政府原案を全会派一致で修正した盛土規制法案(宅地造成法規制改正案)が11日、参院で審議入りし、日本共産党の武田良介議員が参院本会議で質問に立ちました。

 武田氏は、衆院の努力に敬意を示した上で残された課題を指摘。法案では盛り土の規制対象を人家などに被害を及ぼしうる区域に限定しているが、日本全土で盛り土を規制し、許可に当たっては環境影響評価や地域住民の意見聴取などを行うべきだと主張しました。

 また、処分代は通常、ダンプに運搬を依頼する下請け業者が支払いますが、元請け建設業者から処分費用が低く抑えられ、不適正に処分する事例もみられると指摘。建設発生土を適切に管理するための適正な処理費用の確保は不可欠だと指摘しました。

 武田氏は、民間の中間処理場業者は建設発注土を適正に管理しているとの国土交通省の説明に対し、業者が建設会社から廃棄費用を受け取り、さらに安い処分代で他の業者に処分させている実態もあるとして、建設残土は発生者が最終処分まで責任を持つよう義務付けるべきだと求めました。斉藤鉄夫国交相は実態を把握しきれていないと認めつつも「元請け業者に一律に最終処分までの責任を求めるのは過度な負担となる」と答えました。

 武田氏は、リニアのトンネル工事などに伴う処分先が決まっていない残土が土砂災害警戒区域内に仮置きされ住民の不安を広げていると指摘。大規模な残土を排出する建設工事は着手前の最終処分先確保を許可の要件とするよう求めました。

(「しんぶん赤旗」2022年5月13日付より)

議事録

○議長(山東昭子君) 武田良介さん。
   〔武田良介君登壇、拍手〕
○武田良介君 日本共産党の武田良介です。
 会派を代表して、宅地造成等規制法の一部を改正する法律案について、国交大臣に質問をいたします。
 初めに、四月二十三日に知床半島沖で発生した観光船の沈没事故から今日で十八日となりました。乗員乗客二十六名のうち、十四名の方の死亡が確認されています。お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表します。残された行方不明の方々の懸命な捜索が続けられています。一刻も早い救助を改めて求めます。
 なぜ事故が起こったのか。観光船を運航している有限会社知床遊覧船のずさんな安全管理に問題があったことは間違いありません。どのような安全管理を行っていたのか、その実態と事故原因の徹底した究明が求められます。
 同時に、このようなずさんな安全管理を許してきた国の対応に問題がなかったのかも問われなければなりません。安全意識の低い会社がなぜ営業を許されていたのか。犠牲となった乗客の御家族の疑問は当然です。
 一九九九年の海上運送法改正で、旅客不定期航路事業も需給調整規制が廃止され、運賃も許可制から届出制へと規制緩和されました。大臣は、規制緩和によって事業者が増えているわけではないと言いますが、知床遊覧船が旅客不定期航路事業の許可を受けたのは二〇〇一年七月六日です。桂田精一氏が社長になったのは二〇一七年四月七日です。こうした規制緩和が、安全よりももうけを優先する事業参入を許す土壌をつくり出したのではありませんか。旅客船事業の規制緩和路線は見直すべきではありませんか。
 法案の質疑に先立って、物価高騰問題について伺います。
 コロナ禍とロシアによるウクライナ侵略、さらに急激な円安によって、食料品、ガソリンや資材、電気料金など急激に物価が高騰し、国民の暮らしと営業は深刻な打撃を受けています。政府の緊急経済対策は、規模も内容も国民の苦境に応えるものになっていません。特に、建設資材の価格高騰などで深刻な状況にある中小建設事業者に対し、新築、リフォーム補助事業の延長、拡充、国としての実態把握、不当な資材価格引上げへの対策などを行うべきではありませんか。消費税の五%への減税は確実に支援策になるのであり、今こそ決断すべきではありませんか。
 法案について質問します。
 昨年七月の静岡県熱海市で発生した土石流災害は、死者二十七名、行方不明者一名の甚大な被害をもたらしました。犠牲になられた方々への心からの哀悼の意を表します。こうした不適切な盛土による土砂災害は以前から起こっており、危険な残土を全国一律で規制するための包括的な法律が切実に求められていました。
 本法案は、衆議院において、政府原案とともに、日本共産党の提案も尊重された四会派共同の修正案が審議に付され、最後は六会派共同の修正案としてまとまり、与党賛成の上、全会一致で政府原案を修正し可決されたものです。改めて衆議院での努力に敬意を表します。
 その上で質問します。
 まず、盛土の規制対象を、人家等に被害を及ぼし得る区域に限定していることです。これでは区域外への土砂の廃棄を防ぐことはできません。また、規制区域内であっても、盛土による自然環境や生態系への影響は考慮されません。リニア新幹線のトンネル工事では、約五千六百八十万立方メートル、東京ドーム約五十杯分もの膨大な残土が発生するとされています。JR東海の説明でも約三割、リニアの問題を取材し続けているジャーナリストの調査では約五割が最終処分先が決まっていません。これらの残土が、規制区域外や自然環境に影響を与えかねない場所に廃棄されないとは言えません。
 規制対象を人家等に被害を及ぼし得る区域に限定したのはなぜですか。規制区域を定めれば区域外に盛土が集中する可能性が出てくると考えられますが、その認識はありますか。規制区域を定めず、日本全土で盛土を規制すべきではありませんか。盛土の許可に当たっては、環境影響評価や地域住民等の意見を聴取することなどを行うべきではありませんか。
 建設発生土を適切に管理する上で、残土の処理費用が適正に確保されることが不可欠です。二〇二一年十二月二十日に公表された総務省の建設残土対策に関する実態調査、結果に基づく勧告でも、適切な処理費用の徹底が勧告されています。
 全日本建設交運一般労働組合のダンプ部会が取ったアンケートでは、ダンプ運転者が低賃金で残土を運搬している深刻な実態が告発されています。工事現場の残土運搬にダンプ持込みで就労する運転者は、一日定額で働く常用単価契約のほかに、一台単位の運搬契約もあります。この場合、運搬距離が反映されない定額契約が多く、五十キロ運んでも百キロ運んでも一トン当たりの運搬単価が千五百円、十トンダンプで一万五千円といった異常な低単価のケースもあったといいます。そこから燃料代、高速道路代、ダンプの処理費、保険代などを差し引くと、手元に残るお金はほとんどないとのことです。
 通常、処分代はダンプに運搬を依頼する下請業者が払うことになりますが、元請建設業者からの処分費用が低く抑えられているため、不適正に処分するケースが散見されるとのことです。建設発生土を適切に管理する上で、その処理費用が適正に確保されることが不可欠であるとの認識はありますか。公共工事で建設発生土を運搬するために十トンダンプを使用する場合、処分費用は、燃料代などの諸経費とダンプ運転者への労務単価を合わせて一日幾らで積算していますか。元請建設業者が、下請業者やダンプ労働者に対して、適正処分できる費用を支払うための具体策はありますか。
 内閣府の盛土による災害の防止に関する検討会提言では、元請業者や公共工事の発注者による建設残土の搬出先の明確化が指摘されています。建設発生土は、特に搬出量の多い都市部では仮置場や中間処理場に搬出されます。仮置場や中間処理場に搬出された残土が、その後、最終処分先に確実に搬入されていることを確認できる仕組みが必要です。
 国土交通省は、民間の中間処理場に搬入された建設発生土のその後の管理責任は中間処理場の事業者が負うべきものとして、中間処理場から先のトレースは不要としています。しかし、現実には、民間中間処理場の業者は、建設発生土を購入しているのではなく、建設会社から廃棄のための費用を受け取り、更に安い処分代で他の業者に処分させているのです。大臣はこうした実態を御存じですか。建設残土については、その発生者が最終処分まで責任を持つことを義務付けるべきではありませんか。公共工事で実施している指定処分制度を民間工事まで対象を広げ、最終処分先まで追跡、確認するトレーサビリティー制度をつくるべきではありませんか。
 最後に、リニアを始め新幹線や高速道路などの大規模なトンネル工事は大量の建設残土を排出します。処分先が決まっていない残土が土砂災害警戒区域内に仮置きされている事例もあり、地域住民の不安を広げています。大規模な残土を排出する建設工事は、工事を着手する前に残土の最終処分先を確保することを要件にすべきです。
 答弁を求め、質問といたします。(拍手)

   〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 武田良介議員にお答えいたします。
 旅客船事業の規制緩和についてお尋ねがありました。
 今回の事故の要因については、現在実施している特別監査において徹底的に確認を行っているところですが、国内旅客船事業の参入状況について、全国の事業者数は横ばい傾向にあり、一九九九年の海上運送法の改正の前後で特段の変化は見られず、旅客船の事故件数も、年により増減があるものの、上昇傾向にはありません。規制緩和を行った結果、安全よりももうけを優先する事業者の参入を許す土壌をつくり出したとは考えておりません。
 輸送を行う事業者にとって、安全の確保が最も重要です。国土交通省では、四月二十八日に知床遊覧船事故対策検討委員会を設置し、今回のような痛ましい事故が二度と起こらぬよう、小型船舶を使用する旅客輸送の安全対策について、経営者や運航管理者の資質の確保を含め、様々な角度から総合的に検討することとしています。
 当該委員会で精力的に議論を行い、具体の施策にしっかりと反映させ、輸送の安全性を高めてまいります。
 物価高騰への対応についてお尋ねがありました。
 建設資材につきましては、鋼材や木材などの幅広い建設資材において、世界的な需要量の増加や原材料価格の高騰などが原因と見られる価格の上昇や一部納品の遅延等が生じており、価格転嫁や工期の見直しが適切になされることが重要となっております。
 このため、国土交通省においては、適正な予定価格の設定やスライド条項の適切な適用などについて、公共、民間発注者や建設業団体に対して周知徹底を図っているところです。
 また、住宅の新築、リフォーム費用などの軽減に資するこどもみらい住宅支援事業について、中小建設事業者等が引き続き活用できるよう、予算を拡充し、交付申請期限を令和五年三月末まで延長いたしました。
 不当な資材価格引上げについても、現場の実態に丁寧に耳を傾けながら、市場における取引実態の把握に努め、必要な取組を行ってまいります。
 消費税については、総理は、社会保障の財源として位置付けられており、当面、消費税について触れることは考えておりませんと述べられていると承知しております。
 規制区域の考え方及び規制区域外における盛土についてお尋ねがありました。
 昨年、静岡県熱海市で発生した土石流により、災害関連死を含め二十七名の方が亡くなり、いまだ行方不明の方が一名いらっしゃるなど、大変悲惨な災害が引き起こされました。
 こうしたことを踏まえ、盛土等に伴う災害から人命を守ることが何よりも重要であると考えており、本法案においては、人家等に被害が及ぶことがないよう、規制区域を指定することとしております。
 この規制区域は、都道府県等が基礎調査により客観的なリスク把握に基づいて指定するものであり、人命を守るために必要かつ十分な区域の指定が可能であると考えております。
 また、規制区域の指定後も、市町村長からの区域指定の申出や住民からの通報等に基づく情報等を活用し、随時、規制区域の見直しを行うことが可能です。
 このため、規制区域の外において、人家等に被害を及ぼし得る盛土等が行われることは基本的に想定しておりません。
 規制区域を定めず、日本全土で盛土を規制すべきではないかとのお尋ねがありました。
 本法案は、盛土等に伴う災害から人命を守るという目的のため、盛土等の崩落により人家等に被害を及ぼし得るエリアを規制区域として指定することとしており、区域内における盛土等に対し、許可制という厳しい権利制限を掛けることとしております。
 規制区域を定めず国土の全域を規制の対象とすることは、人家等に被害を及ぼすおそれのないエリアも含めて規制することとなるため、過剰なものになると考えております。
 盛土の許可に当たっての環境影響評価の実施や地域住民等への意見聴取についてお尋ねがありました。
 環境の保全など、災害の防止以外の観点については、環境影響評価法などの他法令や関係する条例に基づき、必要な対応が行われるものと考えております。
 本法案は、盛土等に伴う災害の防止を目的とするものであり、許可に当たっての環境影響評価の義務付けについては、当該目的を逸脱することから適当でないと考えております。
 また、本法案に基づく許可は、造成された盛土等が崩落しないよう、政令で定める技術的基準に従い、擁壁や排水施設の設置等の安全対策が講じられるかどうかを審査するものです。この技術的基準は、科学的知見に基づき客観的に定められるものであり、都道府県知事等による許可の可否の判断は第三者の意見に左右されるものではありません。
 このため、許可に当たっての地域住民等への意見聴取については、本法案において措置する必要はないと考えております。
 建設発生土の処理費用の適正な確保についてお尋ねがありました。
 御指摘のとおり、建設発生土の適正処理を確保するためには、処理費用が適正に確保されることが重要と認識しております。
 このため、公共工事では、発注者が工事の発注段階で搬出先を指定する指定利用等の取組を進めるとともに、適正処理が行われるよう、適切な費用負担の徹底に取り組んでまいります。また、民間工事においても、契約締結時における適切な費用負担等についてガイドライン等で明確化するとともに、様々な機会を捉えて周知してまいります。
 さらに、元請、下請間の契約においても処理費用が適切に支払われるよう、元請業者に対し周知や指導を行ってまいります。
 十トンダンプトラックの一日当たりの積算についてお尋ねがありました。
 十トンダンプトラックの一日当たりの積算について、例えば東京地区における本年五月時点の標準的な条件での単価は、運転手の労務費とダンプトラックの機械経費を合わせると一日当たり四万六千七百円であり、これに加えて、走行距離に応じて燃料代が一リットル当たり百三十八円となっております。
 元請業者が下請業者等に適正処分できる費用を支払うための具体策についてお尋ねがありました。
 建設発生土の適正処理を確保するためには、発注者と元請業者の間の契約のみならず、元請業者と下請業者等の契約においても処理費用が適正に確保されることが重要と認識しております。
 このため、発注者に対し処理費用の適切な負担について働きかけを行っていくとともに、元請業者から下請業者等に適切に費用が支払われるように、元請業者に対しガイドラインの改定等による周知や指導を行ってまいります。
 また、元請業者に対し、下請業者等による適正処理を確認することを義務付ける仕組みを構築することにより、下請業者等に対し適正な処理費用が支払われることを促してまいります。
 民間中間処理業の事業実態についてお尋ねがありました。
 民間中間処理場は、運営主体や事業規模などが様々であり、その運営状況を必ずしも詳細に把握しているものではありませんが、建設業団体等から聞いているところでは、建設発生土の搬入に際しては、通常は搬入側が料金を支払っていることは承知しております。
 民間中間処理場に搬入される建設発生土の最終処分に至るまでの責任を発生者に義務付けることについてお尋ねがありました。
 建設発生土が民間の中間処理場に搬入される場合には、そこまで様々な現場から運び込まれた土と混ぜられてしまうことや、搬出まで長期間を要する場合があることなどから、元請業者に一律に最終処分までの責任を求めることは過度な負担となるおそれがあると考えております。
 一方で、御指摘のように、中間処理場に搬入された建設発生土の適正な処理を担保することは重要であると認識しており、本法案による厳格な出口規制と併せて、中間処理場の管理運営の更なる実態把握に努め、必要な対策を講じてまいります。
 指定処分の民間工事への拡大やトレーサビリティー制度についてお尋ねがありました。
 民間工事の発注者は個人の施主を含め様々であることから、基本的には専門的知識を持つ元請業者に搬出先の選定等の役割を担わせることが適当だと認識しております。
 このため、元請業者に建設発生土の搬出先が適正であることを事前に確認させることや、実際にそこに搬出されたことを受領証等で確認させる仕組みを構築してまいります。
 一方で、継続的に大規模な建設工事を発注している民間発注者は、公共工事と同様に指定利用等を行うなど、より積極的な役割を果たすことが求められると考えており、この旨をガイドライン等で明確化するとともに、様々な機会を捉えて周知してまいります。
 大規模な残土を排出する建設工事における残土の最終処分先の確保についてお尋ねがありました。
 整備新幹線を整備する独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構や高速道路会社を含む公共工事については、約八六%の建設発生土について発注者が発注段階で受入先を指定する指定利用等を行っており、今後ともその割合が少しでも高くなるよう徹底するとともに、最終的な受入れ地を指定する際には、新たな法制度による許可を受けたものを指定するよう徹底してまいります。
 また、リニア中央新幹線の建設発生土の取扱いについては、事業主体である民間事業者のJR東海が事業の特性を踏まえ個別具体に考えるものであり、具体的には、工事実施計画認可を受けた工事着手後に、事業主体が地方公共団体からのあっせん等を受けて受入れ候補地を選定し、建設発生土が実際に発生する時期や土質、運搬距離等を考慮した上で、事業主体により決定されていると承知しております。
 国土交通省としましては、リニア中央新幹線の工事実施に当たっては、地方公共団体の条例等に従い、建設発生土が適切に処理されるよう、民間事業者であるJR東海を指導監督してまいります。
 以上です。(拍手)

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